2013年04月26日
握ることで記憶力アップ
以前、箱から出るだけで想像力がアップするという記事を書きましたが、今回は手を握るだけで記憶力がアップするというものです。これはモンクレア州立大学のRuth Propperらが、51人の右利きの被験者を対象として、72単語のリストを覚えるというテストをした結果です。
被験者は、単語を覚える前と思い出す前にそれぞれ右か左手で5cmのボールを握ります。また、対照群として、ボールを握らないグループも用意します。
つまり、
・覚える前に左手で握る、思い出す前に左手で握る
・覚える前に右手で握る、思い出す前に右手で握る
・覚える前に左手で握る、思い出す前に右手で握る
・覚える前に右手で握る、思い出す前に左手で握る
・ボールを握らない
の5つの条件で単語リストを覚えて、思い出すというテストをしたのです。その結果、単に手でボールを握るだけで、記憶の結果が変わったのです。
それでは、どの条件が一番テストの結果が良かったでしょうか?
とても意外で面白い結果になりました。以下が、単語テストの結果です。下に書いた、右、左というのは、記憶する前、思い出す前にそれぞれどちらの手でボールを握っていたかを示します。
(上のグラフは下の論文より引用、ただし、グラフ記載の条件は翻訳しています)
上を見て分かるように、覚える前に右手を握っていて、思い出す前には左手を握っていたグループが最もスコアがよくなりました。ただし、覚える前と思い出す前の両方で右手を握っていたグループは、何もしなかったグループよりもスコアが悪くなりました。そして、覚える前に左手を握っていたグループはよりスコアが悪くなりました。
このテスト結果は、HERAモデル(Hemisphereic Encoding/Retrieval Asymmetry モデル、記憶・想起非対称半球モデル)というものによって予想されるものです。このモデルでは、記憶には左前頭野が、想起には右前頭野が関係しているため、事前に握ることでその領域が活性化すると予想します。
被験者数が少なめとか、左利きだとどうなんだ?、と気になるところはありますが、単純で使えそうなテクニックですね!
この記事は以下の論文を参考に書きました。
Ruth E. Propperら, 2013, "Getting a Grip on Memory: Unilateral Hand Clenching Alters Episodic Recall.", PLoS ONE, 2013; 8 (4): e62474 DOI: 10.1371/journal.pone.0062474
(文・絵: やまざきしんじ)
2013年04月04日
手の魔法
アイオワ大学の Susan Cookとミシガン州立大学のKimberly Fennらは184人の小学校2〜4年生を対象とした教育におけるジェスチャーの役割を研究しました。
この実験では、教師が口頭でだけ問題と伝えるよりも、手振りをつけて問題を伝えることで、算数の問題がより解けることが分かりました。
例えば
4+5+7 = ?? +7
という問題で、??に入る数は何かという問題です。この問題を説明する時に、口だけで説明するよりも教師が手を使うことが大事なのです。
この研究は別の似たような研究があります。2009年にシカゴ大学のSusan Goldin-Meadowと当時シカゴ大学にいたSusan Cookらの行ったものです。先ほどと同じような問題(例えば9+2+3 = ?? +3の??に入る数を答えさせる)を解く方法を、計算の時に使うV字のような手振りを子供に教えて解かせるというものです。この実験では上手くジェスチャーを覚えた子供は、ジェスチャーを覚えていない子よりも約50%も正解率が上がったという結果になりました。
これらの研究は計算においても、ジェスチャーが大事ということを示しています。教師がジェスチャーを使ったり、生徒がジェスチャーを使ったり、どちらにしろ正しくジェスチャーを使うことで、より正しく計算ができるようですね。
この記事はミシガン大学の"TEACHERS’ GESTURES BOOST MATH LEARNING"と以下の論文を参考にしました。
Susan Goldin-Meadowら, 2009, "Gesturing Gives Children New
Ideas About Math", Association for Psychological Science Volume 20−Number 3 pp.267-pp.272
(文・絵: やまざきしんじ)