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物を売る時には、消費者にどういう気持にさせるのがいいのでしょうか?楽しい気持ちでしょうか?リラックスした気持ちでしょうか?
コロンビア大学のMichel Tuan Phamらの研究によると、この答えはリラックスした気持ちのようです。Phamらの研究は、670人以上を対象に6つの実験をしました。この実験は被験者がリラックスした状態とそうでない状態で、商品の価格をいくらに見積もるかというものです。ちなみに楽しい気分でリラックスした状態と、楽しい気分だがリラックスしていない状態というのも比較として行っています。
この6つの実験では、リラックスをすると商品の価格をより高く評価するということがわかりました。この時の商品は、通常の商品だけでなくサービスについても同様ですし、また、商品がどのようなジャンルの商品でもより高く見積もることが分かりました。購入者がリラックスさえしていれば、クルージングのようなリラックスするサービスの価格だけでなく、バンジージャンプのような興奮するサービスの価格、アイスクリーム、デジカメのような製品の価格も高く見積もってしまいます。
この見積もりの高さについて、オンラインオークションでデジカメに入札するという実験では、リラックスした人はそうでない人よりも11%も高い金額で入札をしました。リラックスをしていない人が入札した金額はほぼ市場価格ですが、リラックスをしていると市場価格よりも15%も高い金額で入札してしまいました。
それでは、何故リラックスすると、商品やサービスの価格をより高く見積もる、つまり商品やサービスに価値があるとみなすのでしょうか?Phamらによると、リラックスをしている状態というのは周りが安全で環境に気を配る必要がないため、より商品価値の評価だけに集中できるため、結果として商品の価値をより高く見積もるとしています。
この研究結果は、高級店がリラックスするように設計されていることの説明になります。また、お店では高級店でなくても顧客をリラックスさせるような仕掛けを作っていくことが大事ということも示唆しています。多くのお店ではリラックスさせるという仕掛けがないですし、会計中や商品の包装中にようやくリラックスゾーンに顧客を誘導するといったお店も多いです。高級店などではまず顧客を椅子に座らせてからといった接客を試みるところもありますし、お店側としては様々な仕掛けをする余地があるのではないでしょうか。
また、この研究とは別に、悲しい場合には商品の価格を高く見積もるという研究も有名ですが、お店としては消費者に悲しい気持ちにさせて売るというのは難しいのではないでしょうか。もちろん消費者としては悲しい気持ちの際に物を買わないように注意しましょう。
この記事は以下を参考にしました。
Columbia Business School (2011, July 28). The role of relaxation in consumer behavior. ScienceDaily. Retrieved July 29, 2011, from http://www.sciencedaily.com-/releases/2011/07/110728123126.htm
(文: SY)