2011年11月23日

能力志向と改善志向

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人の知的能力についての見方として、”能力志向”と”改善志向”という2つの見方があります。これは、人の知的能力は基本的には固定的でそれほど変わらないとする見方と、それぞれの問題に個別のものであったり、もしくは頑張ることで改善していくという見方です。

以前書いた”目標設定のポイント”という記事では、”能力志向”の人は良い結果が得られないと満足しないのに対して、”改善志向”の人は普通の結果でも満足するということを書きました。これは”改善志向”の人は、行ったそのこと自体が自分の能力を高めるため満足度が高まると考えるからです。


それでは、この”能力志向”と”改善志向”の考え方はどのような特徴が他にあるのでしょうか?

コロンビア大学のDavid Miele、ワシントン大学のBridgid Finn、ノースウェスタン大学の Daniel Moldenの研究はこのヒントを与えてくれます。

この研究は75人の英語を話す学生が、54個のインドネシア語の単語を覚えるというものです。ちなみに、この単語には、英語と近い覚えやすい単語(Policeとpolisi)や、中くらいの難易度のもの(Bagasi-Luggage)、覚えにくい単語(Pembalut-Bandage)が含まれていました。

この実験では、被験者に好きな時間だけ学習をさせて、その後にインドネシア語の単語を提示してどのくらい英語との対応が分かったかをテストするというものです。その後に、各被験者が”能力志向”か”改善志向”なのかを質問紙で確認しました。


この結果として分かったことは、どの被験者もまず簡単な単語から覚えることです。そして、”能力志向”の人は単語を覚えるのにかかる時間が実際よりも短くてすむと楽観的な予測をしていました。また、難易度の変化によって、覚えるのにかかる時間の変化を正確を予測していました。一方で、”改善志向”の人は、易しい単語を覚えるのにより長い時間が必要と思っていたのに対して、難しい単語を覚えるのにより短い時間ですむと考えていました。つまり、”改善志向”の人は単語のより難易度によらず一定の時間で単語が覚えられると考えているということです。

これは”改善志向”の人が、外部環境よりも自分に様々な原因を求める傾向があると考えれば理解できるものです。ビジネスパーソンには”改善志向”の人が多くいると思いますが、時間の見積もりの際などにはこのように外部要因(問題の難易度)を無視してしまう傾向があるというのが要注意だと思います。


この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science. "How beliefs shape effort and learning." ScienceDaily, 15 Apr. 2011. Web. 23 Nov. 2011.

(文: SY)
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2011年11月14日

驚きと創造性

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体系化への欲求と創造性の間には不思議な関係があります。

驚くことは好きですか?もし好きなら、多くの人はそうではないことにあなたは驚くかもしれません。

予期しない状況への対処能力とその状況の不確実さは、創造性と大きな関係があります。

心理学者は、不確実さに対処する自然な方法を”体系化への欲求”(personal need for structure)と呼びます。次に何が起こって、何が予想されるのかを強く知りたい人がいます。一方、驚かされることをあまり気にしない人もいます。

今から2つの状況を想像してもらいます。

1つめは、恋人と一緒に高級レストランにいきます。そして、椅子に座って、給仕からメニューやワインリストを渡されます。この晩の状況の社会的な構造は、あなたが以前訪れた別のレストランと同様です。食事やお酒をオーダーして、他のディナー客を無視しながらもひっそりとチェックして、最後に勘定が来たら金額をちらっと確認してひっくり返しておきます。

このようなマナーは心地よいものです。


次に、混乱した状況を想像してください。あなたはレストランに入りますが、給仕はいません。席に案内してもらわずに好きなところに座ります。それから、選んでもいない食事とお酒が適当に前に置かれます。となりの席の客はあなたを無視しないで、親しげに話しかけてきます。そして、いつの間にか、ウェイターもあなたと一緒に座って、食事をしはじめます。

そのうち、すべてが自由気ままなスタイルだとわかります。

この変なレストランは、体系化されているのでしょうか?これは単にカジュアルパーティーのルールに従っていると言えます、しかし、ルールがかなり場違いな場所に適用されているのです。


ポイントは、体系化への欲求を強く持っている人は、このカジュアルパーティー式のレストランにはとても居心地の悪さを感じます。これはルールが完全に変わっていて誰も教えてくれないため、何が起こるかが分からないのです。一方で、こういったことが全然気にならずに、飄々とこなす人もいます。

驚きを好むような人にはいいニュースがあります。驚きを好む人は一般的によりクリエイティブです。状況の不確実さに対処する能力がある人は、新しい可能性をよりオープンに捉えられるようです。つまり、不確実性が創造性を育てるようです。

一方、最近の研究では、新しい知見を加えています。これは驚かされるのが嫌いな人にも、よりクリエイティブになれるヒントをくれます。

Rietzschelら,2010の研究では、人の体系化への欲求と、間違ったことをしてしまうんじゃないかというおそれの両方をテストしました。この両方が創造性のパフォーマンスに影響を与えていると考えられたためです。被験者は、エイリアンの絵を書くというテストをしました。なんとか哺乳類に見えるようなエイリアンが、もっともクリエイティブと判断されました。

この研究では、間違いへのおそれがない時は、体系化への欲求は創造性を低下させないことが分かりました。つまり、おそれへの心配が創造性を破壊してしまうのです。

おそれがなければ、体系化への欲求がある人でも、クリエイティブでいられます。間違うおそれを減らして、心に浮かぶあらゆる可能性を考えることが創造性の鍵です。

他のクリエイティブになれる方法は、how to be creative(有料の英語の電子書籍)をご覧ください。


この記事はPSYBLOG"Creativity for the Cautious"の翻訳です。


(翻訳: SY)
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2011年11月09日

箱と自分から脱出するクリエイティブ思考

9dot.jpg

新しい研究では自分に対してより他人に対してでは、もっとクリエイティブなアイデアが生まれることが分かりました。

”箱から出る思考”という陳腐な表現は、上のようなパズルを考える時に言われています。このパズルは、一筆書きで4本の直線を引いて、すべての点をつなぐことができるかというものです。


この”箱”という表現は、点があなたの頭に作り出すものを暗示しています。パズルを解くには、この点でできる箱を無視しなければなりません。言葉そのままに、箱から外に出て考えるのです。(もし箱の中に入っていても、Googleで”9つの点”で検索すれば答えは分かりますが)

このようなパズルは、習慣的な思考法を無視するような奇抜な解決を必要とします。この時、”箱”から出て考えるだけでなく、”自分自身”から出て考えるようにできます。次のパズルでは、創造性の面白い面を見せてくれます。

高い塔から逃げる囚人を想像してください。この囚人はロープのみを持っています。しかし、このロープは窓から地面の半分の長さしかありません。この囚人はロープを半分に分けて塔から逃げました。どうやったのでしょうか?

PolmanとEmich,2011の研究では、この問題の少し違ったバージョンを使って実験しました。被験者の半分は、上の説明をしました。残りの被験者は、上の問題と同様ですが、囚人を想像させるのでなく、”自分”が塔に捕まっていると想像させました。両方のグループにも「塔から逃げることは出来る」と告げました。


その結果、”囚人”が逃げる方法を考えついた被験者は66%でしたが、”自分”が逃げる方法を考えついた被験者は48%にすぎませんでした。

(ちなみにこの答えは、ロープを半分に分けるというのは長さを半分にするのでなく、半分の太さに分けることです。この半分の細さのロープをつないで逃げるというものです)


2つめの実験では、アイデアを考える時に、人がどのくらいクリエイティブなのかを実験しました。この実験では、自分自身のためにアイデアを考えるグループ、親しい人のために考えるグループ、もう一方は社会的に離れた見ず知らずの他人のために考えるグループの3つに分けられて、それぞれがアイデアを考えました。

アイデアを分析すると、見ず知らずの他人のために考えたグループが一番クリエイティブでした。自分のために考えたグループと、親しい人のために考えたグループはイマイチな結果でした。

この結果は、第三者のように問題を考えることが原因と考えられます。見ず知らずの他人や高い塔の囚人について考える時に、私たちの心の中で、より抽象的に考える傾向があります。この抽象的な思考が、詳細にこだわらずに、よりクリエイティブに考えることを可能にします。

”箱から出る思考”という言い古された表現は、これらの実験結果から”自分自身から出る思考”と言うべきでしょう。

抽象思考と、どうやってクリエイティブに考えるかについては、PSYBLOGの"how to be creative"(英語の有料電子書籍)に5つの原則が書いてあります。


この記事はPSYBLOG”The Creative Power of Thinking Outside Yourself”を翻訳したものです。


(翻訳: SY)
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2011年11月03日

ビデオゲームが創造性を育む?

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ミシガン州立大学のLinda Jacksonらの研究はアメリカのミシガン州での491人の12歳の子供の生活習慣と創造性に関するものです。

この研究によると、より多くビデオゲームをやっている子供は、絵を書いたり、お話を作ったりといったタスクでよりクリエイティブであることが分かりました。
一方で、携帯電話、インターネットやコンピュータ(ゲーム以外)といったことをより多くやっている子供は、特に創造性が優れているわけではないことが分かりました。


この研究はいくつかのことを示していると思います。まず、ビデオゲームといっても、実際には様々なものがあるのでそれらを分けて考える方がいいかもしれません。漠然とRPGをやっていたり攻略本を見てやっている子供と、自分や友達たちといろいろ工夫しながらゲームを進めたり、真剣に対戦ゲームをやっている子供では創造性の違いがあるかもしれません。

この理由は、携帯電話やインターネットと違ってゲームは空想の世界に入りこむものが多いので、小説を読むことと同様に創造性に触れる機会があるからかもしれないと思いました。

また、この結果はゲームデザイナーに対してある種の社会的責任を突きつけているかもしれません。ゲームデザイナーは、創造性を高めるような余地を残したゲームを作るようにすべきだと思います。あれこれ工夫したり、みんなでワイワイ相談しながらするようなゲームを作っていって欲しいと思います。


元の論文はこちら

この記事は、ミシガン州立大学"Video game playing tied to creativity"を参考に書きました。


(文: SY)
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2011年10月28日

創造性をダメにする6つの方法

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あなたの組織はうまくいっていますか?
ビジネスやその他の場面で創造性をダメにする6つの方法を紹介します。


多くの組織では、創造性を養いたいと考えていますし、実際、組織はそうあるべきでしょう。しかし不幸なことに、職場習慣によって創造性は完全に台無しにされています。

これは、ハーバード・ビジネススクールのテレサ・アマバルが、組織についての何十年にわたる研究を考察して明らかにしたことです(Amabile, 1998)。

ある研究ブログラムでは、彼女は3つの産業界に属す7つの会社を研究し、チームメンバーに仕事についての報告を毎日してもらいました。

2年後、彼女は組織によっていかに創造性の扱い方に差があるかを明らかにしました。その意図があろうとなかろうと、一部の組織は創造性をダメにする完璧な方法を知っているようであり、その反対に、社員がクリエイティブであるために優れた環境を打ち立てている会社もありました。

多くの組織では創造性を生み出したくないように思えるので、ここでは創造性をダメにする6つの方法を示します。

1.役割のミスマッチ
創造性をダメにする一番簡単な方法は、適切ではない人に仕事を与えることです。仕事の一部でも、すべての仕事でもいい。社員は自分の能力を超えていると感じる必要がありますが、その仕事は自分の理解の範囲内にあります。

多くの組織内でよくあるシステムは、緊急の仕事の多くをそれをするのにふさわしい人に割り振るということでしょう(例えば、 一番若い社員、一番年長の社員、一番仕事が少ない社員に割り当てるなど)。マネージャーは一般的に仕事や課題での必要条件や従業員のスキルを見抜くことが不得意です。ミスマッチは不満足で創造性のない結果の原因です。

2.自由を制限する
確かに人は自分に課した具体的な目標が必要です。そしてその目標の達成方法を自由に選択できることも必要です。もし創造性をダメにしたいなら、社員の目標達成のために取りうる方法についての自由を制限するだけでいいでしょう。よくある方法の2つは、目標を頻繁に変更することや、新しい方法は望ましくないとほのめかすことです。社員はすぐにそのメッセージを理解し、挑戦するのを止めるはずです。

3.資源を制限する
創造性は時間とお金がかかります。なので、創造性をダメにするのはこの2つを制限しましょう。締切をあり得ないほど短くしたり、使える資源を最小限にしましょう。

マネージャーは、物理的空間にこだわる傾向があり、ビーズチェアやサッカーテーブル、ファンキーな家具が創造性を高めると考えています。しかし、もっと重要なのは心理的空間です。人がよいアイデアを生み出すためには十分な時間と資源が必要です。
人は切迫した時間設定や資源のプレッシャーにさらされると、創造性は急速に無くなっていきます。

4.集団の多様性を減らす
似たような人の集まる集団は仲良くなる傾向にあります。彼らは対立しないしトラブルも引き起こしませんが、創造性のレベルはとても低いです。もし、確実に創造性を低くしたいなら、集団の多様性を減らしましょう。
逆に、チームが多様なスキル・能力・視点をもった人で構成されていると、様々なアプローチが組み合わさって創造的な解決法を生み出すことができます。時間はかかるだろうし議論をすることになるでしょうが、多様性のある集団は創造性を養います。だからそんな人がいたら避けてください。


5.励まさない
建設的になるよりも批判的になるほうが楽です。もし創造性を抑え込みたいなら、斬新なアイデアに対して、絶えず評価と批判を与えましょう。また、斬新アイデアの問題の1つは、時にそれが成功するということです。だから、さらに創造的になることを抑制するためには、独創的なアイデアを提案したけれど、それが成功しなかった社員を罰すればいいのです。

斬新なアイデアを提出すると終わりのない尋問を受けることになると知れば、そしてもしそのアイデアが成功しなければ罰せられると知れば、彼らはすぐにアイデアを生み出すことをやめるでしょう。

6.サポートしない
内輪もめや政治工作やゴシップ…これらすべては創造性をたやすくダメにするものである。もしも組織がそれらに敵対すれば、本当に創造的な仕事を生み出すことはないでしょう。自由な情報の流れを阻止し、協力を促進しないようにしましょう。なぜならこの2つは創造性を高めるものだからです。

サポートがなければ、創造的であろうとすることはなります。そして従業員のモチベーションは下がり、皮肉屋になるでしょう。

やるときは水面下で
創造性をダメにするこれらの方法は、こっそりと行うのがベストです。あなたはサポートや自由や資源などを与えているといい、実際にはそれほど熱心にはやらないのがいいでしょう。これによって一見するとクリエイティブな組織のように見えるが、真に創造的な解決法は生み出さないでしょう。

もしも創造的な組織に興味があるなら上記の反対のことをすればいいでしょう。(翻訳:山崎Y)

この記事はPSYBLOGの"6 Ways to Kill Creativity"を翻訳したものです。
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2011年10月19日

忘れることが覚えること

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物事を覚えることはいいことで、忘れることは悪いことという印象があります。しかし、実際には忘れることも大切なことです。例えば、大きなスーパーの駐車場に車を停めた時に、どこに停めたのかを覚えていることは大事ですが、覚えておきたいのは今日の分だけで、先週や先月の停めた場所は忘れておきたいです。


イリノイ大学のBen Stormは研究の中で、忘却の良い面について述べています。

Stormの実験は、関連したジャンルの単語を全部覚えてテストをして、次に、その半分だけを覚えてテストをするというものです。例えば、鳥に関連する単語ということで、最初の実験で、たとえば「ハト、タカ、ハシバミ、ツグミ、ワシ、フクロウ」と覚えて、次の実験では「ハト、ハシバミ、ワシ」という単語を覚えます。この実験は単語を覚える実験ですが、実際には単語を忘れる実験と見ることができます


このように忘却というのは記憶をするために必要なものと見ることも出来ます。人間の記憶はなかなかおもしろいもので、覚えるのも忘れるのもなかなか思ったとおりにいかないようです。

ちなみにこの忘却が大事ということで、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの”伝奇集”という短篇集の中の”記憶の人、フネス”を思い出しました。これは、完全記憶能力者の話で、記憶が完璧すぎて昨日見たものと今日見たものが同じことが分からないといった起こる人の話です。小説ですが、記憶と抽象化能力についての示唆が得られます。他にも”伝奇集”には、指示するもの(シニフィアン)と指示されるもの(シニフィエ)の関係についての小説などおもしろい短編がたくさんあります。


この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science (2011, October 18). Forgetting is part of remembering. ScienceDaily. Retrieved October 19, 2011, from
http://www.sciencedaily.com-/releases/2011/10/111018111938.htm

関連記事:
学習におけるひとつの冴えたやりかた
勉強の際には”頭に入れておく”よりも、”思い出せるようにする”ことが大事と見るのがいいようです。

”うっかり”は記憶力とはちょっと違う?
”記憶力”と一括りに言ってしまいますが、物事を覚えておくこととある時間になったら何かを忘れないでやることは別物です。


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(文: SY)
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2011年10月10日

意思決定の行動経済学


今月のDHBR(ダイアモンドハーバードビジネスレビュー)2011年11月号に行動経済学で有名なダニエル・カーネマンらが”意思決定の行動経済学”という記事を書いていたので紹介します。

この記事は、意思決定においては、直感的なシステム1と合理的なシステム2の2つから行われており、様々な認知バイアスの影響をうけるためにシステム1の結果をシステム2で見直すことが大事であるとしています。

そして、この合理的なシステム2によって、直感的なシステム1を律するための12の質問を紹介しています。なお、説明部分は新しく書き起こしています。


1.提案チームが「私利私欲にかられて意図的に誤りを犯したのではないか」と疑われる理由はないか
自分は客観的に判断しているつもりでも、利己的バイアスによって”自分の”利益のために判断を誤っていないか?

2.提案者たち自身が、その提案にほれ込んでいるか
感情ヒューリスティックは、自分の好きなものはリスクを過小評価し、メリットを過大評価します。メリット・リスクを客観的に判断したつもりでも、好きなものや嫌いなものに対しては本当に客観的かどうかをチェックしなければなりません。

3.提案チームのなかに反対意見があったか
グループシンク(集団浅慮)というのは、集団で意思決定をする時にベストを求めるのでなく、集団で最も争いが発生しないような妥協点に落ち着いてしまうということです。

4.顕著な類似点が、状況の分析に大きく影響するおそれはないか
顕著性バイアスというのは目立ったものを重要視しすぎてしまうというものです。例えば、直近の成功例を過大評価してしまって、同じような選択をしたり。意思決定対象の分かりやすい点のみについて、検討を深めたりしてしまいます。

5.信頼できる代替案が検討されたか
確証バイアスというのは、自分のアイデアを支持するような証拠ばかりを集めてしまうという傾向のことです。最初に思いついたアイデアを検討していくと、そのアイデアを支持する方向にいってしまうので、他の案がないかを慎重に検討する必要があります。

6.一年後に、同じ意思決定を繰り返さなければならないとしたら、どのような情報が必要になるか。それがいま入手できるか
利用可能性バイアスは、利用可能なデータが全てのものであると考えてしまうことです。手元にあるデータだけでストーリーを組み立てるのでなく、どういった情報がさらに取得できるか?何が足りないかを検討する必要があります。

7.数字の出所を承知しているか
例えば相手の企業を買収する時に、買収金額の出所を確認する必要があります。数字を検討する時にはアンカリングを意識しなければなりません。人は最初に与えられた数字に影響を受けてしまいます。例えば、全く新製品の市場規模についての検討をする時に、仮に100億円と仮定して話を進めていくと、最後までその100億円の市場規模というのが頭に残ってしまいます。

8.「ハロー効果」が見られていないか
ハロー効果によって分かりやすい単純なものがすべての原因と考えてしまうのはよくあることです。例えば、トヨタの良さは全て”カンバン方式”に帰着させたり、あるIT企業の成功が実は製品投入のタイミングが良かったのを全て経営者の先見と見なして永続的な成長と見誤ったりすることがあります。

9.提案者たちは過去の意思決定にこだわりすぎていないか
過去の決定の埋没費用(サンクコスト)にこだわってしまい、間違いを続けてしまうということはよくあります。新しく始めた事業が今後ずっと赤字と予測されていても、「これまでこんなにお金を使ったから」と続けるというのはよくあることです。

10,基本となるケースは楽観的すぎないか
意思決定のほとんどは未来についての事柄です。また、未来の予測についてはリスクを過少に見積もったり、自分たちの能力を過剰に見積もったりします。また、自社のみが製品開発を進めて、競合企業は新製品を投入しないと想定してしまったりします。人は未来について楽観的ですが、意思決定においてはそれが予測を誤らせるのです。

11.最悪のケースは、本当に最悪なのだろうか
意思決定の際には、当然リスクを想定します。この時の最悪の事態に備えているつもりでも、実際にはそれ以上の最悪な事態が起こることはよくあります。人は、滅多に起こらないことは、全く起こらないと想定してしまうことがよくあるのです。過去100年で、第一次世界大戦、第2次世界大戦、ベトナム戦争、キューバ危機、人類初の月面着陸、ベルリンの壁の崩壊といったことがありました。このような大きなことが起こった場合にビジネスにどのくらいのインパクトがあるのでしょうか?

12.提案チームは慎重すぎないか
人はリスクについて過剰に評価する傾向があります。つまり、一度得たものを失うことを過剰に恐れるのです。そのためにほとんどの組織ではリスクを取ってでも、利益を取りにいこうとしなければなりません。


このような意思決定のバイアスは、本人が気づかない間に入り込んできます。これを合理的なシステム2によって、意思決定から取り除かなければなりません。

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(文: SY)
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2011年10月04日

功利主義者はイカれてる?

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去年、ハーバード白熱教室というテレビ番組や、その活字版である「これからの正義の話をしよう」という本がかなり売れました。ここでマイケル・サンデル教授は、歴史的に道徳観を、功利主義、自由主義、美徳による道徳の3つに分けて、そこから自らの主張するコミュニタリアニズムを語っていました。功利主義というのは”最大多数の最大幸福”という言葉で知られるもので、社会全体の効用を考えるというものです。

コロンビア大学のDaniel Bartelsとコーネル大学のDavid Pizarroの研究は、彼らは208人の大学生を対象として、道徳的な観点と性格特性に関するものです。

この研究によると、功利主義的な考え方をする人は、サイコパス的で、目的のためなら非人道的にもなるようなマキャベリ的特質を持ち、人生の意味を感じない、という傾向が普通の人よりも強いことが分かりました。


多くの道徳的ジレンマに対して、功利主義的な観点から良い解決が出来ることが知られていますが、良い解決ができる人が良い性格特性を持つわけではないということです。


論文情報はこちら


この記事は以下を参考に書きました。
Columbia Business School. "Antisocial personality traits predict utilitarian responses to moral dilemmas." ScienceDaily, 1 Oct. 2011. Web. 4 Oct. 2011.

(文: SY)
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2011年09月27日

匿名やグループでは、相談するな!!

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コンサルタントや医者など多くの専門家がアドバイスをすることでお金をもらっています。

カーネギーメロン大学のGeorge Loewensteinとデューク大学のSunita Sahは、被験者がドットの数を見積りをアドバイスするというテストを行うことで、アドバイスをする時に対象との関係とアドバイスの正確さを研究しました。

この研究によると、アドバイスを行う際には、アドバイスの対象が具体的(名前と年齢がわかっている)だと、より適切なアドバイスができますが。アドバイスの対象が具体的でない(名前も年齢も分からない)と、より悪いアドバイスをしてしまいます。これは相手のことをより具体的に知ることで、相手からの情報を尊重した結果と考えられます。


また、アドバイスの対象がグループの場合はより悪いアドバイスをします。もちろん、アドバイスの対象がグループの場合でも、相手の名前と年齢がわかっている場合は、より適切なアドバイスをします。

アドバイスのバイアス.001.jpg

上図がその結果です。この実験では、対象が一人で具体的(名前と年齢が分かってる)とかなり正確なアドバイスが行われますが、匿名の場合はより悪いアドバイスが行われます。対象がグループになると、さらに悪いアドバイスになっていることが分かります。


この実験は、アドバイスをする人と、アドバイスをされる人が、ある程度対等という条件のものです。もし、アドバイスをする人の情報がより少ない場合にはこの状況はより大きくなると考えられます。


この記事は以下を参考に書きました。
Carnegie Mellon University. "Amplification of bias found in advice to the unidentified and many." ScienceDaily, 22 Sep. 2011. Web. 27 Sep. 2011.

元の論文情報はこちら。
S. Sah, G. Loewenstein. More Affected = More Neglected: Amplification of Bias in Advice to the Unidentified and Many. Social Psychological and Personality Science, 2011; DOI: 10.1177/1948550611422958

(文: SY)
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2011年09月04日

クリエイティブなアイデアはたくさん出すよりも、つぶさない

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創造性というのは社会人にとってなくてはならないものとまではいきませんが、確実にあったら望ましいものです。

それでは、私たちがもっとクリエイティブになるにはどうすればいいのでしょうか?


実はこの問いが間違っているかもしれないという研究をペンシルバニア大学のJennifer Mueller、ノースカロライナ大学のShimul Melwani、コーネル大学のJack Goncaloが行いました。

この研究では、人はクリエイティブなことを望んでいるが、実際にはクリエイティブなことを拒絶することが多いと述べています。これは、クリエイティブなものには不確実性があり、その不確実性がクリエイティブなものを拒絶してしまうバイアスになっているのです。


私たちは、「創造的になる方法」、「アイデアがたくさん湧き出る方法」といったものにあこがれていますが、実際には「創造的なアイデアを殺さない方法」、「相手の創造的なアイデアを潰してしまわない方法」を探さないといけないのかもしれません。


特にクリエイティブなことを求めている企業でも、実際には多くのアイデアを消してしまいます。つまり多くのアイデアを出すことを求めるだけでなく、アイデアをつぶさないような仕組みが大事なのです。このようなアイデアをつぶしてしまうバイアスに負けないように、会社としてクリエイティブなものを推進するような仕組み作りがこれからは大事になってくるのではないでしょうか。


この記事はコーネル大学"People are biased against creative ideas, studies find"を参考にしました。


(文; SY)
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2011年09月02日

クリエイティブな問題は、楽しい時に

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クリエイティブな問題を解決するには、落ち込んだ時と楽しい時のどちらが向いているんでしょうか?

楽しい時のようなポジティブな気分は、クリエイティブな問題の解決能力を向上させるようです。ノースウェスタン大学のKaruna Subramaniamらは、このメカニズムをfMRIを使って調べました。この研究は、被験者が様々な気分の時に直感で問題解決をしているのをfMRIで調べました。

問題解決には直感型の思考と分析型の思考があり、ポジティブな気分の時は直感型の思考になりやすく、ネガティブな気分の時には分析型の思考になりやすいのです。そして、クリエイティブを必要とされる問題を解くという実験では、ポジティブな気分の時により多くの問題を解くことができ、ネガティブな気分の時には普通の気分の時とあまり変わらないことが分かりました。

ちなみにこのポジティブな気分の時には、問題を解いて次の問題を解くまでの準備期間の前帯状皮質の活動に影響を与えることが分かりました。問題を解いている時というよりも、その問題を解く前にレバーを”直感型で考えろ”に入れていると考えればいいでしょう。


実際の問題を解決する際には、いつどこの皮質が活発になろうが関係ありませんが、創造的な仕事をするのはできるだけポジティブな気分の時に行うようにしましょう。


この記事は以下を参考にしました。
"A brain mechanism for facilitation of insight by positive affect." ,Karuna Subramaniam他,J Cogn Neurosci. 2009 Mar;21(3):415-32.


(文: SY)
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2011年06月16日

近視眼的な意思決定を避ける5つの方法

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どうやって、短期的な誘惑に負けずに長期的な利益に基づいて意思決定をするのでしょうか?


私たちは、自分の中に2つの部分を持っています。一つは、動物的な欲求の部分で、すぐに楽しいことを求めます。食べたい、飲みたい、セックスしたい、楽しいことをしたいという欲求です。
もう一つは理性的な部分で、節約したり、健康的なものを食べたり、飲み過ぎないようにしたり、ちゃんと自分の下着にアイロンをかけたり、と”正しいこと”をします。

動物的な部分は”したい”と言ってきて、理性的な部分は”すべき”と言います。このような”したい”と”すべき”の間の内面的な葛藤は、ずっと続いきます。おそらく普段は、あなたの”すべき”という欲求が勝利しているでしょうが、あなたの動物的な欲求は今この瞬間にでも暴れだすかもしれません。

これらの5つのテクニックはあなたに内面的な葛藤での武器を提供します。ちなみに全ての心理的な研究はMilkmanらの2008年の研究によります。


1.前もって選択をしろ

”したい”欲求を抑えこむ最も良い方法は、前もって意思決定をしておくことです。事前に意思決定をしておけば、”すべき”が物事を管理します。金銭に関わることや、ダイエット、仕事やそれ以外のことなどあらゆることにおいて、あなたが前もって選択をしておけば、あなたは無駄な支出を減らすことができるでしょう。


2.他の選択肢を検討しろ

他の選択肢を検討することなしに意思決定する時、”したい”欲求は簡単に勝利します。他の選択肢を検討しないと、簡単に利益”したい”欲求は悪い意思決定を正当化してしまいます。他の選択肢を検討することで、人は長期的な利益に基づく意思決定をしやすくなります。


3.プレッシャーのある状況での意思決定を避ける

衝動的な意思決定は、”したい”欲求に屈しやすいものです。プレッシャーのある状況での意思決定をする時は、私たちの基本的な欲求が増幅されます。プレッシャーのある状況での意思決定を避けて、自分がすべきことを考えることができるようにしましょう。考える時間があるときは、我々はより正しい意思決定をすることができます。


4.1回限りの意思決定の方法

ひとつながりの意思決定の一つとして、行うように想像する時、素晴らしいことがはじまります。”したい”欲求はしつこいので、人は自分を欺こうとすることを知っています。私たちは、自分に対して”私は今ケーキが欲しい、今週の残りは健康的な食事をしよう”というようなことを言います。

しかし、このような”もし”や”でも”はまやかしのロジックです。”したい”欲求は、1回だけといって忍び寄ってきますが、これをシャットアウトしましょう。良いことをし続けるか、悪いことをし続けるかは、今ここで決まっています。


5.約束の仕組みを使う

長期的な利益のために、衝動で行動することを止めることが出来ます。約束の仕組みは、私たちに”したい”欲求から離れて、意思決定をできるようにします。

・小さな包装のものしか、ジャンクフードを買わない
・ジムに年間契約してしまう
・お金を貯金箱に入れて、お金を取り出すにはわらないといけないようにする。

あなたが自分自身の心理的な特徴や状況に合わせて作れば、約束の仕組みはベストな方法です。例えば、もしあなたが裕福ならば、年間のジムの会員権は運動をする十分な仕組みにはならないでしょう。また、あなたがジャンクフードの6つ入りパックを次々と食べるのを気にしないなら、小さな包装のものを買うという方法も有効ではありません。

あなたが、自分に有効な仕組みをみつけなければなりません。仕組みが完全でないと、”したい”欲求が現れて、あなたに取り付くでしょう。


この記事はPsyBlog"Five Techniques for Avoiding Short-Sighted Decision-Making"を翻訳しました。

(翻訳: SY)
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2011年03月21日

目標に突き進む方法

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【心理学実験で証明された目標に突き進むためのシンプルなテクニックのパワー】

私たちが時々人生で一番重要な目標から目を逸らしてしまう理由についてショート・ストーリーで説明しよう。きっとあなたにも見覚えがあることだろう。

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上司にもうんざりし、あなた自身も仕事に行き詰まっていて、転職を考えている。
数週間経つにつれて、本当にあなたの価値を認める組織で働くことがどれほど素晴らしいだろうかと考える。
これはチャレンジすべき良い目標だと考えるようになった。

しかし…

現在仕事は多忙で、給料も悪くないし、家庭生活にはゆとりがない。
経済面については言うまでもないが、履歴書を書き直して別の職場を探し始める時間がもてるのはいつになるだろうか。

転職の話とは別に、あなたは以前から楽器を習おうかと考えていた。
レッスンや練習時間を考慮すると、面接に行く時間もないだろう。

数カ月が経過した。 あなたは転職することを忘れ、ピアノを習うことを空想しはじめる。
ハードワークの後に、音楽に没頭するのはすばらしいことだろう。

不幸なことに、日常が再び邪魔をする。
電子ピアノの価格をネットで調べるぐらいしかできなくなった。
そして、あなたは人生で必要なものは一体何だろうか…などと悩みはじめる。

6ヶ月後、あなたは再び転職しようとする。
しかし、まだこれらの目標に対して現実的なスタートは切っていない。

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このように書いていると、数行に圧縮された6ヶ月の中で、明らかに目標に対するコミットメントがないことが問題だ。現実には、対処すべき日常生活もあるので、このパターンを見抜くことはもっと難しいだろうが…。

人生の目標を達成できない一つの大きな理由は、コミットメントの欠如である。この記事では、どうやって人生を変える有益な目標にコミットできるよう自分を動機づけるかを示唆する心理学実験を説明する。


■現実チェック
別の記事で、将来を空想することの危険性について見た
ここで示すGabriele Oettingenと共同研究者の一連の実験でも空想と関連するものであるが、今回取り上げる研究では現実の適切な量と組みわせた。 (Oettingen et al., 2001).

研究者たちは、136人の参加者を3群に割り当て、問題解決法に対する異なる思考法を提示した。この場合の問題とは対人関係に関するものであった。

1 ポジティブ群: 問題が解決された前向きなビジョンを想像する
2 ネガティブ群: 現在の状況のネガティブな側面について考える
3 メンタルコントラスト群: 最初に問題が解決された前向きなビジョンを想像し、それから現実のネガティブな側面について考える。両方を考えることで、参加者は空想と現実を比較する「現実のチェック」を行うよう求められる。

重要なことは、参加者は目標に対する成功の期待についても尋ねられたということである。

研究者は、コントラストのテクニックは、アクションの計画を行うことを促進させるという点と、責任を取るという点で一番効果的であることを明らかにした。ただしこれは成功期待が高い場合のみであった。対人関係の問題を解決できる期待が低い場合には、メンタルコントラスト群の参加者は、プランも少なく、責任をを取ることもあまりなかった。

メンタルコントラスト条件は、その目標が現実的に達成できるかどうかを決定させる力があるようだ。そして、もし成功すると期待できれば目標にコミットする。そうでなければ、目標をあきらめる。

このテクニックを使用すると、思考だけでなく感情にも同じことが生じる。
第2実験では、メンタルコントラストのテクニックは、成功が期待できるときには感情的にもコミットさせ、期待できない時には目標をあきらめる効果を持っていることを示した。ポジティブ群やネガティブ群では、こういった情緒的投資はなかった。

第3実験では、メンタルコントラスト条件の参加者は、それ以外の参加者よりも精力的で素早く行為を行うことが明らかになった。そしてやはり、成功が期待できない目標にはコミットしなかった。


■なぜメンタルコントラストが難しいのか
一種の現実チェックを行うことは、ストレートなテクニックのようだ。しかし、他の研究からそれが間違いやすいことも知られている。

将来に対するポジティブな空想は最初に、そしてその後に現実のネガティブな側面を考えなければならない。そして、空想と現実の差を注意深く考えることが重要だ。ある研究では、空想と現実を比較しないなら、このテクニックは役にたたないことを示した(Oettingen & Gollwitzer, 2001)。

空想と現実のギャップを明確にしなければならないもっともな理由がある。私たちは不一致を指摘されることを嫌うからであり、そして、それを避けるためにあらゆる心理的な歪曲を試みようとする。心理学者はこれをこの認知的不協和(互いに相いれない思考や行為に対す心理的不快感)と呼ぶ。

空想と現実を一緒に並べることを避けるのは、私たちの自然な反応だ。なぜならば、それは不快だからだ。突然行うべきことがらが明らかになると、それを知ることは憂うつにさせる…きっとやるべきことがたくさんあるだろう。さらに悪いと、私たちの目標は役立たないという事実に直面しなければならないこともある。

このテクニックが難しいもう一つの理由は、人はハッピーな思考から不快な思考へシフトするのが嫌いだということだ。私たちはハッピーなことについて考え続けたい。またネガティブなことを考えていると、ポジティブな思考へ切り替えることは難しい。


■心と頭
ちゃんと行われたならば、私たちに決断を強制するところがメンタルコントラストテクニックの利点だ。人は決断を避ける自然な傾向があり、失敗のない空想の世界にとどまることを好む。

メンタルコントラストは、私たちにこれが本当にあなたが求めたい目標か問い詰める。もしそうではないならそれを忘れて、別のことにうつったほうがいい。もし、成功する期待があるなら、心も頭もそれにコミットし、エネルギーと集中力を注いで即座に実行する。
そして、もし失敗を想像したなら後悔することを心配すべきだ。気にかけていないあいまいな目標とは、コミットしていない目標ということだ。他のことではなく、あることを行うと決断することは、認知的にも情緒的にも常に一種のリスクを伴う。ある目標達成に費やす時間は、別の目標に費やすことはできない。

一方、目標に対して十分にコミットできないなら、何かを達成することはできないだろう。メンタルコントラストのテクニックがあなたに求めるのは選択することだ。コミットすべき選択を選ぶことは、あなたの目標を現実にする旅路の最初のステップなのだ。(翻訳 山崎Y)


*この記事はPsyblogの「How to Commit to a Goal」の翻訳記事です。

関連記事:
ポジティブな空想の罠
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2011年02月22日

もっとクリエイティブに! 7つのちょっと変わった心理学テクニック

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【パズルの最後のピースが見つからない?
創造性を高めるため、研究をベースにした7つのテクニックを試してみては?】



 誰だってクリエイティブだ。時間と自由、自律性、利用できる経験、そして見習うべきロールモデルと継続のモチベーションがあれば私たちはみんな革新的になれる。


しかし、極めてクリエイティブな人であっても、課題にうんざりしたり、堂々巡りに陥ったり、行き詰まったりすることがある。
そこで、7つのちょっと変わった創造性を高めるテクニックをここで紹介しよう。これらは、創造性が高まると研究で示されたものばかりだ。


1.心理的距離
発想に行き詰ったときには、休憩を取ってその場から離れることがよいとしばしば言われるが心理的距離を取ることも役に立つ。

ある実験では、課題から距離を取って考えるようプライミングされた被験者は、課題と一体となって考えるようプライミングされた参加者よりも2倍も多く洞察問題を解決した。 (Jia et al., 2009)
ひらめきのヒント:あなたが今抱えている課題は、今いる場所から遠く離れていて断絶していると想像してみよう。これによってよりハイレベルの思考ができるはずだ。



2.未来に身を置く
心理的距離を取ることと同じように、時間的距離を取ることも創造性を高める。
Forsterら (2004)は、参加者たちに、今から1年後生活がどのようになるか考えるように求めた。
参加者たちは、明日どのようになるかを考えるよう求められた参加者よりも、より洞察力が高く、問題に対してよりクリエイティブな解決法を生み出すことができた。

時間と空間両方から距離を取って考えることは、抽象的に思考し、その結果よりクリエイティブに考えるきっかけとなるようだ。
ひらめきのヒント:未来に身をおいて考えてみよう。あなたの課題を1年、10年あるいは100年先の視点で見てみよう。



3.不条理な刺激
心というものは、経験から意味を見出したくなるものだ。経験が不条理なものであるほど、意味を見出すことは難しくなる。
ある研究の参加者たちは、パターン認識課題を行う前にフランツ・カフカの不条理小説を読んだ (Proulx, 2009)。統制群と比較すると、短編を読んだ参加者たちは、隠れたパターンを認識する潜在能力が高まったことを示した。
ひらめきのヒント: 『不思議の国のアリス』やカフカの『変身』、あるいは他の不条理小説を読んでみてはどうだろうか。不条理とは創造性を高める「意味ある恐怖」だ。



4.ネガティブな気分を利用する
ポジティブな情動状態は、問題解決と柔軟な思考を促進する、そして一般的に創造性の助けとなると考えられている。
しかし、ネガティブな情動もまた創造性を高める力を持っている。

161人の雇用者を利用したある研究では、ポジティブな情動とネガティブな情動の両方が高まったときに創造性も高まることを明らかにした(George & Zhou, 2007)。彼らは、職場でのドラマを前向きに利用しているようだ。
ひらめきのヒント: ネガティブな気分は創造性を抑制することもあるが、これを利用する方法を考えてみよう。何が起こるだろうか?



5.正反対のものを結びつける
生理学、化学、医学、そして物理学の領域のノーベル賞受賞者、ピューリッツァ賞受賞者や他のアーティスト22人のインタビューから、創造性のプロセスに対する驚くべき類似性が明らかになった(Rothenberg, 1996)。
2つの顔を持つローマの神ヤヌスにちなんで名付けられた「ヤヌス的思考Janusian thinking」は、多面的な反対物を同時に考えることである。統合的な発想は並置することから生まれるのだ。それは、最終的にできあがる商品や理論、アート作品からは想像できない。

物理学者のニールス・ボーアは、量子論における相補性原理(量子を、波と物質の両方として捉える)を考えるためにヤヌス的思考を使った。
ひらめきのヒント: 不可能だと思える対極のものを設定し、ばかばかしい組み合わせを考えてみよう。すべてがうまくいかなかったらヤヌスに祈るべし!



6. イバラの道を選べ
クリエイティブであろうとするとき、大抵の場合、既存のアイデアに基づいて考え、最短ルートを取ろうとする(Ward, 1994)。課題に対する多様性はどうでもいいなら、こういうやり方もいいだろう。

しかし、もっと目新しいことを望むなら、そのような発想では、既存のアイデアの延長線上のものに限られてしまうだろう。困難な道は、よりクリエイティブな解決法へと導くのだ。
ひらめきのヒント:歩きやすい道だからこそ、人も犬もその道を行くのだ。 オフロードを歩こう。


7.再概念化
  じっくりと問について考える前に性急に答えに至ることがある。研究では、問に対する最概念化に時間を費やすことが有益であることを示唆している。
Mumfordら( 1994)は、問題を解く前に、実験参加者に違う観点から問いを再概念化するよう求めると、よりクオリティの高いアイデアを生み出すことを示した。同様に、芸術家に関する古典的研究では、問題定義段階での発見に焦点を当てた人は、より素晴らしい作品を生み出すことを明らかにした(Csikszentmihalyi & Getzels, 1971)。
ひらめきのヒント:解決法は忘れて問題そのものに集中しよう。正しい問いを立てているだろうか。



いつも創造性を!
  ノーベル賞受賞者やアーティストの気取った話じゃなくても、これらの方法はすべて日常生活に応用できる。
対極のものを結びつけたり、困難な道を選んだり、不条理な刺激を受けるといったことは、友達へのプレゼントを選んだり、新たなキャリアについて考えたり、週末の予定を立てたりする時に応用できる。「仕事上のまじめな」創造性と同じぐらい「仕事外」のときの創造性も重要だ。

(この記事はPsyblogの「Boost Creativity: 7 Unusual Psychological Techniques」の翻訳記事です。翻訳 山崎Y)

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2010年09月20日

気分は創造性に影響する

クリエイティブであることはアーティストにはもちろんのこと、ビジネスや日常生活においても重要だ。
それによって、新たな商品やビジネスプランを考案したり、日々の業務を効率化することができる。

 創造性が人によって差があるのは否定できないが、その個人差は必ずしも生得要因によって決定されるとは言えない。日々のトレーニングや状況によって創造性は高まることもある。

 では、とのような状況におかれると人はクリエイティブになるのだろうか。Modupe Akinola教授は気分が創造性に影響すると主張する。
 
 Akinolaは、苦悩の天才ゴッホを例に挙げる。

 「ゴッホは『Starry Night』などのいくつかの傑作を生涯で最大の試練を経験した後に描いた。不幸であったりストレスを感じると、クリエィティブになるということがあるのだろうか」
 
 Akinolaは、この疑問に答えるべくハーバード大学のWendy Berry Mendesと研究を行った。
 
 彼らの実験は以下のようなものだ。
 実験参加者は自分の将来の夢についてショートスピーチを行った後、スピーチに対する評価を受ける。その評価は参加者によって否定的な場合もあれば肯定的な場合もあり、また評価しない場合もある、
 スピーチの評価を受けた後、参加者はノリと紙と色のついたフエルトを使って自由にコラージュを作成した。完成したコラージュは、どれぐらい創造的であるかプロのアーティストによって評価される。
 スピーチの評価によって参加者の気分を操作し、気分がその後のコラージュ作成の創造性に影響するかどうかを調べるというシナリオだ。
 
 被験者の気分の動揺しやすさを測定するためにスピーチの前後にデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)レベルを測定し、さらに気分に関する質問紙を実施した。

 内分泌学では、DHEASレベルは抑うつ状態のなりやすさを示す客観的指標として利用できることが知られている。これに加えて、気分についての自己報告を行うことで、気分の客観的、主観的ベースラインを得ることができた。
 
 この結果、ネガティブな評価をされた参加者は、ポジティブな評価や評価されなかった参加者よりもクリエイティブなコラージュを作り出した。
 彼らのコラージュはあきらかに創造性に必要なディテールや具体性への深い注意を反映していた。このグループの中でもDHEASが低い参加者は、もっともクリエイティブであった。

 この研究結果は、気分が創造性に影響する一つの要因であり、それは操作可能であることを検証した。

「ビジネスでは、気分が悪いときに重要な会議に出る状況がある。もし、創造性が気分の影響をうけるのなら、それを利用するよい方法は何なのか。万人受けする回答はないがこれについてさらに理解が必要だ」と Akinolaは言う。

 今回の研究における気分の操作には、スピーチに対する評価が使用された。これは、自分自身の自尊心や能力を否定されることによって起こった気分変容である。

 日常生活での気分変容には、今回のように自分に関する出来事で生じる場合もあれば、「通勤電車が遅れたために遅刻したので気分が悪い」といったように、自分自身とは無関係な要因で気分が悪くなることもあるだろう。
 このように気分が変動する原因にも様々なものがある。
 原因はどうあれ、気分の低下そものもが創造性に影響を与えるのか、あるいは、ある特定の原因で引き起こされた気分の低下のみが創造性に影響するのかはまだ明らかにされていない。

 今後の研究では、気分変動に関わる要因をさらに細分化し、どのような状況が創造性に関連するのか特定する必要があるだろう。
 
[元記事]The Dark Side of Creativity
posted by さいころ at 17:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 発想法・問題解決

2010年03月31日

ブレインストーミングはアイデアをダメにする

 組織がプロジェクトについての新たな発想を求めるとき、ブレインストーミングを行うことがある。
 しかし、Applied Cognitive Psychologyに近く掲載される研究では、ブレインストーミングはユニークなアイデアを得るための最善の方法ではないかもしれないと指摘する。

'That Was My Idea': Group Brainstorming Settings and Fixation

 テキサスA&M大学の研究者たちは、AOLのインスタントメッセンジャーで2〜4人の集団によるブレインストーミングを行い、これの効果を検証した。

 その結果、ブレインストーミングは多様な発想が創出されるどころか、たった一つの発想に固着し、その発想に対する同調性を生み出すことが示された。
 主任研究者のNicholas Kohnによると、他者の発想が無意識に頭の中に残り、結局その発想に似たようなことしか言えなくなるのだ。

 また他の研究では、ブレインストーミングの際に休憩を入れると、時間経過による発想の量と多様性の減少を防ぎ、問題解決が促進されることを示している。

 このように、ブレインストーミングといった集団の創造性は過大評価されており、実際には個人でのアイデア出しの方が効果的なこともある。
 ブレインストーミングをするならば、上記のような同調性が起こりうることを意識して臨む必要があるだろう。

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 ブレストとか「すごい会議」とかがちょっと前から流行っているので、会社でもブレストっぽいことを導入しているところが多くなりました。
 しかし実際にはそれほど効果があるのでしょうか。
 そもそも、ブレストメンバーの中に上司がいれば、自由な発想どころか上司の意向に沿った意見しかいえなくなる人のが多いんじゃないでしょうか。

 実際、プレストの欠点についてまとめられたこんな記事もあります。
 
 ブレストをダメにする6つの方法

 ブレインストーミングは死んだ! ブレインストーミング万歳!

「会社でブレストやってさー」というと一見知的でクリエイティブに思えますが、誰がやっても効果があるわけではなく、もともと独創的で精神的に独立した人があつまってこそブレストの威力は発揮されるんじゃないでしょうか。
posted by さいころ at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 発想法・問題解決