先週行われたセンター試験の英語の問題にチャレンジしてみました。
長文は大丈夫なんですが、やっぱり発音と熟語はちゃんとトレーニングしていないとダメですねー。
それはさておき、長文問題の1問が先延ばし(procrastination)に関する内容でした。
procrastinationについてはグズグズ病と意訳し、以前、塾のブログでも少し触れたことがあります。
グズグズ病を克服する
センター試験のこの英文によると、一般的に95%の人が先延ばしを時々経験しており、20%の人が頻繁に先延ばしを行うそうです。
そして、先延ばしを行ってしまう4つの要因について説明されていました。
1つ目の要因は、その課題が好きかどうかということです。(英語では「心地よい、快適な」を意味するpleasantが使われていました)好きだったり楽しいと思えることはすぐに取りかかれますが、好きじゃないことや楽しいと思えないことはなかなかとりかかろうと思えないですよね。
2つ目の要因が、その課題を達成する自信があるかどうかということです。できる!という自信があるものに対してはすぐに取りかかれますが、自信のないものに対しては取りかかるのがおっくうになります。得意教科は勉強する気になるけど、苦手な教科はなかなか手をつけないといったことです。
3つ目の要因はセルフコントロールです。セルフコントロールの弱い人はやはり先延ばしの誘惑に負けやすいです。ちなみにセルフコントロールは年齢と相関があり、年齢が高くなるほど先延ばしが少なくなるそうです。
4つ目の要因は、努力が結果や成果として現れるまでどれぐらい待てるか、ということです。ダイエットや勉強、貯金など、実践すれば必ずメリットのあることなんですが、その効果がすぐに現れない点に続けられない原因があります。この長期的メリットを見越して行動することが大切なんですね。
英文によると、自分の先延ばしのクセが一体どの要因によって生じているのかを理解することが、先延ばしを阻止するスタートラインだそうです。
もちろん1つだけの要因に絞ることはできず、複数の要因が絡み合っているのでしょうが、こういった要因に分類することで対処法も見えてきそうです。
とても面白い英文だったんで、出典文献が気になります(^^)
(山崎Y)
2012年01月22日
2012年01月16日
創造性の3つの要素

(c) shalamov|ストック写真 PIXTA
昨日から、NHK教育で毎週日曜日18:00〜19:00にティナ・シーリグの”スタンフォード白熱教室”の再放送がやっています。昨年の初夏にやっていた時にとても楽しく見ていました。
この番組ではブレインストーミングや様々なアイデアを出していますが、実際にこのようなことが自分の会社や部署で行われたらいいな、と想像(妄想?)する人は多いのではないでしょうか?
この創造性について、ハーバード・ビジネスレビューの1999年4月号のテレサ・アマビールの「あなたは組織の創造性を殺していないか」という記事では、創造性の3つの要素として、
・創造的思考スキル
・専門性・専門能力
・モチベーション
を挙げています。そして、この3つの要素が重なるところに、「創造性」があるとしています。

たしかにこの3つの要素は創造性を考える時に重要です。ティナ・シーリグの授業はこの3つの要素のうち創造的思考スキルのみに着目したものです。そして、この3つの要素を見ると、この「スタンフォード白熱教室」のようなことが行われないのは、企業ではモチベーション不足が原因ということに気づくのではないでしょうか。
IDEOやP&Gのような組織がブレーンストーミングを上手くやっていたり、3MやGoogleのような企業が就業時間の一部を新製品開発の開発にあてていい(ブートレッギング)といった仕組みを使っていてベストプラクティスと言われていますが、これらの企業ではすべて企業が社員に対して「創造性を活かしなさい」というメッセージを伝えていると考えられます。また、Googleやフェラーリが有名な学者や芸術家を呼んで、社内で講演をしてもらうというのも、同様の「創造性を活かしなさい」というメッセージを伝えて、モチベーションを向上させています。
”創造性”については3つの要素があり、ついつい創造的思考スキルの目がいってしまいますが、組織においてはそもそも”創造性”を発揮させるモチベーションであることを忘れないようにしないといけません。
これまでに書いた創造性の記事はこちら
驚きと創造性
いつもと違う考え方で、クリエイティブに!
箱と自分から脱出するクリエイティブ思考
ビデオゲームが創造性を育む?
創造性をダメにする6つの方法
運動が創造性を向上させる?
クリエイティブなアイデアはたくさん出すよりも、つぶさない
もっとクリエイティブに! 7つのちょっと変わった心理学テクニック
気分は創造性に影響する
ブレインストーミングはアイデアをダメにする
(文: SY)
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
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2012年01月05日
コツコツやるにはポイントカード
以前、”習慣化するには2ヶ月以上”という記事を書きました。巷では、3週間続けると習慣化できるなどと言われたりしていますが、実際には3週間では不十分です。
しかし、2ヶ月ずっと続けるのはむずかしいと考える人が多いのではないでしょうか?
この対策として、ブログに書いたり、ツイッターやフェイスブックなどに書くことで友人からのフィードバックをもらってやる気を維持するというのが1つの方法です。そして、このさいころニュースでもちょいちょい書いているように、ポイントカードを作るというのも1つの方法です。
私たちさいころでは、ほっといたらやらないことにはポイントカードというシステムを使っています。ブログを書いたり、特に手間のかかる海外記事の翻訳や、続けないといけないもののついつい後回しにしてしまうプレゼンの練習などに、それぞれポイントを割り当ててあって、それらを行うとポイントカードに、スタンプを押すということをしています。また、一定ポイントを貯まるごとに、モーニングにいったり、一人で遊びに出たりといった小さなプチご褒美を用意しています。
このポイントカードを使うことのメリットはなんでしょうか?
・10kgダイエットするといった行動の結果でなく、10分以上走るといったように行動自体を目的とできる。
・10kgダイエットするといった、結果の出にくい長期の目標でなく、2週間程度で達成できるような小さなご褒美を目標に出来ます。
・小さな目標を目指すだけでなく、ポイントカードにスタンプを押すこと自体が楽しく。白いポイントカードがどんどん埋まっていくのが楽しい。
ポイントカードの紙はこちらからダウンロードしてください。これを切って、適当な厚紙に貼ったら完成です。厚紙の空欄に、10分以上走ると2ポイント、お昼のおやつを我慢すると1ポイントのように自分のやることごとのポイントを書きます。そして40ポイント溜まったら行う小さなプチご褒美として、例えば近所のスーパー銭湯に行くなどと書いておきます。
ちなみにプチご褒美の目標のたて方については、以前、”モーニングの心理学”という記事で書きました。
新年はもう始まってしまいましたが、確実に目標達成をするためにポイントカードを使ってみてはいかがでしょうか?
(文: SY)
2012年01月03日
今年の目標!!達成のためのちょっとしたコツ

(c) puppy|写真素材 PIXTA
新年の計画を立てましたか??今年は10kg減量するとか、毎月2万円貯金するとか、いろいろな計画を立てたことと思います。
それでは心理学の研究から、何かヒントがあるでしょうか?ユタ大学のHimanshu Mishraら,2011の研究からは、正確な目標設定よりも曖昧な目標設定が鍵になるというヒントが得られます。
まず一つ目の実験として、106人の被験者が、チョコの1グラムが理論上ゲームのパフォーマンスを向上させると告げられました。その後、ちょうど1グラムのココアを渡された人は、ゲームのスコアが10.3ポイント向上しました。一方で、0.5−1.5グラムを渡された人は13.7ポイント向上しました。つまり、ちょうど1グラム渡された人よりも、曖昧な量渡されたほうがスコアが上がったのです。このスコア向上はプラセボ効果かもしれません。そして、このプラセボ効果は曖昧な数字の場合の方が高かったのです。
また、41人を対象とした3週間の減量の実験では、HHI(トータル健康インデックス)というBMIに変わる値を知らされましたが、HHIの値を曖昧に知らされた人のほうが、より減量をしていました。この場合も曖昧に数字を知らされた人の方が、より成果を出していました。
この研究から言えることは、目標達成には正確な値よりも曖昧な数値の方が有効ということです。皆さんも、目標設定やフィードバックで曖昧さを少し残してみてはいかがでしょうか?
以下の論文を参考にしました。
Mishra, Himanshu, Mishra, Arul and Shiv, Baba, In Praise of Vagueness: Malleability of Vague Information as a Performance-Booster (October 14, 2010). Psychological Science April 22,2011, doi:10.1177/0956797611407208
(文: SY)
2011年12月27日
朝、布団から出られないわけ

(c) Graph-S|写真素材 PIXTA
私たちは、昨日書いた記事の中の”マシュマロ実験”と同様の状況にしばしばなります。
飲んだら明日二日酔いになるのが分かっていてもつい今の快楽に負けてお酒を飲んでしまう
今日やっておけば他部署との調整が簡単な連絡を放置して明日に回してしまって、調整が面倒になる
どうせ出さないといけない人事部へのレポートをつい後回しにしてしまって、締め切り過ぎてから提出する
これらは、人はそれほど理性的ではないということです。私たちの意思決定は、多くの場合に”目の前の嫌な事や我慢”vs”長期的な成功”という対立になっています。この2つの価値が正しく評価できればいいのですが、この現在の価値と未来の価値の判断が合理的じゃないと考えることができます。
それでは、現在にとっての”未来の価値”はどのように計算するのでしょうか?経済学や経営学を知っている人ならば、DCF(割引キャッシュ・フロー)というモデルを想像するかもしれません。DCFは、未来の金額から、現在の経済成長率や資本調達コスト分を、割り引いたものを現在の価値するというものです。これは理性的で正しそうなモデルです。しかし、ジョージ・エインズリーの著書”誘惑される意志”によると、実際の人ではこのような指数関数のモデルよりも、反比例のグラフのようなモデルで人は判断しているようです。下図の上のグラフが理性的なモデル、下のグラフが人間的なモデルです。

図の横軸は一番左が現在、右が未来です。縦軸は、例えばその時にもらえる1万円の主観的な価値と考えてください。図の上のモデルで考えるならば、例えば1年後の1万円は現在の8000円程度の価値、半年後の1万円は現在の9200円程度の価値になります。そして、現在の1万円は、1万円の価値です。しかし、図の下のモデルで考えるならば、1年後の1万円が現在の8000円、半年後の1万円が現在の9200円となっても、現在の1万円はとても大きなインパクトを持ちます。つまり、「現在」の価値が非常に大きいのです。
エインズリーのモデルには批判もあるようですが、このように「現在」の価値が非常に大きいというのは理解できるのではないでしょうか?
寒い冬に布団から出てトイレに行きたくてもいけないのはなぜでしょうか?どうせ10分か20分もしたら我慢できなくなってトイレに行くので、先に行っておけばいいのに。
理性的な点では全く理解できません。しかし、下のグラフのように、人は「すぐ」の快適さを非常に高く評価すると考えるならばトイレにすぐ行けないのも納得がいきます。
それでは、これに対抗する方法はあるのでしょうか?
1つめは、人は上のモデルでなく、下のモデルのようになっていると把握することが第一です。直感的に捉えるとこのような目先の利益を過剰に評価するモデルであることを知っておけば、直感でなく理性に頼ることで少し抑えることができます。
2つめに、直感を抑えるには”自分のこと”として考えるのでなく、”他の人”の視点から判断することや、今の時点でなく、30分後と1時間後のこととして捉えるというのも有効なテクニックです。今すぐの100円と5分後の200円をどちらがいいかと他人にアドバイスする場合は、自分のこととして考えるよりもより合理的な選択ができます。また、30分後の100円と60分後の200円ならば後者を取る人は多いはずです。
最後に、嬉しくもあり残念でもあることですが、この目先のことの意思決定の結果を人は学習します。寒い冬にランニングに行くことが嫌だけど、1ヶ月後の大会のために走らないといけないとした場合、今日走ることができれば明日は前日の選択を受けてより走るようになります。一方で今日走らないと、明日も走らない確率が上がります。このような学習は、結果の評価を変更すること、つまり上のグラフの形を変えることでもあります。また、以前書いた”一貫性の魔力”の「人は自分の行動を一貫したものにしたがる」という一貫性バイアスから、一度行った選択を今後も行う確率が高くなります。
マシュマロ実験自体は子供の成功を予測するものですが、このように私たちの意思決定は多くの場合に”目の前の嫌な事や我慢”vs”長期的な成功”という対立になっています。その対立はどのようになっているかを知っておくことで、少しだけ備えることができるのではないでしょうか?
(文: SY)
もっと深く知りたい方にはこちらの”誘惑される意思”がオススメ。似たような装丁の似たような名前の”なぜ意志の力はあてにならないのか”という新刊がありますが、是非こちらの”誘惑される意志”を読んでください。
誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか
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2011年12月22日
2つのことは同時にできる?

(c) YamiQumo|ストックフォト PIXTA
人の脳はマルチタスクが可能なんでしょうか?
私はビリヤードをやっていると、的球を見ていないといけないのに、思わずポケットを見てしまって頭が動いてミスるといったことがよくあります。もし、人がマルチタスク可能ならば、的球を見ることとポケットを見ることを完全に同時に行なうのでこのようなミスをしないような気がします。
人の脳について考える時には2つのモデルがあります。1つはコンピュータのソフトウェアのようにCPU(中央演算装置)があって、そこで全部が動いているという考え方。この場合は、無意識といったものが、コプロセッサやDMAのように振舞っていると考えます。もう1つは、ハードウェアのようにASIC上で多くの処理が同時に起こっているという考え方。このモデルでは人の意識は、過去の記憶を眺めることで1つの意識のように見えているとも考えられ、一見理性的でないものには無意識とラベリングします。
要は1つのコンピュータが動いているのか、たくさんのミニミニコンピュータがいっぱい動いているのかといった考え方の2つがあるということです。
マギル大学のRobert Niebergallらの研究は人がマルチタスクできるかについてのヒントをくれるものです。
人は何かに注目する時にその物だけを見ることがあります。例えばショッピングセンターの中で遠くに友人をみつけた時は、あたかもその友人にスポットライトが当たっているかのように、その周りはあまり見えずその友人だけをはっきりと見ています。
それでは、このスポットライトは同時に2つのものに対して行うことができるのでしょうか?その答えをNiebergallの研究は教えてくれます。
Niebergallの研究では、邪魔なものに囲まれた2つの物体を集中して見ているサルのニューロンを調べました。この時、サルが2つの物体を同時に見ているのか、2つの物体を交互に見ているのかで、サルがマルチタスクが可能かどうかがわかるはずです。この研究では、ニューロンの働きから、サルは同時に2つの物体を見ているという結果になりました。つまり、サルはマルチタスカーなのです。この結果は、人間にも当てはまると考えていいと思います。
最近は神経科学の研究はすごく進んでいるので、心理学や哲学といった分野も急速に神経科学からのフィードバックが行われているし、その必要があると感じています。
この記事は以下を参考に書きました。
McGill University (2011, December 21). We are natural born multi-taskers. ScienceDaily. Retrieved December 22, 2011, from http://www.sciencedaily.com-/releases/2011/12/111221140459.htm
この記事に関する論文は以下です。
Robert Niebergall, Paul S. Khayat, Stefan Treue, Julio C. Martinez-Trujillo. Multifocal Attention Filters Targets from Distracters within and beyond Primate MT Neurons' Receptive Field Boundaries. Neuron, 2011; 72 (6): 1067 DOI: 10.1016/j.neuron.2011.10.013
(文: SY)
意識について考えてみたい人にオススメな本。認知心理学に影響を受けた哲学です。少し古くて、ちょっと分厚いですが。特に心理学科の学生さんに是非読んでもらいたいです。
2011年12月16日
カフェインはサッカーに効く

(c) echo|画像素材 PIXTA
カフェインが様々な作業に有効ということはよく言われています。また、以前、”コーヒーの効果”、”カフェインは作業効率を高める”という記事では、カフェインが単純作業の効率をあげることを書きました。
イギリスのシェフィールド・ハラム大学のMayur Ranchordasの研究はサッカーとカフェインの関係です。この研究では、1セット45分で2セットという通常のサッカーの試合と同じ形式で、短距離ダッシュ、コーンを使ってのドリブル、ヘディングとキックでのシュートの正確性といったことを調べました。
この結果、カフェインと炭水化物を摂った被験者は、ダッシュ、ドリブル、ヘディングとキックといったすべてで、より高いパフォーマンスを示すことが分かりました。
この結果はそれほど意外ではありませんが、きちんと実験結果が出たというのは面白いです。ビリヤードやダーツなどのような動きの少ないスポーツにおいてはカフェインが有効ということは考えられますが、サッカーのようなダイナミックなものにおいても有効なんですね...
ちなみに以前、”カフェインは協働作業向き?結論は性別による...”という記事を書きました。この記事は男性はカフェインを飲むとコラボレーション能力を少し減らすというものです。今回の研究は、サッカーのうちのテクニカルな部分のみを取り出したものですので、実戦では少し影響があるかもしれません。
この記事はシェフィールド・ハラム大学の”Caffeine study shows sport performance increase”を参考に書きました。
(文: SY)
2011年12月12日
NBA選手も調子にのって自滅?

(c) Daichi|画像素材 PIXTA
少し前に”スポーツでノッテる?ノッテない?”という記事で、プロバスケットボールの1投目のフリースローが成功していると、2投目の成功率が高いという記事を書きました。これは有名なギロビッチの実験の結果”1投目と2投目の結果は無関係である”というのをくつがえす面白い結果でした。
イスラエルのヘブライ大学のTal NeimanとYonatan Loewensteinは、バスケットボールの3ポイントシュートについてのNBAとWNBAの2シーズンのデータを使って調査をしました。バスケットボールの3ポイントシュートは、通常のシュート(2ポイント)と違って、ゴールから離れたところから行う難しいショットで、NBAでスリーポイントシュートの名手として有名なレジー・ミラーですら成功率が40%しかありません。その代わりに成功した場合の得点が1.5倍になり、またディフェンス側をゴール前から引き出すためにも有効なショットです。
この研究の結果分かったことは、まず3ポイントシュートを成功させると、その後も3ポイントシュートを選択することが多いということです。これは「調子がいい」などと考えて、より多く成功したことを続けるという点では合理的な選択です。
しかし、これが影響しているのか、3ポイントシュートを成功した後は、その後の3ポイントシュートの成功率が下がっていることが分かりました。3ポイントシュートを成功させたことで、効率的に成功できるエリアの外からでも3ポイントシュートを狙ってしまったためと考えられます。

図では簡単のため難易度を距離だけで書いています。いつも成功する距離で決まったならば、調子がよい時はもう少し遠くからでもスリーポイントシュートを狙うのが合理的な判断で、実際にスリーポイントシュートを成功した後は、再度スリーポイントシュートを狙うことが増えています。しかし、スリーポイントシュートの成功率が落ちているということから、本来の最適な場所よりもさらに遠くからでもスリーポイントシュートを狙っていると考えられます。つまり「調子にのって自滅する」という傾向が確認できたと言えます。
前回書いた記事はフリースローという全く同じ状況で好調不調の波はあるかという内容の記事だったのですが、今回のスリーポイントシュートについては成功してしまうと、それ以降のショット選択に過剰に影響を与えてしまい、難しすぎる状況でもスリーポイントシュートを狙ってしまうということです。
この記事は以下を参考に書きました。
Tal NeimanとYonatan Loewenstein, 2011, Reinforcement learning in professional basketball players, Nature Communications 2, Article number: 569 doi:10.1038/ncomms1580
(文: SY)
2011年12月11日
彼女アリとナシ、ブランド品に敏感なのはどっち?

(c) 游嵐|写真素材 PIXTA
彼女アリと彼女ナシの男性どっちがブランド品に敏感なんでしょうか??
オランダのエラスムス大学のKim Janssensらは、17〜32歳の133人の男子学生を対象として面白い実験をしました。
この実験は、被験者が付き添いの女性がいる実験室でパソコンの画面に1秒づつ商品が表示されるのでそれを覚えるというものです。この時に商品は、ただのバケツやエンピツやトイレットペーパーといった普通の機能的なの商品と、ポルシェやマセラッティといった高級自動車、モンブランのペンやブライトリングの腕時計といったブランド品が混ざっています。
被験者はこれらの商品を見た後に、画面に写っていたものを思い出して全部書き出します。ちなみにポルシェやブライトリングの腕時計でも、書きだす場合は「車」や「腕時計」と書きだせばいいです。
この結果が下です。このグラフでは、ブランド品と機能的な商品で、それぞれ思い出した割合を書いていますが。さらに、2つの条件でグラフを分けています。1つめは、被験者が彼女がいるかどうかです。もう1つは、付き添いの女性がひっつめ髪にメガネで地味な服を着ていた場合と、化粧をちゃんとして胸元が少しあいた服にミニスカートというセクシーな格好をしていた場合です。


このグラフを見てわかるように、付き添いの女性がセクシーな格好をしている時に、彼女ナシの男性はブランド品をより覚えていました。ブランド品により注目してしまっていたということですね...
つまり、彼女ナシの男性からプレゼントをもらう時や若い男性に高級品を買わせたい時にはセクシーな格好が有効ということがここからわかると思います...男ってバカかも..
この記事は以下を参考に書きました
Kim Janssensら,2011,Can buy me love: Mate attraction goals lead to perceptual readiness for status products,Journal of Experimental Social Psychology Volume 47, Issue 1, January 2011, Pages 254-258
(文: SY)
2011年12月08日
8割の学生は自分の実力を過大評価

(c) kenjito|イラスト素材 PIXTA
コーネル大学のDavid Dunningらは、大学2年の学生141人の実際のテストの成績と、成績と実力についての自己評価を使って、自分の能力を人はどのように見ているかを研究しました。

このグラフは縦軸が認識した順位で、菱形のマークが自分の本当の実力、正方形が自分の今回の成績、▲が実際のテストの点数の順位です。そして、横軸の右にいくほど実際の順位が高い人です。
これを見るとわかるように、成績が悪い人ほど自分の実際の成績と成績の自己評価の差が大きくなっていることが分かります。そして、上位20%位の人はこれが逆転して、自分の実際の成績が自己評価を上回っています。
この理由の1つめは、まず成績が高い人ほど、実際の問題を解く能力が高いだけでなくメタ認知能力が高く、自己認識を正確にしているようです。逆に、成績が悪い人は、実際に問題が解けないだけでなく、自分が解けたかどうかも分からないということになります。
また、成績がトップ20%近くの人が自分の成績が想像していたよりもよくなっているのは、成績上位者は自分が解けなかった問題がわかるだけでなく、他人はその問題が解けているに違いないと想像するためです。つまり、”勉強の出来る”自分の物差しで他人を測っているために、結果的に自分は他人よりも出来ていないと思ってしまうようです。
人は自分の成績が思ったよりもいいと思ってしまうようです。私も、学生時代の通知表などが出てきて、思ったよりも悪くてゲッソリするのですが、これはこの効果でしょうか。いや、もう今更すぎてどうでもいいですが...
この記事は以下を参考に書きました。
David Dunningら,2003,"Why People Fail to Recognize Their Own Incompetence" ,Current Directions in Psychological Science, Vol. 12, No. 3. (1 June 2003), pp. 83-87. doi:10.1111/1467-8721.01235 Key: citeulike:460284
(文: SY)
2011年11月30日
”今月の**賞”は役立つか?

(c) kuppa|写真素材 PIXTA
今月の**賞というのは役に立つのでしょうか?この方法はよく行われていますよね?人はインセンティブに従って動くものだと考えるならば、”営業部長賞”や”今月のベストパフォーマー賞”を作って表彰するのはいいことのように思えます。
西ミシガン大学のDouglas JohnsonとAlyce Dickinsonの研究では、6人の学生がコンピュータで小切手の処理をするという作業をしました。ちなみに通常のホワイトカラーの仕事と同様にこのコンピュータでは、途中でゲームをして遊ぶことが出来るようにしてあります。
この時に週ごとに”今週の賞”として余分に50ドルを上げると、全体としてパフォーマンスが低下しました。
これは、賞をもらった人はいいのですが、それ以外の人のパフォーマンスが低下するので全体としてはパフォーマンスがさがってしまうということです。金銭的ボーナスの良し悪しということはよく言われていますが、そもそもボーナスをもらわなかった人のモチベーションというのも考えないといけないんですね。
この記事は”Barking up the wrong tree”の”Do employee-of-the-month programs work?”を参考に書きました。
参考文献:
"Employee-of-the-Month Programs: Do They Really Work?" from Journal of Organizational Behavior Management, Volume 30, Issue 4 October 2010 , pages 308 - 324
(文: SY)
2011年11月17日
好みのタイプはどのくらい大事?

(c) としろ|写真素材 PIXTA
テキサスA&M大学のPaul Eastwickとノースウェスタン大学のAlice Eaglyの研究は、男女が、オンラインとリアルに会った時の恋愛関係についてのものです。
この研究は、相手のプロフィールが書かれた情報を読んだ後と実際に会った時で、相手への恋愛感情がどう変わるかというものです。
この研究によると、相手のプロフィールを読んだ後に、相手をより良いと思ったり、もしくは自分の好みでないから興味を失ったりします。これは、プロフィールから自分の好みのタイプかどうかを判断して、後は相手を勝手に解釈しているようです。一方、実際に会った後は、理想化していた相手は実際にはそこまででないと評価が少しだけ低下し、あまり興味がなかった相手でもかなりの興味を持ちます。
その時の相手への興味が下のグラフです。

相手と会う前は自分の好みのタイプかどうかで大きく違っていた興味が、実際に会うととても小さくなっているのが分かります。
ちなみに、これは実際に会うことで相手の性格や特徴が好みだったことが判明したというものでありません。むしろ、プロフィールを読んで想像していた特徴の解釈が、実際に会うことで変わったようです。例えば「おとなしい」と思っていたのが「相手に気を遣ってくれている」となったり、「おしゃべり」と思っていたのが「親しげ」となったりということです。
ソーシャルネットワークやオンラインデートといったものが流行ってきています。オンラインではたくさんの人がいるので、様々な方法で付き合う相手をスクリーニング(判別)していますが、実際に会う前は上のように、自分の好みを高く判断しすぎて、実際に会ったら興味のある人まで切ってしまっているのかもしれません。
元の論文情報はこちら。
この記事はMedicalXpressの"Do you really know what you want in a partner?"を参考に書きました。
(文: SY)
2011年11月13日
暗記モノの心理学
以前書いた記事をプレゼン資料仕立てにしてみました。
暗記モノの心理学というタイトルです。Karpickeの実験を知らない人はぜひみてください:->学生さんにオススメです。
AStudyOfLearning.pdf
よろしければご覧ください。
暗記モノの心理学というタイトルです。Karpickeの実験を知らない人はぜひみてください:->学生さんにオススメです。
AStudyOfLearning.pdf
よろしければご覧ください。
アファメーションの心理学
昨日、名古屋ライフハック研究会に参加させていただいて、5分間の発表(ライトニングトーク、通称LT)をさせていただきました。
このために資料を作ったのでアップしておきます。
StudyOfAffirmation.pdf
よろしければ御覧ください。
このために資料を作ったのでアップしておきます。
StudyOfAffirmation.pdf
よろしければ御覧ください。
2011年11月11日
いつもと違う考え方で、クリエイティブに!

(c) niji55|ストック写真 PIXTA
どのようにして、合理的な思考と直感的な思考が新しいアイデアを起こすのかを心理学の研究が明らかにしています。
創造性という概念は素敵なものです。なにか一瞬のひらめきが、新しいもの、役に立つもの、美しいものを世界にもたらすのです。無から有が生み出されるのです。
このひらめきは、論文やアイデアを仕上げるという旅の始まりにだけ起こるものかもしれません。しかし、それは素晴らしい瞬間です。最初のひらめき無しには、創造の旅は始まりません。私たちのクリエイティブな能力こそが、人類の成功の中心であるといっても過言ではありません。
インセンティブはうまくいくか?
それでは、どのようにして自分や他人の創造性を高めるのでしょうか?以前、how to be creative(英語の有料の電子書籍)の中で、創造性を理解したり推進することができる心理学の研究に基づいた6つの原則について議論しました。
しかし、人は普段、どのような方法で創造性を高めているのでしょうか?クリエイティブな会社では、一般的にはお金や何か他のインセンティブを使っています。それでは、インセンティブは創造性を高めるのでしょうか?
EisenbergerとShanock,2003の研究によると、それは可能です、しかし創造性が目的であることを強く強調する必要があります。Amabileら,1986の研究では、単にタスクが終わった時にインセンティブが与えるなら、インセンティブは創造性を高めないことを明らかにしました。実際に、タスクの完了に関してのインセンティブは、創造性を低める可能性があります。
創造性を高める他の方法として、単純に創造性をゴールと思わせることがあります。それは単純に思えますが、Chenら,2005の研究によると、ただ「クリエイティブに!」と言われるだけで、創造性が高まることが分かりました。
人はしばしばクリエイティブな解決を探していると自分で認識していないため、とこの研究では説明しています。このことは研究だけでなく、現実でも起こります。私たちは、締め切り、顧客、コスト、また他の様々なものに没頭してしまうことで、クリエイティブな解決を探すことをすぐに忘れてしまうのです。
人は創造性がゴールだ、と言われる必要があります。子供ではなく、大人は創造性の重要性を思い出す必要があります。毎日の生活の中では、従順であることを助長され、以前にやった同じ事を繰り返しているため、違ったことをするには特別な努力を必要とするのです。
合理的思考と直感的思考
誰かに「クリエイティブに!」と言うことは、「もっとクレバーに!」とか「もっと目ざとく!」といったようなことにあまり似ていません。次に、別のクリエイティブになる方法を見ていきましょう。
テクニックと一緒にhow to be creative(英語の有料の電子書籍)で書きましたが、創造性を刺激する新しい研究を見てみましょう。Daneら,2011の研究では、いつもと違う思考スタイルを使う方法を示しています。
クリエイティブな解決を必要とする問題を解決しようとする時、一般に人は以下のどちらかの方法をとります。
1.合理的思考: システマティックな思考パターンを使います。これは具体的に考えて、感情的なものや直感を無視するような、過去に学んだ特定の方法に頼ります。
2.直感的思考: 自由に連想や想像を広げます。これは過去に学んだ方法を無視して、第一印象や最初に思い浮かんだことを使います。
この研究では、彼らにいつもと違う思考パターンをさせることで人の創造性が増えるかどうかを調べました。合理的な思考パターンを好む人には直感的に考えるように言って、直感的な思考パターンを好む人には合理的に考えるように言いました。
そして、被験者に地域のビジネスを発展させる方法を探すという現実の問題を考えてもらいました。そして、この結果は実際の会社のマネージャーが評価しました。結果を調べると、思考パターンを変えるという試みはうまくいきました。いつもとは違う思考スタイルを使うことで、よりクリエイティブになったのです。
これがうまくいった理由の1つは、違う思考スタイルを意識的に使うことで、いつもの慣れた考え方を止めたことです。私たちは、問題への慣れたアプローチ方法を持っています。たしかに習慣は役に立つこともあります、それは繰り返し同じ結果を与えてくれます。しかし、それはクリエイティブな答えとは違うものです。
この研究の範囲は、新しいアイデアの生成だけについてだけです。このアイデアの生成はクリエイティブなプロセスの最初の時だけ起こるので、一度新しいアイデアが生まれたらあとは分析的な考え方が要求されます。そのあとは、このようないつもと違う思考パターンを使うテクニックは役に立ちません。
この記事はPSYBLOGの"Unusual Thinking Styles Increase Creativity"を翻訳したものです。
(翻訳: SY)
2011年11月07日
近視眼予測 何故、運動は辛く思えるのか?

(c) カメラ大好き|写真素材 PIXTA
運動について考える時、楽しくなってくる途中よりも、最初の辛い部分を考えてしまいます。
運動することを想像すると、不思議なことが起こります。
Rubyら,2011の研究では、次にやる運動について考えた時に起こる、妙な効果が分かりました。この研究では、被験者がピラティスやヨガやウエイトトレーニングやランニングなどの運動をどのくらい楽しめるかを予想して、その後に実際に運動をしてどのくらい楽しかったかを調べました。
平均的に人の予想は、かなり悲観的なものでしたが。運動を実際にすると、予想したよりも楽しんでいました。このことは、様々な種類の人において見られました。また、緩い運動でも激しい運動でも、一人での運動でもジムでの運動でも、他人がメニューを決めた時でも自分でメニューを決めた場合でも、同様に予想していたよりも実際の運動を楽しんでいました。
この理由は、運動の楽しさを予想する時に、楽しくなってくる途中よりも、最初の辛い部分に重点的にフォーカスしてしまうためです。
研究者は、このことに”近視眼予測”(forecasting myopia)と名付けて、この”近視眼予測”を避ける方法をみつけました。
全体に集中する
Rubyらは実験として、ウォームアップや運動やクールダウンといったすべての運動について考えるように言いました。それから運動の楽しさを予想すると、より楽しめると予想するようになりました。この方法は、将来運動をしようという意志を強くする効果も生みます。
この全体をイメージするという方法で、どのくらい楽しめるかの短期的な予想を避けることができそうです。運動の楽しさを予想するときは、辛い最初よりも、運動の全体をイメージしましょう。
この記事はPSYBLOGの"Forecasting Myopia: Why Exercise is More Fun Than We Predict"を翻訳したものです。
(翻訳: SY)
2011年11月06日
目標を人に話すといけない理由

(c) YsPhoto|ストックフォト PIXTA
自分の目標をみんなに伝えることで、モチベーションが落ちます。
どのように目標にコミットするかのアドバイスを探すと、ある方法が繰り返しみつかります。「目標をみんなに伝えることで目標に近づく」というものです。
理論的には、「庭の手入れをする」、「禁煙する」や「日曜大工をする」などと友達に伝えると、自分の責任感を増します。そして、理論的にはこのことが自分を目標に近づけてくれそうです。
また、人は自分が首尾一貫した状態でいたいものです。この首尾一貫した感覚が自分自身の価値を強めます。そのため、みんなに伝えた目標に向けてがんばらないと、自分の価値が減ってしまうと思ってしまいます。
これらのことは理屈の上では正しそうですが、実際に真実なのでしょうか?
モチベーション
不幸なことに、心には自分自身をコントロールしようという試みに対して怠けてしまうという意地悪な習慣が少しあります。Gollwitzerら,2010の研究によると、目標をみんなに伝えることは、実際には、意図した反対の結果になってしまいます。
3つの実験で、目標をみんなに伝えることと、実際にそれが上手く行くかをテストしました。3つのすべての実験で、目標を誰かに伝えた人は、目標に近づくのでなく遠ざかる結果になりました。
他の人に目標を伝えた時に、人は勉強や、仕事を探したり、出世への努力を減らしてしまうのです。
前進の空想
これは何が起こってるのでしょうか?どうして、目標をみんなに伝えると目標への努力を減らしてしまうのでしょうか?
説明の1つとして、目標を他人に伝えるというそのことで、私たちは目標への第一歩を行ったと思ってしまうのです。
Gollwitzeらの4つめの研究で、ちょうどこのような心理的なメカニズムの証拠がみつかりました。目標をみんなに伝えた人は、そうでない人よりも、よりゴールに近づいていると思っていたのです。
目標をみんなに伝えることが、”ポジティブな空想の罠”と同じような効果を生んでいるように見えます。これらの効果が、第一歩を本当に行ったと思わせてしますのです。
「目標をみんなに伝えることで目標に近づく」というアドバイスを次に見た時は、それを無視しましょう。それは上手くいかないだけでなく、むしろ逆効果で、目標達成の邪魔になります。もし、本当に目標を達成したいならば、それを秘密にしておきましょう。
この記事はPSYBLOGの”Why You Should Keep Your Goals Secret”を翻訳したものです。
(翻訳: SY)
2011年10月29日
好奇心も学問の鍵

(c) nashie|写真素材 PIXTA
学歴が必要かどうか、というのは様々な議論のある問題かもしれません。それでも学問についてより知っていることは大事ですし、特に専門的な分野においては大学で良い成績を取ることは大事なことです。
イギリスのエジンバラ大学のSophie von Stumm、スイスの ノースウェスタン・スイス応用科学大学 Benedikt Hell、ロンドン大学Tomas Chamorro-Premuzicらが大学での成績と好奇心に関する研究をしました。
これは、合計で50000人の学生を対象とした、200の研究のメタ分析です。メタ分析というのは、これまで行われた様々な研究を統合して、より大きなデータからより正確な結果をだそうとするものです。この研究によると、やはり好奇心は大学でのパフォーマンスに影響を与えていました。この効果はかなり大きいもので、好奇心には真面目さと同じくらいの意味がありました。さら、好奇心があってかつ真面目、という場合は、特に大きな良い影響があります。
これは好奇心が、自らの知識を広げたり、研究を進めるといった際の推進剤になっているためと考えることができます。
この研究は大学でのものですが、好奇心の価値は学生にとどまりません。会社でも好奇心の高い人は、パフォーマンスが高く、未知の分野や新しい業務を開拓していくと考えられます。人を雇うときは、本を読んだり、美術館に行ったり、知らない土地を旅するといった好奇心の強い人を雇うべきでしょう。
また、子供を教育する場合も、やはり好奇心を伸ばすといったことはかなり重要なようです。子供を美術館に連れて行くといった情操教育には、私は疑問を持っているのですが、科学的な好奇心を伸ばしたり、新しい分野の本を読んだりするような仕組みづくりは大事だと思います。
この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science. "Curiosity is critical to academic performance." ScienceDaily, 27 Oct. 2011. Web. 29 Oct. 2011.
元の論文情報はこちら。
S. von Stumm, B. Hell, T. Chamorro-Premuzic. The Hungry Mind: Intellectual Curiosity Is the Third Pillar of Academic Performance. Perspectives on Psychological Science, 2011; 6 (6): 574 DOI: 10.1177/1745691611421204
(文: SY)
2011年10月20日
目標の正しいビジュアル化

(c) タケ|ストック写真 PIXTA
あなたがビジュアル化すると、本当にそれが叶う?
ビジュアル化の力について乱暴な主張がされています。
「イメージをすればそれは叶う」といったことが言われています。もちろん、それが完全にガラクタであったとしてさえも、自分が言ってもらいたいと思っていることを人に言ってあげるという莫大なマーケットがあります。
ビジュアル化は、たしかに目標を達成する際に大事かもしれません。多くの研究が、運動でのビジュアル化の力を伝えています。アスリートは、より高いパフォーマンスでのプレイを経験するように促されます。
今では、スポーツにおいて、自分のパフォーマンスをビジュアル化するようにプレイヤーに言わない心理学者をみつけるのが難しいです。
また、ビジュアル化は、人の行動を変えるための心理セラピーでも使われます。例えば、アルコール中毒の人は、飲酒をしたくなったらどのように対処するかをビジュアル化するように言われます。
効果的なビジュアル化
ビジュアル化が目標達成に役立つことはよく知られています。しかし、未来についてのビジュアル化は、様々な形で表れます。いったい、どのようにして、正しい方法のビジュアルをしていると知っているのでしょうか?
人気のある自己啓発本には、私たちは結果をシミュレートすることで成功する、と書いてあります。そして、昇進、理想のパートナーとの出会い、大掃除をすること、などをイメージすれば、私たちは目標に近づくと言っています。
”ポジティブな空想の罠”という記事では、ポジティブな空想よりもネガティブな空想の方がより良い結果になることを述べました。おそらく、未来のビジュアル化の効果的な方法というのは、目標を達成した状態でなく、目標を達成するプロセスについて考えることなんでしょう。
プロセス対結果
結果とプロセスは、1対1に対応するものです。PhamとTaylor,1999の実験は、学生のビジュアル化に関するものです。この実験では、試験の結果が上手く行くとビジュアル化した学生と、勉強するなどの目標へのステップをビジュアル化した学生を分けました。
その結果は明確なものでした。参考書を読んだり、必要なスキルを得ることをビジュアル化した学生は、より長い時間実際に勉強をして、試験でもより良い点数を取りました。
(ちなみに意外なことに、勉強の時間と試験の点数は、弱い相関しかありませんでした)
このことは、プロセスをビジュアル化する2つの効果について示しています。
・計画: プロセスをビジュアル化することで、目標達成に必要なステップに集中できます。
・情動: プロセスをビジュアル化すると、心配が減ります。
計画の誤信
結果をビジュアル化することが上手くいかない理由の一つは、計画の誤信です。これは、私たちはすべてのことが実際によりもより簡単であると考えていることによります。このことは何年も経験しているのに、ずっと過信したままです。そして、私たちはどのくらいの計画が上手く行って、どのくらいが失敗するかの予測に失敗し続けているのです。
一方、プロセスについて考えることは、潜在的な問題に集中して、どうやって解決するかに役立ちます。
単に目標について夢見ることは、役立たないどころかより悪い結果を起こすかも知れません。それはパフォーマンスを落としてしまいます。最近の研究では、成功した結果をビジュアル化した被験者は、勉強の量が減り、モチベーションも低下することが分かっています。
つまり、結果を願うのでなく、どうやって成功するかの過程をビジュアル化することが大事なのです。
この記事はPSYBLOGの"The Right Kind of Visualisation"を翻訳したものです。
(翻訳: SY)
2011年10月19日
自分に甘いとグズグズしない?

(c) break9|ストック写真 PIXTA
自分を許さないと、ぐずぐずは雪だるま式に増えるかも
人はしばしば自分自身を嫌って、非難して、そして自分をグズグズの淵に叩き落とします。
Wohlら,2010の新しい研究では、自分を非難することが生産性を落とすかもしれないと述べています。119人の大学1年生の2つの中間試験を通じた研究をしました。この研究では、1回目の中間試験の前にグズグズすることを許すことと、2日目の中間試験が関係を調べました。
普通、自分に甘くするとグズグズが起きてしまうと考えますが、Wohlらは、逆になることを明らかにしました。
寛大さがあることで、学習の妨げとなる前回の悪い行動を認めて、次回の試験に集中できるのです。
この理由は、グズグズする自分を許すことは、前回の試験の結果によるネガティブな感情を減らして、次のグズグズを減らす効果があるためです。
このことは、接近回避行動という点からも説明できます。私たちは悪い気分になることを避けるので、以前の試験に対する罪の意識を封じるために次の試験を避けようとしてしまいます。もし、自分を許すことができると、罪の意識を減るので、次の試験により集中できるのです。
この説明は、人は他人との感情的な関係を持つだけでなく、試験などのタスクとも感情的な関係を持つことを強調します。古くからの親友のように、好きで楽しみにしているタスクがあれば、私たちの時間を奪う強盗のように感じるタスクもあります。
これは被験者が普通にしていたことを研究しただけなので、自分を許すことがどのくらい簡単なのかを教えてくれません。残念なことに、心理学者は、自分を許すプロセスについては”いいこと”という位で他にほとんど情報を持っていません。
たぶん、自分を許すことが健康的だと知っているだけでも役に立ちます。皆さんがこの知識を役に立てることを願っています。
”How to Avoid Procrastination: Think Concrete”(未訳)も参考にしてください。
この記事は、PSYBLOGの”Procrastinate Less By Forgiving Yourself”を翻訳したものです。
(翻訳: SY)