2014年04月28日

交渉上手になるために必要な3つのこと

日常生活において、私たちは様々な交渉状況に直面しています。
 例えば、ビジネスにおいて自社の商品の商談をしているとき、あるいは、同僚に仕事を手伝ってほしいとき、あるいは、休日どこに出かけるか家族の間で一致しないとき…そんなときも交渉スキルが必要になるでしょう。

 『Negotiation:Theory and Strategy』の著者でもあるカリフォルニア大学教授のRussell Korobkinは「交渉における原理はその規模に関係ない」と言います。

 では、交渉上手になるための原理とは何でしょうか?

 Scientific American:Mindの7月号に掲載された記事をベースに、研究で効果があると実証的に証明されている交渉の原理を3つご紹介します。
 

1.フェアであれ
Korobkinによると、交渉上手な人は、常に自分の提案が誰にとってもフェアであることを示すそうです。
フェアであるということは、それぞれの状況に見合う扱いを適正に受けていることを意味します。
例えば、商品価格100円のパンをある人には120円で売り、ある人には80円で売るという状況はフェアでありません。
しかし、賞味期限まで2週間のパンと今日が賞味期限のパンを同じ100円で売るのは、これまたフェアではないでしょう。この場合は、賞味期限ギリギリのパンを買う人には、値引きをして80円で売るのがフェアであるようです。
どのような対応がフェアであるかは突き詰めて考えるとなかなか難しい問題ではありますが、要は相手に「自分はただ利用されているだけだ」「えこひいきしている!」と思わせるような対応をしないことが交渉において重要であるということですね。

2.自信満々のポーズをとる(事前に、こっそりと)
ハーバードビジネススクールの社会心理学者エイミー・カディは、姿勢やポーズがメンタル面に及ぼす影響力を研究しています。
彼女が行った興味深い実験では、圧迫面接を受ける前に、控え室で両手を腰に当てた自信満々のポーズを取ったグループと、体を丸めて自信のないポーズを取ったグループでは、その後の面接で、前者(自信満々のポーズ)の方が面接場面で説得力あると面接官から評価されることを明らかにしました(もちろん面接状況では両グループとも普通の姿勢をしています)。自信満々のポーズはやる気や自信のホルモンであるテストステロンの分泌を高め、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減少させる効果があります。
ですので、大切な面接や交渉の前には、トイレの中などで数分間自信満々のポーズをしてから、面接や交渉に望むと普段よりもさらに自信に満ちた交渉ができるはずです。

 なお、上記エイミー・カディの研究に関してはTEDで見ることができます。非常に感動的で素晴らしいスピーチですので、ぜひ見てください(ちなみに美人です)。



3.目標は高く
話をどこからスタートさせるかは、話がどこに着地するかに大きく影響します。
上司との給料交渉の状況において、同じ能力で同じ給料をもらっている人でも、給料の5%アップを交渉する人と、給料の20%アップを交渉する人では、最終的に決定する給料はきっと後者の給料20%アップを求めた人の方が高くなるでしょう。
これは1970年代に心理学者のトバースキーとカーネマンによって明らかにされたアンカリング効果によるものです。
アンカリング効果とは、最初に示された数値や情報が基準点(アンカー)となり、その後の判断に影響を及ぼす傾向のことを指します。
先ほどの給料アップの例に戻ると、5%の給料アップを交渉した場合、せいぜいよくて給料5%アップで交渉終結しそうですが、20%アップを望んだ場合、20%は無理でもそこが起点となって給料を決定しようとする心理的メカニズムが働き、「んー、じゃあ20%は無理だけど10%アップとするか」という結論になる可能性があります。
ですので、交渉状況では「とりあえず大きい目標を言っておく」がいいようです。
ただし、その場合も、非現実的なまでに高い目標では効果がなく、「現実的かつ高い」目標を設定することが重要ですので、この点をお忘れなく…。

(文章:山崎 有紀子)