2014年01月24日
プロプレイヤーのモチベーションの源泉は?
野球やバスケットボールの有名選手は複数年契約で巨額の年俸を受け取っています。単年度契約に比べて複数年契約は、選手の側から見るとリスクに強いため魅力的に見えます。
でも、単年度契約の方が、毎年頑張ったりしないのでしょうか?複数年契約だと、契約更新のシーズンだけいつも以上に頑張るなんてことがありそうです。
これは、「契約効果」(contract effect)というものです。
ミズーリ大学のKen Sheldon教授と、学部生Mark Whiteは、これを全米プロバスケットボール(NBA)と野球のメジャーリーグ(MLB)のプロ選手230人の10年以上の成績から調査しました。
このデータから金銭的な影響が大きい契約更新するシーズンと、その影響の少ない契約更新した直後のシーズンの成績を比べたのです。
すると契約更新のシーズンは、いつもよりも成績が上がっていることが分かりました。
さらに予想されるように、シーズン中に契約更新のサインをすると、成績はいつも通りに落ちていました。
契約更新の前に選手の成績が上がるというのは当たり前の結果とも思えます。でも、心理学では内発的動機づけという言葉があります。報酬や頼まれたから行うよりも、自らの意思で行う方がモチベーションが高いというものです。
ビジネス書などでは、「トム・ソーヤのペンキ塗りの話」もよく引用されます。
これは、トム・ソーヤがいたずらの罰としてペンキ塗りを命令されてやっている時に、友達が近くを通りかかります。トムはこの時にとても楽しそうにペンキ塗りをすることで、友達が是非ともペンキを塗ってみたいと思わせるのです。
結局、トムは、友達の「宝物」と交換でペンキ塗りをさせてあげるのです。
一流プレイヤー達は、トムの友人がペンキ塗りを喜んでやるように自発的に行うのだとしたら、むしろ契約更新直後の方が成績がいいはずです。金銭的な心配もないし、好きな(はずの)野球やバスケットボールに打ち込めるのです。
しかし、実際には外発的動機づけが大きかったようですよね。
この研究は、一流選手のモチベーションの源泉としての、外発的動機づけ(この場合はお金)の影響の大きさを明らかにしたものです。
何百万人のプレイヤーの頂点に立つその分野のトップのバスケットボールや野球の選手の結果ですが、これはビジネスマンにも応用できそうな知識ですよね。
この記事はミズーリ大学の"Athletes’ Performance Declines Following Contract Years, MU Researchers Show"を参考に書きました。
文中の写真はflickrのPaolo Rosaさんのものを使用しております。
(文:やまざきしんじ)