2012年03月15日
難しく感じるともっと難しくなる
私は趣味がビリヤードなんですが、ポケットビリヤード(実は穴のないビリヤードもあるんですが、ちゃんと穴のある方)をしていると少し穴の小さめなテーブルだと途端に入らなくなることがあります。ビリヤード用語では、渋い台と言われるものです。
普通のテーブルだと、コーナーポケットの大きさはおそらくボール2.1個分くらいだと思いますが、これが0.1個分くらい小さくなるだけで途端に難易度がアップします。ボールの大きさが1個分あるので、ズレていい許容量がボール1.1個からボール1.0個へと10%減っただけですが、難易度は10%よりも上がっている印象です。
それはなぜでしょうか?
Witt Linkenaugerらの研究は非常にシンプルかつ面白いものです。Linkenaugerらの実験はゴルフのパターでの実験です。この実験では、それぞれ10回パターでショットをしますが、一方の条件では、上の絵のようにゴルフのカップ(穴)の周りにプロジェクタで5個の大きい円を映し、もう一方ではプロジェクタで11個の小さい円を映します。
上の図を見て分かるように、5個の大きな円を映すとカップは小さく見えて、11個の小さな円を周りに映すとカップは大きく見えます。このようにカップが小さく見える場合と、大きく見える場合でショットの成功率がどう変わるかを実験しました。
その結果、ショットの成功率は11個の小さな円を周りに映した大きく見えるカップの方が10%も成功率が高かったのです。この実験はカップの大きさは変わらなくても、プレイヤーが難易度をどのように感じているかで実際の成功率が大きく変わることを示しています。
つまり、ビリヤードでは渋い台でプレイをすると、実際に難しいだけでなく、難しいと感じることがさらに難易度を上げていると考えられるのです。
これは同様のことが、ビリヤードやゴルフだけでなく、様々なスポーツで起こっていると考えられます。難しいものは実際に難しいだけでなくプレイヤーの知覚がさらに難しくして、簡単なものは実際に簡単なだけでなくプレイヤーの知覚がさらに簡単にしているようですね。
この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science. "Get me out of this slump: Visual illusions improve sports performance." ScienceDaily, 13 Mar. 2012. Web. 15 Mar. 2012.
論文情報は以下になります。
Witt, J. K., Linkenauger, S. A., & Proffitt, D. R. Get me out of this slump! Visual illusions influence sports performance. Psychological Science, 2012 (in press)
(文・図: やまざきしんじ)
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