2011年12月07日

1人を殺すか、5人を殺すか

ケーブル サーバー      - 写真素材
(c) TK.写真素材 PIXTA


言葉としては昔流行ってたバーチャル・リアリティ(VR 仮想現実)も最近はコンピュータが進歩してきて、見た目もリアルになってきています。また、ヘッドマウントディスプレイ(HMD 頭につけるディスプレイ)が低価格になってきたり、Kinnectのように身体の動きを安価に検出できる機械が出てきたりと今後流行の兆しが見えています。実際に、バーチャルリアリティを使って認知行動療法でのセラピーに役立てたりといった記事を読んだことがあります。

今回はそのバーチャルリアリティを使ってトロッコ問題として知られるものをやってもらうという実験についてです。トロッコ問題には様々な亜種がありますが、基本的には以下のようなものです。
1.ブレーキの効かないトロッコがあり、本線を走っている。
2.本線のレールの先には5人の人がいる
3.支線のレールの先には1人の人がいる
4.このままでは本線の5人を轢いてしまうが、スイッチを引けば支線の1人を轢くだけで済む
5.さあ、どうする?


昨年、流行ったマイケル・サンデル教授の”ハーバード白熱教室”でも、功利主義者の説明として出てきた例です。


ミシガン州立大学のC David Navarreteらによる研究では、147人の被験者が実験室内でヘッドマウントディスプレイを使って実際にこの状況に”入って”どうするかを実験しました。この研究では147人のうち133人、つまり90.5%がスイッチを引いて5人でなく1人を殺すことを選びました。

このトロッコ問題は被験者の母集団の選び方によって結果は変わってくると思いますが、バーチャルリアリティを使って実験を行うというのは面白いアイデアですね。そういえば、ミルグラムの服従実験もバーチャルリアリティで行われたというのが雑誌の記事に載っていました。

今後は、バーチャルリアリティ空間での心理学実験というのも増えていきそうです。

この記事は以下を参考に書きました。
Michigan State University. "Moral dilemma: Would you kill one person to save five?." ScienceDaily, 1 Dec. 2011. Web. 7 Dec. 2011.

論文情報はこちら

(文: SY)

この本、文庫になったんですね。哲学的な教養としても面白いです。
これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
マイケル サンデル
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posted by さいころ at 06:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 発想法・問題解決
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