2012年12月28日
人にあげると、活性化
他人のために何かするというのはどうしてでしょうか?「協力するような種が生き残ることができた」というような進化心理学的な説明があります。それでは、そのメカニズムはどの程度解明されてきているのでしょうか?
デューク大学のMichael Plattらがアカゲザルがフルーツジュースを制御する時の脳の状態を調査しました。この実験は、自分自身への報酬、他人への報酬、誰にもあげない、という3つの条件で行いました。
サルは、自分自身への報酬を真っ先に選び、それを一番好みました。また、誰にもあげないという選択よりは、他のサルへジュースをあげることを選びました。。また高い地位のサルよりも低い地位のサルにジュースをあげることを好みました。
また、自分自身への報酬を考える時には、眼窩前頭皮質(OFC)が活性化しました。また、報酬を諦める時には前帯状皮質(ACC)が活性化しました。この2つは社会的なことを行うエリアとして知られています。また、自分への報酬や他人への報酬を与える際には、前帯状回(ACCg)が活性化しました。
ちなみに別の実験では、前帯状回にダメージを受けた動物は、社会的な状況で、食べ物をもらうのをためらうことが分かっています。
この研究では前帯状回が、他人との協力に大事な役割を果たしていることを示唆しています。こういった分野はどんどん研究が進んでいきますねー。
この記事はデューク大学の”Decision to Give a Group Effort in the Brain”を参考に書きました。
(文・絵: やまざきしんじ)
2012年12月17日
嘘の頻度は場所によって変わる
今日はイギリスのオックスフォード大学のJohannes Abelerらの嘘に関する研究を紹介します。これは、ドイツで行った実験で、意外と人は家にいると嘘をつかないというものです。
1つめの実験では、家に電話をして、コイントスをするように頼みました。そして、裏が出たら15ユーロを受け取るか寄付でき、表が出たら何も貰えないということを告げられ、電話でどちらが出たかを尋ねられました。
ランダムに電話をかけた658人の調査では、55.6%の人が表が出たと言い、何も貰えませんでした。簡単に嘘がつけて、バレない実験なのですが、非常に正直な結果ですね。これがドイツ人気質なのでしょうか。
2つめの実験は94人に対して、4回のコイントスをお願いしました。今度は1回裏が出るごとに5ユーロという条件で行いましたが、この時もやや表が出るのが多く、平均よりも貰えない人が多いという結果で、正直な結果が帰ってきました。
また、この2つの実験では、被験者の性別、年齢、収入、宗教などの属性を訪ねましたが、属性に関わらず正直であるということが分かりました。
一方、Houserらの2011年の研究は、ドイツの研究室で502人の大学生を対象にほぼ同じ実験をしたものですが、こちらでは76%の人が裏が出たと答えていました。76%という数字は、嘘をついていたことになりますので、人は研究室のような環境では嘘をつくようです。
家に電話する実験では嘘をつかず、研究室での実験では嘘をついていたことから、人の嘘の頻度は場所によって変わるという結論が導かれます。研究室のような場所で嘘をつかず、自分の家では嘘をつかないということから、職場や客先では嘘をつきやすくなるのかもしれません。
この記事はオックスフォード大学の”Study suggests we are basically honest – except when we are at work”を参考に書きました。元の論文はこちら。
(文・絵: やまざきしんじ)
2012年12月11日
意思決定力が、ストレス対処にも効く!
スペインのグラナダ大学のAna Santos-Ruizらが、スキルのある人とない人の意思決定と唾液のコルチゾール濃度の関係について調査しました。通常、コルチゾール濃度は、ストレスとの関係が知られており、ストレスがかかると濃度が上がることが知られています。また、最近の研究では意思決定へのストレスの影響について明らかになりつつあります。
この研究では40人の健康な女性がアイオワ・ギャンブル課題という課題をしてもらい、それからバーチャル・リアリティを使って架空の観客の前でスピーチをするというストレスをかけました。それから視床下部・下垂体・ 副腎皮質系の活動状況を調べることでストレスを調査し、また唾液のコルチゾールレベルを調査しました。
これによって、意思決定のスキルが、ストレス対処に大きな役割を持っており、コルチゾールレベルを低く抑えることが分かりました。
結論自体は予測できることかもしれませんが、バーチャル・リアリティを使うというのが面白かったです。最近はヘッドマウントディスプレイの値段も下がってきており、またコンピュータグラフィックスの精度も高くなって来ました。バーチャル・リアリティを使った認知行動療法の研究というのも読んだことがありますが、様々なところでヴァーチャル・リアリティが使われてきましたね。
この記事は以下の記事を参考に書きました。
University of Granada. "Saliva analysis can reveal decision-making skills." ScienceDaily, 10 Dec. 2012. Web. 11 Dec. 2012.
上の絵は、以下の論文のものです。
Ana Santos-Ruizら,"Can decision-making skills affect responses to psychological stress in healthy women?" Psychoneuroendocrinology, 2012; 37 (12): 1912 DOI: 10.1016/j.psyneuen.2012.04.002
(文: やまざきしんじ)