日常生活において、私たちは様々な交渉状況に直面しています。
例えば、ビジネスにおいて自社の商品の商談をしているとき、あるいは、同僚に仕事を手伝ってほしいとき、あるいは、休日どこに出かけるか家族の間で一致しないとき…そんなときも交渉スキルが必要になるでしょう。
『Negotiation:Theory and Strategy』の著者でもあるカリフォルニア大学教授のRussell Korobkinは「交渉における原理はその規模に関係ない」と言います。
では、交渉上手になるための原理とは何でしょうか?
Scientific American:Mindの7月号に掲載された記事をベースに、研究で効果があると実証的に証明されている交渉の原理を3つご紹介します。
1.フェアであれ
Korobkinによると、交渉上手な人は、常に自分の提案が誰にとってもフェアであることを示すそうです。
フェアであるということは、それぞれの状況に見合う扱いを適正に受けていることを意味します。
例えば、商品価格100円のパンをある人には120円で売り、ある人には80円で売るという状況はフェアでありません。
しかし、賞味期限まで2週間のパンと今日が賞味期限のパンを同じ100円で売るのは、これまたフェアではないでしょう。この場合は、賞味期限ギリギリのパンを買う人には、値引きをして80円で売るのがフェアであるようです。
どのような対応がフェアであるかは突き詰めて考えるとなかなか難しい問題ではありますが、要は相手に「自分はただ利用されているだけだ」「えこひいきしている!」と思わせるような対応をしないことが交渉において重要であるということですね。
2.自信満々のポーズをとる(事前に、こっそりと)
ハーバードビジネススクールの社会心理学者エイミー・カディは、姿勢やポーズがメンタル面に及ぼす影響力を研究しています。
彼女が行った興味深い実験では、圧迫面接を受ける前に、控え室で両手を腰に当てた自信満々のポーズを取ったグループと、体を丸めて自信のないポーズを取ったグループでは、その後の面接で、前者(自信満々のポーズ)の方が面接場面で説得力あると面接官から評価されることを明らかにしました(もちろん面接状況では両グループとも普通の姿勢をしています)。自信満々のポーズはやる気や自信のホルモンであるテストステロンの分泌を高め、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減少させる効果があります。
ですので、大切な面接や交渉の前には、トイレの中などで数分間自信満々のポーズをしてから、面接や交渉に望むと普段よりもさらに自信に満ちた交渉ができるはずです。
なお、上記エイミー・カディの研究に関してはTEDで見ることができます。非常に感動的で素晴らしいスピーチですので、ぜひ見てください(ちなみに美人です)。
3.目標は高く
話をどこからスタートさせるかは、話がどこに着地するかに大きく影響します。
上司との給料交渉の状況において、同じ能力で同じ給料をもらっている人でも、給料の5%アップを交渉する人と、給料の20%アップを交渉する人では、最終的に決定する給料はきっと後者の給料20%アップを求めた人の方が高くなるでしょう。
これは1970年代に心理学者のトバースキーとカーネマンによって明らかにされたアンカリング効果によるものです。
アンカリング効果とは、最初に示された数値や情報が基準点(アンカー)となり、その後の判断に影響を及ぼす傾向のことを指します。
先ほどの給料アップの例に戻ると、5%の給料アップを交渉した場合、せいぜいよくて給料5%アップで交渉終結しそうですが、20%アップを望んだ場合、20%は無理でもそこが起点となって給料を決定しようとする心理的メカニズムが働き、「んー、じゃあ20%は無理だけど10%アップとするか」という結論になる可能性があります。
ですので、交渉状況では「とりあえず大きい目標を言っておく」がいいようです。
ただし、その場合も、非現実的なまでに高い目標では効果がなく、「現実的かつ高い」目標を設定することが重要ですので、この点をお忘れなく…。
(文章:山崎 有紀子)
2014年04月28日
2014年02月18日
ストーリーテリングが共感を呼ぶ

ストーリーについて、2つの神経的なメカニクスを説明しましょう。
ストーリーテリング(物語の技術)は、私達の脳と行動にすごい影響を与えます。
Paul Zakは一連の研究で、父子の悲しいストーリーを観た時に、2つの興味深い神経化学物質が生成されることが分かりました。
1.悲しみを感じ、ストーリーに注意を向けさせるコルチゾール
2.つながりや共感を促進し、共感を起こさせるオキシトシン
また、ストーリーを観た後で、もっともオキシトシンが生成された人は、会えない人に金を一番あげようとしました。
Zakら、2007によると、オキシトシンは人を、より寛大にするようです。
このビデオは、研究を説明し、そして、150年に渡るストーリーテリングの理論と研究をつなげています。
クライマックスや大団円といった鍵となる要素がないストーリーは、脳を引きつけません。実際、人はそれを無視します。
オキシトシンは、単により寛大にするだけでなく、それほど気高くない目的に関係しています。
Zakによると、オキシトシンは、広告を受け入れるかどうかを説明することもできます。
ある研究では、微量のオキシトシンを吸引した被験者は、公共広告を見た後で、より寄付をすることが分かりました。
Zakは、こう語っています。
この結果は、どうして子犬と赤ちゃんがトイレットペーパーのコマーシャルに出てくるのかを説明します。この研究は、広告する側が、イメージを使って私達の脳にオキシトシンを放出させ、商品やブランドを信頼させ、販売を増やそうとしているのです。
この記事はPSYBlogの"The Psychology of Storytelling and Empathy, Animated"を翻訳したものです。
(翻訳: やまざきしんじ)
2013年09月24日
何故、わずかな報酬のために、人はズルをするのか?

得るものが少なくても、ちょっとしたズルはルールに従うよりも幸せと自尊心につながります。
短期的には、ズルする人はたとえ報酬が少なくても、気分がいいからズルをするのです。
ワシントン大学のNicole E. Ruedyらによる様々な研究の結果によると、私たちはズルをすることで罪悪感のようなネガティブな感情が引き起こされると思っていますが、どうやら違うようです。
Ruedyら2013年の研究では、問題解決のタスクの間、ズルをする人は「チーターズ・ハイ」(ズルによる、ハイ)を経験していました。彼らはズルしない人よりも、より満足し幸せを感じていたのです。
この研究は、騙さないことがどれほど重要なのかを思い起こさせます。困ったことに、これらの人は良い気分にさえなるのです。
おかしなことにこの研究ではほとんどの人が、他人はズルをすると気分が悪くなると考えていました。つまり、ズルをするとどういう気分になるかという予測が完全に間違っているということです。
ちょっとした稼ぎ
この研究で、ズルがあまり悪い気分にならないのは、他の誰も傷つけないズルだったのが理由の一つです。被験者は、単に数学や論理パズルの答えを誤魔化すだけでした。
Nicole Ruedyは、こう説明しています。
これまでの研究によると、例えば電気ショックを与えたりして人は誰か他人を傷つけた時、その行為によって嫌な気分になります。我々の研究では、直接誰も傷つけることがないが、道徳的でない行動の後に起こる「チーターズ・ハイ」を明らかにしました。
例えば万引きのようなズルをなぜ人はするのかと悩むなら、この研究はその説明の助けになります。
たとえ得られるものが小さくても、ズルをした時にいい気分になるのが、人が道徳的でない行動をする理由です。
この記事はPSYBlogの"Why Do Cheaters Cheat When The Stakes Are Low?"を翻訳したものです。
写真はFlickrのMr_Steinさんの写真を使用しています。
(翻訳: やまざきしんじ)
2013年09月10日
嘘の返信は時間がかかる

デジタルコミュニケーションは大事ですし、重要度を増しています。
一方、実際に会うよりもメールやチャットなどのデジタルメディアの方が嘘をつきやすいという研究が有ります。会話よりもチャットのほうが嘘をつきやすいという研究がありますし、手紙よりもメールの方が嘘をつきやすいという研究があります。
ブリガムヤング大学のTom Meservyらは100人以上の大学生を対象として実験をしました。大学生には事前に半分は嘘の回答をしてもらうように頼んで、コンピュータを使ってやりとりをしました。すると、嘘の回答をする時には返信までに10%ほど長い時間がかかったのです。より返信に時間をかけるということは、文章を編集などをすることが出来るので、より嘘を本当らしく推敲することができます。
嘘をつくのは認知的な負荷がかかるので、普段より時間がかかる可能性があります。でも、実際に回答に10%も余分に時間がかかるというのは面白い結果ですね。実際の会話でなくオンラインなので、よりしっかりと嘘を考えているのかもしれません。
ただし、実際に知人とのメールやメッセージのやりとりで時間がかかってしまうのは、様々な理由が考えられます。また、時間がかかるというだけでは嘘かどうかよく分かりませんし、実際にこの知識を使えるかというとかなり難しいと思います。
この記事はブリガムヤング大学の"Digital deception: People who lie while texting take longer to respond"を参考に書きました。
(文: やまざきしんじ)
2013年08月28日
フェイスブック?それともツイッター?年齢と自己愛はソーシャルメディアの選択に影響する
フェイスブックは鏡、ツイッターはメガホン

この写真はHelga Weberさんの写真を使用しております。
フェイスブックとツイッターについての研究は、自己愛とソーシャルメディアの使い方の関連を明らかにした(Panek et al., 2013)。
ミシガン大学で行われたこの研究によると、フェイスブックの使い方は鏡のようなものであり、その人のパーソナリティを反映している。一方、ツイッターはメガホンのような役割だ。つまり自分の意見を広く伝えるために使われているのだ。
この結論に至るために、Panekと共同研究者たちは2つの研究を行った。第1研究では、大学生にソーシャルメディアの利用の仕方をたずね、その後パーソナリティ検査を行った。この若者集団においては、ナルシストは自分の意見を人に伝えるためにツイッターを使う方を好んだ。
この研究の主任研究員であるElliot Panekはこの結果を以下のように説明する。
「若者たちは、自分の意見の重要性を過大評価している。ツイッターを通して、自分の仲間関係を広げ、そして様々なテーマに関する自分の意見を伝えようとしているのだ。」
第2研究では、平均年齢35歳の対象者に対して、ソーシャルメディア利用について質問した。この調査の結果、大学生よりもわずかに年上のナルシストはフェイスブックを好むことが示された。
Panekは、この年齢集団に関する結果を以下のように説明する。
「彼らの使い方は、自分の自己イメージを喧伝し、その自己イメージに人がどんな反応をするかチェックするというものだ。中年の場合はすでに自分の社会的自己を形成しているので、すでに自分の仲間である人たちからの承認を得るためにソーシャルメディアを使っていると言えるだろう。」
この記事はPSYBLOGの"Facebook or Twitter? How Age and Narcissism Motivates The Choice"を翻訳したものです。
(翻訳:山崎有紀子)

この写真はHelga Weberさんの写真を使用しております。
フェイスブックとツイッターについての研究は、自己愛とソーシャルメディアの使い方の関連を明らかにした(Panek et al., 2013)。
ミシガン大学で行われたこの研究によると、フェイスブックの使い方は鏡のようなものであり、その人のパーソナリティを反映している。一方、ツイッターはメガホンのような役割だ。つまり自分の意見を広く伝えるために使われているのだ。
この結論に至るために、Panekと共同研究者たちは2つの研究を行った。第1研究では、大学生にソーシャルメディアの利用の仕方をたずね、その後パーソナリティ検査を行った。この若者集団においては、ナルシストは自分の意見を人に伝えるためにツイッターを使う方を好んだ。
この研究の主任研究員であるElliot Panekはこの結果を以下のように説明する。
「若者たちは、自分の意見の重要性を過大評価している。ツイッターを通して、自分の仲間関係を広げ、そして様々なテーマに関する自分の意見を伝えようとしているのだ。」
第2研究では、平均年齢35歳の対象者に対して、ソーシャルメディア利用について質問した。この調査の結果、大学生よりもわずかに年上のナルシストはフェイスブックを好むことが示された。
Panekは、この年齢集団に関する結果を以下のように説明する。
「彼らの使い方は、自分の自己イメージを喧伝し、その自己イメージに人がどんな反応をするかチェックするというものだ。中年の場合はすでに自分の社会的自己を形成しているので、すでに自分の仲間である人たちからの承認を得るためにソーシャルメディアを使っていると言えるだろう。」
この記事はPSYBLOGの"Facebook or Twitter? How Age and Narcissism Motivates The Choice"を翻訳したものです。
(翻訳:山崎有紀子)
2013年08月27日
ルールを壊す10代は、より起業家として成功する

成功した起業家の脳や10代の頃のリスキーな行動を研究しました。
新しい研究によると、成功した起業家は、万引き、中退やドラッグ取引などの適切で無い行動を普通の人よりも3倍多くしていたと分かりました。
LevineとRubinstein,2013の研究では、このことをアメリカでの若者12,686人を対象とした30年以上にわたり追いかけた調査から調べました。
彼らは、特に自分の事業を持っている成功した起業家について、どのような認知的なタイプや他の要因が関係があるのを調べました。
自然なことに、成功した起業家は、頭がよく、自尊心が高く、高学歴でした。しかし、加えて、起業家はリスクに惹かれる必要があるのです。
最高の起業家は、しばしば10代の頃にルールを破っていた経歴がありました。マリファナを吸ったり、学校をサボったり、暴行ですら、より行う傾向がありました。
しかし、このような悪い面は、とても安定した家庭環境と関係があるのです。成功した起業家は、以下のような家庭とは不釣り合いにリスクを好むようです。
・高収入
・高学歴
・安定してる
そう、不遇な若者というわけではないのです。
女性についてでなく、男性は平均的には、より攻撃的で、より高いリスクを取り、そしてより起業家になります。女性が自分の事業を作り上げられるのはたった28%だけです。
より多くのリスクは、より多くの成果を意味する?
しかし、より多くのリスクは割に合うのでしょうか?
この研究によると、金銭的な意味においては、リスクは割に合うかもしれません。成功した起業家は、平均27%長く労働しているにも関わらず、サラリーマンに比べて時給が41%高いことが分かりました。
しかしながら、この研究は起業家の家庭生活や健康の面については何も述べていません。たぶん、経済的な面ほどはよくないでしょう。
また、リスクを取ることと自尊心が高い傾向は、判断においては容易に失敗する危険な組み合わせです。起業家には、自分がやり過ぎないように手綱を持ってくれるリスク回避傾向の人を必要とするのです。
この記事はPSYBLOGの"Rule-Breaking Teens Make More Successful Entrepreneurs"を翻訳したものです。
写真はFlickrのCristee Dicksonさんのものを使用しました。
(翻訳: やまざきしんじ)
2013年08月15日
ダメな上司にありがちな4つの特徴
上司の50%には能力がないのに、彼らはどうやってあなたの上司になったのだろうか?
調査によると、65%から75%の人が自分の上司を仕事をする上でのマイナスポイントだと評価している。
これは単なる根拠のない嘆きなのか、それとも正しい意見なのか?
実際、多くの場合は正しい。というのも上司に関する調査では、上司のほぼ50%にその能力がないことを示しているからだ(DeVries, 1993)。
上司が職務を果たせない理由は非常に単純だ。Leslie and Van Velsor (1996)は様々な組織や雇用者に対して調査を行い、ダメな上司の問題を以下の4つに要約した。(Hogan & Kaiser, 2005の研究で記載)
1.対人スキルが低い。
ダメな上司は、怒りっぽい皇帝のように上からあなたを見下している。彼らは鈍感で冷たくて、チャリティーで寄付をするかのような優しさしか示さない。
2.仕事ができない。
彼らは過度に野心的な目標を何度も作っては、目標を達成することに何度も失敗する。彼らは自分の目標をやりとおさないし、部下の信頼を裏切る傾向がある。
3.チームを構築できない。
これはおそらく上司としてもっとも重要なスキルだろう。チームビルディングでは、信頼を構築し、役割と目標を設定し、円滑なコミュニケーションを促進し、リーダーシップを提供することが必要だ。ダメな上司は完全にこのどれもできない。
4.昇進に値しない。
彼らがどうやって昇進できたのか誰も知るよしがないが、その新たな地位が彼らの能力を超えていることは明らかだ。彼がその地位に落ち着くと同時に、あらゆることが崩壊しはじめる。
もし、上司の50%がそれほどひどいのならば、そもそもどうやって彼らはその地位を得たのだろうか。
その答えは、ダメな上司はまず抜擢されるために有利な長所を持っていて、その一方で、その長所を上回る短所を持っている、というものだ。
Hogan and Hogan (1994)は、これについて何十年も研究をし、多くのダメな上司はパーソナリティ障害だと明らかにした。
パーソナリティ障害を見分けるのは難しい
多くのダメな上司はナルシストである。そして悲しいことに、人は最初はナルシストを好ましい人だと思うのだ。彼らは回りにいると楽しい人のように思える。
しかし、やがてはナルシストは自分の間違いから学ぶことができず、肩書きと馴れ合っているだけだということに私たちは気づくことになる。
時に魅力的に思えることが、時間の経過とともにそれは傲慢というものだったと明らかになる。不幸にもこれが通常明らかになる時にはすでに手遅れなのだ。
選択プロセスの失敗
管理職は面接によって外部から募集されることがよくある。
ナルシストとサイコパスは面接が得意だ。これらの状況でよい印象を与えることに彼らは長けている。
面接の代わりに、その人をよく知っている人(つまり部下)から上司としての能力に関する情報を収集するとともにより形式的な採用ツールが使用されるべきだ。
そしてそうなったとき、部下のあなたは上司の能力に太鼓判を押すことができるだろうか?
この記事はPSYBLOGの"4 Qualities of Truly Horrible Managers"を翻訳したものです。
(翻訳:山崎有紀子)
調査によると、65%から75%の人が自分の上司を仕事をする上でのマイナスポイントだと評価している。
これは単なる根拠のない嘆きなのか、それとも正しい意見なのか?
実際、多くの場合は正しい。というのも上司に関する調査では、上司のほぼ50%にその能力がないことを示しているからだ(DeVries, 1993)。
上司が職務を果たせない理由は非常に単純だ。Leslie and Van Velsor (1996)は様々な組織や雇用者に対して調査を行い、ダメな上司の問題を以下の4つに要約した。(Hogan & Kaiser, 2005の研究で記載)
1.対人スキルが低い。
ダメな上司は、怒りっぽい皇帝のように上からあなたを見下している。彼らは鈍感で冷たくて、チャリティーで寄付をするかのような優しさしか示さない。
2.仕事ができない。
彼らは過度に野心的な目標を何度も作っては、目標を達成することに何度も失敗する。彼らは自分の目標をやりとおさないし、部下の信頼を裏切る傾向がある。
3.チームを構築できない。
これはおそらく上司としてもっとも重要なスキルだろう。チームビルディングでは、信頼を構築し、役割と目標を設定し、円滑なコミュニケーションを促進し、リーダーシップを提供することが必要だ。ダメな上司は完全にこのどれもできない。
4.昇進に値しない。
彼らがどうやって昇進できたのか誰も知るよしがないが、その新たな地位が彼らの能力を超えていることは明らかだ。彼がその地位に落ち着くと同時に、あらゆることが崩壊しはじめる。
もし、上司の50%がそれほどひどいのならば、そもそもどうやって彼らはその地位を得たのだろうか。
その答えは、ダメな上司はまず抜擢されるために有利な長所を持っていて、その一方で、その長所を上回る短所を持っている、というものだ。
Hogan and Hogan (1994)は、これについて何十年も研究をし、多くのダメな上司はパーソナリティ障害だと明らかにした。
パーソナリティ障害を見分けるのは難しい
多くのダメな上司はナルシストである。そして悲しいことに、人は最初はナルシストを好ましい人だと思うのだ。彼らは回りにいると楽しい人のように思える。
しかし、やがてはナルシストは自分の間違いから学ぶことができず、肩書きと馴れ合っているだけだということに私たちは気づくことになる。
時に魅力的に思えることが、時間の経過とともにそれは傲慢というものだったと明らかになる。不幸にもこれが通常明らかになる時にはすでに手遅れなのだ。
選択プロセスの失敗
管理職は面接によって外部から募集されることがよくある。
ナルシストとサイコパスは面接が得意だ。これらの状況でよい印象を与えることに彼らは長けている。
面接の代わりに、その人をよく知っている人(つまり部下)から上司としての能力に関する情報を収集するとともにより形式的な採用ツールが使用されるべきだ。
そしてそうなったとき、部下のあなたは上司の能力に太鼓判を押すことができるだろうか?
この記事はPSYBLOGの"4 Qualities of Truly Horrible Managers"を翻訳したものです。
(翻訳:山崎有紀子)
2013年08月01日
一流選手は、”あがる”

今回紹介するのはノルウェイスポーツサイエンス学校のGeir Jordetのプレッシャーに関してPKから調べたという研究です。これは1976年から2007年のワールドカップ、ヨーロッパ選手権、UEFAチャンピオンズリーグの37大会の366回のPK(ペナルティ・キック)を対象としたものです。
FIFAプレイヤーオブザイヤー、ワールドカップ得点王、バロンドールのそれぞれ3位までの選手とUEFAの選んだポジションごとの年間最優秀選手、南アメリカ年間最高選手のいずれを取った選手を、実績のある選手と考えます。
例えば昨年のバロンドールの3位までの選手はメッシ、クリスティアーノ・ロナウド、イニエスタの3人で、2010年のワールドカップではミュラー、ビジャ、スナイデル、フォルランの4人が5点を取っています。ここに挙げただけでも、全員がワールドクラスの一流の選手であると言えそうです。
この研究ではPKの73.8%が成功し、26.2%が失敗していました。ちなみにポジションごとの成功率はフォワードは80%、ミッドフィルダーは72.9%、ディフェンダーは67.7%です。これは納得できる数字でしょう。フォワードの方がキックが上手く、鋭いシュートを決められそうですし、一方でディフェンダーはあまりキックのうまくない選手がいます。
そして、ここからがポイントですが、実績のある選手は、実際に受賞をする前には88.9%PKを決めていました。これは平均的なフォワードよりもかなり良い数字です。さすがに一流プレイヤーといったところでしょうか。しかし、実際には受賞をした後にはこの数字が65.0%にまで下がってしまうのです。
どうやら一流プレイヤーはPKにおいては一流ではないようです。もしかするとこれはリーグ戦などのよりプレッシャーのかからないシーンでは別かもしれません。しかし、ワールドカップやチャンピオンズリーグのような大事なシーンでは、一流選手は、二流選手以下に変わってしまうようです。ただし、受賞前にはPKでも一流のようなので、”名前”がプレッシャーになっているようですね。
これは、「当然、決める」というプレッシャーと考えられます。試合などでは「絶対勝てる」選手がプレッシャーなどで往々にして驚くような負け方をすることがありますが、このPKの結果はそれを示していそうです。
PK失敗といえば、ベッカムやバッジョが思い出されるかもしれませんが、65%というと意外と低いんですね。
この記事はGeir Jordetの"When superstars flop: Public status and choking under pressure in international soccer penalty shootouts", Journal of Applied Sport Psychology 2009を参考に書きました。
(文: やまざきしんじ)
2013年07月18日
ナルシストは、彼らが考えるよりもセクシー?

ナルシストは、自分が神からの贈り物と確信しています。しかし、ナルシストでない人たちは、どう思ってるのでしょうか?
ナルシストは、自分自身ではセクシーと考えます。ナルシストでない人に比べて、以下のように主張します。
・新しい恋人をみつけやすい。
・現在の恋人の代わりを持てる。
・そして、全体としては、性的なパートナーを持てる。
しかし、彼らは鼻持ちならず、操作的で、自分のことしか見えておらず、結局、ナルシストなのです。では、今、使える客観的な情報では、ナルシストに自分がどのくらいすごいのかと聞くのと比べてどうなんでしょうか?
Dufnerら,2013の一連の研究は、 Personality and Social Psychology Bulletinで発表されました。
この研究では、ナルシストは、見ず知らずの人と知人によって採点され、デートのスキルをテストされました。
電話番号で、スコアづけする
最初の研究では、被験者は、ナルシシズムが低、中、高のそれぞれの人のプロフィールを見ました。それから、それぞれを友達か恋人として、それぞれ評価しました。
ナルシシズムが高いプロフィールを見た人は、友達としてのアピールとは関係なかったが、恋人としてはより魅力的と評価されました。
ナルシストに1点!
2つめの研究では、実際のナルシストがどのくらい魅力的で社会的に目立つかを友達に聞きました。すると、ナルシストでない人よりも、ナルシストはより魅力的で目立っていることが分かりました。
ナルシスト、2点め!
最後に、男性が街で道行く女性から電話番号を聞き出しました。この結果、ナルシストはより多くの電話番号を手に入れ、相手からもより魅力的と評価されました。
ナルシスト、3点め!
総合的には、ナルシストは単に見た目が良いのではなく、高い自尊心を持っていることが分かりました。自分の魅力を高くみる考え方が、他者にとってもより魅力的にするのです。ナルシストは、自分はすごいと考えており、それで相手もすごいと考えてしまうのです。
このような自分の魅力を高く見る考え方が、ナルシストを社会的に目立つようにし、それが魅力的にしているのです。
あなたの内なるナルシスト
ナルシストでない人にとって、短期的な恋人のアピールについての研究は覚えておきましょう。長期でみると、多くの人はナルシストの自分についてばかり考えている行動にうんざりします(ナルシシズムのパラドックス(英文)を参照のこと) しかし、短期的にはナルシストは魅力的に見えてしまうのです。
もしあなたが完璧に普通のナルシストでない人なら、セックスアピールを高めたい時はあなたの内なるナルシストに触れてみることです。まず、ナルシストは強く同意するような、以下の質問を考えてみましょう(JonasonとWebster,2010より)
1.私は他者が自分を崇拝してもらいたい傾向がある
2.私は他者が自分に注意を払ってもらいたい傾向がある
3.私は伝統やステータスを求める傾向がある
4.私は他人から特別なサポートを期待する傾向がある
もしあなたがこれらについて同意するなら、あなたはナルシストのように考えています。
もちろん、こんなことは私はオススメしませんけどね。
この記事はPSYBLOGの"Are Narcissists As Sexy As They Think?"を翻訳したものです。
(翻訳: やまざきしんじ)
(写真: FlickrのGYLoさんの写真を使用しています)
2013年05月28日
倫理学者は本当に倫理的なのか?

先日、知人と「経済学者で株で儲けられないなんて...」という話をしていました。僕自身は、経済学者と株式投資は全く別物だし、良い経済学者であることと現実の予測力が高いことは全くの別物と思っています。
ところで、倫理学者は普通の人よりも倫理的なんでしょうか?
倫理学者かどうかわかりませんが、”社会契約論”で有名なルソーは言っていることとやってることがかなり違う印象がありますし、一方で”純粋理性批判”などで有名な哲学者のカントのイメージは言行一致していて倫理的な印象があります。では、実際のところはどうなんでしょうか?
カリフォルニア大学リバーサイド校のEric Schwitzgebelらの研究によると、倫理学の教授と倫理学以外の教授では倫理的には違いがないそうです。
ちなみに、ある研究では、図書館から倫理学に関する本は他の哲学の本よりもよく紛失するそうです。あれ?倫理を学んでいる人の方が本をよく拝借するんでしょうか...
ちなみに倫理学や政治哲学の教授は、他の哲学分野の教授と同じくらいの投票率だそうです。
ルソーのように倫理を説いている人が、逆に倫理的でないという結果もありうると思っていたのですが。倫理学の教授も他の教授も同じくらいに倫理的というのも面白い結果ですね。
この記事はカリフォルニア大学リバーサイド校のUCR Todayの"Study: Ethicists’ Behavior Not More Moral"を参考に書きました。
(文・絵: やまざきしんじ)
2013年05月01日
次世代リーダーの条件

ゲームでもリーダーシップは勝手に生まれますが、そこに次世代のリーダーのヒントは潜んでいるかもしれません。
ペンシルバニア州立大学のTamara Peytonらが、I Love BeesというHalo2ゲームのプロモーションで行われたARG(Alternate Reality Game 代替現実ゲーム)の2500ユーザの54,000の書き込みを分析し、リーダーシップについて研究をしました。
ARGというものは、オンラインとリアルが混在したゲームです。このI Love Beesというのは、ilovebees.comというWebサイトを中心として、このサイトに隠された210組のGPS情報や日時情報を使い、適切な場所に正しいタイミングで行くと、電話が鳴りメッセージを聞くことができ、これらをつなぎ合わせていくことで謎を解いていくというものです。
この研究では、参加したプレイヤーがチームを作ってリーダーシップを発揮することがわかりましたが、そのリーダーシップはプレイヤーの軍隊経験やその他のチームでの経験で無関係であることが分かりました。
つまり、リーダーシップはゲームにおいては勝手に生まれてくると言えます。なお、リーダーシップのある参加者は、自分のウェブサイトや議論用の掲示板を用意してリードしていきます。
この研究は、リーダーシップが勝手に現れていくことを描いたものですが、最近はゲームやオンライン上の物事と実際の仕事の境界が曖昧になりつつあります。すると、これからは、ウェブサイトの構築や掲示板を素早く準備したり、そこでの議論を盛り上げる能力といったものが、リーダーの必須能力になっていくのかもしれませんね。
この記事はペンシルバニア州立大学の"Leadership emerges spontaneously during games"を参考に書きました。
(文・絵: やまざきしんじ)
2013年02月08日
成績とコミュニケーション頻度は関係がある

カリフォルニア大学サンディエゴ校のManuel Cebrianとイギリスのヒューレット・パッカード研究所のLuis Vaqueroは大学のクラスでの成績について調査しました
これは290人の学生の80,000回に渡るやりとりを分析したものです。
この研究によると、成績が良い人は他の学生とオンラインでのコミュニケーションをより多くしていることが分かりました。また、成績の良い人だけの小さなグループを作って、成績のよくない人達とはあまりやりとりをしていない分かりました。逆に他人とのコミュニケーションが少ない人たちは成績が悪いです。
いわゆる成績の良い人の集まりのエリートグループは、授業の最初の日に形成されます。また、エリートグループの成績上位者は、成績下位者がグループに入らないように排除するため、成績下位者はがんばってもエリートグループには入れません。
また他人への情報の拡散の頻度も成績上位グループと成績下位グループでは異なります。他人とのやりとりの約0.1%は、さらに他人へと拡散していくようなものでしたが、この拡散していく情報のうち51%が成績上位グループのもの、35.97%が成績中位グループのもの、13.03%が成績下位グループのものでした。これは、成績上位グループの方が影響力が大きいということを意味しています。
たしかに大学のときは、誰と仲良くしているかによって、例えば「どんなことを普通は知っているか」や「どんなことが出来るか」といった基準が変わってくると思います。コミュニケーション回数がポイントなのはいいのですが、そのようなエリートグループに入るかどうかが最初に決まってしまうというのが面白いですね。これはアメリカでの研究なので、日本でそのまま適用されるかはわかりませんが、私の経験では日本にも適用できそうです。
このことは、第一印象が大事ということは意味しませんが、最初にエリートグループに入れるかどうかは後々まで響いていくということですね。もしかすると、いろいろなコミュニケティにおいて同様のことが言えるのかもしれませんね。
この記事は以下の論文を参考に書きました。
Luis Vaqueroら, 2013, "The rich club phenomenon in the classroom. ", Scientific Reports, 2013; 3 DOI: 10.1038/srep01174
(文・絵: やまざきしんじ)
2013年02月01日
良いマネージャーは正直?

良いマネージャーになるために、必要なのはどのようなものでしょうか?
良いコーチであること?
地図がない道を進めること?
他にもいろいろな答えがあると思います。「もしドラ」の愛称で知られる「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を読んだ人ならば、”真摯さ”を挙げるかもしれません。
それでは、良いマネージャーには正直さは必要でしょうか?
たしかに品の良さや器の大きさを感じるマネージャーはいるし、そういう人は正直な気がします。
しかし、イギリスのエジンバラ・ネピア大学のChiara Amatiの研究によると正直なマネージャーがいいわけではないようです。
それでは、マネージャーは嘘つきでいいのでしょうか?
答えは”イエス”かもしれません。
良いマネージャーは、部下を勇気づけて、心地よく働いてもらうことが出来る人です。そのためには、必ずしも常に正直である必要はありません。場合によっては、怒りや落胆を隠して、「よくやった」と相手を褒める必要があります。
嘘には自分のための嘘と他人のための嘘があります。自分のための嘘はよくないですが、時には他人のための嘘を上手く付ける人、これが良いマネージャーに必要な素質の一つのようです。
この記事は"The British Psychological Society"の"Good managers fake it”を参考に書きました。
(文・絵: やまざきしんじ)
2012年12月28日
人にあげると、活性化

他人のために何かするというのはどうしてでしょうか?「協力するような種が生き残ることができた」というような進化心理学的な説明があります。それでは、そのメカニズムはどの程度解明されてきているのでしょうか?
デューク大学のMichael Plattらがアカゲザルがフルーツジュースを制御する時の脳の状態を調査しました。この実験は、自分自身への報酬、他人への報酬、誰にもあげない、という3つの条件で行いました。
サルは、自分自身への報酬を真っ先に選び、それを一番好みました。また、誰にもあげないという選択よりは、他のサルへジュースをあげることを選びました。。また高い地位のサルよりも低い地位のサルにジュースをあげることを好みました。
また、自分自身への報酬を考える時には、眼窩前頭皮質(OFC)が活性化しました。また、報酬を諦める時には前帯状皮質(ACC)が活性化しました。この2つは社会的なことを行うエリアとして知られています。また、自分への報酬や他人への報酬を与える際には、前帯状回(ACCg)が活性化しました。
ちなみに別の実験では、前帯状回にダメージを受けた動物は、社会的な状況で、食べ物をもらうのをためらうことが分かっています。
この研究では前帯状回が、他人との協力に大事な役割を果たしていることを示唆しています。こういった分野はどんどん研究が進んでいきますねー。
この記事はデューク大学の”Decision to Give a Group Effort in the Brain”を参考に書きました。
(文・絵: やまざきしんじ)
2012年12月17日
嘘の頻度は場所によって変わる

今日はイギリスのオックスフォード大学のJohannes Abelerらの嘘に関する研究を紹介します。これは、ドイツで行った実験で、意外と人は家にいると嘘をつかないというものです。
1つめの実験では、家に電話をして、コイントスをするように頼みました。そして、裏が出たら15ユーロを受け取るか寄付でき、表が出たら何も貰えないということを告げられ、電話でどちらが出たかを尋ねられました。
ランダムに電話をかけた658人の調査では、55.6%の人が表が出たと言い、何も貰えませんでした。簡単に嘘がつけて、バレない実験なのですが、非常に正直な結果ですね。これがドイツ人気質なのでしょうか。
2つめの実験は94人に対して、4回のコイントスをお願いしました。今度は1回裏が出るごとに5ユーロという条件で行いましたが、この時もやや表が出るのが多く、平均よりも貰えない人が多いという結果で、正直な結果が帰ってきました。
また、この2つの実験では、被験者の性別、年齢、収入、宗教などの属性を訪ねましたが、属性に関わらず正直であるということが分かりました。
一方、Houserらの2011年の研究は、ドイツの研究室で502人の大学生を対象にほぼ同じ実験をしたものですが、こちらでは76%の人が裏が出たと答えていました。76%という数字は、嘘をついていたことになりますので、人は研究室のような環境では嘘をつくようです。
家に電話する実験では嘘をつかず、研究室での実験では嘘をついていたことから、人の嘘の頻度は場所によって変わるという結論が導かれます。研究室のような場所で嘘をつかず、自分の家では嘘をつかないということから、職場や客先では嘘をつきやすくなるのかもしれません。
この記事はオックスフォード大学の”Study suggests we are basically honest – except when we are at work”を参考に書きました。元の論文はこちら。
(文・絵: やまざきしんじ)
2012年11月27日
フェイスブックフレンドが多いと、よりストレスを感じてる

イギリスのエジンバラ大学のBen Marderは平均21歳の300人以上にフェイスブックの使用について調査しました。
この調査によると、より多くのフレンドがいる人はよりストレスを感じていました。これはフレンドが多いと、他人の侮蔑発言や、無鉄砲な行動、飲酒や喫煙のような書き込みを見てしまう機会が増えるためです。
また、フェイスブックでは平均して7つの社会的グループに所属しています。そして、フェイスブックのフレンドについては、55%が親子でフレンドになっています。そしてフレンドの97%はオフラインでの知り合いです。また、81%は親類とフレンドで、80%は兄弟でフレンド、69%は友達の友達、65%が仕事仲間とフレンドでした。
なお、ユーザの64%が元カレ、元カノとつながっていたのに対して、56%だけが現在の恋人や配偶者とフェイスブックでつながっていました。
これは現在のイギリスの大学生のフェイスブック使用状況の参考データといったところでしょうか。元カレ、カノの方が、現在の恋人や配偶者よりもフレンドになっているというのが面白いですね。
この記事はエジンバラ大学の"More Facebook friends means more stress, says report"を参考に書きました。
(文・絵: やまざきしんじ)
2012年11月22日
ブロガーのモチベーションの源泉

コロラド大学のCarmen Stavrosituはブログを書くことの影響を研究をしました。
340人の女性のブロガーを対象として行った最初の調査では、自分についてのブログを書いている人はブログ内でのコミュニティへの所属意識が高まり、社会など外部について書いている人はブログによって自分を有能で、積極的で、自信を持たせるということが分かりました。
次に女性の大学生を対象として、106人に自分のことと、108人に科学や社会や政治などのことをブログに書いてもらいました。この時に、それぞれのブログには1日あたり50人か20人のアクセスがあるようにしました。また、あるブログにはコメントをたくさん書き、別のブログにはほとんどコメントを書きませんでした。すると、より多くコメントをもらったブロガーはコミュニティへの感覚が高まりました。また、アクセスが多いと、より自分の影響力を感じます。
現在は、ブログを書いている人がとても多いのですが、このようにブログにはアクセス数やコメント数から書き手へのフィードバックが行われているようです。また、コメントとアクセス数は、全く違う影響を与えているんですね。たしかに、これは自分のやっているブログでも分かります(コメントは名前が書いてあるので)
また、Stavrosituは、女性ブロガーを対象にしたのは「女性の方がよりブログをやっており、よりブログを続けているから」という理由です。このあたりは、女性の方がブログによって社会への影響を与えている感覚をより持てるからかもしれませんね。
この記事はペンシルバニア州立大学の”Comments, traffic statistics help empower bloggers”を参考に書きました。
(文・絵: やまざきしんじ)
2012年11月16日
ズームイン・メソッド
先日、名古屋ライフハック研究会でズーム・メソッドの発表をしてきました。今回はこのズームメソッドについてズームイン・メソッド中心に説明します。
基本的なポイントは、対象との心理的距離が大事ということです。特にポイントは対象との心理的距離が近すぎると、批判的志向や創造的な志向ができなくなるということです。あ、もうほとんど書いちゃいました...
例えば”箱と自分から脱出するクリエイティブ思考”という記事では、問題文に「高い塔から逃げる囚人を想像してください」と書く代わりに、「あなたは」と書くとパズルの正解率が落ちることを述べました。また、”社内でのより良いアイデアの出し方”という記事では、自分のアイデアに思い入れがあるために、より創造的なアイデアを出しにくいということを書きました。つまり、人は物事との距離が近いと、創造的になれないのです。

このように対象との距離が近いというのは全体が見えないということも意味しています。以前書いた”ストーリーを売れ: ”入り込んで”説得する”という記事では、ストーリーを語ることで相手はそのストーリーにハマりこんでしまって説得されやすくなるということを書きました。
つまり、相手を説得したい時には相手と対象との心理的距離を詰めること、そして物事の全体を引いてみせていたものを、より詳細なストーリー、数字を入れて、より具体的により近くに見せるのです。

これがズームイン・メソッドです。相手の視界に対象を近づけて全体像から意識を逸らして詳細な部分を意識させることで、相手の創造的な思考力や批判的な思考力を奪って、説得をするのです。以前に書いた”カリスマの3つのテクニック”のうちの2つのテクニック、私たちで語る、結果をイメージさせるストーリーで語るというのも、まさにこの手法ですね。
一方で、私たちはこのようなストーリーがあったら少し引いて見るように気をつけなければなりません。この遠く見るためのズームアウト・メソッドについては、また別の記事で書きます。

(文・絵: やまざきしんじ)
2012年11月14日
フェイスブックの書き込み術
11/9にタスクールさんで「自分のソーシャルネットワークについて考えてみようワークショップ ちゃんと使いこなしてますか?みんなで考えてみませんか?」というイベントを開催しました。
この時のことをポイントだけまとめておきます。ちなみに今回のネタは主にフェイスブックを中心としています。そして、全然心理学ではありません^^;;
ワークシフトという本が流行っていますが、ダニエル・ピンクが2005年に「ハイ・コンセプト」で書いていたように、これからは「創造する人・共感する人」の時代です。

農夫の価値は19世紀初頭の肥料の輸入によって低下し、工場労働者の価値は20世紀の大規模工場や機械化によって低下しました。ナレッジワーカーの価値も、IT化によって急速に失われていくでしょう。その上で、来るのが「創造する人・共感する人」の時代です。
ソーシャルネットワークの使用もこの2つを考慮しないではいられないというのが今回の主張です。
この図は専修大学の山下清美先生がブログについて書いたフレームワークです。このフレームワークを使って、ソーシャル・ネットワークへの書き込みを見てみましょう

ちなみにソーシャルネットワークに投稿する風景や子供やペットの写真は、自分志向・心情。外部のブログへの言及や事実の提供などは他人志向・事実。「鈴木さんとご飯一緒にしてきました」とか「山田さんのイベントに参加してきました」というのは他人志向・心情とします。ちなみにイベント参加は事実ですが、実際にはそこには「イベント参加して楽しかった」というようなことが入っているからです。
この4つの軸で書き込みを分類すると、多くの人は3つの書き込みタイプに分けれられます。
・ハイタッチ型

心情を主につづっているタイプです。他人との絡みだけでなく、意外と自分のことも書いていて、例えばお昼にお茶しにいったといったことも書いています。ただし、他人との絡みと自分の話は1:1程度というのが黄金比率のようです。
「この人、他人が興味持たなさそうな、自分のことばっかり書いているなー」ということでも、多少は書いていった方がいいわけですが、最大のポイントはフェイスブックにいる友人たちとのからみです。「本田さんと一緒に釣りにいってきました!」ということをよく書いている人は、他人からイイネ!やコメントもよくされており、またタグ付けされることもとても多くなります。
・コンテンツ型

自分でブログをやっている人でよく見られます。他人とのハイタッチなども多少をしていますが、自分の主力コンテンツであるブログへのアクセス流入を狙っているタイプです。アクセス数の多いブロガーでもフェイスブック上のコメントなどはあまりつかないのですが、その分、ブログを主戦場にしていると言えます。本来はハイタッチ型と組み合わせることができそうなのですが、何故かそのような人はほとんどおらずブログ重視のコンテンツ型か、ソーシャル・ネットワーク重視のハイタッチ型にわかれていました。
・タコツボ型

夕飯のことやペットのことなど、自分の心情を綴っています。ただ、他人とのからみはあまりないので、どちらかというと日記ブログのように淡々と日常を書いているという感じです。あまり人とのからみがない上に、ブログなどへのアクセス流入もないので、仕事で使っているという観点ではあまりよくないモデルです。
ちなみに仕事をしようとする人の場合は、ハイタッチ型かコンテンツ型のどちらかを狙っていくことになります。
ハイタッチ型は、他人との関係をした書き込みがソーシャル・ネットワーク上では大事なポイントです。といっても、結局これはオフラインで関係をしたことをオンラインに持ち込んでくることが多いです。逆にオフラインを重視している人は、オンライン上にも書き込みをすることで他人に自分の価値を伝えることができます。
コンテンツ型の場合はうまく戦略を練らないといけません。なぜなら、コンピュータの処理能力の向上に従っていろいろなことが自動化されてしまうからです。
例えば、現在は、紹介型のブログがたくさんあります。これは手間をかけない割にかなりアクセス数を稼げる方法でたくさんのアフィリエイトサイトがありますが、そのうち"Google まとめ"のようなウェブサービスが出てきて終了するかもしれません。あくまでも自分独自の価値を上手くつけていかないといけません。
ブログでは以下のような分類があると思いますが、どこがコンピュータの処理能力の影響を受けづらいか、競合が少ないかを考えていかないといけないわけです。

11月9日のイベントでは他の内容についても触れましたが、主な内容を簡単に紹介してみました。
(文・図: やまざきしんじ)
この時のことをポイントだけまとめておきます。ちなみに今回のネタは主にフェイスブックを中心としています。そして、全然心理学ではありません^^;;
ワークシフトという本が流行っていますが、ダニエル・ピンクが2005年に「ハイ・コンセプト」で書いていたように、これからは「創造する人・共感する人」の時代です。

農夫の価値は19世紀初頭の肥料の輸入によって低下し、工場労働者の価値は20世紀の大規模工場や機械化によって低下しました。ナレッジワーカーの価値も、IT化によって急速に失われていくでしょう。その上で、来るのが「創造する人・共感する人」の時代です。
ソーシャルネットワークの使用もこの2つを考慮しないではいられないというのが今回の主張です。
この図は専修大学の山下清美先生がブログについて書いたフレームワークです。このフレームワークを使って、ソーシャル・ネットワークへの書き込みを見てみましょう

ちなみにソーシャルネットワークに投稿する風景や子供やペットの写真は、自分志向・心情。外部のブログへの言及や事実の提供などは他人志向・事実。「鈴木さんとご飯一緒にしてきました」とか「山田さんのイベントに参加してきました」というのは他人志向・心情とします。ちなみにイベント参加は事実ですが、実際にはそこには「イベント参加して楽しかった」というようなことが入っているからです。
この4つの軸で書き込みを分類すると、多くの人は3つの書き込みタイプに分けれられます。
・ハイタッチ型

心情を主につづっているタイプです。他人との絡みだけでなく、意外と自分のことも書いていて、例えばお昼にお茶しにいったといったことも書いています。ただし、他人との絡みと自分の話は1:1程度というのが黄金比率のようです。
「この人、他人が興味持たなさそうな、自分のことばっかり書いているなー」ということでも、多少は書いていった方がいいわけですが、最大のポイントはフェイスブックにいる友人たちとのからみです。「本田さんと一緒に釣りにいってきました!」ということをよく書いている人は、他人からイイネ!やコメントもよくされており、またタグ付けされることもとても多くなります。
・コンテンツ型

自分でブログをやっている人でよく見られます。他人とのハイタッチなども多少をしていますが、自分の主力コンテンツであるブログへのアクセス流入を狙っているタイプです。アクセス数の多いブロガーでもフェイスブック上のコメントなどはあまりつかないのですが、その分、ブログを主戦場にしていると言えます。本来はハイタッチ型と組み合わせることができそうなのですが、何故かそのような人はほとんどおらずブログ重視のコンテンツ型か、ソーシャル・ネットワーク重視のハイタッチ型にわかれていました。
・タコツボ型

夕飯のことやペットのことなど、自分の心情を綴っています。ただ、他人とのからみはあまりないので、どちらかというと日記ブログのように淡々と日常を書いているという感じです。あまり人とのからみがない上に、ブログなどへのアクセス流入もないので、仕事で使っているという観点ではあまりよくないモデルです。
ちなみに仕事をしようとする人の場合は、ハイタッチ型かコンテンツ型のどちらかを狙っていくことになります。
ハイタッチ型は、他人との関係をした書き込みがソーシャル・ネットワーク上では大事なポイントです。といっても、結局これはオフラインで関係をしたことをオンラインに持ち込んでくることが多いです。逆にオフラインを重視している人は、オンライン上にも書き込みをすることで他人に自分の価値を伝えることができます。
コンテンツ型の場合はうまく戦略を練らないといけません。なぜなら、コンピュータの処理能力の向上に従っていろいろなことが自動化されてしまうからです。
例えば、現在は、紹介型のブログがたくさんあります。これは手間をかけない割にかなりアクセス数を稼げる方法でたくさんのアフィリエイトサイトがありますが、そのうち"Google まとめ"のようなウェブサービスが出てきて終了するかもしれません。あくまでも自分独自の価値を上手くつけていかないといけません。
ブログでは以下のような分類があると思いますが、どこがコンピュータの処理能力の影響を受けづらいか、競合が少ないかを考えていかないといけないわけです。

11月9日のイベントでは他の内容についても触れましたが、主な内容を簡単に紹介してみました。
(文・図: やまざきしんじ)
2012年11月01日
透明性の錯覚

他人は、あなたが思っているほどあなたの心を読み取れません。
ほとんどの人は、スピーチすることが嫌いです。スピーチについて考えると、手のひらに汗をかき、胃がしめつけられてしまいます。
スピーチでは、観衆があなたを見つめていて、戸惑ってしまいます。そして、観衆はあなたの困惑に気づいてしまいます。
でも、本当に気づかれるのでしょうか?私たちは、内面ではとても戸惑って神経質になっていても、他人は表情やスピーチや他の振る舞いから何かを読み取ることができるのでしょうか?
これを実験で確かめると、面白いことに気づきます。
SavitskyとGilovichの2003年の即興のスピーチをするという実験で、被験者は自分の心配を評価して、観衆の評価と比較しました。
この実験から自分が他人にどのくらい心配しているように見えるかを、人は過剰に見積もる傾向があるということが分かりました。この実験の結果は、他人が実際よりも多くのことを外面から読み取っていると考えていることを示しています。
GilovichとSavitskyの1999年の研究では、他人は、実際よりもより自分の嘘に気づき、マズイ飲み物を飲んだ人はよ気づかれ、舞台に上げられた人は観衆がより自分を見ていると思うのです。
このことは、簡単なことを教えてくれるかもしれません。スピーチについての研究すると、自分が感じているほど他人には神経質には見えないということを話す人がいます。このような人はよいスピーチをすることができます。これは、自分の緊張によって、スピーチがひどくならないからです。
・歌のリズム
心理学者はこれを「透明性の錯覚」(illusion of transparency)と呼びます。透明性の錯覚というのは、自分たちの感情が他人には透けて見られてしまう、もしくは実際に思っているよりも透けて見られれてしまうと感じるというものです。
これを確認するには、何か有名な曲のリズムでトントンと机を手で叩いて、それが何の曲かを友達にあててもらえばいいでしょう。
Newtonの1990年の博士論文で、この実験をした時に人は約50%の相手が曲を分かると思いました。しかし、実際にはとても曲を当てるのは難しく、3%以下の相手にしか分かりませんでした。
使った歌は「ハッピーバースディ・トゥ・ユー」と「星条旗よ永遠なれ」なので、とても有名な曲だったのは間違いありません。
実際にこのテストをすると、あまりに簡単な曲のはずなのに相手が分からないことに驚くかもしれません。あなたにとってはコードなしでリズムだけを手で叩いていているのですが、相手はそのコードを聞いていないことを忘れているのです。
同じようなことは、文書でのコミュニケーションでも起こります。あなたが、完全に分かりやすい文章でメールを書いても、言葉の解釈は様々なので、時々その意図が相手に伝わるまでに意味がねじ曲げられたり、変わってしまったりします。
このことはもちろん、私たちの考えや感情は他人に全く伝わらないということではありません。しかし、透明性の錯覚は、日常生活においてかなり影響を与えており、常に意識する価値があります。
「しかし、私がどう感じているかは明らかだと思うんだけど...」
こんなことがどうして起こるのか教えてくれます。
この記事はPsyblogの"The Illusion of Transparency"を翻訳したものです。
(※文中の太字は訳者によります)
(翻訳・絵: やまざきしんじ)