将来に対する想像力を向上させる試みは概して失敗に終わっているそうです。
Scienceに掲載されたダニエル・ギルバートらの研究では、自分の将来の幸せ予測は、自分の推論に基づいて行うよりも、赤の他人の客観的意見を聞いて行う方がより正確であることを指摘しています。
Strangers Know How To Make Us Happy, Say Psychologists
彼らは、女性実験協力者に対して、ある男性とのデートをどれぐらい楽しいと思うかをデート前に予測するよう求めました。女性実験協力者の半分は、デート相手の男性のプロフィールと写真を見てから、残りの半分は、デート相手の情報は何も知らされない代わりに、すでにその男性とのデートを経験した女性からの感想を聞いてから、それぞれ予測を行います。
この結果、男性の情報を知ってから予測を行った女性よりも、他者からの感想を聞いてから予測した女性の方が、正確にその男性とのデートの楽しさを予測しました。
興味深いことに、どちらのグループの女性も、赤の他人の感想よりもデート相手のプロフィールと写真を見た方が正確な楽しさ予測ができると信じており、また実験終了後も、今後このような予測をするならば、やはり相手のプロフィールと写真を見たいと答えたそうです。
実際には、赤の他人の経験談はかなり情報として有益であるにも関わらず、人はその価値をそれほど認識していないようです。その理由として、ダニエル・ギルバートは「人はそれぞれに個性豊かで、同じ人は一人といない」と信じているからだ、と述べています。
この研究結果は、いかに人間が自分自身の判断や推論に自信を持っているか、そしてその自信が誤った判断に導きうることを示す、興味深い研究ではないでしょうか。 確かに、人の感想を鵜呑みするよりも、自分自身でしっかり考えて意思決定を行う方が賢明であると考えがちです。もしかすると知的レベルの高い人ほど、このような傾向があるかもしれません。
そういった考え方そのものが誤りとは思いませんが、「他人の感想は自分にはあてはまらない」と軽視するのではなく、意思決定の際の貴重な情報源として謙虚に受け入れるべきだなー、と思いました。
ちなみにこの研究を行ったダニエル・ギルバートは、大和証券のCMにも出演していたり、少し前に「幸せはいつもちょっと先にある」というベストセラーを書いていたりする、ちょっと有名な社会心理学者です。
彼の研究は、改めて人間の本質とは何か考えさせるものが多く、さすがだなー、といつも感心させられます。
CM 大和証券グループ 「ギルバート博士 ベンチ」篇
CM 大和証券グループ 「ギルバート博士 サメ」篇
ダニエル・ギルバート著 「幸せはいつもちょっと先にある―期待と妄想の心理学」