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私が昔から主張していることで”エルメスのパンツ理論”というのがあります。これは、ユニクロのパンツでなく、エルメスのパンツを履くと自分の自尊心やラグジュアリー感が向上するので、たとえ相手に見えないものでも良い、という理論です。ちなみにエルメスがパンツを売っているかどうかは知りませんが...
最新の研究によると、この”エルメスのパンツ理論”が正しいかどうかは、人の知性や能力は決まっているという見方をするか、鍛えることでどんどん伸ばせるという見方をするかによるようです。なお、この2つの見方を下にまとめます。
改善主義者(incremental theorist) 能力や知性といったものは鍛えることで増やせるという見方をする人。
能力主義者(entity theorist) 能力や知性といったものは固定的なものであるという見方をする人。
ミネソタ大学のJi Kyung ParkとDeborah Johnの研究では、能力主義者と改善主義者が、それぞれセクシーなイメージのあるヴィクトリアズ・シークレットのバッグと、知的なイメージのあるMIT(マサチューセッツ工科大学)のペンを持つことで、それぞれの被験者のセルフイメージがどう変わるかというものです。下に結果のグラフを載せますが、これはそれぞれブランド品を持つか普通の品を持つかで、そのブランドに関わる自己認識がどう変わるかを記載しています。


これを見てわかるように、改善主義者はヴィクトリアズ・シークレットのバッグやMITのペンを持つと、それらのブランドに関わる自己認識が若干下がるのですが、能力主義者は大きく自己認識が増加していることが分かります。
つまり、能力主義者はブランド物を身につけることで、そのブランドに関わる自己認識が改善していくということです。言い換えれば、エルメスのパンツは能力主義者が履くと効果があるということでしょう。
ちなみに、以前”目標設定のポイント”という記事で、改善志向と能力志向によって標達成の満足度が違うということを書きました。この記事は、何かを行った時に、改善主義者は結果によらず満足度が高いというものです。
また、”エルメスのパンツ理論”とは逆に、ブランドの相手に与える影響として以前”名刺としてのブランドロゴ”という記事で、ブランドロゴがついたものを着ると見ず知らずの人でも相手からの好感があがることを書きました。
この記事は以下を参考に書きました。
"Got to Get You into My Life: Do Brand Personalities Rub Off on Consumers?" from Journal of Consumer Research
(文: SY)