2012年02月29日

恐るべき説得力の「自由だ」テクニック!

自由だテクニック.jpg


人を説得する技法についてはいろいろな方法が言われています。フットインザドア(足をドアに突っ込む)というのは有名な手法です。これは、最初に相手に小さなお願いをすることで、その後の大きなお願いを聞きやすくするというものです。

面倒なアンケートをする前に、ちょっとした調査にご協力ください、というものです。セールスの電話でも「あなたのうちのインターネット使用のアンケートにご協力ください」と最初にすることがありますよね?ちょっとしたアンケートなので協力しちゃうと、続けてくる「インターネットの変更を考えてみませんか?」という誘いに乗りやすくなってしまいます。これは、一貫性バイアスとしても知られている、人はそれまでやったことと整合性のあることをしたくなる傾向によるものです。


フットインザドアは強力な手法ですが、さらに加えると強力な手法をフランスの南ブルターニュ大学のNicolas Gueguenらが研究しました。これはお願いの最後に「受けても受けなくてもあなたの自由ですよ」と付け加える手法です。名付けて「自由だ」テクニック(論文中ではBut you are free)です。それでは、この「自由だ」テクニックはどのくらい有効だったのか研究を見てみましょう。


フランスのVannesという地域の102人の男性、98人の女性の持ち家の所有者合計200人を対象としたものです。対象者はおよそ20歳から75歳です。

若い女性が、それぞれの家にいって、挨拶の後、「私は家での無駄の調査をしている学生です」と自己紹介します。その後、

1.「1ヶ月ガラス、プラスチック、紙の無駄を調査するので、ゴミとして捨てる時はその量を調査してくれませんか?」と頼みます(お願いグループ)
2.「1ヶ月ガラス、プラスチック、紙の無駄を調査するので、ゴミとして捨てる時はその量を調査してくれませんか?もちろん、これを受けても断ってもどちらでもあなたの自由です」と頼みます(お願い+自由グループ)
3.最初にちょっとした4つの質問をして回答してもらいます。その後で1と同様に「1ヶ月ガラス、プラスチック、紙の無駄を調査するので、ゴミとして捨てる時はその量を調査してくれませんか?」と頼みます(小さなお願い→お願いグループ)
4.最初にちょっとした4つの質問をして回答してもらいます。その後で2と同様に「1ヶ月ガラス、プラスチック、紙の無駄を調査するので、ゴミとして捨てる時はその量を調査してくれませんか?もちろん、これを受けても断ってもどちらでもあなたの自由です」と頼みます(小さなお願い→お願い+自由グループ)

その結果が以下になります。

フットインザドアと自由.001.jpg

縦軸が人数です。完了した人数が青なので、青い部分が多いほどちゃんとやってくれたことになります。赤は最初に拒否した人で、オレンジは最初はやると言ったものの実際には全くやらなかった人です。これを見て分かるように「自由だ」テクニックはフットインザドア並に有効ですし、併用することでさらに強力な説得力を発揮しています。

何もテクニックを使わないと全部やってくれた人は4人だったのに、併用したら21人です...恐ろしいですね...

もっともありそうな、応用例は「えっと、先々のことを考えるとこちらの50インチのテレビの方が40インチのよりも私はオススメです。もちろん、50インチにするかどうかはお客様の自由ですが」といったものですね。営業や販売の方は是非使ってみてください!


そういえば、「自由だ」といえば芸人の犬井ヒロシですが。サバンナの高橋(犬井ヒロシの中の人)って、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグに似てますよね..


ちなみに同じNicolas Gueguenの研究は以下で紹介しました。
ロマンチックな曲はどのくらいロマンチック?
バストのサイズでどのくらい誘われる?


この記事は以下を参考に書きました。
Nicolas Gueguen他, 2010, "The Combined Effect of the Foot-in-the- Door Technique and the ‘‘But You Are Free’’ Technique: An Evaluation on the Selective Sorting of Household Wastes", Ecopsychology Volume: 2 Issue 4: December 29, 2010

(文・絵: やまざきしんじ)
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