
高いスキルを有した人材になるためのコツにはどういったものがあるでしょうか?
高いスキルを持つには、高いスキルを持った人の近くにいることが大きな鍵です。では、そのためにはどうしますか?
カナダのブリティッシュコロンビア大学のMichael Muthukrishnaは、コミュニティのサイズと技術の伝承の関係を調査しました。これはそれぞれ100人の被験者を対象に、デジタル写真編集と、紐を縛るという2つの技術を、次のグループに伝えるという実験を10回やります。そこから、この技術の伝承の伝言ゲームがどのくらいうまくいくかを調べるというものです。
この時、技術の伝承については1人の師匠が1人の弟子に教えるという方法(昔ながらの職人モデル)と、5人のグループの師匠が5人のグループの弟子に教えるという方法(グループ指導モデル)の2つの指導方法で、それぞれ技術の伝承の精度がどうなるのかを調べました。
このうち、デジタル写真編集についてのグラフを論文より見てみましょう。下のグラフで、横軸は技術を伝承していく世代、縦軸は画像処理のスキルレベルです。赤い線は5人のグループで技術を伝承した場合、青い線は1人で技術を伝承した場合です。

これを見て明らかなように、1人で技術を伝承するとレベルはどんどんと落ちていきますが、5人のグループで技術を伝承するとレベルはどんどんと上がっていきます。対象となるスキルや、伝承にかける時間によっても変わるでしょうが、1人よりも5人の方が世代を経た場合にスキルの向上に役立つのは間違いないでしょう。
この知見は、これから増えていくだろう学校での学習や独習について、また仕事などで使用する様々な技能についても応用できそうです。つまり、一人が一人に教えるモデルでなく、学ぶために複数の人が集まる場が大事ということを示唆しているのではないでしょうか?
高いスキルを要求される人たちは、似たものが集まる場にでかけてみてはいかがですか?
また、物事を学ぶ時には人と一緒に行うと効率的に学習できそうですよね。
経営学者のマイケル・ポーターは産業クラスタということを述べていますが、まず、これを思い出しました。分かりやすい例がシリコン・バレーでしょうか。シリコン・バレー近辺にはハイテク企業が多く、そういった人材もハイテク企業を起業するために必要なものも揃っています。また、愛知県には自動車産業があるため、自動車メーカーだけでなく、その部品に必要な金属、合成ゴム、プラスチックなどのメーカーや各種機械メーカーが揃っています。
また、リチャード・フロリダはクリエイティブクラスという言葉を流行らせました。クリエイティブクラスが住むところは、外部に開放的で人口が多く文化的なものが多いということです。歴史的に見ても、一定以上の人口がいるところは、それだけで文明が発達するキーになりやすいです。東京は長らく世界最大の都市でしたが、現在も文化的許容度が高い良い都市ですよね。
この記事はブリティッシュコロンビア大学の”Social networks make us smarter”を参考に書きました。
元の論文はこちら。文中のグラフもこちらを使用しております。
写真はflickrのjiscinfonetさんのものを使用しました。
(文: やまざきしんじ)