でも女性向けのものだからといって、なんでもかんでもイメージカラーをピンクにするのは逆効果かもしれないということを示唆する研究が最近発表されました。
エラスムス大学のStefano Puntoniの行った研究では、ピンク色を見ると女性は自分が乳がんになる可能性を過小評価し、卵巣がん研究への寄付をしないと判断するという非常に意外な結果が示されました。
Stefano Puntoniは、実験協力者の女性にまずピンク色の広告を見てもらうかジェンダーに関するエッセイを書いてもらい、ジェンダー(すなわち女性性)を意識するようにしました。その後、その女性たちに自分が乳がんになる可能性や卵巣がんの研究に寄付をするかどうかを評価してもらいました。
その結果、ジェンダーと無関係のニュートラルなエッセイを書いたグループが77%寄付すると回答したのに対し、ジェンダーに関するエッセイを書いたグループは42%しか寄付する意向を示しませんでした。つまり、女性性を最初に意識した女性協力者は、自分が乳がんになる可能性を低く見積もり、また卵巣がんの研究に寄付しないという傾向が示されたのです。

ピンク色を見たり、ジェンダーに関するエッセイを書くことで、自らの女性性を意識した場合、女性性を脅かすというイメージのある情報に対して「否認」の防衛機制が働くのではないか、と研究者たちは仮定しています。(恐怖喚起アピールがあまりにも強いと逆に説得に抵抗するということも関係しているのかもしれませんね)
同研究者たちの別の研究では、乳がんのバナーの提示があるウェブサイトを、実験協力者の女性に見てもらい、その後先ほどみたウェブサイトに乳がんのバナーがあったかどうかを思い出してもらいます。その結果、そのウェブサイトがジェンダーとは無関係な一般向けサイトである場合、65%がバナーの存在を思い出しましたが、ウェブサイトが女性向けのものだった場合、思い出したのはわずか33%でした。バナー広告を乳がんのバナーから、マスカラのバナーにした条件では、こういったサイトの違いによる記憶の差は見られませんでした。

この結果は、研究者本人たちも当初の仮説をひっくりかえす驚くべき結果であったため、「実験手法を間違えたのではないか?」と何度も追試実験を行ったそうですが、その度に同じ結果が示されたとのこと。
ピンク色=女性というイメージは、最近になって定着したものだそうです(昔のヨーロッパではピンクは男性の色でした)。色によっては、カラーイメージにも文化的違いがありそうですが、この結果は日本でも当てはまるのではないでしょうか?
乳がんや卵巣がんなど、女性特有の病気や女性性を脅かすというイメージと関連があるキャンペーンには、もしかすると女性性を意識させない色をイメージカラーにした方がいいのかもしれません。
Defend Your Research: The Color Pink Is Bad for Fighting Breast Cancer
(文・山崎有紀子)