2011年07月05日

他人が幸せならあなたも幸せ

マズローの欲求段階説というのは、より下位の欲求を満たすと上位の欲求のニーズがあらわれるというものです。以前、マズローの欲求段階説について書きましたが、マズローの欲求段階説が正しいかといった新しい研究がイリノイ大学のEd Dienerらによって行われました。


この研究は2005-2010年の世界中の155ヶ国でのギャラップ調査のデータから人々の満足度を調査するというものです。この研究の中で、社会の他者のニーズも満たされると、より幸福になるということが確認されました。さらに、基本的な欲求である生理的な欲求や安全欲求が満たされていない時でも、他者と良い社会的な関係を保ち自己実現をして幸福になることがあると分かりました。

これはマズローの欲求段階説には合わない事象です。これはどのように解釈すればいいのでしょうか?

マズローのように明確に階段があって、下の欲求が満たされい限り上の欲求が表れないのでなく、下位の欲求が満たされなても上位の欲求が現れることもあると考えるのが適切かもしれません。

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また、他者のニーズが満たされると自分も満足するということには、以下のジレンマについても考えてみる必要があります。

人は他者と比較をして自分が他者より良いことで満足する(自分が年収1000万で知人が600万の方が、自分が年収1200万で知人が2000万よりも満足度が高い)
人は他者との関係の中で満足する(承認される他者が必要で、その他者の欲求が満たされている方が良い)

つまり、自分の満足や幸福には、他者との比較というネガティブな効果(他者は自分より不幸な方が良い)と他者の幸せを願うというポジティブな効果の2つが組み合わさっています。この研究結果はこのポジティブな効果が出ていると考えられますが、この2つの関係まではこの研究では明らかになりませんでした。

このようにマズローの欲求段階説一つとっても、様々な視点があります。ビジネス書などでは、マズローの欲求段階を公然の事実として扱っているものが多いのですが、この説一つとってもまだまだ研究の余地がありそうです。


この記事はThe British Psychological Societyの"We are happier if others are happy too"を参考に書きました。


関連記事:
マズローの欲求段階説


(文: SY)


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