2013年02月26日

男性が作った?女性が作った? 売るためのデメリットの解消法

ジェンダーステレオタイプ.jpg

もし、わたしの使っているゴルフクラブが女性がつくったものであると知ったら、あなたはどう思うでしょうか?

あんまり飛ばなさそうだけど、キレイなデザインで使いやすそう。

こんな感じでしょうか?


南カリフォルニア大学マーシャル校の Valerie Folkesとオハイオ州立大学の Shashi Mattaが、ジェンダーステレオタイプを通した商品知覚に関連した実験をしました。

最初に大学生にクラシックを聞いてもらったのですが、男女それぞれの指揮者の音楽を評価してもらいました。すると、

男性指揮者の音楽は、パワフルと評価された。
女性指揮者の音楽は、繊細ですがパワフルではなく、男性の指揮者よりも質が劣ると評価された。


この後、同じように男女の指揮者を評価してもらったのですが、今度は事前に女性指揮者の能力についてちょっとした説明しました。すると、女性指揮者の音楽は、繊細であると同時に力強いという評価を得ました。

この実験は、女性らしさの負の面を最初の説明で消すことができることを示しています。また、女性指揮者の能力の説明によって繊細さを音楽の質を左右するものとみなすようになったとも言えます。


私たちは、男性が作ったゴルフクラブは無骨だが力強く、女性が作ったゴルフクラブは繊細だが力強くない、とみなしてしまう傾向があります。これはジェンダーステレオタイプ(性的ステレオタイプとも言う)という、男性らしさ、女性らしさのイメージを、製品にも投影してしまうということが言えるのです。

しかし、この実験はそのステレオタイプのマイナス面を情報を上手く与えることで解消することが出来ることを示しています。


実は、私のゴルフクラブの作り手は、マーガレット・ヘルムステッターという女性で三代続くゴルフクラブメーカーで、グレッグ・ノーマンも若い頃にそのドライバーを使っていた。マーガレットの代に入ってからは、材料や製法は変わったものの、その「プロのための用具」という思想はそのままに、女性ならではの細やかさを加えて、「飛び。しかもコントロールできる」をコンセプトにしている。

といった作成者の情報を提供することで、ゴルフクラブにまつわる女性的なジェンダーステレオタイプの悪い面が消えるようです。

(ちなみに上のゴルフクラブの話はあくまで架空の話です)


この記事は以下を参考に書きました。
USC Marshall School of Business. "Marketing technique: Activating gender stereotypes just to knock 'em down." ScienceDaily, 12 Feb. 2013. Web. 26 Feb. 2013.


(文・絵: やまざきしんじ)
posted by さいころ at 10:10| Comment(42) | TrackBack(0) | 消費者行動

2013年02月18日

スキル向上の課題は、変化していく

バスケット.jpg

チームのメンバーの営業成績が落ちている時、それは何が原因でしょうか?景気などの外部環境でなければ、そのメンバーの問題ですが、それは何が問題でしょうか?

努力しないから?プライベートで心配事があるから?それとも..


カナダのトロント大学ロットマンスクールのMaria Rotundoは、700人以上のアメリカのプロバスケットボール選手(NBA選手)を対象とした調査をしました。この研究によると、約10%の選手が先シーズンとは違うスキルを伸ばすことに注目しているのです。

そういえば、サッカーで有名なメッシという選手はデビュー当初は右足のコントロールに難があり、右足で強いシュートが打てなかったのですが、3シーズン目位からは右足でもシュートを決めれるようになりました。また、今シーズンでは以前にほとんど決められなかったフリーキックでのゴールも増えています。これは世界最高と言われるほどの選手でも、シーズンごとに課題を決めて、それを解決していることですね。

同じ事はサラリーマンにも言えるのではないでしょうか?
多くの企業で、年ごとの目標管理といった制度を取り入れていると思いますが、ここに現れないものでも何か個人ごとに課題を決めていたりしないでしょうか?

スポーツにかぎらず、他のチームメンバーの顔ぶれや、外部環境の変化などによって、課題は変化していきます。チームリーダーは各メンバーの長所・短所などを考慮しながら、フォーカスを変えていくことで、チームのパフォーマンスを上げ、また、各人のモチベーションを保つことができるのではないでしょうか。これは、個々のメンバーの責任でもありますが、チームリーダーが上手く導いてあげることでもあります。


この記事はトロント大学のロットマンスクールの"Refocusing important on and off the court, says new study."を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2013年02月08日

成績とコミュニケーション頻度は関係がある

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カリフォルニア大学サンディエゴ校のManuel Cebrianとイギリスのヒューレット・パッカード研究所のLuis Vaqueroは大学のクラスでの成績について調査しました

これは290人の学生の80,000回に渡るやりとりを分析したものです。

この研究によると、成績が良い人は他の学生とオンラインでのコミュニケーションをより多くしていることが分かりました。また、成績の良い人だけの小さなグループを作って、成績のよくない人達とはあまりやりとりをしていない分かりました。逆に他人とのコミュニケーションが少ない人たちは成績が悪いです。

いわゆる成績の良い人の集まりのエリートグループは、授業の最初の日に形成されます。また、エリートグループの成績上位者は、成績下位者がグループに入らないように排除するため、成績下位者はがんばってもエリートグループには入れません。


また他人への情報の拡散の頻度も成績上位グループと成績下位グループでは異なります。他人とのやりとりの約0.1%は、さらに他人へと拡散していくようなものでしたが、この拡散していく情報のうち51%が成績上位グループのもの、35.97%が成績中位グループのもの、13.03%が成績下位グループのものでした。これは、成績上位グループの方が影響力が大きいということを意味しています。


たしかに大学のときは、誰と仲良くしているかによって、例えば「どんなことを普通は知っているか」や「どんなことが出来るか」といった基準が変わってくると思います。コミュニケーション回数がポイントなのはいいのですが、そのようなエリートグループに入るかどうかが最初に決まってしまうというのが面白いですね。これはアメリカでの研究なので、日本でそのまま適用されるかはわかりませんが、私の経験では日本にも適用できそうです。

このことは、第一印象が大事ということは意味しませんが、最初にエリートグループに入れるかどうかは後々まで響いていくということですね。もしかすると、いろいろなコミュニケティにおいて同様のことが言えるのかもしれませんね。


この記事は以下の論文を参考に書きました。
Luis Vaqueroら, 2013, "The rich club phenomenon in the classroom. ", Scientific Reports, 2013; 3 DOI: 10.1038/srep01174

(文・絵: やまざきしんじ)

2013年02月04日

衝動のコントロールにモダフィニル

お酒飲む.jpg

衝動のコントロールは、ダイエット、禁酒、禁煙、どれにも大事なものです。もちろん、仕事中にキレて、お客さんの訪問中に席を立つなんてことはあってはいけませんよね。セルフコントロールの能力を高めるための方法は、古くからあるものです。これは、キレる前に10数えるというものです。

別のアプローチとして、オランダのアムステルダム大学のLianne Schmaalらの行った最新の研究では、覚醒促進剤に使われるモダフィニルが、衝動のコントロールの助けになるというものです。実験では、これによって飲酒量を減らすことができました。また、コカイン中毒にも有効という研究もあります。

一般的にはモダフィニルは睡眠障害に使われていますが、このモダフィニルによって認知能力が上がるという研究もあります。

薬には副作用がありますのでそのまま服用することは危険がありますが、薬と神経科学と心理学はつながっていて、面白いですね。


(日本国内でこのようなモダフィニルの使用方法は合法かどうかは知りません。ご注意ください!)

この記事は以下を参考に書きました。
Elsevier. "If you are impulsive, take modafinil and count to ten, research suggests." ScienceDaily, 1 Feb. 2013. Web. 4 Feb. 2013.

(文・絵: やまざきしんじ)

2013年02月01日

良いマネージャーは正直?

正直じゃないマネージャー.jpg

良いマネージャーになるために、必要なのはどのようなものでしょうか?

良いコーチであること?
地図がない道を進めること?

他にもいろいろな答えがあると思います。「もしドラ」の愛称で知られる「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を読んだ人ならば、”真摯さ”を挙げるかもしれません。


それでは、良いマネージャーには正直さは必要でしょうか?

たしかに品の良さや器の大きさを感じるマネージャーはいるし、そういう人は正直な気がします。


しかし、イギリスのエジンバラ・ネピア大学のChiara Amatiの研究によると正直なマネージャーがいいわけではないようです。

それでは、マネージャーは嘘つきでいいのでしょうか?


答えは”イエス”かもしれません。


良いマネージャーは、部下を勇気づけて、心地よく働いてもらうことが出来る人です。そのためには、必ずしも常に正直である必要はありません。場合によっては、怒りや落胆を隠して、「よくやった」と相手を褒める必要があります。


嘘には自分のための嘘と他人のための嘘があります。自分のための嘘はよくないですが、時には他人のための嘘を上手く付ける人、これが良いマネージャーに必要な素質の一つのようです。


この記事は"The British Psychological Society"の"Good managers fake it”を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)