人はどうすれば幸福になれるのでしょうか?これは、経済学にとって大きなテーマであると同時に、最近では心理学にとっても大きなテーマです。
ミズーリ大学のKennon Sheldonとカリフォルニア大学リバーサイド校のSonja Lyubomirskyが481人の大学生を対象として、幸福についての研究を行いました。
この研究では、最初に被験者の幸福度を調査して、6週間後に彼らの生活での最近のポジティブな変化とそれが幸福にしたかを調べました。さらに6週間後に、その幸福度の向上が続いているかを調べました。すると、ほとんどのひとは、幸福度の向上は続いていませんでした。
どういうことでしょうか?
幸福度は、新しいパソコンを買ったり、恋人ができたりすると向上します。
しかし、やがてそれは薄れていきます。古いパソコンから新しいパソコンへの変化は、最初の1週間もすれば、もはや新しいパソコンが当たり前になり、新しい恋人とのデートも次第に「もっといい人」に憧れたり、「この人でもいいけど、もっとここを直せばいいのに」と勝手にハードルを上げてしまって、幸福度の向上が薄れていきます。
それでは、幸福度を常に向上させるために、常にお気に入りのものを買うという戦略はアリでしょうか?
きっと、お気に入りの靴をどんどん買っていけば、そのうち家に革靴が50足も溜まるでしょうが、きっと幸福度はそれほど上がりません。
Sheldonの提唱するHedonic Adaptation Prevention (HAP) モデルでは、この幸福度の向上を出来るだけキープするヒントをくれるかもしれません。
ヒントとしては、
幸福度を上げてくれたイベントを再評価する、また
様々な面を見るというものです。ざっくり言えば、靴を買ったら、買った靴を履いて外出をしたり、靴を磨いたり、その靴メーカーについて書かれた雑誌のバックナンバーを読み返すといったことでしょうか?
もちろん恋人が出来た場合は、その恋人について考えたり(言われなくても考えていそうですが)、二人でネズミの国や日本昭和村へデートに出かけた時のことを妄想したり、二人で行ったフレンチレストランについて思い返すといったことが考えられます。
人の幸福度の向上はほっておくと、日常状態に戻っていってしまいます。この戻るのを防ぐのが、再評価というプロセスになります。
この記事はミズーリ大学の
Happiness Model Developed by MU Researcher Could Help People Go From Good to Greatを参考に書きました。
また、以下の論文を参考にしました。
Kennon Sheldonら,2012, "The Challenge of Staying Happier: Testing the Hedonic Adaptation Prevention (HAP) Model", Personality and Social Psychology Bulletin, 2012; 38 (5): 670 DOI: 10.1177/0146167212436400
(文・絵: やまざきしんじ)