
ニューヨーク大学のHeather KappesとGabriele Oettingenの研究は、ポジティブな幻想を持ってる人は、いいことと悪いことのどちらに注目するかというものです。この研究から1つの実験を紹介します。
アメリカでの77人の女子大生を対象とした実験です。この実験は17歳から23歳を対象としたハイヒールについての調査です。調査は全てコンピュータ上で行います。最初に被験者は、ハイヒール、スキニージーンズ、幅広ベルト、アンダーワイヤーブラ、リュックサックを、翌年にどのくらいの頻度で使うつもりかを尋ねられます。
次の3分間で画面に「美しいハイヒールを想像してください。それをあなたがはくとどんなにすてきでしょう。想像してください」といった文章が表示されます。
その後で、半分の人には「これらのハイヒールは素敵です。どれほどいいか、どれほどクールか。想像してください」といった内容が表示されます。もう半分の人には「しかし、すべてのハイヒールがそこまでは素晴らしくないかもしれません。あなたが考えているほど本当にクールでしょうか?あなたは本当にすばらしいでしょうか?」といった疑問が表示されます。
つまり、事前に被験者は、ポジティブな幻想をする(幻想群)か、疑問を持つ(疑問群)かの2つのグループに分けられるのです。
そのあとに、被験者はハイヒールに関しての長所と短所が書かれたウェブの文章を読みますが、この時に長所と短所を読んだ時間をそれぞれ計測します。
この長所を読んだ時間と短所を読んだ時間の差が下になります。

これを見て分かるように、幻想を持っている人は使用する気があまりない場合は長所に注目し、実際に毎日使うようなつもりがある場合は短所により注目します。一方、疑問を持っている人は使用する気があまりなければ短所に注目しますが、毎日使うつもりの場合は長所により注目します。
時計好きが、実際に買うつもりがない高級腕時計は雑誌でいい情報ばかり読んで、自分が実際に買いそうなデジタル時計については性能面についていい面と悪い面をウェブなどで慎重に比較するというのと似ているでしょうか?
人がいい情報と悪い情報のどちらを好むかというのは、幻想群と疑問群に対応するそのものへの態度と、実際にどのくらいそれと接するつもりかの2つによって変わってくるということですね。
この記事は以下の論文を参考にしました。
Heather Kappesら, 2012, "Wishful Information Preference: Positive Fantasies Mimic the Effects of Intentions", Personality and Social Psychology Bulletin, 2012; DOI: 10.1177/0146167212446163
(文・絵: やまざきしんじ)