2013年05月28日

倫理学者は本当に倫理的なのか?

倫理的でない.jpg

先日、知人と「経済学者で株で儲けられないなんて...」という話をしていました。僕自身は、経済学者と株式投資は全く別物だし、良い経済学者であることと現実の予測力が高いことは全くの別物と思っています。

ところで、倫理学者は普通の人よりも倫理的なんでしょうか?

倫理学者かどうかわかりませんが、”社会契約論”で有名なルソーは言っていることとやってることがかなり違う印象がありますし、一方で”純粋理性批判”などで有名な哲学者のカントのイメージは言行一致していて倫理的な印象があります。では、実際のところはどうなんでしょうか?

カリフォルニア大学リバーサイド校のEric Schwitzgebelらの研究によると、倫理学の教授と倫理学以外の教授では倫理的には違いがないそうです。

ちなみに、ある研究では、図書館から倫理学に関する本は他の哲学の本よりもよく紛失するそうです。あれ?倫理を学んでいる人の方が本をよく拝借するんでしょうか...

ちなみに倫理学や政治哲学の教授は、他の哲学分野の教授と同じくらいの投票率だそうです。


ルソーのように倫理を説いている人が、逆に倫理的でないという結果もありうると思っていたのですが。倫理学の教授も他の教授も同じくらいに倫理的というのも面白い結果ですね。

この記事はカリフォルニア大学リバーサイド校のUCR Todayの"Study: Ethicists’ Behavior Not More Moral"を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2013年05月14日

イラストにすればいいってもんじゃない

グラフ2種.jpg

心理学にしろ経済学にしろ、学問で面白いのは直感に反する事実を知ることです。もちろん研究としては、直感に合うものが直感どおりであることを明らかにするということも大事ですが、直感と違うものを明らかにするほうが遥かに重要だと思います。

オハイオ州立大学のJennifer Kaminskiらの研究は、グラフの教育効果についての研究です。グラフといえば、ヤバい統計学の著者が作っているJunk Chartsというホームページはダメなグラフがたくさん載っています。




Kaminskiらの研究は6歳から8歳の小学生を対象としたものです。この研究では、靴や花のような画像を使った棒グラフと、単なるベタ塗りの棒グラフのどちらが教育効果が高いかを確認しました。

この研究によると、絵を使った棒グラフは視覚的なアピールがあり興味を持たれますが、表面への興味が先行するためか、教育的な効果は低くなってしまいます。つまり、棒グラフはシンプルな方がいいということですね。


ちなみに16人の幼稚園と小学校の先生に、どちらのグラフが有効と思うかと確認したところ、全員が絵を使ったグラフの方が教育的にも有効であると考えていました。これは私たちの直感にも合うのではないでしょうか?

しかし、実際にはシンプルなグラフの方がいいのです。実はこの結果は様々なものに言えそうです。ビジネス業界では、ビジュアルなんとかといわれる様々な技法が営業・宣伝されていますが、これらについても「直感的にいいと思う」と「本当に有効」の間にはギャップがあるかもしれませんね。

この記事は、以下を参考に書きました。
Ohio State University. "Look! Something shiny! How some textbook visuals can hurt learning." ScienceDaily, 8 May 2013. Web. 14 May 2013.

(文・絵: やまざきしんじ)
posted by さいころ at 06:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 発想法・問題解決

2013年05月01日

次世代リーダーの条件

リーダーはWeb作る.jpg

ゲームでもリーダーシップは勝手に生まれますが、そこに次世代のリーダーのヒントは潜んでいるかもしれません。

ペンシルバニア州立大学のTamara Peytonらが、I Love BeesというHalo2ゲームのプロモーションで行われたARG(Alternate Reality Game 代替現実ゲーム)の2500ユーザの54,000の書き込みを分析し、リーダーシップについて研究をしました。

ARGというものは、オンラインとリアルが混在したゲームです。このI Love Beesというのは、ilovebees.comというWebサイトを中心として、このサイトに隠された210組のGPS情報や日時情報を使い、適切な場所に正しいタイミングで行くと、電話が鳴りメッセージを聞くことができ、これらをつなぎ合わせていくことで謎を解いていくというものです。

この研究では、参加したプレイヤーがチームを作ってリーダーシップを発揮することがわかりましたが、そのリーダーシップはプレイヤーの軍隊経験やその他のチームでの経験で無関係であることが分かりました。


つまり、リーダーシップはゲームにおいては勝手に生まれてくると言えます。なお、リーダーシップのある参加者は、自分のウェブサイトや議論用の掲示板を用意してリードしていきます

この研究は、リーダーシップが勝手に現れていくことを描いたものですが、最近はゲームやオンライン上の物事と実際の仕事の境界が曖昧になりつつあります。すると、これからは、ウェブサイトの構築や掲示板を素早く準備したり、そこでの議論を盛り上げる能力といったものが、リーダーの必須能力になっていくのかもしれませんね。


この記事はペンシルバニア州立大学の"Leadership emerges spontaneously during games"を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)