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●ピザとクッキーが、目標設定について教えてくれる
不愉快なちょっとした副作用にひっかからなければ、目標設定はパフォーマンスを改善するためには簡単な方法です。
例としてダイエットを取り上げます。自分で1日の摂取カロリーを制限すると宣言しましょう。最初の2,3日はこの制限を守るかもしれません。ですが、これは同僚がレストランに誘ってくるまでのことです。
家で食べるヘルシーな料理の代わりに、レストランのメニューに直面します。しかし、メニューを見る前に、既に悪いことが起こってしまっています。バーであなたは空腹で、それからおつまみのスナックをオーダーしていました。このスナックと飲酒の組み合わせで、ほとんど1日の摂取カロリーの制限に達しています。
それからレストランでは、パンを食べて、お酒を飲みます。あなたは、サラダを選ぶべきだと思っていても、ステーキに惹かれます。既に制限カロリーをオーバーしているので、もう関係ないやと理由付けて。「どうにでもなれ(what the hell)、ステーキを食べよう」となります。
このように私たちは目標達成に成功しつつあるのに、一瞬の狂気で全てのことが泡に消えることがあります。
このどうにでもなれ効果はセルフコントロールの欠如でも、刹那的な過ちでもなく、目標を見失ったことと関係しています。心理学者が実験でこれを明らかにしています。
●ピザとクッキーの実験
トロント大学のJanet Polivyと仲間が最近の実験がしました。(Polivy他、2010) 彼女らは、研究のため、ダイエット中とそうでない被験者を呼びました。事前に被験者には全然食べないように伝えておき、それから到着した被験者にちょうど同じサイズに切ったピザをだして、それからクッキーを味わって評価して欲しいと頼みました。
ここではクッキーがどのくらい評価されたかでなく、どのくらい被験者がクッキーを食べたかを調査してました。そして、この実験にはトリックがあり、全員が同じサイズのピザを受け取っていたのですが、ピザを渡すときに、被験者の一部にはより大きいピザを渡したように見せかけました。
これは、実際には同じ量だったのですが、食べたよりも多くを食べたかのように被験者に思い込ませました。これは、我々は実際に食べた量よりもただ見ただけでよりたくさん食べたと考えることを意味しています。

実際に被験者が食べたクッキーの重さを測ると、ダイエット中で自分の制限を超えてしまったと考えている被験者は、50%以上多くのクッキーを食べていました。
一方で、ダイエット中で制限に達していないと考えていた被験者は、ダイエットをしていない人と同じ量のクッキーを食べていました。これは、どうにでもなれ効果の結果を示しています。
●どうにでもなれ効果を避けるには
ダイエット中のどうにでもなれ効果について書きましたが、これはお金、アルコール、ショッピングやその他自分で制限を加えるような目標設定をした時に同じように起こります。もし制限を超えると、常軌を逸した方法でセルフコントロールを抑制から解放しようとします。
それでは、どうにでもなれ効果を回避する方法はあるのでしょうか?研究者はどうにでもなれ効果がどのような時に発生するかを認識することが答えであると提案しています。
1.目標が短期間の時、例えば今日や明日を、来週や来月と比べる時
2.食事や飲酒のようなことを止めようとする時
つまり、どうにでもなれ効果は、短期の目標をより長期間の目標に変えることや禁止の目標から獲得の目標に変えることで避けることが出来ます。短期の目標を長期の目標に変えることは分かりやすいことですが、禁止の目標を獲得の目標に変えるとはどのようなことでしょうか?

1つの有名なものとして、匿名アルコール中毒者の会(AA)の例があります。AAでは飲酒を避ける(禁止)かわりに、しらふの日を数える(獲得)ようにしています。これは、禁止の目標から獲得の目標に変換しています。
同じような原理は、他のどんな禁止の目標についても適用できます。ダイエットする人は、上手くいった日を数えるように考えることができます。
このように目標を変えることで目標設定の副作用を避けて、目標にまっすぐに突き進むことができます。
(翻訳: SY)
*この記事はPsyblogの「The What-The-Hell Effect」の翻訳記事です。
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