2012年08月02日

どんなことにぐずぐずします?

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昨日はさいころセミナーα「ぐずぐず病を克服しよう 目標達成の心理学」をタスクールさんで行いました。平日の夜にも関わらず19人の方にご参加いただきました!ありがとうございました!!

せっかくなのでそこから、ちょっぴりだけ紹介いたします。

まず、ぐずぐず病について、ぐずぐずするものは2つの対象にわかれます。
1.やりたくないのでぐずぐずする
2.やりたいのにぐずぐずする

例えば、毎日のブログの更新が滞ってしまうのは1、部屋の大掃除を全然していないというのは1のやりたくないのでぐずぐずするに含まれます。一方、趣味のブログを開設しようと思ってるのにやってない、とかお客さんへの提案書を新しくつくっておくというのは2にあたります。お客さんへの提案書を新しく用意しておくというのはまだ必要がないものならば2のやりたいのにぐずぐずするにあたります。


ちなみにこれら2つの対策は、これから少しだけ書いていきますが。

まずは、自分がぐずぐずしていることはどういったものがあるのかをリストアップして、それが
・やりたくないものか
・(本当は)やりたいものか
に分けて、それぞれに対策を考えるというのが第一になります。


というわけで続く..^^;;

(文: やまざきしんじ)

2012年07月29日

やる気の高い人の目標設定

先日は、やる気の高い人の思考法について書きました(その1その2)。でも、「やればできる」って言うだけで全然行動が伴わない人って周りにいませんか??


「自分の努力でなんでも変えられる」と努力の大事さを理解しているものの、「世界をもっとよくする!」なんて言っている人っていませんか?そのために何もしていないのに...

これは、やる気の考え方だけでなくどう行動に結びつけるかがポイントなんです。


例えば、
あなたはある試験(テスト)で今回50点を取りました。次回の試験は2か月後にあります。さて、次回の試験であなたは何点を目標にしますか?


これ、どう答えますか?もちろん、テストの難易度などにもよるでしょう。


やる気の高い人は、「100点」を目標にしないことが多いです。やる気の高い人は成功率30%〜50%という中程度の難易度の課題を好みます。一方、やる気の低い人は、成功率が高すぎたり(例えば100%や95%)、低すぎたりする難易度(1%や10%)を好みます

つまり、やる気の高い人は今回50点なら、次回は70点や75点を目標にするということですね。いきなり100点では、そもそも成功しないということです。もちろん、「100点は取れたらいいな」と思うかもしれませんが、それは目標にしないということですね。


このような努力すれば達成できる現実的な目標を設定することで、実際に目標の達成の確率が高まります。そして、それは次にも「努力して」目標を達成するという行動を促します。

つまり、以下のような良いループが出来て、目標達成ができていくというのやる気の高い人の特徴ですね。

やる気の高い人のループ.jpg

もし、目標が大きすぎるならば、細分化して達成できそうな中間の目標を作りましょう。ゲームなどでスコアがあるものなら、例えば10回の平均スコアが、現在のベストスコアになるようにしてみましょう。

例えばボウリングで、ベストスコアが185点なら、10ゲーム平均で185点になるようにしましょう。この難易度が高いならば、ベストよりも少し下のスコアにして平均180点を目指してもいいですし、現在の平均スコアよりも5点増やすでもいいでしょう。


高い目標を掲げること自体はいいことのような気がしますが、実際には現実的に達成可能な目標を設定して、努力の末にそれを達成するというのが大事なポイントです。


(文: やまざきしんじ)

2012年07月27日

やる気の高い人の思考法 その2

昨日の記事では以下の2つの問いかけをしました。

Q1.あなたはある試験を受け、見事に高得点を取りました。
高得点が取れた一番の理由は次の4つのうちどれだと考えますか?

1.試験の日までコツコツと勉強してきたから
2.試験問題が簡単だったから
3.たまたまヤマがあたったから
4.もともと私は頭がいいから(センスがあるから)


Q2.あなたはある試験を受けましたが、残念ながら得点はよくありませんでした。
得点が低かった一番の理由は次の4つのどれだと思いますか?

1.あまり試験勉強をしなかったから。
2.試験問題が難しかったから。
3.周りが騒々しくて集中できなかったから
4.私はもともと頭がよくないから。もしくはこの科目に向いていないから(例えば理系じゃないので数学が苦手だから)


これについてどう考えればいいのでしょうか?


まず、ワイナー(Bernard Weiner)の原因帰属の4つのパターンについて説明しましょう。
原因帰属のマトリックス.jpg
内的要因、外的要因というのは、原因が自分の中にあるか、自分の外(環境要因)にあると考えるかです。そして、安定、不安定というのは、都度変わらないものと、都度変わっていくものの2つです。

それぞれの説明はあまりいらないかもしれませんが...

安定・内的・・・自分の能力や向き・不向きなど、すぐには変えられない自分に起因するもの。
不安定・内的・・・努力、練習、その時の体調など、都度都度変化する、自分に起因するもの
安定・外的・・・問題の難しさや、強敵の多い大規模な大会など、自分の問題ではなく、またそれほど変わらないもの。
不安定・外的・・・運や状況(雨が降ったとか、試合開始が遅くなったとか)など、自分の問題でなく、毎回変わるようなもの。
です。


ちなみに、やる気が高い人は、成功した時には下のように考えます。
やる気の高い人の思考法.jpg
つまり、Q1の選択では、
1.試験の日までコツコツと勉強してきたから
4.もともと私は頭がいいから(センスがあるから)

ですね。


また、やる気の高い人は失敗時に以下のように考えます。
やる気の高い人の失敗時の思考.jpg
つまり、Q2の選択では
1.あまり試験勉強をしなかったから。
ですね。

ここまでで考えられるのは、やる気のある人というのは、基本的には全て「自分のこと」として考えるため、ある課題が出来た場合には、「自分だから」出来たということで自信にもつながり、次の課題へ進みやすくなるということです。

また、失敗した際にも、外部のせいや「能力がない」というような変えられないものでなく、「努力」を要因として考えるので、「今回、失敗したのは、努力が足りなかったからだ」と次回に向けて努力することが分かります。

つまり、やる気のある人は努力の人なんです。


ただし、最近は何でもかんでも自分のせいにしてしまうと、燃え尽きてしまったり、抑うつ状態になりやすいということも言われています。たしかに、うつ傾向の人は、様々なことを「自分のせい」と考えますよね。そこで、最近は楽観主義者の考え方が注目されています。

では、楽観主義者は失敗時にどのように考えるのでしょうか?それを下にまとめました。
楽観主義者の失敗時.jpg
つまり、Q2の選択では、
2.試験問題が難しかったから。
3.周りが騒々しくて集中できなかったから

ですね。

なんでも楽観主義だと、努力につながらないとも考えられますが、一方で、努力でコントロールできることとできないことがあるのも確かです。リーマン・ショックや3.11で成績が上がらなかった営業マンが「もっと努力したら...」といっても限界がありますし、それで自分を責めてしまうならば、「まぁ、仕方ないね」と考えることが必要です。基本的には努力が大事ですが、あらゆることを努力が原因と考えてしまうのは危険なので、楽観主義者がどう考えるかも大事なポイントです。


ちなみに、この原因帰属については「そんなの分かってても、考えは変えられないよ」という意見もあるかもしれません。一方で、このような考え方を知っておくことで、少しづつ考え方を変えていくことは可能です。

また、他人のことならともかく、自分のことで物事が成功したり、失敗すると、その目の前のリアリティに圧倒されて、様々な可能性があること自体を意識しないということがありませんか?

しかし、物事の成功・失敗を上述のような4つのマトリックスで、様々な要因が絡んでいると考える思考法を身につけることは、やる気アップだけでなく、うつ対策にも有効でしょう。


(文: やまざきしんじ)

2012年07月26日

やる気の高い人の思考法 その1

昨日は北名古屋市さんの生涯学習セミナー 楽しく学ぶ心理学の第2回でした。(写真は前回のものの使い回しです^^;;)

写真-mini.jpg


テーマは「やる気アップの心理学」でした。幅広い年代、そして様々な環境の方に、やる気について説明させていただいたり、ワークをしたりしました!


今日は、そこからやる気のある人についていくつか紹介します。

※ちなみに心理学用語ではやる気でなく、モチベーションが適切かもしれませんが、この記事ではやる気で統一します。


まず、やる気というのは入社面接を受ける大学生のように「やる気だけは誰にも負けませんっ!」と言うことでなく、実際に「行動する」ということですよね。この「行動する」特徴を持っている人というのがやる気のある人の特徴ですよね。


ではその前に、やる気があるとどういうメリットがあるのでしょうか?


下のグラフはクロケットの研究によるものです。ここでは本人が父親の職業よりも高い地位を得たかどうかとやる気の関係を示したものです。

やる気は成功の源.jpg

これを見て分かるようにやる気は社会的な成功に関係していることが分かるでしょう。また、やる気が高い人の方が日常生活の満足度が高くなり、幸福度も高いのです。


では、どのようにすればやる気が高まるのでしょうか?

まず、以下の2つの問題を考えてみて下さい。状況も何もないので、直感勝負でお願いしますっ!


Q1.あなたはある試験を受け、見事に高得点を取りました。
高得点が取れた一番の理由は次の4つのうちどれだと考えますか?

1.試験の日までコツコツと勉強してきたから
2.試験問題が簡単だったから
3.たまたまヤマがあたったから
4.もともと私は頭がいいから(センスがあるから)


Q2.あなたはある試験を受けましたが、残念ながら得点はよくありませんでした。
得点が低かった一番の理由は次の4つのどれだと思いますか?

1.あまり試験勉強をしなかったから。
2.試験問題が難しかったから。
3.周りが騒々しくて集中できなかったから
4.私はもともと頭がよくないから。もしくはこの科目に向いていないから(例えば理系じゃないので数学が苦手だから)


皆さんはQ1、Q2でそれぞれどの選択肢を選んだでしょうか?そして、やる気の高い人はどのような選択肢を選んだのでしょうか?



続きはコチラ。


(文: やまざきしんじ)

2012年07月25日

どんなマルチタスクが危険!?

マルチタスクとビジュアル課題.jpg

車を運転中のカーナビ操作は危険です。では、カーナビ操作とハンズフリーで電話するのではどちらが危険でしょうか?

答えは「どちらも危険」ですが、でももう少しヒントがあります。オハイオ大学のZheng Wangらの研究は、もう一歩理解を深めてくれるでしょう。

この研究では、パソコンでパズルをしながら、音声チャットもしくはインスタントメッセージで、他人に道案内をするというものです。


それでは音声チャットとインスタントメッセージをすることで、どのくらいパズルのパフォーマンスが低下したでしょうか?
音声チャットをすると30%パフォーマンスが低下しました。一方、インスタントメッセージをすると50%もパフォーマンスが低下しました。

また、この研究ではアイトラッキングシステムでどのくらい視線が、それぞれのタスクに停留していたかを調べました。パズルのタスクのみを行う時は76%の時間、視線がパズルに集中していましたが、インスタントメッセージをすると33%の時間のみがパズルに集中していました。つまり、マルチタスクでパフォーマンスが低下するのは当たり前と言えます。


ちなみにこの研究のポイントはパフォーマンスが50%低下することでなく、被験者はそう思ってなかったことです。音声チャットした人も、インスタントメッセージをした人も、パフォーマンスが落ちていると認識していましたが、インスタントメッセージをしていた人はそれほどはパフォーマンスが低下していなかったと思っていました。

これは、目を使うような2つの動作をマルチタスクした時の危険性を表している研究と言えます。人はマルチタスクする際に、サブタスクの負荷を甘く見ているということだけは覚えておくべきでしょう。


この記事はオハイオ州立大学の"STUDY SHOWS WHY SOME TYPES OF MULTITASKING ARE MORE DANGEROUS THAN OTHERS"を参考に書きました。


(文・絵:やまざきしんじ)

2012年07月06日

仕事で成果を出す人、出さない人

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採用ではどうやって人を選ぶのでしょうか?出身校重視?それとも、人柄?SPIといった就職で使うテストや、MBTIといった性格があっているかといった適性テストも参考にしているかもしれません。

経験者の転職の場合は、相手の実績などからある程度予測ができますが、そういった情報がない場合はどういうものを重視すればいいのでしょうか?


ボーリンググリーン大学のChristopher Nyeの研究によると、従業員のパフォーマンスや在職期間が、本人の興味から予測できるというものです。この研究では合計で15,301人のサンプルからなる60の研究のメタ分析です。

この研究によると、本人の仕事以外の興味と仕事の内容がフィットしていれば、仕事のパフォーマンスがあがり在職期間も長くなります。


これは、当たり前のことに感じられるかもしれません。しかし、自分の就職・転職活動などを考えると実際にはあまり重視されていないのではないでしょうか?

私の場合は、趣味については「読書とビリヤードです」「どういう本を読むんですか?」「ノンフィクション中心で年150冊くらい読んでます」といった程度で少し聞かれる程度ですし、興味の対象などを探ろうとされたことはありませんでした。面接では、候補者の興味に深く突っ込むなんてことはないんですよね。


採用の時に”人柄重視vsスキル重視”といったことはよく聞きますが、候補者のやりたいことや興味の対象をもっと掘り下げて、候補者のやりたいこと・興味のあることと仕事内容や業種とのマッチングをより重視することが大事なんですね。


この記事はAssociation for Psychological Scienceの"Employees’ Interests Predict How They Will Perform on the Job"を参考に書きました。

(文・絵: やまざきしんじ)

2012年06月26日

成功者を真似するな!

幸運と才能.jpg

世の中には様々な成功者がいます。しかし、成功者はどこまでが実力でどこからが運なのでしょうか?自己啓発書には、信じた道を突き進めと書いてあったりしますが、ビジネスの本を見ていると、成功した会社の多くはたまたま来た仕事を受けたり、最初やっていたことが失敗して別のことを初めて成功したといった例がよくあります。

ホンダがアメリカで成功したのは、大型バイクを売り込もうとしていた営業マンが乗っていたオートバイがたまたま売れたというのは有名な話です。PayPalというウェブの決済システムは元々は全然売れなかったハンドヘルドコンピュータ用のシステムのデモ用のものでした。

このような意外なところでの、転換をきっかけに売れた製品、開発された製品というのはたくさんあります。最近はベンチャー企業のピボット(戦略の転換)についてもよく言われるようになってきました。ピボットで成功するというのは、運の要素を示しているとも言えるでしょう。


今日紹介するのは、イギリスのオックスフォード大学の Jerker Denrellとウォーリック大学のChengwei Liuの研究は、成功者はラッキーだったということを述べています。

ラッキーな成功者の例として、ビル・ゲイツがあげられます。このマイクロソフトの創業者であり、億万長者で成功者ですが、その成功には幸運の要素がちらほらみえます。

まず、ビル・ゲイツが子供の頃にコンピュータに触ることができたのは幸運でした。まだ、パーソナルコンピュータといったものが世の中にない頃でしたが、とても裕福な子供が通う私立学校に行っていたので幼少期にコンピュータに触ることができました。また、創業後にMS-DOSというソフトをIBMに売ることで大きな会社になりはじめたのですが、IBMに売り込むことが出来たのは母親のコネのおかげです。

ビル・ゲイツ並のコンピュータの才能、起業家精神、経営センスを持っていた人がいたとしても、親が裕福でコンピュータを触ることができなければ、母親のコネがなければ、また「ちょうどそのタイミング」で起業していなければ同じように成功していたかは分かりません。


ちなみに、マイクロソフト、アップル、サンマイクロシステムズの有名なメンバーの生まれた年は以下の通りです。ここから起業のタイミングが大事なことが伺えるのではないでしょうか?
ビル・ゲイツ 1955年
ポール・アレン 1953年
スティーブ・ジョブズ 1955年
スティーブ・ウォズニアック 1950年
スコット・マクネリ 1954年
ビル・ジョイ 1954年


これらのことから何が言えるでしょうか?一つの示唆は、ベストパフォーマーは参考にならない、ということです。テレビには大成功した人が出てきます。ビジネス書でも成功した人が出てきます。

私たちはこういった本から成功者のポイントを知ることが出来るかもしれませんが、実際に真似をしたところで”幸運”が欠けています。幸運なしで成功者の真似をすることで成功することが出来るでしょうか?もちろん、自己啓発書には「幸運じゃない、人間性だ」と書いてあることでしょう。ビジネス書でも「これで成功できる」と請け合うことでしょう。でも、それが空手形であることはみんな知っているはずです。

でも、本当に成功するにはどこを狙えばいいでしょうか?

そのためには、目立つ成功者でなく、そこそこ成功している人を真似するのがいいというのがDenrellとLiuの主張です。Good to Great!(そこそこから偉大へ、”ビジョナリーカンパニー2”の原題)でなく、Poor to Good!(ダメからそこそこ)を目指すのがいいのです。


もし、あなたが成功したいならば大成功した人でなくて、そこそこ上手くいっている人を真似しましょう。

本やテレビを参考にするよりも、あなたの周りにいるそこそこ上手く行ってる人から学ぶことがあるんではないでしょうか?


この記事はウォーリック大学の”Reward the second best, ignore the best"を参考に書きました。

(文・絵: やまざきしんじ)

2012年06月15日

研修は、前後がポイント

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企業での研修って効果あるんでしょうか?大企業では、人事部や教育部からの勧めで年に2,3回、「なんとか営業研修」とか、「成果を上げるための会議法」といったセミナーに行ったりするだけだし、大企業じゃないと研修自体ないといったこともあるかもしれません。

フロリダ中央大学のEduardo Salasらの研究は、企業での研修の効果についてのものです。この研究から、企業での研修のポイントをいくつかピックアップして、私なりに解説してみます。


・まず大事なのは研修全体
例えば「成果を上げるための会議法」といった研修を受けても、多くの受講者は研修を受けて終わりになります。ポイントとなるのは、研修の前後を含めた研修全体です。研修後にレポートを申し訳程度に提出というのがよくあるパターンですが、研修前に受講者が現在の会議の問題点をまとめ、研修で学びたいことを書かせて提出させてから研修を受けさせることで、受講者の目的が明確になり、モチベーションが上がります。

また、研修を受けた後には、その研修で受けたことを使う場が必要です。これは1回会議を開催するということでなく、継続的に研修で学んだことを使う場を用意する必要があるということです。実際にこの研修を踏まえた会議を行わせるような、セッティングまでをしてはじめて研修の意味があります。

つまり、研修というのは受講者が日常業務から離れてリラックスする場でなく、その研修前後で業務が変化するというように、業務を含めて考える必要があります。


・研修の設計には、その業務で必要なスキルの分析が必要
上にあるように研修というのは、社外研修を受けて終わりといったものではありません。社内での様々な業務を分析してその業務で必要なスキルを分析することで、実際に業務に使える形で研修から社内業務へとスキルを転換できるような設計が可能となります。


・研修は少しづつレベルが上がるように
スキルが少しづつ上昇していくように、研修は難易度が徐々に上がるように設計する方がベターです。少しづつ結果が出ていくので、受講者のモチベーションも保ちやすいです。


・研修中のアクシデントも意味がある
研修で、何かスキルを得ようとする時に失敗やアクシデントがあるのは有効なことです。例えば、プレゼンテーションの研修での発表中に発表者の携帯電話の音が鳴り響くといったことは、実際のプレゼンテーションの練習にも有用でしょう。初心者がゴルフの練習を雨の日にやることは大変かもしれませんが、意味のあることです。
ただし、このようなアクシデントについては、受講者が十分に動機付けされていないと逆効果になるかもしれません。「こんなアクシデントが起こったら練習にならない」と考えてしまわないように、十分に動機付けをしておく必要があります。


・受講者が研修をコントロールできるように
研修はお仕着せよりも、受講者がある程度コントロール出来る方が効果的です。社外研修では難しいですが、社内の研修の場合は研修の方法についても受講者のアンケートの下に決定するなど、受講者のオーナーシップを向上させるような仕組みを作ることが大事です。



どうでしょうか?私がいた企業ではなかなか効果的な研修は行われていませんでした。教育予算はそれなりに使われていたのですが、結局、製品の技術的なトレーニング以外は効果と言えるものがあったか謎です。上記のようなことを意識することで、単に社外研修に申し込むといったレベルでない、もう一歩有効な研修を考えることができるのではないでしょうか。


この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science. "Science of training and development in organizations: What really matters, what really works." ScienceDaily, 13 Jun. 2012. Web. 15 Jun. 2012.

(文・絵: やまざきしんじ)

2012年05月29日

目標に集中するより、経過に集中のウソ

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目標設定についてはいろいろなことが言われています。目標はブレイクダウンすること、目標よりも経過に集中することといったことが言われています。

しかし、よく言われていることと、本当に役に立つことは違います。以前書いた”ポジティブな空想の罠”という記事では「成功をイメージすると逆効果になる」という記事を書きました。また、”目標を人に話すといけない理由”という記事では、「目標を他人に話すことで、むしろコミットメントの力が弱まる」ということを書きました。目標設定や目標達成の方法に関しては、様々な本に書かれていますが、間違ったこともたくさん書かれています。有名な人が本に書いていることが事実とは限らないのです。


香港科学技術大学のAmy Daltonとカリフォルニア大学ロスアンゼルス校のStephen Spillerの研究は、目標の数によって、どのような手法を使うかの関係についです。

この研究では、目標の数が目標達成方法にどう影響を与えるかを明らかにしています。この研究から、目標の数によって適切な目標達成方法が変わることを紹介します。この研究では、目標の数が1つと6つのそれぞれの場合に、目標か経過かどちらに集中するといいかを明らかにしました。

目標の数はどれだけがいいか.001.jpg

この上のグラフは、目標へのコミットメントが7段階評価でどれだけ向上するかを示したものです。これを見れば分かるように、目標自体に集中するべきか、もしくは「いつやるか」・「どこでやるか」・「どうやってやるか」といったように経過に集中するべきか、は目標の数によります。

1つの目標ならば経過に集中した方が効果的です。これは納得がいくことです。しかし、目標が増えると、計画に集中するよりも目標に集中した方がいいのです。


これはなぜでしょうか?この研究では、目標の数が多いのに経過に集中すると注目すべきことが多すぎるため、むしろコミットメントが下がると考えられます。

ちなみに目標の数は1つがやはり一番効率的です。2つ以上の目標からは効率が一気に落ちます。そして、この研究によると4つ以上の目標がある場合は経過に集中しない方が効果的です。


この記事は以下の論文を参考にしました。
Amy Daltonら, 2012, "Too Much of a Good Thing: The Benefits of Implementation Intentions Depend on the Number of Goals.", Journal of Consumer Research, October 2012

(文・絵: やまざきしんじ)

2012年05月16日

クリエイティビティは静寂から生まれない?

創造性にはノイズ.jpg

読書をするのに電車の方がはかどる人は多いのではないでしょか?また、仕事も静かすぎる会社よりも、カフェなどの方が集中できるという人もいるのではないでしょうか?

今回は、クリエイティビティという視点から見て、どういう環境で仕事をするのがいいかを見て行きましょう。


イリノイ大学のRavi Mehtaらの研究によると、周囲の雑音がクリエイティブな認知に影響を及ぼします。これは、当たり前に思えますよね。直感的には静かな方が集中して、クリエイティブになれそうです。あれれ?電車やカフェも集中できそうです。正解はどっちでしょうか?

この答えは、研究によると、ほどよい雑音がクリエイティブな問題解決に役立ちます。

研究によると、70デシベル程度の高速道路を車で走っている位の雑音が、クリエイティブな作業を一番はかどらせるようです。一方、85デシベルの、大きな道路の横にいる騒音レベルでは、情報処理のプロセスを邪魔してしまうのか、クリエイティビティを損なってしまいます。

このことは、ほどよい雑音が思考プロセスに影響を与え、集中しすぎない”自分の箱から出る”思考を助けるためと考えられます。しかし、雑音が大きすぎると、思考自体を邪魔してしまい、クリエイティビティを損なってしまいます。


さらに、雑音は自分のクリエイティビティを高めるだけでなく、よりクリエイティブな商品を選択させる効果があるようです。クリエイティブな商品を売る場合には、静かな場所ではいけないようです。

ただ、お店の場合は、ノイズのレベルが高い方が顧客を興奮状態にして冷静な思考を麻痺させるという効果もありますし、またブランドイメージとの兼ね合いもあります。


言われてみれば、集中しすぎるとクリエイティビティが損なわれるというのはありそうなことですが、静かなところよりも少しざわついたところの方がクリエイティブになれるというのは面白い結果ですね。

この記事はイリノイ大学の”Research: Too much, too little noise turns off consumers, creativity”を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年05月05日

マルチタスクは効率的?いや、気分がいいのです!

マルチタスカーは満足.jpg

先日書いた”注意を拡げて作業 vs 1つに集中して作業”という記事では、マルチタスクをする人はマルチタスクに慣れるということを述べました。しかし、マルチタスク自体は、効率が悪いという研究はたくさんあります


せっかく読書しているのに、テレビをつけていたら効率が格段に落ちます。テレビつけたまま勉強するのは、「だから、勉強してるじゃん!」と親に言い訳をする中学生向きかもしれません。それでは、なぜ読書しながらテレビを見たりするのでしょうか?


オハイオ州立大学のZheng Wangと John Tchernevは、32人の大学を対象として28日間、メディア使用について調査しました。

この研究で分かったことは、マルチタスキングは人の気分をよくするのです。読書をしながらテレビを見ている学生は、効率は落ちるものの、テレビ無しで読書をするよりも感情的にはより満足していました。読書とテレビを観ることを効率的にするのでなく、テレビによって、読書が楽しめるようになるためにマルチタスクをしているのです。

これは面白いと同時に皮肉な結果です。どうして楽しめるか、はこの研究では明らかになっていないのですが、もしかすると人は「俺って効率的!」と思って満足しているものの、単に効率を落としているだけなのかもしれません。


この記事はオハイオ州立大学の"MUTLTITASKING MAY HURT YOUR PERFORMANCE, BUT IT MAKES YOU FEEL BETTER"を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年05月02日

履歴書のオンラインサービスは虚偽が多い?

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アメリカではLinkedInというソーシャルサービスが人気です。アメリカと日本では求職のスタイルが違い、また日本語化されたのもごく最近のためほとんど使われていません。

一方、LinkedInには経歴などでごまかしが多いのではないか?、という疑念が言われています。これは本当でしょうか?

コーネル大学のJamie Guilloryらの研究では、119人の被験者が、
・紙の履歴書
・LinkedInのプライベート履歴書
・LinkedInの公開の履歴書

を書いたところ、自分をよく見せるための経歴のごまかしはLinkedInでは紙の履歴書よりも少なかったです。ただし、仕事の以前の職歴や担当のごまかしは紙の履歴書よりは少ないものの、興味あることや趣味といった分野ではごまかしが増えており、トータルでのごまかしは、紙の履歴書とLinkedInでは変わりませんでした。


LinkedInは心理的距離が遠いので、電子メールテキストチャット同様に嘘をつきやすいと思っていましたが、意外にも頻度は紙の履歴書と電子的な履歴書では同じくらいだったんですね。


この記事はBarking up the wrong treeの”Are publicly visible résumés on Linked In more honest than paper ones?”を参考に書きました。



(文・絵: やまざきしんじ wxs43645)

2012年04月23日

注意を拡げて作業 vs 1つに集中して作業

マルチタスカー.jpg

現代はマルチタスク社会と言えます。テレビをつけながら、パソコンをする。そのパソコンでは、フェイスブックをしながら、ツイッターをしながら、ネットサーフィンをします。

香港中文大学のKelvin LuiとAlan Wongの研究は、マルチタスカーの能力を明らかにするものです。

この研究では、タスクスイッチ、選択的注意、ワーキングメモリの実験を行いました。マルチタスカーは、いつでも十分な注意なしに様々な情報を扱うことができるようです。

実験は19歳から28歳の63人を対象としたものです。被験者は最初に日常生活でのマルチタスクについて質問をされ、それからコンピュータを使った視覚での探索課題を行いました。ここで、探索する対象の色が変わると、短いピッという音がします。この実験では、普段から多くのメディアを使用するマルチタスカーは、音と視覚という2つの感覚からなる探索課題をより効率的に行うことがわかりました。逆に、音なしで視覚だけで行う探索課題では、マルチタスカーは、そうでない人よりも上手く行うことができませんでした。

この結果から、マルチタスカーは、情報の少ない1つのことだけを行うことは得意ではないようです。一方で、マルチタスカーは視覚や聴覚から情報を統合するのが上手く、様々なメディアに注意を広げながら自然に作業をできると考えられます。


元の論文情報はこちら。
Kelvin F. H. Lui and Alan C.-N, "Wong. Does media multitasking always hurt? A positive correlation between multitasking and multisensory integration.", Psychonomic Bulletin & Review, 2012; DOI: 10.3758/s13423-012-0245-7


この記事は以下を参考に書きました。
Springer Science+Business Media. "Multitasking: Not so bad for you after all?." ScienceDaily, 12 Apr. 2012. Web. 22 Apr. 2012

(文・絵: やまざきしんじ)

2012年04月09日

携帯メールはやっぱりダメ

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私の時代には、授業中に携帯電話を触っている人はいませんでしたが、今の大学生はどうでしょうか?月曜日の午前にある一般教養の授業中には、みんな週刊少年ジャンプを読んでいたので、きっと携帯くらいは触っているんですよね。


ピッツバーグ大学ブラッドフォード校のFang-Yi Flora Weiらは、携帯メールと授業への集中や成績の関係を研究しました。この研究は携帯電話絶対禁止ではないアメリカの小さな大学で行った、190人の学部生を対象とした調査によるものです。この調査を行った時の1クラスの人数は平均で15から25人程度のもので、学生の平均は22歳でした。


この調査では学生は50分から75分の授業で平均2.6通の携帯メールを読んで、2.4通のメールを送っていました。

なお、調査結果の解析により、メールの自制と注意力には相関があり、メールを自制すると授業に集中でき、良い成績を取ります。一方、メールをたくさん書いている学生は、授業に集中しておらず成績もよくありませんでした。

また、学生は携帯メールをしていても授業を聞きながらメールをするマルチタスクが出来ると考えており、携帯メールは成績に影響を与えないと考えていました。


マルチタスクが仕事などのパフォーマンスを落とすということはよく言われていますが、当然携帯メールも同様の結果になりました。また、”スマートフォンの恐ろしいチェック行動”で書いたように、最近はスマートフォンを使うことで、普段からチェックによる時間の断片化(集中力の欠如)が問題になっています。皆さんも授業中やその他の時間に携帯メールやスマートフォンでのチェックを控えるようにしてください。今回の研究のポイントは、「集中できないことと同時に、本人はそう思ってないこと」ですから。


この記事はnewswiseの"Text Messaging in Class May Affect College Students’ Learning"を参考にしました。

元の論文情報はこちら。
Fang-Yi Flora Weiら, 2012 ,"Rethinking College Students' Self-Regulation and Sustained Attention: Does Text Messaging During Class Influence Cognitive Learning?", ommunication Education 2012, 1-20


(文・絵: やまざきしんじ)

起業するのはなんのため?

女性起業家の目的.jpg

性別による違いは様々なものがありますが、性別によって起業の違いはあるのでしょうか?


起業といっても規模や目的は様々ですが、やはり女性の起業と男性の起業は違うようです。これはシンシナティ大学の Carl H. Lindnerらによる、2009年の世界52ヶ国での10,000人以上の起業家への調査に基づく研究です。

この研究によると、女性は社会的起業を1.17倍男性より多く、環境のための起業も1.23倍男性より多くしていることがわかりました。


たしかにNPOの立ち上げなどは女性が行なっている印象があります。また、ほとんどの国で女性は家庭や地域とのつながりを行うことが多いとも考えられます。そのため、社会的起業や環境に関する起業が多いのでしょう。

男性はビジネスのために起業するが、女性の場合は自己実現のために起業している人が多いという印象が私はあります。そのため、女性では講師業やNPOなどが多いのではないかと考えています。今回の研究は起業の目的という外部的な研究ですが、「なぜ起業したか?」という動機にもっと踏み込んだ研究に個人的には興味があります。


この記事はシンシナティ大学の"UC Research Shows Entrepreneurial Differences Between the Sexes"を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年03月26日

もう一歩踏み込むフット・イン・ザ・ドアで、さらにカイゼン

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フランスの南ブルターニュ大学のVirginie Herboutらの研究は、従業員19000人のテーブルウェアの世界的企業での約半年の5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、躾)に使われた、フット・イン・ザ・ドアについての研究です。

フット・イン・ザ・ドアというのは、相手にお願いをする時に小さなお願いをしておくと相手はお願いを聞きやすくなるというものです。例えば、相手に、寄付をお願いする前に、「簡単な3つの質問だけのアンケートにご協力ください」とお願いしておくと、その後に寄付をしてもらえる確率が増えます。

さいころニュースでも”一貫性の魔力”としてフット・イン・ザ・ドアについて解説したことがあります。また、フット・イン・ザ・ドアに加えてさらに説得力を増す”自由だ”テクニックの解説でも、フット・イン・ザ・ドアの効果を書きました。


この研究では、5Sのプロジェクトに呼ばれた従業員は、最初に簡単なアンケートに答えます。これがフット・イン・ザ・ドアになっています。

ただし、一部の人達は、この簡単なアンケートの前に10人ごとの小グループで、以下のことを質問されます。
・あなたの環境で、最初に5Sに取り組むべきなのはどこか?
・5Sによって、あなたの仕事がどうなるか想像してください。
・誰が5Sプロジェクトに興味を持ちそうか?誰が自発的に5Sをしていたか?どのようなことをしていたか?

そして、この質問後に、それぞれが「このプロジェクトに感じていること」、「やろうとすること」、「プロジェクトへの期待」をみんなの前で書きだすということを行いました。


この結果、単なるフット・イン・ザ・ドアのグループと、最初にみんなの前で書き出したグループとでは、5S活動の行動数が変わりました。

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また、行動数だけでなくその行動の難しさを5段階で評価すると、以下のようにみんなの前で書き出しグループの方が複雑な5Sの活動も行なっていました。

もう一歩踏み込むフット・イン・ザ・ドア.002.jpg


見て分かるようにフット・イン・ザ・ドアといっても、少し拡張をすることで効果が増えることが分かります。これは2回のフット・イン・ザ・ドアを使用した効果とも言えますし、また同時にみんなに見えるようにした効果とも言えます。この両方の方法はそれぞれ効果があるという研究は別にありますが、この実験では2つの効果の切り分けは行われていません。

原因の探求は別にしても、このようにフット・イン・ザ・ドアをもう一歩踏み込むことで、さらに効果があるということは明らかなようです。


この記事は以下の論文を参考にしました。
Virginie Herboutら, 2008, "Foot-In-The-Door Application in Organization: How Employees Could be More Effective?", European Journal of Scientific Research Vol.21 No.4 (2008), pp.729-735


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年03月23日

プレゼントはウィッシュリストから?

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贈り物は本当に難しいです。いや、相手にプレゼントをするだけならば簡単ですが、相手を喜ばせるのが難しいのです。みなさんも、会社のパーティーやウェディングパーティーに、不要なものを貰ったことがあるのではないでしょうか??

たしかに、ウェディングパーティーでは結婚する二人が主役なので貰い手の気持ちは関係ないかもしれません。でも、贈った相手は、本当に喜んでもらえると思ってるのかもしれません。


スタンフォード大学のFrancis Flynnの5つの実験は、贈り物について、贈り手と貰い手の考え方の差を明らかにしてくれます。


1つめの実験では、これまでの経験からウェディングパーティーでは、商品をリストから選ぶ式(カタログギフト式)か、相手が選んだギフトか、どちらがいいかを質問しました。

2つめの実験では、誕生日プレゼントとして、贈り手が作った商品リストから選んでもらうか、自分のウィッシュリスト(欲しいものリスト)から選ぶかを想像してもらいました。

この2つの実験から分かったことは、貰い手はウィッシュリストから選んでもらった方が喜ぶということです。しかし贈り手は、贈り手が選んだギフトを喜ぶと思っています。たしかに贈り手が選ぶというのは、贈り手があれこれ考える必要があって、贈り手にとって大変なことです。でも、その大変さはまったく無用で、相手に欲しい物を聞かないといけないのです。

ちなみに、ほとんどの人は贈り手の経験も、貰い手の経験もあるので、このことを分かっているはずです。それでも、貰い手の時の気分を忘れてしまって、贈り手が選んだ商品を贈ってしまうのです。


3つめの実験では、被験者は、実際に他の人から選んでもらったギフトをもらいます。貰い手は、自分のウィッシュリストに本や電化製品などの20ドル〜30ドルの商品を10個あげておきます。一方では、ウィッシュリストからプレゼントをもらい、もう一方のグループでは贈り手がで20ドル〜30ドルの商品を選びました。

この実験でも、貰い手はウィッシュリストから貰う方を喜び。贈り手は、ウィッシュリストから選ばず、自分で考えた方が喜ぶと思っていました。


4つめの実験からは、相手が欲しいギフトを贈り手は1つ教えられると、贈り手はより正確に相手が欲しいものを予測できることが分かりました。どうにも自分で選びたい場合は、相手に欲しい物をいくつか聞いて、そこから推測されるものを贈るのがいいみたいです。


5つめの実験からは、貰い手は実はウィッシュリストにあるものよりもやっぱりお金の方が喜ぶことがわかりました。しかし、贈り手はお金を贈るのは一番喜ばないと考えていました。


お金を贈るのはともかく、贈り物については相手に「何が欲しい?」と聞くのが最良ということですね。このようにプレゼントについては贈る側と貰う側で認識がいろいろと違うようです。プライベートでも仕事上でも、相手にプレゼントを贈る時には、このような罠にはまらないように、サプライズにならなくても相手に聞くのが正解です。


ちなみに、以前、”旅行のガイドブックを買うべきです!"という記事を書きましたが、この内容は旅行中と同じくらい、旅行を楽しみにしている間も幸福度が上がるということでした。同様に、サプライズプレゼントもいいですが、「こういうものがもらえる」と相手に期待させておくと、その期待の間も相手の幸福度は上がると考えられます。


また、プレゼントにはオマケをつけない方がいいという記事を書きました。小物をつけると貰い手側はプレゼントの価値が低く感じてしまうので要注意です。もし小物もプレゼントするなら、別の機会にしましょう。


この記事はスタンフォード大学の"Give Them The Gift They're Expecting"を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年03月19日

誘惑に立ち向かう方法

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誘惑に立ち向かう時、なんといえばいいのでしょうか?ダイエットを決意した人がケーキに立ち向かう時には「ノー!」と叫ぶのがいいでしょうか?「ダイエット中だから、食べられなぁい ><) 」と可愛く言うのでしょうか?

ヒューストン大学のVanessa Patrickとボストン大学のHenrik Hagtvedtの研究によるとどうやら、それらは正解ではないようです。30人の女性を以下の3つのグループに分けました。

1.「私はしない」グループ(I don't)
2.「私はできない」グループ(I can't)
3.ただ「ノー」と言うグループ(No!)

すると、この中で一番誘惑に打ち勝つことが出来たのは、1の「私はしない」グループ(I don't)でした。誘惑に打ち勝つだけでなく、「私はしない」人は、自律性や自己管理している感覚も持っていました。

そうやら、「私はできない」と考えるのは選択の原因を他者に押し付けているのですが、「私はしない」というのは自分の選択ということのようですね。少し前に流行ったドラマで「それはあなたが決めることです」という台詞がありましたが、誘惑に立ち向かう時にも、できないと外部に理由を探すのでなく「自分が選択をする」ことが大事なようですね。

この記事はEurekAlert!の"Can 1 simple strategy help consumers say 'no' to temptation?"を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年03月17日

ストップorゴー?衝動性の心理学

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マシュマロの実験などでも分かるように、セルフコントロールは成功のポイントになります。一方で、世の中では、”まずやる”、”思いたったら行動”といった言葉ももてはやされています。果たして、このような行動を急かすような言葉はセルフコントロールに影響を与えるのでしょうか?


イリノイ大学の学部生Justin Heplerの実験は、このことを明確にするものです。

1つめの実験では、被験者は、”はじめ”や”アクティブ”といった行動に関する単語か、”停止”や”休止”といった静止に関する単語のどちらかを一瞬見せられてから、セルフコントロールのテストをします。これは、すぐに報酬をもらうか、後でより多くの報酬をもらうかを選ぶものです。

この結果、”はじめ”や”アクティブ”など行動に関する単語を見せられた人は、セルフコントロールが低下しました。つまり、目の前の報酬を選んだのです。

2つめの実験では、同様に一瞬単語を見せられますが、その後で禁止ワードを判断するような簡単なコンピュータゲームをやりました。この実験でも同様に、セルフコントロールが低下していました。


この2つの実験ともに、”はじめ”や”アクティブ”といった行動に関する言葉が、セルフコントロールを失わせることを意味しています。過剰に、”やってみる”、”行動的”というモットーはもちろんやらない人が大部分な世界においては有利に働くかもしれません。一方で、セルフコントロールを失って、目の前のことに飛びつきやすい傾向にしてもいるようです。


心理学では、学部生がこのように面白い研究をしていることも多いですよね。大発見ではないですが、面白い実験で人の行動が少しづつ分かっていくのが心理学の醍醐味だと思います。


この記事はイリノイ大学の"Study suggests motivation to be active may lead to impulsive behavior"を参考に書きました。


(文・絵: やまざきしんじ)

2012年02月12日

速読の効果と練習法のヒント

速読って本当に効果があるのでしょうか?

速読を商売にしている人達は、読書速度が上がった時に理解度はほとんど落ちないということを主張します。本当でしょうか?

読書速度と理解度の関係は、大きく分けると2つの考え方があります。

まず、読書速度が上がると理解度が下がるという考え方です。これは、速読は、速く読めるというよりもスキミング(飛ばし読み)している、という考え方です。

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次に、読書速度が上がっても、理解度は下がらないという考え方です。速読の本にはおそらくこう書いてあります。そして往々にして、人には潜在能力がある、とか人は能力の10%しか使ってないので、普段読書で使わない右脳を使うことで可能、といったジョークのような説明が本に書いてあります。

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この2つはどちらが本当なのでしょうか?

ちなみにこのAかBかによって、速読の効果は下のような2つの効果になります。

読書スピードと理解.003.jpg

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私はAの考え方で、自由に読書速度を変えられる(飛ばし読みができる)ことに価値があると考えています。


今回は、速読の効果と、そしてその練習方法について少し見て行きましょう。森田らの研究によると、大学生を以下の3つのグループに分けます。

1.視野拡大トレーニングのみを行ったグループ
2.視野拡大トレーニングと眼球運動トレーニングを行ったグループ
3.指回し体操や円をイメージしたりといったいわゆる”脳トレーニング”をするグループ

それぞれのグループでは1週間ごとの3セット(3週間)の練習を行いました。1セットは、5〜10分間で出来るような分量です。その後に、文章を読ませると、速度は以下のようになりました。

読書スピードと理解.006.jpg
(グラフは参考論文のデータを使って再作成)

ちなみにこのそれぞれの時に文章がどのくらい理解できているかのテストをしましたが、それは1〜3のどのグループでも変わらず、理解はできていることが分かりました。

グラフを見てと分かるように、速読の効果はどうやらBのように、理解度は変わらずに読書速度が上がるようです。そして、そのための練習は一度の注視で読める範囲を広げる視野拡大トレーニングが大事ということです。

もちろん、この結果は「3倍の速度でも理解度は落ちない」ということを意味していません。また、この1つの研究から全ては言えないと思いますが、速読について考えるヒントになるのではないでしょうか?また、速読の練習のポイントも見えてくると思います。


この記事は以下を参考にしました。
森田愛子他, 2010, 大学生における速読トレーニングの効果の検証, 広島大学心理学研究第 10号P.61-70


(文: やまざきしんじ)