(c) OZYU|ストックフォト PIXTA
ノースイースタン大学/マサチューセッツ総合病院/ハーバード医療学校のLisa Feldman Barrettらの研究は、人が顔の表情を読む時には、状況に依存していると述べています。
表情は生得的なもので民族や文化などの影響を受けないなどと言われています。たしかにポール・エクマンの本を読んでいると、そのような印象を強く持ちます。しかし、Barrettらによると、人の表情を読む時にはその顔だけでなく周りの状況などの影響を強く受けているのです。
認知症や一部の病気の人は、他人の表情を読むのが上手くないため、実際の人の表情を読むことができても、漫画のような一枚の絵では前後の状況がないために表情を読むことが難しいそうです。
また、表情を読み取る時にも文化の差があります。西洋人は表情自体から感情を読み取る傾向がありますが、日本人は表情自体に加えて周りの状況からも相手の感情を読み取る傾向がより強いのです。
以前、さいころセミナーで”嘘の心理学”というテーマでやった時に、人の表情から嘘を見抜くことがとても難しいという話をしました。しかし、日常生活では表情から相手の嘘を見抜くことがあります。これは顔の表情からよりも、周りの状況や話の内容を総合して、嘘を読み取ったと考えるべきかもしれません。
このように人が表情を読み取る際には、顔自体だけでなく前後の状況から相手の表情を読み取っているのです。逆にいえば「相手の表情が悲しそうだった」と考える際には、本当に悲しそうな表情をしていたのか、周りの状況からして悲しそうに見えたのかをキチンと把握しないといけないということです。
この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science. "In reading facial emotion, context is everything." ScienceDaily, 3 Oct. 2011. Web. 5 Oct. 2011.
元の論文情報はこちら。
L Barrett, K Lindquist, M Gendron. Language as context for the perception of emotion. Trends in Cognitive Sciences, 2007; 11 (8): 327 DOI: 10.1016/j.tics.2007.06.003
(文: SY)