2012年03月29日
魔法のタッチで売上アップ
触ったもの全てを金に変えるギリシア神話のミダス王は触るもの全てを金に変える力(ミダス・タッチ)があったそうです。現代においては、ミダス・タッチといえば、AppleII、マッキントッシュ、ピクサー、iPod、iPhone、iPadに関わったスティーブ・ジョブズを思い出す人もいるかもしれません。え?NeXT?いや、いいマシンでしたと思いますよ。
さて、現代のミダス・タッチは実はそれほど難しいものでなく、誰にでもできるものです。さいころニュースではお馴染みのフランスの南ブルターニュ大学のNicolas Gueguenらの研究は男性141人、女性115人の合計256人の客を対象としたものです。実験はレストランの男性一人、女性二人の店員が訓練を受けて行いました。
客となる被験者がテーブルに座ると、店員が「レストランのメニューを持って参ります。お食事の前に食前酒はいかがですか?」と勧めます。1〜3分後に店員が戻ってきて、メニューを「こちらがメニューになります」と手渡します。ここで、客ごとに以下の3つのいずれかの対応をします。
1.相手に触らずにメニューを渡します。そしてオススメはしません。
2.相手に触らずにメニューを渡します。それから、「今日は、シェフのスペシャリテの la choucroute de poissons(魚とキャベツ煮込み)がオススメです」と言います。
3.メニューを渡す時にほんの少し(1秒程度)相手の手に触ります。それから、「今日は、シェフのスペシャリテの la choucroute de poissons(魚とキャベツ煮込み)がオススメです」と言います。
それから、客が注文を決めるまで店員は向こうに行き、後で注文を取ります。
この結果、被験者である客が”la choucroute de poissons”をオーダーした割合は以下のようになりました。
わずか1秒のタッチがかなり有効であることが分かるでしょう。ほんのちょっと触るだけで客をコントロールできているのです。相手に触ることが有効というのはずっと言われいましたが、ここまで強力とは!
お店なら、会員証のやりとりで相手に少し触れてから、「こちらもオススメですよ」と一言添えるといった応用もありそうです。考えればいろいろとありそうですよね。
Nicolas Gueguenら, 2007, "The effect of touch on compliance with a restaurant’s employee suggestion", Hospitality Management 26 (2007) 1019–1023
(文・絵: やまざきしんじ)
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