2010年09月20日

気分は創造性に影響する

クリエイティブであることはアーティストにはもちろんのこと、ビジネスや日常生活においても重要だ。
それによって、新たな商品やビジネスプランを考案したり、日々の業務を効率化することができる。

 創造性が人によって差があるのは否定できないが、その個人差は必ずしも生得要因によって決定されるとは言えない。日々のトレーニングや状況によって創造性は高まることもある。

 では、とのような状況におかれると人はクリエイティブになるのだろうか。Modupe Akinola教授は気分が創造性に影響すると主張する。
 
 Akinolaは、苦悩の天才ゴッホを例に挙げる。

 「ゴッホは『Starry Night』などのいくつかの傑作を生涯で最大の試練を経験した後に描いた。不幸であったりストレスを感じると、クリエィティブになるということがあるのだろうか」
 
 Akinolaは、この疑問に答えるべくハーバード大学のWendy Berry Mendesと研究を行った。
 
 彼らの実験は以下のようなものだ。
 実験参加者は自分の将来の夢についてショートスピーチを行った後、スピーチに対する評価を受ける。その評価は参加者によって否定的な場合もあれば肯定的な場合もあり、また評価しない場合もある、
 スピーチの評価を受けた後、参加者はノリと紙と色のついたフエルトを使って自由にコラージュを作成した。完成したコラージュは、どれぐらい創造的であるかプロのアーティストによって評価される。
 スピーチの評価によって参加者の気分を操作し、気分がその後のコラージュ作成の創造性に影響するかどうかを調べるというシナリオだ。
 
 被験者の気分の動揺しやすさを測定するためにスピーチの前後にデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)レベルを測定し、さらに気分に関する質問紙を実施した。

 内分泌学では、DHEASレベルは抑うつ状態のなりやすさを示す客観的指標として利用できることが知られている。これに加えて、気分についての自己報告を行うことで、気分の客観的、主観的ベースラインを得ることができた。
 
 この結果、ネガティブな評価をされた参加者は、ポジティブな評価や評価されなかった参加者よりもクリエイティブなコラージュを作り出した。
 彼らのコラージュはあきらかに創造性に必要なディテールや具体性への深い注意を反映していた。このグループの中でもDHEASが低い参加者は、もっともクリエイティブであった。

 この研究結果は、気分が創造性に影響する一つの要因であり、それは操作可能であることを検証した。

「ビジネスでは、気分が悪いときに重要な会議に出る状況がある。もし、創造性が気分の影響をうけるのなら、それを利用するよい方法は何なのか。万人受けする回答はないがこれについてさらに理解が必要だ」と Akinolaは言う。

 今回の研究における気分の操作には、スピーチに対する評価が使用された。これは、自分自身の自尊心や能力を否定されることによって起こった気分変容である。

 日常生活での気分変容には、今回のように自分に関する出来事で生じる場合もあれば、「通勤電車が遅れたために遅刻したので気分が悪い」といったように、自分自身とは無関係な要因で気分が悪くなることもあるだろう。
 このように気分が変動する原因にも様々なものがある。
 原因はどうあれ、気分の低下そものもが創造性に影響を与えるのか、あるいは、ある特定の原因で引き起こされた気分の低下のみが創造性に影響するのかはまだ明らかにされていない。

 今後の研究では、気分変動に関わる要因をさらに細分化し、どのような状況が創造性に関連するのか特定する必要があるだろう。
 
[元記事]The Dark Side of Creativity
posted by さいころ at 17:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 発想法・問題解決
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