2014年05月19日

運動する気になる: すぐに出来る簡単なメンタルトリックがここにあります。

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運動習慣に関する自伝的記憶を活性化する効果の最初の研究です。


新しい研究によると、たとえそれほど楽しくなかった記憶でも、最後に運動した時のことを考えることでもういちど運動したくなります。

ニューハンプシャー大学のBiondolilloら、2014年の研究で、ある参加者には運動に関する良い記憶を、もう一方には嫌な記憶を思い出してもらいました。


この研究では、記憶に関して何も指示を受けなかった人たちとの比較して、運動に関する良い記憶を考えた人は、あとでより運動をすることが分かりました。

一方、運動に関する嫌な記憶を思い出した人でも、あとでより運動をすることが分かりました。


この結果は、参加者の運動に関する満足度、以前の運動へのモチベーションやレベルも考慮に入れたものです。


この研究者は、以下のように説明しています。

参加者は個人的なモチベーションの記憶を記述する指示を受けただけで、この指示は広範な調査の中に埋め込まれたものです。

また、参加者は、運動活動を増やすためにモチベーションとして、日常生活での記憶の使い方については問われたのではありません。

明確な指示や励ましがないのに、私達の研究の参加者の大学生は、大きな公共の大学という多くの邪魔がある中で、日常レベルでの運動活動の増加を報告しました。

これらの結果は、自伝的記憶の活性化が個人が健康的なライフスタイルを選ぶようにさせるための有効なツールになることを示す最初の実験的な証拠を示しています。



記憶の干渉の穏やかな特性を考慮すると、これらの結果は驚くべきものです。

ほんの少しだけメンタルトリックを使うことで、どんなことが可能になるか想像してみましょう。


この記事はPSYBlogの"Get Motivated to Exercise: Here’s a Simple Mental Trick You Can Do Right Now"を翻訳したものです。

写真はFlickrのOliverさんの写真を使用しました。


(翻訳: やまざきしんじ)

2014年01月24日

プロプレイヤーのモチベーションの源泉は?



 野球やバスケットボールの有名選手は複数年契約で巨額の年俸を受け取っています。単年度契約に比べて複数年契約は、選手の側から見るとリスクに強いため魅力的に見えます。
 でも、単年度契約の方が、毎年頑張ったりしないのでしょうか?複数年契約だと、契約更新のシーズンだけいつも以上に頑張るなんてことがありそうです。
 これは、「契約効果」(contract effect)というものです。

 ミズーリ大学のKen Sheldon教授と、学部生Mark Whiteは、これを全米プロバスケットボール(NBA)と野球のメジャーリーグ(MLB)のプロ選手230人の10年以上の成績から調査しました。 
 このデータから金銭的な影響が大きい契約更新するシーズンと、その影響の少ない契約更新した直後のシーズンの成績を比べたのです。

 すると契約更新のシーズンは、いつもよりも成績が上がっていることが分かりました。
 さらに予想されるように、シーズン中に契約更新のサインをすると、成績はいつも通りに落ちていました

 契約更新の前に選手の成績が上がるというのは当たり前の結果とも思えます。でも、心理学では内発的動機づけという言葉があります。報酬や頼まれたから行うよりも、自らの意思で行う方がモチベーションが高いというものです。
 
 ビジネス書などでは、「トム・ソーヤのペンキ塗りの話」もよく引用されます。 
 これは、トム・ソーヤがいたずらの罰としてペンキ塗りを命令されてやっている時に、友達が近くを通りかかります。トムはこの時にとても楽しそうにペンキ塗りをすることで、友達が是非ともペンキを塗ってみたいと思わせるのです。
 結局、トムは、友達の「宝物」と交換でペンキ塗りをさせてあげるのです。

 一流プレイヤー達は、トムの友人がペンキ塗りを喜んでやるように自発的に行うのだとしたら、むしろ契約更新直後の方が成績がいいはずです。金銭的な心配もないし、好きな(はずの)野球やバスケットボールに打ち込めるのです。
 しかし、実際には外発的動機づけが大きかったようですよね。
 
 この研究は、一流選手のモチベーションの源泉としての、外発的動機づけ(この場合はお金)の影響の大きさを明らかにしたものです。
 何百万人のプレイヤーの頂点に立つその分野のトップのバスケットボールや野球の選手の結果ですが、これはビジネスマンにも応用できそうな知識ですよね。


 この記事はミズーリ大学の"Athletes’ Performance Declines Following Contract Years, MU Researchers Show"を参考に書きました。

文中の写真はflickrのPaolo Rosaさんのものを使用しております。


(文:やまざきしんじ)

2013年11月15日

一人で学ぶ?みんなで学ぶ?

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高いスキルを有した人材になるためのコツにはどういったものがあるでしょうか?
高いスキルを持つには、高いスキルを持った人の近くにいることが大きな鍵です。では、そのためにはどうしますか?

カナダのブリティッシュコロンビア大学のMichael Muthukrishnaは、コミュニティのサイズと技術の伝承の関係を調査しました。これはそれぞれ100人の被験者を対象に、デジタル写真編集と、紐を縛るという2つの技術を、次のグループに伝えるという実験を10回やります。そこから、この技術の伝承の伝言ゲームがどのくらいうまくいくかを調べるというものです。

この時、技術の伝承については1人の師匠が1人の弟子に教えるという方法(昔ながらの職人モデル)と、5人のグループの師匠が5人のグループの弟子に教えるという方法(グループ指導モデル)の2つの指導方法で、それぞれ技術の伝承の精度がどうなるのかを調べました。

このうち、デジタル写真編集についてのグラフを論文より見てみましょう。下のグラフで、横軸は技術を伝承していく世代、縦軸は画像処理のスキルレベルです。赤い線は5人のグループで技術を伝承した場合、青い線は1人で技術を伝承した場合です。

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これを見て明らかなように、1人で技術を伝承するとレベルはどんどんと落ちていきますが、5人のグループで技術を伝承するとレベルはどんどんと上がっていきます。対象となるスキルや、伝承にかける時間によっても変わるでしょうが、1人よりも5人の方が世代を経た場合にスキルの向上に役立つのは間違いないでしょう。


この知見は、これから増えていくだろう学校での学習や独習について、また仕事などで使用する様々な技能についても応用できそうです。つまり、一人が一人に教えるモデルでなく、学ぶために複数の人が集まる場が大事ということを示唆しているのではないでしょうか?

高いスキルを要求される人たちは、似たものが集まる場にでかけてみてはいかがですか?
また、物事を学ぶ時には人と一緒に行うと効率的に学習できそうですよね。


経営学者のマイケル・ポーターは産業クラスタということを述べていますが、まず、これを思い出しました。分かりやすい例がシリコン・バレーでしょうか。シリコン・バレー近辺にはハイテク企業が多く、そういった人材もハイテク企業を起業するために必要なものも揃っています。また、愛知県には自動車産業があるため、自動車メーカーだけでなく、その部品に必要な金属、合成ゴム、プラスチックなどのメーカーや各種機械メーカーが揃っています。




また、リチャード・フロリダはクリエイティブクラスという言葉を流行らせました。クリエイティブクラスが住むところは、外部に開放的で人口が多く文化的なものが多いということです。歴史的に見ても、一定以上の人口がいるところは、それだけで文明が発達するキーになりやすいです。東京は長らく世界最大の都市でしたが、現在も文化的許容度が高い良い都市ですよね。




この記事はブリティッシュコロンビア大学の”Social networks make us smarter”を参考に書きました。

元の論文はこちら。文中のグラフもこちらを使用しております。

写真はflickrのjiscinfonetさんのものを使用しました。


(文: やまざきしんじ)

2013年09月17日

理想的な労働環境を作るための6つの心理学のコツ

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完璧なオフィススペース: 美しいカーブ、自然な眺め、緑


普通、オフィスで座って、仕事をします。

スクリーンから少し目を離したら、何が見えますか?
どのくらい机は整理されてますか?それは、(個室でない)オープンなオフィスですか?
窓の外が見えますか?植物が視界に入りますか?
自分の席の近くの装飾を何か選びましたか?

人がどのように働き、どのくらい快適に過ごせるかに対し、これら全てのことが心理学的に効果があります。それでは、心理学の研究に基づいた、理想的な労働環境を作るための6つのコツを見ていきましょう。


1.開放的な環境を避ける(出来るなら)

個室でない、開放的なオフィスは、コミュニケーションを促し、チームを結束させると考えられています。少なくとも、理論上。

303のアメリカのオフィスビルのデータを分析したKimとDear,2012年の研究によると、コミュニケーションを加速させるという多少の事実はありましたが、それがチームを結束させるという証拠はありませんでした。

この最初に思いつく、開放的な環境のコミュニケーションにおけるちょっとした利点が、デメリットに比べて激しく過大評価されています。(個室でない)開放的なオフィスで働いたほとんどの人は、それがどういうものかを正確に把握しています、うるさくて、気が散らされて、プライバシーがない、と。

予想通りに、プライベート環境の保たれたオフィスで働く人は、職場環境においてかなり幸せです。

ほとんどの人は、開放的なオフィスかプライベート環境の保たれたオフィスかを選ぶことができません。そのため、ヘッドフォンを使う、小さな仕切りを作る、机の下に隠れる、などの自分なりのプライバシーを保つ方法を作る努力をすることでしょう。


2.散らかったデスク・綺麗なデスク論争

散らかったデスクは、有益でしょうか、それとも有害なんでしょうか?散らかったデスクは本当に、散らかった精神の表れなんでしょうか?

どうやら研究によると、職場環境での秩序や無秩序は、異なった心理的な影響を及ぼすようです。

この研究(英語記事)では、散らかったデスクは創造性を増す傾向があり、一方で整然としたデスクは従順さと、一般的な道徳的な行動を促進します。


つまり、散らかったデスクと綺麗なデスクのどちらが良いかは、あなたがどのような成果を求めるかによるのです。


3.カーブは美しい

心理学では、散らかったデスク・綺麗なデスク論争には明確な答えを示せませんでしたが、カーブか直線かということには明確に答えられます。

DzkirとReadの2011年の研究では、被験者はエッジが直線のインテリアと、エッジが曲線のインテリアを示されました。

すると被験者は、曲線の環境をより平穏で、穏やかで、リラックスできると感じました。カーブの勝ちです。

Vartanianら、2013年の研究でも、まったく同じ効果が他の実験で示されました。人は、一般的にカーブした空間の方をより美しいと判断するのです。


4.眺めのいい部屋(もしくは風景画)

多くの人は、自然の中を散歩することが心を穏やかにすることを知っています。実際に、研究でも、自然を散歩することで20%記憶力が増える(英語記事)ということが分かっています。


では、職場環境の中に小さな自然を持ってくるのはどうでしょうか?

Berto,2005年の研究で、実際に確認しました。この研究では、単なる自然の絵でも認知的な機能を回復させることを示しました。

VerlardeとTeit,2007年の研究では、風景を見ることの利点は、健康や幸福だけでなく、短期的なストレスを軽減させる効果まであることが分かりました。


5.植物

自然の中を散歩したり、自然の風景が心を穏やかにするとしたら、きっと植物もよい働きをしそうです。

実際に、Raaasら2011年の研究では、オフィス環境に4つの植物を置いたところ、人々の注意力は、植物のない環境に比べて回復することが分かりました。


6.装飾

無駄がなく、清潔で、効率的な職場環境は、本当に仕事が行われているモデル環境と見なされています。

しかし、綺麗なデスク提唱者のような、職場ミニマリスト(最小限の物を置く人)は、研究によると残念な結果になりました。

KnightとHaslam,2010年の研究では、装飾のないオフィス環境と、実験者か被験者によって装飾されたものと比べました。

幸福、細部への注意力、情報のマネジメントなどに職場の装飾の効果がありました。

そう、装飾された職場は、装飾のない職場よりも良かったのです。自分で装飾することを許されることでエンパワーされた人は、高い生産性を持ち、より幸せを感じました。

被験者の一人は述べています。私は多くの人の感想と同じだと確信しています。


植物と絵のある職場に入ると素晴らしい。それがたとえガラスの箱(職場でも)、より家庭的と感じるのです。



この記事はPsyBlogの"6 Psych Tips For Creating The Ideal Workspace"を翻訳したものです。


(翻訳: やまざきしんじ)

2013年04月26日

握ることで記憶力アップ

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以前、箱から出るだけで想像力がアップするという記事を書きましたが、今回は手を握るだけで記憶力がアップするというものです。これはモンクレア州立大学のRuth Propperらが、51人の右利きの被験者を対象として、72単語のリストを覚えるというテストをした結果です。

被験者は、単語を覚える前と思い出す前にそれぞれ右か左手で5cmのボールを握ります。また、対照群として、ボールを握らないグループも用意します。

つまり、
・覚える前に左手で握る、思い出す前に左手で握る
・覚える前に右手で握る、思い出す前に右手で握る
・覚える前に左手で握る、思い出す前に右手で握る
・覚える前に右手で握る、思い出す前に左手で握る
・ボールを握らない

5つの条件で単語リストを覚えて、思い出すというテストをしたのです。その結果、単に手でボールを握るだけで、記憶の結果が変わったのです。

それでは、どの条件が一番テストの結果が良かったでしょうか?

とても意外で面白い結果になりました。以下が、単語テストの結果です。下に書いた、右、左というのは、記憶する前、思い出す前にそれぞれどちらの手でボールを握っていたかを示します。

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(上のグラフは下の論文より引用、ただし、グラフ記載の条件は翻訳しています)

上を見て分かるように、覚える前に右手を握っていて、思い出す前には左手を握っていたグループが最もスコアがよくなりました。ただし、覚える前と思い出す前の両方で右手を握っていたグループは、何もしなかったグループよりもスコアが悪くなりました。そして、覚える前に左手を握っていたグループはよりスコアが悪くなりました。

このテスト結果は、HERAモデル(Hemisphereic Encoding/Retrieval Asymmetry モデル、記憶・想起非対称半球モデル)というものによって予想されるものです。このモデルでは、記憶には左前頭野が、想起には右前頭野が関係しているため、事前に握ることでその領域が活性化すると予想します。

被験者数が少なめとか、左利きだとどうなんだ?、と気になるところはありますが、単純で使えそうなテクニックですね!


この記事は以下の論文を参考に書きました。
Ruth E. Propperら, 2013, "Getting a Grip on Memory: Unilateral Hand Clenching Alters Episodic Recall.", PLoS ONE, 2013; 8 (4): e62474 DOI: 10.1371/journal.pone.0062474

(文・絵: やまざきしんじ)

2013年03月12日

大人になってもテストが大事

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生涯学習が大事というのは常々言われていることです。アンドラゴジーという言葉は聞いたことがなくても、ビジネスパーソンならばドラッカーの本などで「生涯学習」といった概念に触れている方も多いのではないでしょうか。

生涯学習は大事ですが、学習プロセスの中に”テスト”を組み込んでいる方はあまりいないのではないでしょうか?


このさいころニュースでも物事は覚えることよりも、思い出すことが大事ということをしばしば書いていますが。今回は”テスト”について少しだけ紹介します。

ライス大学のAshley MeyerとJessica Loganはテストの効果について研究をしました。この研究では18から25歳の若い人たちと、55から65歳の年配の方の2つのグループに対して、動物や天文学や医学などの新しいことを覚えてもらいテストをしました。

すると、最初のテスト点数は、若い人の方が良かったです。これは若い人の方が物事を覚えやすいということで納得できるでしょう。ただし、テストの後で結果をフィードバックしてから、今度はもう少し難しいテストをすると、年配の人も若い人と同様に、より覚えていたのです。最初の記憶力という点では若い人の方が覚えが早いですが、テストを通じて学習する量については、若い人でも年配の人でも変わらなかったのです。

テストをすることによって、自分の”実力”を知ることができ、それが学習をしやすくなったり、テストすること自体が物事を思い出す訓練になるといった面はありますが、テスト結果のフィードバックから学ぶ量は年齢に関係がないというのは面白い結果でした。そういえば、自分も最近はテストなんて受けていません。ちょっとテストに興味が出て来ました。


この記事は以下を参考に書きました。
American Psychological Association (APA). "Test-taking may improve learning in people of all ages." ScienceDaily, 7 Mar. 2013. Web. 12 Mar. 2013.

(文・絵:やまざきしんじ)

2013年02月18日

スキル向上の課題は、変化していく

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チームのメンバーの営業成績が落ちている時、それは何が原因でしょうか?景気などの外部環境でなければ、そのメンバーの問題ですが、それは何が問題でしょうか?

努力しないから?プライベートで心配事があるから?それとも..


カナダのトロント大学ロットマンスクールのMaria Rotundoは、700人以上のアメリカのプロバスケットボール選手(NBA選手)を対象とした調査をしました。この研究によると、約10%の選手が先シーズンとは違うスキルを伸ばすことに注目しているのです。

そういえば、サッカーで有名なメッシという選手はデビュー当初は右足のコントロールに難があり、右足で強いシュートが打てなかったのですが、3シーズン目位からは右足でもシュートを決めれるようになりました。また、今シーズンでは以前にほとんど決められなかったフリーキックでのゴールも増えています。これは世界最高と言われるほどの選手でも、シーズンごとに課題を決めて、それを解決していることですね。

同じ事はサラリーマンにも言えるのではないでしょうか?
多くの企業で、年ごとの目標管理といった制度を取り入れていると思いますが、ここに現れないものでも何か個人ごとに課題を決めていたりしないでしょうか?

スポーツにかぎらず、他のチームメンバーの顔ぶれや、外部環境の変化などによって、課題は変化していきます。チームリーダーは各メンバーの長所・短所などを考慮しながら、フォーカスを変えていくことで、チームのパフォーマンスを上げ、また、各人のモチベーションを保つことができるのではないでしょうか。これは、個々のメンバーの責任でもありますが、チームリーダーが上手く導いてあげることでもあります。


この記事はトロント大学のロットマンスクールの"Refocusing important on and off the court, says new study."を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2013年02月04日

衝動のコントロールにモダフィニル

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衝動のコントロールは、ダイエット、禁酒、禁煙、どれにも大事なものです。もちろん、仕事中にキレて、お客さんの訪問中に席を立つなんてことはあってはいけませんよね。セルフコントロールの能力を高めるための方法は、古くからあるものです。これは、キレる前に10数えるというものです。

別のアプローチとして、オランダのアムステルダム大学のLianne Schmaalらの行った最新の研究では、覚醒促進剤に使われるモダフィニルが、衝動のコントロールの助けになるというものです。実験では、これによって飲酒量を減らすことができました。また、コカイン中毒にも有効という研究もあります。

一般的にはモダフィニルは睡眠障害に使われていますが、このモダフィニルによって認知能力が上がるという研究もあります。

薬には副作用がありますのでそのまま服用することは危険がありますが、薬と神経科学と心理学はつながっていて、面白いですね。


(日本国内でこのようなモダフィニルの使用方法は合法かどうかは知りません。ご注意ください!)

この記事は以下を参考に書きました。
Elsevier. "If you are impulsive, take modafinil and count to ten, research suggests." ScienceDaily, 1 Feb. 2013. Web. 4 Feb. 2013.

(文・絵: やまざきしんじ)

2013年01月15日

きちんと検証された2つの効率的な勉強法

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勉強をするポイントはなんでしょうか?生まれつきの知能も大事かもしれませんが、むしろ勉強するためのテクニックが大事ということが言われています。

ケント州立大学John Dunloskyらは、よく使われている学習テクニックがどのくらい有効なのかを調べました。この研究によると、予備テストというような何度もテストをすることと、一つの内容を何回かに分けて勉強することがやはり有効ということがわかりました。

以前、”学習におけるひとつの冴えたやりかた”というタイトルで、暗記には覚えるよりも、思い出す練習をすることがいいということを書きましたが、やっぱりテストを何度もして”思い出す”練習をすることが有効ということです。


一方で、要約する、教科書やノートに線を引く、キーワードを記憶する、イメージ記憶、何度も読む、といったことは効果があまりなかったり、限定的だったりすることが分かりました。たしかに、教科書に線をいっぱい引いている人はあんまり勉強できなさそうで、実際に勉強できる人は問題集を解いてますよね。

勉強法は工夫すれば上達していきますが、そうはいっても自分一人の経験では、本当に有効かどうかなかなかわかりません。こういった研究があると、たった一人の経験でなく、正しいことがわかりますね。

この記事は以下を参考に書きました。
J. Dunloskyら, 2013, "Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology. ", Psychological Science in the Public Interest, 2013; 14 (1): 4 DOI: 10.1177/1529100612453266

(文・絵: やまざきしんじ)

2013年01月11日

その3秒が命取り?

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仕事を効率的に行うためには、邪魔をされないことが大事です。これはよく言われていますよね。会社ではメールを決めた時間以外は読まないという自分ルールを決めている人もいるかもしれません。

ミシガン州立大学のErik Altmannらが仕事の妨害と集中力に関して300人を対象として研究をしました。この研究では、ちょっとした邪魔がミスを2倍にすることを明らかにしました。タスクの途中で、稀に2文字の入力をするように言われると、その後のミスの確率が2倍になります。

これは、ほんの僅か(平均2.8秒)だけ邪魔が入っても、その後のミスが増えることを示しています。もちろんずっとミス率が上がり続けるわけではありません。しかし、仕事中に、ちょっと窓の外を見る、メールをチェックする、同僚の話に相槌を打つ、ほんのわずかなことがミスを誘発するんですね。注意しないと...


この記事はミネソタ州立大学の"BRIEF INTERRUPTIONS SPAWN ERRORS"を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年11月30日

口紅の魔法は、やっぱり赤で!

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今日、紹介するのは南ブルターニュ大学のNicolas GuéguenとCéline Jacobに約450回の来店のチップについてのシンプルな調査です。

最初にピンクかブラウンの口紅をつけるか、口紅をつけていないウェイトレスは、お客さんの30%からチップをもらいました。一方、赤い口紅をつけると、男性のお客さんの50%からチップをもらいました。ちなみに女性のお客さんからもらえるチップは、口紅の色によって変わりませんでした。

赤い口紅をつけるだけという非常にシンプルなことながら、チップをもらうならば絶大な効果ですね。きっと営業や店員さんも使えるでしょう。そういえば、以前書いた”名刺としてのブランドロゴ”というものは、ブランドロゴのついたTシャツが効果的というものです。こちらも読んでみて下さい。



この赤色の効果は男女ともに異性をひきつけるものとして知られています。これまでさいころニュースでも、色に関する研究をいくつか紹介してきました。色の心理学については不勉強なのですが、実験で効果があるのはたいがい赤ですよねー。
やっぱり女性にモテる服の色
やっぱり男性にモテる服
オークションでは赤を使え
赤色効果の限界


また、Nicolas Guéguenは僕の好きな研究者で、これまでもシンプルで効果的な様々な研究についてさいころニュースで取り上げてきました。
バストのサイズでどのくらい誘われる?
恐るべき説得力の「自由だ」テクニック!
化粧で、男性を引き寄せる効果は?
笑顔の魔法! 5.5倍の力
魔法のタッチで売上アップ
大ボリュームで売上アップ


読んでない方は、ご自由に読んでみてください:->

(文・絵: やまざきしんじ)

2012年11月26日

仕事をサボる原因はなに??

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サリスベリー大学のWayne Deckerは質問紙を使って、仕事での”さぼり”についての調査をしましたた。これは192人の男子学生、158人の女子学生、一人の性別未回答の学生からなる351人のマネージメントコースの学部生を対象として6ページからなる質問紙で調査を行いました。なお、351人のうち33人は以前マネージャークラスの仕事をしていて、74人はフルタイムで働いていた経験があります。

この調査では、仕事での”さぼり”と”遊び”など以下の7つの傾向について調査しました。
1.サボり傾向
2.仕事を遊びやゲームとみなすか
3.上司のリーダーシップの質
4.仕事の負荷
5.上司による監視
6.内発的モチベーション
7.楽しみの重要さをどのくらいとみなしているか

すると、この調査から仕事のサボり傾向は、順に
仕事の負荷が高いとサボらない (-0.54)
上司による監視が高いとサボらない(-0.42)
モチベーションが高いとサボらない(-0.34)
仕事を遊びやゲームとみなしているとサボる(0.32)

ということが分かりました(カッコ内は相関係数)なお、上司のリーダーシップはほとんど関係ないということが分かりました。

この研究では仕事を遊びやゲームとみなしているとよりサボるという結果になりましたが、別の研究ではそれほどではないという結果になっています。また、デザイナーなどクリエイティビティが必要とされる職種では、遊びの要素を入れることでより仕事の成果に結びつくという研究もあります。

また、この研究は大学生を対象としているため、比較的低レベルの仕事を対象とした調査となっている部分があります。そのためにサボらせないポイントは、「ちゃんと仕事を与えて」、「ちゃんと監視する」という少しあたりまえものになってしまっています。


この記事は以下の論文を参考に書きました。
Wayne H. Decker, 2012, "Unauthorized Fun at Work (Goofing Off): Predictors and Implications", International Journal of Business and Social Science Vol. 3 No. 5; March 2012


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年10月16日

不安はテストの敵じゃなく、味方なのかも!?

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学校のテストはストレスがかかるものです。学校のテストが不安で眠れない...というほどテストに入れ込んでいた人は少ないかもしれませんが、それでも不安なのは間違いないです。ちなみに、不安によるパフォーマンス低下は「どうせみんな不安」で、一律であるような気がしますし、もしかするとストレス耐性によって違いそうな気もします。


このことについてイギリスのケンブリッジ大学のMatthew Owensらが能力と不安がどのようにテストに影響を与えるかを調査しました。

この実験は12歳から14歳の96人の学生を対象として、ワーキングメモリと不安をテストしてから、認知能力と数学のテストをしました。すると、ワーキングメモリが多い人は不安であるほどテストの結果がよく一方でワーキングメモリが少ない人は不安であるほどテストの結果が悪いことが分かりました。

つまり、この実験では、能力が高い人にとっては不安がパフォーマンスを向上させ、能力が低い人にとっては不安がパフォーマンスを低下させたのです。能力が高い人は、不安によってパフォーマンスを向上させるというのが面白いですね。


この記事は以下を参考に書きました。
British Psychological Society (BPS). "Exam anxiety may lead to better grades." ScienceDaily, 10 Oct. 2012. Web. 16 Oct. 2012.

(文・絵: やまざきしんじ)

2012年09月14日

そのアイスを食べるのはセルフコントロールの中か?外か?

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以前、”ダイエット中は怒りっぽい”という記事を書きました。この記事はダイエットというセルフコントロールをしている時は、セルフコントロールの資源がダイエットに取られるので、他のセルフコントロールがしづらくなるというものです。


このように人間のセルフコントロールの資源は有限で、いろいろな物事を自制していると、どこかでその分セルフコントロールが効かなくなるということがこれまで言われてきました。がんばって残業をしていると帰りのコンビニでつい甘いデザートを買ったり、帰宅してから高額な趣味のものをアマゾンで買ってしまったりというのもセルフコントロールと関係がありそうです。

最近の研究では、インセンティブ(アイスクリーム好きの人は、暑い日にはアイスを自重するのが大変でしょう)、タスクの困難度の認識(社長の前で、怒りを抑えこむのは簡単です...特にボーナスの直前なら)、意志についての信念(セルフコントロールは有限か?無限か?)、といったことがセルフコントロールに影響を与えていると言われています。

また、このセルフコントロールについても2つの考え方があります。例えば、残業の後で、帰りのコンビニでデザートを買ってしまう場合に
・残業でセルフコントロールの力を使ってしまったので、”つい買ってしまった”セルフコントロールの欠如
・残業で疲れたし、残業代も少しもらえるし、”あえて、自分で買うことを選択した”セルフコントロールの範囲外とした

また、実際には「よし、この仕事を終えたら、帰りにデザートでも買ってがんばるぞー」と思って残業することもあります。これはセルフコントロールでなく、残業についてインセンティブを自分でどう与えるかということから来る話です。


セルフコントロールといってしまうと一緒くたにされてしまいがちですが、セルフコントロールの問題には、上記のような自分で決めたセルフコントロールの範囲の問題と、インセンティブの問題が絡んでいるのです。単に、「夜にデザートを買ってしまった」ということでも、別々の状況では、対処方法が違うということですね。

ちなみに、人間は自分をうまいこと合理化するので”つい誘惑に負けて買ってしまったデザート”でも、仕事の時に「これが終わったらデザートを買って帰るから、もうひと頑張りしよう」と考えてたんだから、と後付けで理由を作ってしまい自分は気づかないことがあるので注意しましょう。

この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science. "Self-control may not be a limited resource after all." ScienceDaily, 12 Sep. 2012. Web. 14 Sep. 2012.

(文・絵: やまざきしんじ)

2012年09月10日

勉強できない人ほど過信する、勉強できる人は早めにアラートを出す!

以前、「8割の学生は自分の実力を過大評価」という記事を書きました。これは、勉強ができない学生ほど自分の成績を本来より高く見積もってしまっており。上位20%程度の学生は、時分の実力を本来より低く見積っているというものです。

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これは普段から勉強をしている成績がいい人ほど、より万全の態勢でテストに望み、きちんと準備をするが。一方で勉強ができず、より頑張らないといけない人ほど、より「大丈夫!」と考えて勉強をしない傾向があるということも説明できます。

私の周りを見ていても、出来る人ほど、前からきっちり準備をしてテストに臨んでいて、直前にバタバタすることがありません。一方で頑張らないといけない人ほど直前にバタバタしたり、下手するとバタバタもがくことすらしていません。


また、勉強については早めにアラートを上げる能力というのも大事です。うちの塾の場合も、出来る人ほどより早い段階で「分からなーい!」と声を上げる傾向があります。あと少しで分かるなどと自分を過信しないで、きちんと聞いてくるんですね。テストまでだいぶ時間があっても、わからなくなってきた段階ですぐに質問をしてくるので、より準備もできますし、きちんと理解してから次のステップに進むのでその先の学習効率も高いです。


物事を覚えておいたり、仕事を効率的に行うためにも、自分について俯瞰して理解するというメタ認知能力が大事です。また、勉強をすること自体より「いかにより効率的に勉強するか」という仕組み作りに意識を注げるかも勉強をする時にはとても大事なポイントになってきます。


(文: やまざきしんじ)

2012年09月04日

読書後のちょっとした休憩が記憶にも効く!


本で読んだことを覚えておくことが難しいなら、整理する時間をとってみましょう。


私は、電車で読んだ本のことをかなり覚えています。

私はいつも、電車旅行には何かがあると考えていました。列車で揺られること、停止のリズム、どんどん変わっていく風景。たぶん、これらの組み合わせが、いつもの環境では得られないような集中を促進させるのでしょう。

もしくは、答えはもっと簡単なものかもしれません。

学習の後のほんの少しの休憩時間が記憶を助けるということを、心理学者は発見しています。研究によると、学習の後にほんの少し休むと、連続して他のタスクをした人よりも、より数字列を思い出します。

ほんの少しの休憩が記憶の定着を手助けし、思い出しやすくすると一般には考えられています。逆に言えば、すぐに他のタスクをしてしまうと、記憶が定着するチャンスがないと考えられています。

それでは、どうして電車で読んだ本をより思い出しやすいのか考えてみましょう。

いつも本を読んでいる自宅でなく、電車では窓の外を見たり、次の駅で降りる人を見たりしてしばしば読書を止めます。これらは、研究でいうところの休憩時間なのかもしれません。

すると問題は、このようなとても短い期間の休止でも、同じようなことが起こるかです。そのことを考えてみましょう。


10分の休憩

10分の休憩の効果についてのDewarらの2012年の新しい研究は、7日後にストーリーを想い出すかテストするというものです。


この研究では、物語を読んだ後に10分の休憩をすると、7日後にテストをしても記憶の定着を高めることが分かりました。実際に、休憩をとった人は7日後のテストで、休憩なしの人が15から30分後に思いだしたのと同じくらい覚えていたのです。

このことが、どうして電車で読んだ本をより明確に覚えているかを説明してくれるでしょう。

読書の途中で感情に浸って一時中断したりといったことがあると思います。これは読書としてふさわしいだけでなく、記憶の助けにもなっているのです。


この記事はPSY BLOGの"Memory Enhanced by a Simple Break After Reading"を翻訳しました。
(訳者によって、太字で強調をしてあります)


(翻訳; やまざきしんじ)

2012年08月30日

的に当たると大きく見える?もしくは、大きく見えると的に当たる?

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韓国のギョンサン国立大学のYang Leeらは9人の熟練した射手を対象とした実験をしました。これは50メーター先に5つの異なるサイズの的をおいて、矢を放った後に、その的の大きさを聞くというものです。ちなみに射手が矢を放ったあとは手前におおいがかかって、矢がどのように飛んだか、そして的に当たったかどうかを見ることはできないようにしました。


この実験では、矢を放った後に被験者である射手に、10mmから27mmのカードのどれが先ほどの的の大きさと同じくらいかを尋ねました。このカードの大きさは50m先の的と同じくらいにしてあります。すると、射手はショットが成功した場合には、的がより大きく見えていることが分かりました。

これは、人は上手く矢が射てると、実際よりも的が大きく見えていたということです。別の見方をすると、的が大きく見える時は、より上手くショットができたと感じていて、実際によく的に当たったとも言えます。見え方と実際の成功率に関係があるのか、手応えが見え方を修正しているのか難しいところです。


さいころニュースでは関係した実験として、”難しく感じるともっと難しくなる”という記事で、眼の錯覚を使ってゴルフのホールの大きさを大きく見えるようにすると、よりパットの成功率が上がるという結果を紹介しました。今回の研究結果は、この研究と裏表といったものですよね。


この記事はBPSの”Targets look bigger after a shot that felt good”を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年08月24日

モチベーションが高いと時間は短く感じる

モチベーションと時間経過.jpg

アラバマ大学のPhillip GableとBryan Pooleの二人はモチベーションと時間について研究しました。この研究から、1つの実験結果をご紹介します。

この実験では140人の学生が被験者になりました。そして、
幾何学模様(ニュートラル)
花の写真(低モチベーション)
美味しそうなデザートの写真(高モチベーション)
の3つの写真を0.4秒〜1.6秒といった短時間だけ見せて、それぞれの表示時間がどのくらいかを被験者が判断するというものです。

この実験の結果、被験者は写真によって時間を短く感じることが分かりました。幾何学模様の写真(ニュートラル)と花の写真(低モチベーション)では統計的な差はありませんでしたが、美味しそうなデザートの写真(高モチベーション)を見た時は被験者は時間をより短いと感じたのです。

これは、人はモチベーションが高い時に、時間を短く感じていることを示しています。別の実験では、最後に食事をとってから時間が経つと、食べ物の写真を見た時間をより短く感じるということを確認しています。つまり、モチベーションに比例して、さらに時間を短く感じるようになるのです。

モチベーションが高い時に、時間が短く感じるのは当たり前という気もします。しかし、当たり前と思っていることと、実際に確認することの間には大きな差があります。こういうちょっとしたことを一つづつ確認していくのが心理学の実験の面白さですよね。


この記事は以下を参考に書きました。
Philip Gableら, 2012, "Time Flies When You're Having A Approach-Motivated Fun: Effects of Motivational Intensity on Time Perception",Psychological Science, DOI: 10.1177/0956797611435817


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年08月16日

あげる人ともらう人、どっちががんばる?


ペンシルバニア大学のAdam Grantとミシガン大学のJane Duttonは、人が他人のためと自分のためとどちらのために行動するかについて研究しました。

この研究の中で、卒業生を対象として大学のための寄付を募るコールセンターでの募金者32人を対象としたものです。

この実験では被験者は、それぞれウェブに記録を毎日15分します。被験者は以下の2つのグループに分けられました。
・後援者グループ 他者に貢献して、相手がいい気分になったと思うことを書く
・受益者グループ 相手から感謝されたことを書く

そして、日記には、考えや感情や行動などを記述しました。


ちなみにコールセンターの仕事は、時給制なのでどれだけ仕事をするかは本人のモチベーションに依存します。そこで、この研究の前後2週間でどれだけ電話をするかを調べました。

すると、受益者グループよりも後援者グループの方が、より仕事のパフォーマンスを上げていることが分かりました。相手に感謝されるよりも、相手にどう貢献しているかがポイントということですね。

あげるほうがベター.001.jpg

この研究結果は、仕事のモチベーションをあげるいいツールになりそうですね。


この記事は以下の論文を参考にしました。
Adam Grantら, 2012, "Beneficiary or Benefactor: The Effects of Reflecting about Receiving versus Giving on Prosocial Behavior.", Psychological Science, 2012


(文: やまざきしんじ)

2012年08月05日

やりたくないことにぐずぐずしちゃう

ぐずぐずすることには、
・やりたくないのでぐずぐずする
・やりたいけどぐずぐずする
の2種類があるということを書きました。

それでは、やりたくないことは何故ぐずぐずするのでしょうか?


まず、ぐずぐずは今やるかあとでやるかを選択した結果、あとでやるを選択することだと考えて下さい。

そして、その時のメカニズムはこのように考えることができます。

ぐずぐずその1.jpg

例えば、テスト前の夜に今から遅くまで起きて頑張って勉強するか、明日の朝早く起きて勉強するか、を判断するということになります。そしてしばしば、今はやりたくないから明日早く起きると判断します(そして寝てしまう...)

ぐずぐずその2.jpg

しかし、翌朝になると、昨晩の考えが”やっぱり今はやらない”に変わってしまいます。つまり、未来の私の考えが変わってしまうのです。

ぐずぐずその3.jpg

これは、人は未来の自分がやることはハードルを低く感じる(つまりやると感じる)のですが、目の前にある嫌なことはかなりやりたくないと感じてしまうのです。このような傾向があるために、”今はまだやらない”と”未来のわたし”に仕事を押し付けてしまうのです。

つまり、ぐずぐずは今の自分と未来の自分の間のやりたくないことの押し付け合いなんです。そして、このぐずぐずは、未来のわたしは意外とやらないことを認識していないことが原因の一つです。未来の私がやらないことを認識してれば、今の自分がやります。しかし、いやなことを今やるのはいやというリアリティがあって、未来に押し付けたくなってしまうのです。


(文: やまざきしんじ)