2011年07月12日

選択の複雑化

悩んでいる20代の女性[1544514] - 写真素材
(c) Ryo.WATANABE写真素材 PIXTA


最近の研究では、人は自分で勝手に問題を難しくしてしまうことが分かりました。

コロンビア大学のRom Schrift, Oded Netzer, Ran Kivetzの研究によると、様々な面から意思決定をするといった時に、大して重要でもない面を勝手に重要視してしまうということがあるようです。

例えば、他の条件が同じなら、以下の2つの携帯音楽プレイヤーのどちらがいいでしょうか?
A.メモリが2GBで、バッテリーが10時間もつ携帯音楽プレイヤー
B.メモリが1GBで、バッテリーが5時間もつ携帯音楽プレイヤー

また、以下の2つの仕事のどちらを選びますか?
1.通勤が片道15分で、年収700万の仕事
2.通勤が片道75分で、年収650万の仕事

ほとんどの人はこの質問にAと1と回答するはずです。


設問を少々変えて、以下の2つの選択ではどうでしょうか?
A’.メモリが2GBで、バッテリーが10時間もつ、ラジオ受信機能のない、携帯音楽プレイヤー
B’.メモリが1GBで、バッテリーが5時間もつ、ラジオ受信機能のある、携帯音楽プレイヤー

このように設問をかえると最初は重要ではなかったはずの”ラジオ受信機能”という面が過大に評価されて、A'よりもB’を選ぶ人が増えます。

そして、ここで1つのツッコミの余地があります。「だって、ラジオ受信機能は、必要じゃん!」って。ちなみに僕が持っている携帯音楽プレイヤーには1つもラジオ受信機能はありません。でも、たしかにラジオが欲しい気持ちは理解できます。


それでは、以下の2つの仕事のどちらを選びますか?
1.通勤が片道15分で、年収700万の仕事、仕事は3人のチームで行う
2.通勤が片道75分で、年収650万の仕事、仕事は6人のチームで行う

このように設問をかえると、最初は気にしていなかった、チームの人数というのがフォーカスされ、2を選ぶ人が増えます。

もちろん、ここで1つのツッコミの余地があります。「チームの人数は6人くらいがベストだし」と。


というわけで、今度は別の質問をしてみます。
1.通勤が片道15分で、年収700万の仕事、仕事は6人のチームで行う
2.通勤が片道75分で、年収650万の仕事、仕事は3人のチームで行う

このような設問をすると、今度も2を選ぶ人が増えます。つまり、チームの人数のベストが6人というわけでなく、3つめの属性を見て、もう一方が魅力的に思えるのです。


これは”選択の複雑化”(complicating choice)と名付けられた現象です。人はこのように、簡単なはずの2つの選択肢の第3の面を重視してしまって勝手に難しくするということがあるのです。こうして簡単なはずだった選択をより難しくしてしまうのです。

この”選択の複雑化”では、
1.通勤が片道15分で、年収700万の仕事、仕事は6人のチームで行う
2.通勤が片道75分で、年収650万の仕事、仕事は3人のチームで行う

という選択肢をまず提示して、1を選択していたとしても、その後で

3.通勤が片道40分で、年収670万の仕事、仕事は4人のチームで行う

という第3の選択肢を提示されると、「おっ、ちょうどいい」と思うこともあるのです。


この”選択の複雑化”は応用の広い考え方といえます。自分が何かを選択する際には事前に重視する面を明確にしておく必要がありますし、その場で新しい面を検討しはじめたら、本来は必要でないものを重要視してしまっている可能性も疑いましょう。パソコンや家を買うとき、会社を選ぶ、恋人を選ぶ、様々な状況の選で、”選択の複雑化”が起こっていると考えるべきです。

また、商品を販売する場合には、論理的に考えれば魅力的でない商品でも”第3の面”を見せることで、買ってしまう人がいるということを認識しておくといいでしょう。


この記事は以下を参考にしました。
Columbia Business School (2011, July 8). How decision-makers complicate choice. ScienceDaily. Retrieved July 11, 2011, from http://www.sciencedaily.com/releases/2011/07/110708124540.htm

元の論文はこちら(現時点ではまだ未公刊のようです)


(文: SY)
posted by さいころ at 07:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費者行動
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