
企業での研修って効果あるんでしょうか?大企業では、人事部や教育部からの勧めで年に2,3回、「なんとか営業研修」とか、「成果を上げるための会議法」といったセミナーに行ったりするだけだし、大企業じゃないと研修自体ないといったこともあるかもしれません。
フロリダ中央大学のEduardo Salasらの研究は、企業での研修の効果についてのものです。この研究から、企業での研修のポイントをいくつかピックアップして、私なりに解説してみます。
・まず大事なのは研修全体例えば「成果を上げるための会議法」といった研修を受けても、多くの受講者は研修を受けて終わりになります。ポイントとなるのは、
研修の前後を含めた研修全体です。研修後にレポートを申し訳程度に提出というのがよくあるパターンですが、研修前に受講者が現在の会議の問題点をまとめ、研修で学びたいことを書かせて提出させてから研修を受けさせることで、受講者の目的が明確になり、モチベーションが上がります。
また、
研修を受けた後には、その研修で受けたことを使う場が必要です。これは1回会議を開催するということでなく、継続的に研修で学んだことを使う場を用意する必要があるということです。実際にこの研修を踏まえた会議を行わせるような、セッティングまでをしてはじめて研修の意味があります。
つまり、研修というのは受講者が日常業務から離れてリラックスする場でなく、
その研修前後で業務が変化するというように、
業務を含めて考える必要があります。・研修の設計には、その業務で必要なスキルの分析が必要上にあるように研修というのは、社外研修を受けて終わりといったものではありません。
社内での様々な業務を分析してその業務で必要なスキルを分析することで、実際に業務に使える形で研修から社内業務へとスキルを転換できるような設計が可能となります。
・研修は少しづつレベルが上がるようにスキルが少しづつ上昇していくように、
研修は難易度が徐々に上がるように設計する方がベターです。少しづつ結果が出ていくので、受講者のモチベーションも保ちやすいです。
・研修中のアクシデントも意味がある研修で、何かスキルを得ようとする時に
失敗やアクシデントがあるのは有効なことです。例えば、プレゼンテーションの研修での発表中に発表者の携帯電話の音が鳴り響くといったことは、実際のプレゼンテーションの練習にも有用でしょう。初心者がゴルフの練習を雨の日にやることは大変かもしれませんが、意味のあることです。
ただし、このようなアクシデントについては、受講者が十分に動機付けされていないと逆効果になるかもしれません。「こんなアクシデントが起こったら練習にならない」と考えてしまわないように、十分に動機付けをしておく必要があります。
・受講者が研修をコントロールできるように研修はお仕着せよりも、
受講者がある程度コントロール出来る方が効果的です。社外研修では難しいですが、社内の研修の場合は研修の方法についても受講者のアンケートの下に決定するなど、
受講者のオーナーシップを向上させるような仕組みを作ることが大事です。
どうでしょうか?私がいた企業ではなかなか効果的な研修は行われていませんでした。教育予算はそれなりに使われていたのですが、結局、製品の技術的なトレーニング以外は効果と言えるものがあったか謎です。上記のようなことを意識することで、単に社外研修に申し込むといったレベルでない、もう一歩有効な研修を考えることができるのではないでしょうか。
この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science. "Science of training and development in organizations: What really matters, what really works." ScienceDaily, 13 Jun. 2012. Web. 15 Jun. 2012.
(文・絵: やまざきしんじ)