2012年09月24日

偽情報と戦うには?

月面着陸.jpg

アポロの月面着陸を信じている人はどのくらいいるでしょうか??
それではロズウェルの宇宙人が隠蔽されていることは?



世の中には正しい情報だけでなく、様々な間違った情報があります。そして”専門家と称する人”が、インターネットだけでなく一見信頼性の高そうな本やテレビといったメディアでも間違った情報を流しています。それでは間違った情報に対抗するにはどうすればいいのでしょうか?今回は、西オーストラリア大学のStephan Lewandowskyらの研究からその対策を少し見てみましょう。

まず、間違った情報を打ち消すことはできるものの、最初に間違った情報を信じた人を修正するのは大変です。特に大変なのは、自分の宗教観、政治観、世界観にあった情報を打ち消すことです。たしかに、アメリカ政府は陰謀を企んでいると信じている人から「アポロの月面着陸は嘘」だという情報を打ち消すのは難しいでしょう。


それでは、このような間違った情報を信じている人を説得する場合は、どんなことに注意すればいいでしょうか?研究からポイントをまとめてみます。

相手がその事柄をどのように捉えているかを考えてみて下さい。そして、今、相手が信じていることでは説明がつかない説明の隙間がどこかにないかを考えましょう。「人間の脳の90%は使われていない」という話を信じている人に対しては、「どうしてそうなっているの?じゃあ、100%を使っている人間でなくて、10%しか使わない人間が生き残ったのは何故?残り90%を使わない人間よりも、使う人間の方が多くなりそう」という論点が説明の隙間になりそうです。

・間違った情報を打ち消そうとすることで、結果的に間違った情報が広まるということがあります。「アポロの月面着陸は嘘、というのが間違い」と言い続けることで、記憶違いや、わざわざ打ち消すなんてアヤシイ等の理由で逆に「アポロの月面着陸は嘘」という話も広まってしまいます。そこで、「〜でなくて、〜です」と言うのでなく「〜です」といった形で情報を打ち消しましょう。

・この記事の冒頭のような書き始めはよくありません。「こんなことを信じてしまっている人はいないでしょうか。アポロの月面着陸が嘘であると信じている人」のように、間違った情報の前にはきちんと警告をした方がいいです。

シンプルで分かりやすい説明は強いです。私の母親は「自動車関係の大企業の株は持っていれば絶対安心」と信じています。「そんなことない、なるべくいろいろな業界の様々な企業の株を組み合わせてもっている方がリスクが低く平均リターンが高い」と何度言ったところでその理由の説明がわかりづらいので、決して考えを変えようとしません。「右脳は芸術的な能力、左脳は理論的な能力を司る」といった説明が幅をきかせているのも、簡単で分かりやすいからです。

・宗教心が強く「世界は6000年前に神様が作った」と信じている人に、「宇宙は137億年前のビッグバンで起こった」と説得するのは難しそうです。これは背景に強い信念があるからです。ビッグバンの説明や宇宙背景放射の話をしたところで、逆に神様が作ったという信念を強くする可能性が高いでしょう。その人の強い信念に合致している話を、合致していない話で置き換えるのは特に難しいです。


考えれば考えるほど相手が一度信じてしまった情報を打ち消すのは難しそうですね><)

以前に、”一貫性の魔力”では人はそれまで行ったことを続けようとするということを書きました。この一貫性により、それまでの信念を持ち続けます。「えー、ぼく、間違ってたかなー、考え変えるわ」というよりも、「そんなこと言っても、アインシュタインも脳の10%しか使ってないって言ってたよ」とか「脳の10%で人間は生き残るだけの思考力があるし、そこから人間は進化して90%が余力としてある」ととか言ってきそうです。


少しずれるかもしれませんが、”第一印象はとてもとても長い手を持っている!"という記事は、人間にとっては第一印象が強力で、それ以降の情報は第一印象をもとに判断されるというものがあります。これなども、新しい情報によって以前の情報が書き換えられないということを示していますね。


あ、この件については忘却からの帰還さんの”否定論者と戦うときに Again”という記事も参考になります。

この記事は以下の論文を参考に書きました。
S. Lewandowskyら, 2012, "Misinformation and Its Correction: Continued Influence and Successful Debiasing.", Psychological Science in the Public Interest, 2012; 13 (3): 106 DOI: 10.1177/1529100612451018

(文・絵: やまざきしんじ)
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