2012年06月13日
株式投資で、いいこと、悪いことどっちを見る?
先日書いた「いいこと?悪いこと?どっちを見る?」という記事では、ハイヒールなどのファッションアイテムについて、良い幻想を持ってる人と、疑問を持ってる人がそれぞれ長所と短所について読む時間の差を説明しました。
同じニューヨーク大学のHeather KappesとGabriele Oettingenの研究から、今度は株式投資を使った実験を紹介します。
この実験は、オンラインでの株取引ゲームを使ったものです。被験者は18歳から66歳、平均29歳で、145人の男性、62人の女性の合計207人をウェブサイトで集めました。被験者の20%がアメリカ人で、80%はアメリカ国外に住んでいます。
最初に被験者は今後、株式投資を行うつもりがあるかどうかを尋ねられます。その後で、株式投資のいい面を考える幻想群と、株式投資の悪い面を考える疑問群の2つのグループに分けられます。
幻想群の被験者は「あなたが株式投資で大成功することを想像してください。お金を手に入れれば、旅行にいったり、ショッピングしたり、生活が充実します。あなたの株式投資が成功して、どれほど素晴らしいか考えてください」といった株式投資に幻想を持つような文章を読みます。
一方、疑問群の被験者は「株式投資でどこまで成功するでしょうか?たくさんのお金を稼ぐかもしれませんし、そうでないかもしれません。もしたくさんお金を手に入れることができるならば、旅行にいって、ショッピングしたり、生活が充実するでしょう。もしあなたの決定が成功したなら、どれほど素晴らしいか考えてください」といった株式投資の良い面とそれに対する疑問が含まれた文章を読みます。
この後で、被験者は、株式投資に関する6つの資料を読みます。ここで株式投資に対する長所と短所の資料それぞれを読む時間を測りました。
幻想群、疑問群のそれぞれが株式投資の良い面について読んだ時間と、悪い面について読んだ時間の差を以下のグラフに示します。グラフの上にいくほど良い面について読んだことを示します。
このグラフを見て分かるように、株式取引に幻想を持ってる人(いいと思ってる人)は、やはり良い面を読む時間が多いことがわかります。また、実際に株式投資をするつもりがあると、全体的に良い面を読む時間が増えています。
「いいこと?悪いこと?どっちを見る?」では、毎日ハイヒールを履くつもりの人は幻想群が悪い面を多く読み、疑問群は良い面を多く読むという逆転現象がありましたが、この株式投資の実験では逆転現象が見られませんでした。これはハイヒールを毎日履く、というのと株式投資では、そのリアリティに差があるからかもしれません。もしかすると、デイトレーダーになろうという位の意気込みの人の場合は逆転現象(悪い面を良い面よりもより読む)ということが起こるかもしれません。
最初に株式投資に幻想を持っていると、良い面をより読むという傾向は気をつけないといけないということです。
この記事は以下の論文を参考にしました。
Heather Kappesら, 2012, "Wishful Information Preference: Positive Fantasies Mimic the Effects of Intentions", Personality and Social Psychology Bulletin, 2012; DOI: 10.1177/0146167212446163
(文・絵: やまざきしんじ)
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