2010年05月24日

YESと言わせる5つの方法

YESといわせる5つの方法
<画像はflickrより>

 ロバート・チャルディーニといえば、『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』で有名な社会心理学者ですが、ノア・ゴールドシュタインとスティーブ・マーチンらとともに執筆した『影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣』は、日常生活で使える実践的な説得技法を紹介するベストセラーである。
 
 ここでは、その中でももっとも使える説得技法を5つ紹介する。

1.先手を打つ
 これまでの研究によると、先に自分のために何かをしてくれた人からの要求は受け入れやすい。
以前自分の仕事を手伝ってくれた同僚が仕事に忙殺されていたら、きっと手伝いたくなるだろう。
また、きわめてパーソナルに思える依頼も説得力がある。調査票に手書きの付箋をつけて、受取人が記入すべき箇所にコメントを書いておくと、回収率は2倍になる。

2.選択肢は少なく
選択できる商品数やサービスの数が多すぎると、時に人はイライラしてしまう。退職プランが多い会社よりも少ない会社の方が入社希望者は多い。

3.自分の不利益もアピールする
 説得にとって信頼は重要な要素だ。
 信頼されるためには、商品やサービスについてのメリットを述べる直前に、それらについての些細な弱点を認めるとよい。

4.損失は獲得よりも説得力がある
 商品やサービスを買った場合のメリットを伝えるよりも、そうしなかった場合の損失を訴えるほうが効果があることもある。
 2003年、オールズモビルは広告費や商品開発費を減らしたにも関わらず、売り上げを伸ばした。
 この理由は、オールズモビルを傘下に置くGEが、オールズモビルでの今後の新車開発を中止することを発表したことにある。このニュースを聞く前には特に欲しいとは思わなかった人も、今買わないともう二度と手に入らないかも、と感じたのだ。

5.すでに目標に向かって進んでいるように思わせる
スタンプカードを提供するガソリンスタンドは、「8個スタンプがたまると1回洗車無料」ではなく、2つ既にスタンプが押されているカードを渡し「10個スタンプが貯まると1回洗車無料」とすることで、顧客を2倍にすることができる。

彼らの研究は、一見個人的才能に思える「説得力」を、ルールとして公式化し誰でも学習可能なスキルに変えた。まさにこれは社会科学の福音である。

<元記事は5 Ways to be Persuasive

 
影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ
誠信書房
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おすすめ度の平均: 4.5
5 久しぶりに夢中で読んだ本
3 トリビア集
5 期待してた以上におもしろかったです
5 できれば自分の周囲には読ませたくない
3 カチッ・サー




2010年05月17日

女性からのスキンシップはリスク行動を促進する

 会話中のスキンシップは、相手との心理的距離を縮める効果があると言われるが(場合によっては相手に不快感を与え、逆効果なこともあるが・・・)確かに、背中や肩などやさしく触れられると、相手に対して親近感が増し、なんとなく安らぎを感じることがある。
 
 Psychological scienceに掲載される研究によると、女性から手で触れられると、私たちは安心し、リスク耐性が高まるようである。この効果は、子どもが母親との身体接触が多くなる乳児期から見られる。

 A Woman's Touch Increases Risk Taking

 コロンビア大学のJonathan Levavとアルベルタ大学のJennifer J. Argoらが行ったこの研究では、参加者にお金の投資やギャンブルといったリスク行動をどれぐらい取るかテストした。
 
 その結果、テスト前の実験者との会話中に実験者から背中を触られた参加者は、単に会話をしただけの参加者よりも、より投資やギャンブルにお金をかけるリスクが高くなることが示された。しかもこの効果は、実験者が女性であった場合にのみ認められた。

 乳児の頃から、私たちは母親とたくさん触れ合うことでアタッチメントの感覚を発達させる。この効果は成長してからも効果があり、人はスキンシップによって冒険心が高まり、リスク行動が促進されるのだろう、と研究者らは結論づけている。

2010年05月04日

瞬きは迷いのサイン

瞬きは迷いのサイン
<画像はeverystockphoto.comより>

「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように、目の動きはその人の心理状態を知る重要な情報源と考えられている。

 ボディランゲージの世界では、緊張状態にあったり、ウソをついているときには瞬きの回数が多くなると言われているが、果たしてこれは科学的に実証されていることなのだろうか。
 
ウォータールー大学の認知神経学者のDaniel Smilekは、心に迷いがあるときには、瞬きが多くなることを実験を通して科学的に明らかにした。

 Out of Mind, out of Sight: Blinking Eyes Indicate Mind Wandering

 彼は、迷っているときには、外的な刺激を処理する脳の部分が活発ではなくなるという先行研究の知見から着想を得て、今回の研究を行った。
 
 15人の実験参加者は、コンピュータのモニター上に写る文章を読み、実験者は読んでいる間の参加者の目の動きをセンサーで追跡した。
 そしてランダムな間隔でブザー音がコンピュータから鳴るたびに、被験者は読んでいるところに注意を向けていたか、あるいは迷っていたかを報告した。


この結果、参加者は迷っているときは、課題をしているときよりも瞬きが多くなることが示された。

心が迷いはじめると、情報を締め出そうとする。脳に情報が入ってこないように目を閉じるのだ。」とDaniel Smilekは言う。


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2010年04月09日

他人の心を読むとっておきの方法

 「私はこの人からどう思われているのだろうか?」

 ビジネスシーンやプライベートに関わらず、こう思うことはよくあるだろう。
 相手からどう思われているのかを正確に知ることができれば、相手との距離のとり方や接し方の参考になる。

 しかし残念ながら、これまでの研究によれば、私たちは他人から自分がどう思われているか推測することがあまり得意ではないようだ。
 これは自分自身について考える時と、他者について考える時とでは違った見方をしていることに原因がある。
 
 例えば私たちは自分について考えるときには、今日はいつもより髪型がキマッているとか、プレゼンの際にあの部分で言葉を噛んでしまったなど、あたかも顕微鏡で見るかのように自分自身の情報を精査する。
 しかし、これが他人について考えるとなると、広角レンズで全体をざっと写し出すように、背が高いとか社交的な感じがするなど全体的な印象やステレオタイプ的情報にしか目がいかない。
 だから、プレゼンのできについて自己評価するとき、あなたは使った単語や言い回し、スライドの一枚一枚のできばえなどを気にかけるだろうが、聴衆は話の概要や話し方の印象にしか興味がないのだ。
この見方の乖離があるからこそ、私たちは他人からどう評価されているか正確に推測することができないのだ。
 
 シカゴ大学のNicholas Epleyらは、106人の大学生を被験者にして、一人ずつ写真を撮り、彼らに「他の人がこの写真を見て、あなたをどれぐらい魅力的と評価すると思いますか」と質問した。
 その結果、「他の人が”明日”この写真を見てあなたの魅力度を評価します」と言われたグループよりも、「”一ヵ月後”に評価します」と言われたグループの方が、正確に自分の評価を推測することができた(実際に魅力度評価はどちらのグループも翌日に行われている)。

 「明日評価される」と言われたグループは、顕微鏡的視点で自分自身を見たのに対して、「1ヶ月後に評価される」と言われたグループは、他人が見るように広角レンズ的視点でズームアウトして自分を見たために、後者のグループの方がより正確な推測ができたのだろう。
 
 この実験結果によれば、顕微鏡的視点と広角レンズ的視点の2つの見方を状況に応じて使い分けることが重要だ。
 人があなたをどう思っているかを知りたいときには、他者目線である広角レンズ的視点で自分を見ることが有効である。
そして友人や同僚が彼ら自身をどのように思っているのか推測するときには自分目線である顕微鏡的視点で彼らを眺めることが役立つだろう。

  How to Seem Telepathic : Enabling Mind Reading by Matching Construal
  

2010年03月20日

気分がいいと他人を信頼しやすいって本当?

 気分がいいと人を信じやすくなり、普段だったら断りそうな依頼も引き受けてしまう…。
こういったことはよくあるケースに思えるが、本当に気分がよくなると人を信頼しやすくなってしまうのだろうか。

 オハイオ州立大学のRobert Lountらは、気分と信頼しやすさの関係を5つの実験によって明らかにした。

Happy People Are Less Trusting People

 この実験では、被験者である大学生をポジティブな気分に誘導されるグループと、ニュートラルな気分に誘導されるグループに分けた。
 各グループは、それぞれ気分が高揚する内容のエッセイか、ありきたりな内容のエッセイを記述することで気分を誘導される。
 その後、被験者は顔写真を見せられ、どれぐらいその人を信頼できそうか判断するよう求められた。

 ここで使われた顔写真とは、多くの人が信頼できそうか、できそうにない顔として判断するようプログラミングによって作成されたものである。
 一般的に信頼できそうな顔とは丸顔で、目が丸く、ひげがない、などの特徴を持っており、信頼できない顔では顔が細い、目が細い、ひげがある、などをその特徴とする。

 この結果、ポジティブな気分のグループはニュートラルな気分のグループよりも、信頼できる特徴を持つ顔に対してより信頼できると答え、信頼できない特徴を持つ顔に対しては、より信頼できないと答えることが示された。
 すなわち、ポジティブな気分のグループの方が、顔写真の特徴やステレオタイプに対してより忠実に判断していると言える。
 
 今回の一連の実験では、これらの結果をモチベーションの観点から説明する。
 すなわち、気分がいいときは、情報を注意深く処理する必要がないので、そのように動機づけがなされない。逆に、気分がよくないときでも、何か他に処理すべき課題を抱えているときには、人の信頼性の判断に際してステレオタイプに依存すると言う。

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 ビジネス場面においては、まずお客様に信頼してもらうことが大切だとよく言われます。
 そして、信頼を得るために、お客様の気分をよくするような対応を心がけなければならない、とも言われています。
 今回の実験は、相手の気分をよくすれば誰もが信頼してもらえる、というわけではないことを示唆しています。
 もともと信頼されている人ならば、確かにさらに信頼してもらえるかもしれませんが、逆に、もともと信頼されていない人ならば、相手の気分をよくしても返って逆効果になりかねない、と言えるでしょう。