2011年10月17日

複数の目標でも集中できる方法

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新しい研究は、具体的な計画が心理的な余裕を作って、目標に集中する方法を示しています。


我々は平均して15個の個人的なプロジェクトを同時に実行しています。ヨーロッパ旅行を計画しながら、家の大掃除を週末にしようとしていて、転職活動を裏で進めながら火曜日のプレゼンの準備をするといったように様々な目標があります。さらに私たちは毎日、仕事や買い物や読書のようなことをしています。

それでは、目標について考えることは、他の目標をどのくらい妨げてしまうのでしょうか?ヨーロッパ旅行を考えると、どのくらい仕事の気が散ってしまうのでしょうか?

心理学者は、終わっていない目標が私たちの心の周りをグルグル回っていることを1世紀近く前から指摘しています。これは、ツァイガルニック効果と呼ばれています。



具体的な計画は、心を解き放つ

まだ終わっていない目標に気を逸らされて、別の目標に集中できないかもしれません。新しい研究によると、これはまだ終わっていない目標をきちんと具体的に計画するまで続きます。

MasicampoとBaumeister,2011の研究によると、小説を読んで楽しんでいる間、被験者は毎日の終わっていない仕事についての考えがしばしば浮かんできて、小説を読んでいる邪魔をされます

しかし、もし終わっていない目標について、とても具体的に計画をするように言われると、仕事のことを考えてしまうことが、仕事がない時と同じくらいまでに減ります。このことは、別の実験でも確認されました。

先にやることをより具体的に計画をしておくことで、今実行していることのための心理的な余裕を生み出して、現在のことをより効率的にこなすことができるのです。

目標を具体的にするというのは、私達がやりたいどんなことについてでも、いつ、どこで、なにを、どうやって、かを決めることです。もし旅行を計画しているなら、夕食後にパートナーと一緒に、ホテルや飛行機についてリストアップして、それから、土曜の朝にオンラインで予約すると決めてはどうでしょうか?(あなたは”目標の正しいビジュアル化”(未訳)してください)

もし、計画が十分に具体的ならば、夕食後になったらこの計画を自動的に行います。その結果、残りの時間は旅行の計画にわずらわされることなく、他の目標に集中することができるのです。


この記事はPSYBLOG"How to Avoid Being Distracted From Your Goals"を翻訳したものです。


(翻訳: SY)

2011年10月15日

目標設定のダークサイド

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目標はどこにでもあります、しかし目標設定は全てがいいものでなく、危険でもあります。

目標設定についてはたくさんのことが言われています。また、個人にとっても、企業にとっても、政府にとっても、信仰の対象にまでなってきていて、現代の労働者は、しばしば、自分自身を目標に向かわせるために、自分でパフォーマンスのレビューをしています。目標がしばしばバカバカしかったり、無意味なものだったりするという事実もあるののに、それはどうやら無関係なようです。

すべての国が目標に向けて行動しています。他の国と同様に、ここイギリスでも政治家は目標設定をしています。経済指標から保険医療の改善項目や犯罪指標まであらゆることに目標が設定されていて、計測できるものは目標とされてしまいます。


制御できない目標
心理学者は、目標設定への並外れた流行の一端を担っています。1970年代から1980年代の大規模な研究は、どのように人が目標に反応するかを伝えます。

BanduraとSimon,1977の初期の研究では、平均より50%オーバーの肥満の人を被験者としました。これらの被験者は、食事行動を変えることがとても難しい人で、多くは子供の頃から肥満でした。

彼らの減量実験では、あるグループは食事をできるだけ制限するようにと言われ、もう一方は具体的な目標を決められました。

4週間後、できるだけ制限すると言われた人に比べて、具体的な目標を決められた人は2倍食事量を減らしました

このように具体的な目標の力は、長らくあらゆる分野において発見されています。例えば、食品工場の労働者は、具体的な目標を示されることで、劇的にパフォーマンスが上がり、怪我も減ります。

コールセンターでの研究では、具体的な目標を設定することで病欠が減り、安全性とパフォーマンスが向上しました。

肉体的および認知的なタスクは、具体的な目標によって促進されます。エンジニアと科学者に対する研究でも、ベストを尽くすという形や目標が全くないよりも、目標が具体的ならばよりパフォーマンスが上がるという結果があります。


反動が始まる
具体的な目標の力が有効であるという研究は無数にあり、また具体的な目標は曖昧さを減らします。マネージャーが「ベストを尽くせ」と伝える時、それは相手に解釈の余地を残してしまいます。他の人の「ベスト」は、あなたが考えている「ベスト」よりも少ないかもしれません。もし目標が曖昧ならば、人は自分勝手に解釈します。そのためにも明確な目標がいいのです。少なくとも理論的には。

ただし、実際には予想外の結果になることもあります。ここに悪い目標設定の副作用を書きます。(Ordonezら,2009

・具体的すぎる
具体的すぎる目標に取り組むのは用意ですが、全体を見失ってしまうことがあります。個別の目標は、最終目標に従うものであって、個別の目標に全てが従うわけではありません

・多すぎる
目標が多すぎると、簡単な目標に集中してしまいがちです。そして、難しい目標が重要なものだと、最終目標に失敗してしまいます。

・短すぎる
短期的な目標は、短期志向を生んでしまいます。ビジネスを5年、10年、20年と続けていくのでしょうか?ニューヨークで雨の日にタクシーを捕まえるのが難しい理由は、運転手はそれほど良い仕事ではないから、運転手はその日の目標を達成したら家に早く帰ってしまうのです。どうして、儲かる時に仕事を止めてしまうのでしょうか?それは、目標設定の期間が短すぎるからです。

また、よくない目標設定が我々の学習能力やモチベーションに害をなすという証拠もあります。さらに目標を達成しようと倫理的でない行動をしてしまうこともあります。


個人的な目標設定
組織心理学の研究には様々な示唆があります。組織心理学は、従業員にベストなパフォーマンスを出させるように管理するためのものです。

組織心理学で言われていることは、悪い目標設定は職場や組織において実行されるかもしれないが、基本的な考え方は正しいということです。もし、自分が具体的な目標を設定したら、目標がよいものである限りは、あなたはよりよく実行できます。

最終目標から逸れないために、目標設定のダークサイドを覚えておくことは価値のあることです。目標は役に立つかも知れませんが、目標があまりにも柔軟すぎてもいけません。

また、他人でなく自分で目標を設定する時、完全にコントロールする利点があります。もし上手くいかなかったら、目標を捨てることができます。適切でなくなれば、変更することができます。漠然と1つか2つの目標を持つことは、悪いことではありません。

目標がパフォーマンスをしばしば改善することにはほとんど疑問の余地がありません。しかし、多くの組織のように目標の奴隷にならないようにしなければなりません。


この記事はPSYBLOG"The Dark Side of Goal-Setting"を翻訳したものです。


(翻訳: SY)

2011年10月13日

目標達成のための11の方法

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●目標設定での空想、可視化、目標へのコミットメント、躊躇、目標設定の副作用について

私たちは目標設定についての様々なことを聞いています。目標設定については、具体的で、チャレンジングで、報酬を使って、進捗を記録して、みんなに宣言をするといったことが言われています。

それでは、どうして我々はいまだに失敗してしまうのでしょうか?

心理学の研究からこの疑問に回答し、さらにどのような考え方が目標設定の役に立つかを示します。

1.空想を止める
どんな目標でももっとも大きな敵は、過大なポジティブな空想です。”ポジティブな空想の罠”で述べたように、ポジティブな空想が仕事をみつけたり、パートナーをみつけるのを失敗させてしまいます。目標達成においては空想はよりネガティブな方がよいです。成功するまでは、将来の成功を経験しないようにしなければなりません。


2.まずコミットする
私たちが目標を達成しないのはコミットメントの不足が理由です。

強力な心理学的なテクニックで、コミットメントを強化することができます。この手法はメンタル・コントラストと言われるものです。目標達成の難しい点と簡単な点を考えることで、よりコミットメントが高まります


3.最初の一歩をはじめる
"ツァイガルニック効果"を使うことで、目標に近づくことができます。"ツァイガルニック効果"というのは、完了した課題よりも、達成されなかった課題や中断している課題の方が記憶に残りやすいというものです。

ロシアの心理学者、Bluma Zeigarnikは、ウェイターは注文を受けている間だけオーダーを覚えいて、オーダーが終わるとそれを忘れてしまうことに気づきました。
ツァイガルニック効果は、優柔不断に対する一つの武器としてともかく何かをはじめるということを示唆します。最初にはじめてさえしまえば、ツァイガルニック効果によって目標があなたの心の中に居座ることになります。


4.結果でなく、プロセスをイメージする
私たちは、過信による計画の影響を受けやすいです。上手くいってない時でも、上手くいっていると考えてしまいます目標へのプロセスをイメージすることで、次に行うべきステップに集中でき、また、不安を減らすこともできます。


5.どうにでもなれ効果を避けろ
私たちは目標を失敗すると、”どうにでもなれ効果の罠”に落ちることがあります。ダイエット中の人は、毎日の摂取カロリーの制限を超えると、「どうにでもなれ」とたくさん食べてしまうことがあります。

"どうにでもなれ効果"の影響を受けやすい目標は、短期の目標や禁止に関わる「〜しない」といった目標です。逆に長期的な目標や、「新しく〜する」目標では、どうにでもなれ効果を避けることができます


6.優柔不断を避ける
目標が困難で目標に本当に価値があるかわからない時に、私たちは躊躇します。このような状況では、大きな目標を忘れて詳細に没頭することがキーとなります。デッドラインを設けて、足元のことに集中しましょう。”だらだらを避けるには”(未訳)も参照のこと。


7.焦点を変える
足元だけ見ていたらどこに向かっているか分からなくなってしまいます。最終的な目標と現在やっているタスクを完了させることの間で焦点を切り替えることが目標達成のキーです。研究によると、進捗を評価する時に、特に難しいタスクを評価する時には、じっとタスクに集中することがベストな方法となります。しかし、タスクが簡単だったり、終わりかけている時には最終的な目標に集中することがベターです。”大きなプロジェクトを終わらせるには”(未訳)も参照のこと。


8.自動的な行動をしない
しばしば私たちの行動は自動的になります。私たちは、本当にそう考えるから物事を行うのでなくて、習慣や無意識の他者の真似をして行動してしまいます(Bargh他, 2001)。このような行動は、目標への努力の邪魔となります。自分の行動が、本当に目標に近付いているかを自問しましょう。


9.目標を忘れろ、何をしたいのか?
目標は私たちの最終的な狙いと一致しているべきです。しかし、”目標設定のダークサイド”があります。目標があまりに具体的な時、行き詰ってしまいます。

例えば、あまりにも目標が多いと、重要じゃなくて簡単な目標が優先されてしまったりします。また、あまりにも目標が短期的だと短期志向を生んでしまったりします。また、悪い目標設定はモチベーションを下げてしまったり、非倫理的な行動を増やしたりします。

第一に、目標の全体を覚えておいてください。


10.引き際を知る
始める時でなく、いつ止めるかを知ることが問題になることがあります。心理学者は、サンクコスト(埋没コスト)が奇妙な行動をさせることをみつけました(Arkes & Blumer, 1985)。サンクコストは、既に使ってしまって取り返せない努力やお金を意味します。このサンクコストのため、計画が失敗しても、それを続けようとしてしまいます。

研究では、目標に対して努力やお金を投入すればするほど、実際に成功しそうかどうかに関係なく、より成功すると
考えてしまいます
。進路をいつ変更して、無駄なことをいつ切り上げるかを知ることが大事です。


11.if-thenプラン
これらの研究は、目標達成においての自己管理の重要性を示しています。もし、目標達成のためのコスト全てが分かると、自己管理はとても難しくなります。

このようなことを防ぐための方法としては、”if-then(もし〜ならば、〜せよ)プラン”という方法があります(Gollwitzer他, 2006)。あなたはある状況になったらやることを、事前に決めておきます。これは単純に思えますが、私たちは計画するよりも即席でやりがちです。”if-thenプラン”は、これまで説明したような障害を乗り越えるために使えます



この記事はPsyblog"11 Goal Hacks: How to Achieve Anything"の翻訳記事です。


(翻訳: SY)

グズグズと戦う4つの方法

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私たちを重要な仕事から、引き離す心理的な要因について見て行きましょう。

古いジョークにこういうのがあります。
「仕事の日にグズグズするのは何故?」「明日があるからさ」

もし、あなたがグズグズ屋だとしても、あなたは一人ではありません。大学生の75%が自分をグズグズ屋と考えていて、50%が自分を問題があるグズグズ屋と考えています。

Steel 2007によると、グズグズには4つのポイントがあり、それが対処法にもなります。


1.価値の低い仕事
目標の価値は、私たちのグズグズに影響を与えます。例えば、つまらない仕事の場合はますますグズグズします。つまらない仕事は退屈なので、時間制限を厳しくしたり、特殊な条件を自分に課したりするといったように、敢えてもっと難しい仕事にすることで、グズグズしなくなります。

また、嫌いな仕事を面白くすることはできます。集団で楽しむ学生は、しばしば勉強のグループを作ります。彼らは、試験のための復習と同時に、グループでいることを楽しみます。

他の方法として、正しい行動にはちょっとしたご褒美を、グズグズには罰を与える、といったように自分を犬のように扱うこともできます。


2.グズグズ屋の性格
中には生まれながらのグズグズ屋もいます。自己管理ができておらず、注意力が散漫で、衝動的な人です。自分の性格について出来ることはあまりないですが、環境をなんとかすることはできます。

基本的なアドバイスは、仕事をするように強制されたり、誘惑を避けさせてくれるような正しい環境にいなさいということです。コンピュータで書きものをするには、コンピュータの後ろからインターネットのケーブルを抜いてどこかにしまっておきましょう。また、何かに取り組む時には、スマートフォンも隠しておきましょう

グズグズは立ち止まって考えないといけない時に起こりやすいです。仕事でのほんの小さな決定でも、グズグズが起こるかもしれません。そのため立ち止まって考えないですむように、あなたがやらないといけない仕事は、自動化していく習慣をつけましょう


3.成功への期待
仕事が簡単に終わると思っているなら、グズグズしないでしょう。成功の期待を増やすことはグズグズを減らします。しかし、期待を変えるにはほとんどの場合、経験が必要です。成功の経験がないと期待も変わらないというのは、ジレンマです。

しかし、一度あなたが仕事を始めてそれを完了させたなら、似たような仕事では今後はグズグズしなくなります。


4.目標の失敗
グズグズの定義によって、”もう少し”というのは、目標へ到達しなかったことを意味します。正しい方法で目標を設定することは、大事なことです。長期的な目標だけでなく、短期的な目標も用意して、無理にでも締め切りを作ることはグズグズを防ぐのに有効です。目標設定についてはこちらの”目標設定のための11の方法”を参照してください。


自分への許し
自分に厳しくなりすぎてはいけません。グズグズする自分を許すことは、グズグズのサイクルを止める助けになります。以前書いた”自分に甘いとグズグズしない?”を参照してください。


この記事は、PSYBLOG"How to Fight the Four Pillars of Procrastination"を翻訳したものです。

(翻訳: SY)

2011年10月07日

スポーツでノッテる?ノッテない?

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スポーツにおいて、”ノッテる”、”ノッテない”というのが本当にあるのか、それともバラツキを勝手に解釈しているだけなのかは難しい問題です。

この問題については、トマス・ギロビッチの研究が有名で、彼の書いた”人間、この信じやすきもの”という本にも載っています。この研究はバスケットボールのフリースローの結果について、1投目のフリースローの成功/不成功の結果は、次のフリースローの成功率と相関がないというものです。ギロビッチは非常に有名な心理学者でこの本も有名なため、この結果も広く知られています。そして、この結果は、”ノッテる”、”ノッテない”というのが幻想であることを示唆しています。

この研究が正しいのかどうかを、イェール大学のGur Yaariとイスラエルのエルサレム・ヘブライ大学の Shmuel Eisenmannが2005年から2010年のNBAの300,000回の以上のフリースローのデータを元に研究しました。


この新しい研究によると、よく知られたギロビッチの結果に反して、スポーツでは”ノッテる”、”ノッテない”ということが本当にあるようです。この研究の結果、1回目をミスした場合、2回目のフリースローの成功率が72-73%程度なのが、1回目を成功した場合、2回目のフリースローの成功率は78-80%程度になります。このように、1投目に成功すると、有意にフリースローの成功率が上がっているのです。


元のギロビッチの研究から25年経っています。ギロビッチの研究は、1シーズンの1チームのデータ、および2シーズンの別の1チームのデータを元にしていました。Yaariらは、より大規模なデータを使うことで以前の研究の結果の誤りを示したのです。


元の論文情報はこちら。
Gur Yaari, Shmuel Eisenmann. The Hot (Invisible?) Hand: Can Time Sequence Patterns of Success/Failure in Sports Be Modeled as Repeated Random Independent Trials? PLoS ONE, 2011; 6 (10): e24532 DOI: 10.1371/journal.pone.0024532

この記事は以下を参考に書きました。
Yale University. "Athletes' winning streaks may not be all in our -- or their -- heads." ScienceDaily, 5 Oct. 2011. Web. 7 Oct. 2011.

人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)
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(文: SY)

気持ちをリセットする簡単な方法

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ミシガン大学のSpike LeeとNorbert Schwarzの研究は手を洗うことの心理学的な意味についてのものです。

手を洗うことは健康にとって大事なことはもちろんですが、気持ちにとっても様々な意味を持っています。

人は手を洗うことで、最後に行った様々なことを”リセット”するようです。例えば、ギャンブルで負けが込んでいる人は、一度手を洗うと”悪い流れが消えた”と感じるのか、再び賭け金を上げます

さらに、自分が悪い行いをした後でも、手を洗うことで罪悪感が減ります。逆に、自分がいい気持ちでいる時でも、手を洗うことでいい気持ちが減ってしまうのです。つまり、手を洗うことで、気持ちが”リセット”してしまうのです。


また、Leeらの実験では、2つのフルーツジャムのうちどちらかを選んで、その後でどちらのジャムが良かったかを聞くというものがあります。人は、自分が選択した後に、それを正当化する傾向があります。しかし、選択をした後に手を洗うことで、この正当化の度合いを半分程度に減らすことができます。つまり、手を洗うことで人は冷静になって、自分の決定をより客観的に見ることが出来るのです。


このように手を洗うことには様々な効果がありますが、全て自分の気持をニュートラルに近づけるというものです。もちろん、手を洗うだけで全てが解決するわけではありませんが、落ち着くために手を洗うというのは実際的に意味があるのです。

これまで、私は仕事をしている昼間に眠気覚ましに手を洗うというのはよくしていましたが、眠気覚ましだけでなく冷静になるために手を洗うというのもアリなんですね。


元の論文はこちら。
S. W. S. Lee, N. Schwarz. Wiping the Slate Clean: Psychological Consequences of Physical Cleansing. Current Directions in Psychological Science, 2011; 20 (5): 307 DOI: 10.1177/0963721411422694

この記事は以下を参考に書きました。
Association for Psychological Science. "You can wash away your troubles, with soap." ScienceDaily, 5 Oct. 2011. Web. 7 Oct. 2011.


(文: SY)

2011年09月28日

節約の鍵は、1つの目的

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節約をするにはどうすればいいのでしょうか?

トロント大学のDilip SomanとMin Zhaoは、インド、カナダ、香港の様々な階層の人を対象とした研究で明らかにしています。

これは節約に限らないものですが、何をゴールにした節約なのか、このゴールが複数なのか、一つなのかが大事です。

もしゴールが一つならば、人はそのゴールのみに集中します。一方、複数のゴールがある場合は、ゴールに集中するよりもむしろゴール間のトレードオフに集中してしまいます。


節約をする際には「マンションを買うために節約する」という1つのゴールを決めるのが現実的で、「マンションも欲しいし、子供の教育費用も必要、それに病気の備えなどのためのイザというお金も取っておかないと」という複数のゴールでは上手くいきません。実際には後者の方がよりお金が必要なので、モチベーションは増幅しそうな気はたしかにするのですが。


節約をしたいならば、分かりやすい単一のゴールにしましょう。そして、これは節約に限らないものです。


この記事は以下を参考に書きました。
University of Toronto, Rotman School of Management. "Wanna save? Keep it simple, says new research." ScienceDaily, 26 Sep. 2011. Web. 28 Sep. 2011.

元の論文は以下です。
Dilip Soman Min Zhao. The Fewer the Better: Number of Goals and Savings Behavior. Journal of Marketing Research, 2011 (in press)


(文: SY)

2011年09月14日

運動が創造性を向上させる?

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スウェーデンのストックホルム大学のUlrica von Thiele Schwarzらの研究によると、労働時間を減らして運動をしても、それを補って余りある効果があるようです。

40時間の労働時間の人を3つのグループに分けて、そのまま40時間労働、2.5時間を仕事でなく運動に割り当てる、2.5時間を仕事と運動以外をする、としました。この時、運動をしたグループは、自己評価の創造性が向上し、仕事もより出来ました。さらに病欠が減るという効果もありました。

この結果は、ありそうな結果ですが、面白い結果です。運動によって、創造性が向上するのは当然あるとしても、運動の時間を割り引いてもさらに効果があるというのが興味深い結果でした。


なお、この研究は創造性の評価が自己評価というところが不十分と考えられます。この点はさらなる研究を期待したいです。


この記事はストックホルム大学の"Exercise at work boosts productivity"を参考に書きました。

(文: SY)

2011年09月12日

電子メールでは嘘をつきやすい

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メールと手紙では、人はどちらがより嘘をつくのでしょうか???

デポール大学のCharles Naquinらの研究によると電子メールの方がより嘘をつくようです。この研究では、独裁者ゲーム(dictator game)の変形を使って行いました。

通常の独裁者ゲームというのは、100ドル持っている独裁者が、受領者にお金を配分する金額を決めます。受領者はこの金額を受け取るか、自分が受け取らない代わりに独裁者もお金をもらえないか、を選びます。例えば独裁者が自分が70ドル、受領者が30ドルと配分を決めます。受領者はこの30ドルをそのままもらってもいいし、自分ももらえない代わりに独裁者ももらわない、という選択をします。

受領者が、完全に合理的(?経済学的?)な人間ならば1ドルでも貰うのが合理的ですが、実際には99ドルと1ドルの配分は”公平でない”とみなすので1ドルの場合は受け取らないことを選択します(そのため独裁者もお金をもらえない)


Naquinらの変形独裁者ゲームは、独裁者が受け取る金額を100ドルで固定するのでなく、5ドルから100ドルの間の何ドルもらえるかを独裁者は知っているが、受領者には知らされないというものです。受領者は10ドルもらったとしても、独裁者がどのくらいの金額から配分したか分からないので、どのくらい公平なのかが分からない特徴があります。

この変形独裁者ゲームを48人の学生で行いました。この時に独裁者は受領者に元の金額を伝えますが、これを被験者の半分は手書きの手紙で、残りの半分は電子メールで行いました。

すると、独裁者が配分者に嘘をついたのは、電子メールで92%、手紙で64%でした。また、この嘘の申告額も電子メールの時は平均30ドル少なく申告しましたが、手紙の場合は21ドル少なく申告しました。つまり、この場合は電子メールでは嘘の大きさも1.5倍で、さらに嘘をつかなかった人は1/4だったと言えます。


Naquinはこの説明を自己効力感や社会的学習理論で知られているバンデューラ(Bandula)のモラル離脱(moral disengagement)フレームワークから説明をしています。これは、人はその行動の結果との心理的距離が離れていることで、標準的なモラルからより逸脱するというものです。電子メールを使うことで、手紙を手書きするよりも、嘘との心理的距離が離れることが原因ではないかと考えられます。

※このバンデューラのモラル離脱についてはまた別途記事を書くつもりです。


この実験はネット上と現実世界での行動の差異の説明の手がかりになりますが。また、嘘をつかれないためには、メールでなく、手書きや電話を使うほうが良いということも示唆されます。



この記事はPsychology Todayの"Telling Lies: Email vs Pen and Paper"を参考に書きました。



(文: SY)

だらだらしない7つの方法

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というわけでさっそくですが7つの方法です!!あ、この話はあまり心理学関係ありません。自戒の念を込めて。

1.最初のことを朝にやれ
もしあなたが何かをやりたいなら、「すぐに」やりましょう。

2.毎日やれ
何日もかからないとできない仕事は、毎日やりまhそう。もしブログを書くならば、週2,3回でなく、毎日ポストしましょう。

3.味方を作れ
あなたの味方になってくれる誰かをみつけましょう。ダイエットを応援してくれる家族や、ブログにコメントをくれる友達をみつけましょう。

4.道具を準備しろ
大変な作業は細かい仕事に分けておいて、そしていつでも取り掛かれるような準備だけはしておきましょう。

5.約束しろ
あなたの目標を書いておきましょう。これは実際に役に立ちます。

6.小さなことから一歩づつ
小さなことでいいのでまずはじめましょう。小さな一歩をまず踏み出すことからはじまります。

7.完了した時、素敵な感覚を味わいます
目標を完了したら、脳内の化学物質の影響で素敵な感覚を味わいます。

この記事はthe Happiness Project”7 Tips for Avoiding Procrastination. Without Delay is the Easiest Way”を参考に書きました。


(文: SY)

2011年09月08日

さいころのポイントシステム


先日、"プレマックの法則"という記事を書きました。これは作業の順番についてのものですが、最近はじめたことで仕事のポイントシステムというものがあります。これは、例えばブログに書き込みをすると何ポイント、資料を作ると何ポイントといったように、実際にアウトプットに結びつく作業にポイントを割り当てて、それをポイントカードにつけることで動機づけするシステムです。

point-card1.JPG

実際のポイントカードはこんな感じです。様々な作業にポイントをつけてあり、我が家では「何ポイントまで溜まったら、ランチに行く」、「何ポイント溜まったらビリヤードしにいっていい」などと溜まったポイントによってインセンティブを与えるようにしています。


「ポイントが溜まったらなになにする」という目標についてのインセンティブももちろんありますが、こうやって仕事を図示することで”やった感”がありますし。またポイントを貯めるのが楽しくいろいろとやります。また、一番大事な”重要度が高いけど、すぐにやらなくてもいいこと”にポイントを割り振ることで、「ルーチンワークに逃げる」ことを防ぐことができます。


なかなかオススメの方法ですので、是非やってみてください。


(文: SY)

2011年09月05日

プレマックの法則

石田淳さんの著作にモロ感化されて、最近(というか1週間前から)、仕事の時間割を作って時間管理をしています。
前日の夜か、当日の朝に時間割を作成しています。
本来であれば、曜日ごとに時間割を固定した方が習慣化してよいのかもしれませんが、私の場合、毎日変わります。

例えばこんな感じです。

jikannwari.png


さて、この例では、朝に2つの仕事(ブログアップとメール返信)をした後にソーシャルライブラリに読んだ本の登録という作業を入れています。

ソーシャルライブラリに本を登録する作業は仕事ではありませんが日課にしている作業であり、そこそこ楽しい作業でもあります。

一方、さいころニュースの記事を書いてアップする作業やメールの返信といった作業は、ちょっとやるのがめんどうでついつい後回しにしてしまいがちなんですが非常に重要な作業です。

つまりこのスケジュールでは

あまり好きではないけど重要な作業を先に。
好きな作業を後に。

という順番で設定しています。

これはプレマックの原理を応用したスケジュール管理です。

プレマックの原理とは、行動分析の用語で


「高い頻度で起こる行動は、低い頻度の行動を強化することが出来る」

ということです。

これは、

高い頻度で起こる行動 → 好きな作業・行動
低い頻度で起こる行動 → 好きではない作業・行動

と解釈することができます。

ですので、好きではない作業をしてから好きな作業をすると、好きな作業が報酬となって好きではない作業の頻度も上がることになります。

例えばにんじんが嫌いな子どもににんじんを食べさせるために「にんじんを食べたら大好きなヨーグルトも食べていいよ」と言ったりします。

ninjin.png

プレマックの法則は知らず知らずのうちにいろんなところで使われている法則ですね(^^)

仕事の作業なども好きな作業と好きではない作業に分類し、やる順番を調整すると効率よく仕事ができそうです。

(文:山崎Y)

2011年08月22日

ゴールの可視化は大事、ただし過程を含めて

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目標を達成するためには、可視化(ヴィジュアライゼーション)するといいということが言われています。実際に、目標を達成するためにはゴールを具体的にイメージすることが大事ということがよく言われています。

成功者になる自分をイメージするために、ベンツやスポーツカーの前で自分の写真をとって手帳に貼り付けたりといったことは私には滑稽に思えますが、それでもこのようなゴールの可視化をすることで目標に近づくなどといったことが自己啓発本などで書かれたりもしています。


実際に、ゴールを可視化することには意味があるのでしょうか?やはり、これはあるようです。ただし、これはゴール自体を具体的にイメージして可視化するというよりも、その過程も含めて具体的にイメージして可視化することが役に立ちます。

単に大きな家とベンツという成功の中に自分がいるのを可視化するのでなく、どんな仕事をして、社会に貢献して、ハードワークをして、そしてお金を稼いだかをできるだけ具体的にイメージして可視化するといったことが大事です。


このような可視化については以前”ポジティブな空想の罠”という記事にも書きました。根拠なくイメージするのは単なる空想で目標の達成にはむしろマイナスになります。やはり、目標達成のためにプロセスも含めて可視化することが大事と言えます。


こちらの目標達成の心理学にはこれまでの関連記事をまとめてあります。


(文: SY)

2011年08月21日

仕事へのエンゲージメント

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最近は、従業員のエンゲージメント(仕事への愛着心や熱意)が注目されていますエンゲージメントが高い人は、より高いレベルで働き、より多く働き、その結果より高いパフォーマンスを発揮します。

しかし、多くの企業ではパフォーマンスマネージメントというものは行われておらず、当然ながら従業員のエンゲージメントについても重視されていないようです。

従業員のエンゲージメントで大事なことは以下の3つです。

・意義  自分の役割が価値あるものと認識できるか
・安全  自分のセルフイメージが傷つくおそれがなく、自分の状況やキャリアが安全であると感じられるか
・リソースへのアクセス 仕事をするために、組織が十分なサポートをして必要なリソースにアクセスできると感じられるか

会社は、従業員が仕事の意義と安全を感じることができ、また会社やマネージャーがリソースへのアクセスを助けていると感じられるようにしなければなりません。そのためには、従業員が、より自律的に仕事できるようにしたり、より多くのサポートやトレーニングの機会を用意する必要になるかもしれません。同様にマネージャーは部下に対して、意義と安全を感じさせ、リソースへのアクセスを手伝う必要があります。

実際にそれぞれのマネージャーにとっては、会社へアウトプットを増やす手段は部下のパフォーマンスを増やすことしかありません。そのためにはエンゲージメントを増やすか、より長時間労働をさせるかのどちらかです。残業代も含めて、従業員の報酬が頭打ちになっている現代にはこのようなエンゲージメントをマネージメントの優先課題とみる必要があるのではないでしょうか?

これは会社全体での課題でもありますし、個別のマネージャーの課題として取り組むこともできるものです。


この記事は以下を参考にしました。
University of Toronto (2011, August 18). Want to improve employee engagement? Make it part of the performance management process. ScienceDaily. Retrieved August 21, 2011, from http://www.sciencedaily.com-/releases/2011/08/110817135400.htm


(文: SY)

2011年08月17日

習慣化のための自己効力感

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自己効力感というのは自分が物事のコントロールをどのくらい出来るかという確信の強さのことです。自己効力感が高い人は、よりチャレンジングな目標に挑む傾向があり、また目標をより達成する傾向があります。逆に自己効力感が低い人はしばしば新しい行動を始めることすらしないといったこともあります。


イリノイ大学のEdward McAuleyらが177人の60,70代の男女を対象とした1年間のプログラムを通じて、運動プログラムの習慣化についての研究をしました。

この結果から、マルチタスキング能力と望ましくない反応を抑制するといった認知能力が高い被験者は、より自己効力感を向上する傾向があり、運動プログラムをより続けることが分かりました。

また、認知能力だけでなく、続けるための戦略として、ゴールを適切に設定する、タイムマネジメントをする、セルフモニタリングをする、運動プログラムを続けるために他者にサポートしてもらう、といったことを行った被験者もより運動プログラムを続ける傾向がありました。


この結果は2つのことを示しています。1つ目は、マルチタスキング能力や望ましくない反応を抑制するといった認知能力でスクリーニングができるかもしれないということです。2つ目は、続けるために以下のような戦略が有効ということです。

・ゴール設定
・タイムマネジメント
・セルフモニタリング
・他者のサポート

今回の実験は自発的なゴール設定でないので、先日書いた”モチベーションの6つのテクニック”で書いたものと完全には重なりませんが、やはり目標達成のためには戦略が大事なようです。


この記事は以下を参考にしました。
University of Illinois at Urbana-Champaign (2011, August 16). Want to keep your exercise resolutions? New research offers pointers. ScienceDaily. Retrieved August 17, 2011, from http://www.sciencedaily.com-/releases/2011/08/110816084502.htm


(文: SY)

2011年08月13日

月曜日はそんなに悪くない

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PSYBLOGに月曜日は憂鬱か、という記事が載っていました。これはオーストラリアでの研究ですが、日本でも十分に通用しそうな内容です。月曜日が辛いビジネスパーソンの皆様は是非ご一読ください。


月曜日はそんなに悪くない

月曜日は憂鬱と言われます。楽しい週末の記憶が新鮮なうちに、全ての問題を放置した金曜日の後始末に戻って、次の週末までの莫大な量の仕事をこなさないといけません。それでは、本当に月曜日は1週間のうちで一番憂鬱な日なんでしょうか?


新しい研究を通して、月曜日は我々が考えているほど憂鬱ではないことを示しています。ただし、この研究は不幸なことに、金曜日と土曜日が、私たちが思っているほど良い日でもないことも明らかにしてしまいました。


想像された気分
オーストラリアのシドニー大学のCharles S. AreniとNTFグループのMitchell Burgerが202人の被験者に、曜日ごとの典型的な気分を想像するように言いました。この結果から、

・人は、月曜日の朝と夕方に最も悪い気分になる
・人は、金曜日と土曜日の朝と夕方に最も良い気分になる

と考えていることが分かりました。幸運なことに、AreniとBurgerはこの結果は正確であるとは信じずに、さらに351人に、その日にどのような気分だったかを尋ねることにしました。


実際の気分
研究では、平均的にみると、人の気分は同じ週にずっと残ることをみつけました。そして、月曜日は人が思っているほど憂鬱でなく、金曜日と土曜日は人が予想しているほど楽しくもないことが分かりました。

週ごとの気分.jpg

この結果は、記憶バイアスを示しています。それは、私たちが過去を思い出す時、以前に経験した出来事の一番悪いことを思い出す傾向があるというものです。月曜日は、典型的には憂鬱な日と言われているため、最も悪い月曜日を思い出す傾向があるのです。逆に、金曜日と土曜日は、典型的には楽しい日と言われているため、最も良い金曜日と土曜日を思い出す傾向があります。

実際には、週を通しての私たちの気分の変動は、典型的なパターンである月曜日から少しづつよくなって土曜日に最高になるというものではありませんでした。そうでなく、週の平均の気分は、私たちが思っているよりも平坦なものです。


この記事はPSYBLOG”MONDAY1 Are Not As Depressing As You Think"を翻訳したものです。


(翻訳: SY)

2011年08月12日

歩いた後は、記憶力が向上する

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先日、”昼寝は記憶力を改善する?”という記事で睡眠が短期記憶力を回復させるというものを書きましたが、歩くことでも記憶力を向上させることができるようです。


イリノイ大学のCarlos R. Salasらが、それぞれ6秒間表示される30の名詞を使った覚えるという実験をしました。この実験の前に、被験者は10分歩くかもしくは美しい自然の風景の写真を10分見てからテストを行いました。また、覚えた後に、再度10分歩くか10分じっと座ってから、確認のテストを行いました。つまり、

歩くか座る → 覚える → 歩くか座る → 確認テスト

という手順です。


この時に、覚える前に歩いていた人は、座っていた人よりも25%良い結果となりました。また、覚えた後には歩いていても座っていても同じ結果となりました。

歩くと記憶力アップ.001.jpg

また、歩いた後と座った後にそれぞれでどのくらい覚醒しているかと、どのくらい緊張しているかを尋ねたところ、歩いた人はより覚醒していましたが、緊張の度合いは歩いた後も座っていた後も変わらないことが分かりました。このことは、歩いた後には人はより覚醒して、それが記憶力を向上させるのではないか、ということを示唆しています。

ただし、この実験は短期記憶に関するものなので「試験勉強の前に散歩したほうがいい」とまで言い切れるものではありません。


この記事はBPS Research Digest"Why you should go for a brisk walk before revising"を参考にしました。

元の論文はこちら


(文: SY)

2011年08月11日

高校生のための勉強のコツ

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とあるところで、高校生向けに勉強のコツを書きました。せっかくなので、修正してアップしておきます。

1.勉強には科目ごとに、社会や化学や英単語などの暗記が必要なものと、数学や物理などの概念の理解が必要なものがあります。なるべく概念の理解が必要なモノを先にやっておくといいです。また学年にもよりますが、教科ごとに必要となる時間が異なります。英語などは比較的時間がかかる教科ですし、社会はそれほど時間がかからない教科と言えます。


2.また、大学受験を考えているならば、志望校で必要な科目があるので、教科ごとに重要度を分けた方がいいです。文系か理系か、国公立狙いか私立狙いかでどの科目が必要かが分かれるのでそれに応じた重要度を科目ごとにつけた方がいいです。 また、1年生ならば、例えば私立の文系でも社会の勉強をするよりも、英語や古典などの時間がかかる教科を重点的にやるべきです。


3.いろいろなところで書かれていますが、何度も繰り返して覚えることが重要です。例えばA,B,Cの3つの勉強がある時は、1日めにA,2日めにB,3日めにCといった勉強方法をするよりも、1日目にABC,2日目にABC,3日目にABCという勉強方法が有効です。つまり、ちょっとづつでも何度も繰り返すのが良いでしょう。正確でない説明をされていることが多いですが、エビングハウスの忘却曲線というキーワードでよく書かれているものです。人の記憶は少しづつ忘れていきますが、これを何度も繰り返して、定着させるといったイメージになります。


4.暗記ものについては、人間の記憶力は覚えられないというよりも、思い出せない、という視点で見ることが大事です。つまり、ウンウン暗記をして教科書を何度も音読するよりも、教科書を音読した後に、教科書の大事なポイントに蛍光ペンと色のついた下敷き(なんていうんですか?チェックシートという商品名で売ってましたが)を使って、思い出そうと努力することが大事です。覚える努力よりも思い出す努力、いわゆる復習テストを大事にしてください。これは心理学ではKarpickeのテスト効果として知られるものです。


5.将来必要のない教科については勉強のモチベーションを保ちにくいものです。例えば私立の理系にいくつもりならば、歴史は受験に不要で勉強をする気がおきません。しかし、補習を受けない程度には勉強をしないと、せっかくの大事な時間が失われてしまいます。また、国立の文系を受ける人は、センター試験のために化学を受験するかもしれません。例えば翻訳家になりたい人にとっては化学は、人生にまったく役に立たないものかも知れませんが、受験というゲームにおいては、相手と差をつけやすい科目ですので勉強する方がお得です。特に理系・文系の人は、自分の苦手教科はほとんどのライバルにとっても苦手教科ですので、逆に得点源になると考えた方がいいです。


心理学っぽいところは3,4だけですが...


(文: SY)

過信は生産性を上げる

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過信という言葉にはネガティブなイメージがあります。実際に、過信はメタ認知能力の不足とも言えます。

一方で最近の研究では過信には良い面もあることが分かってきました。高いレベルでの過信をしている人は高いパフォーマンスをあげることができるのです。実験では過信している被験者は、迷路を解くという課題をよりたくさん出来るという結果になりました。


迷路を解くのは、能力もありますが粘り強さも要求する課題だからでしょうか。自分の能力を過信することで、より多くの課題を解けるというのは面白い結果です。もちろん解くべき問題にもよりますが、過信がパフォーマンス自体を向上させるとうのは面白いことですね。


この記事はBarking up the wrong tree”Does overconfidence increase productivity?”を参考に書きました。


(文: SY)

2011年08月10日

モチベーションの6つのテクニック

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先日、さいころセミナーで行った「モチベーションの心理学」では参加者の皆さんにモチベーションについて気にしていることや行っていることをそれぞれ発表してもらいました。ここで出てきた50近いテクニックについて分析し、分類したのでご紹介します。

・目標が抽象的な時
最初にモチベーションについてですが、目標が抽象的な場合と具体的な場合があります。これから紹介するテクニックは、目標が抽象的な場合は使えません。目標が抽象的な場合は、まず目標をブレイクダウンしたり分析するなどして、目標を具体化するのが第一歩です。


・目標が長期的な場合
これから紹介するテクニックは目標が長期的なものでも、短期的なものでも等しく使えるテクニックです。ただし、長期的な目標は分解して、中期的目標・短期的目標にバラしておくことが大事です。また、当然長期的な目標の達成は、短期的な目標の達成よりも難しいものです。


・モチベーションの6つのテクニック
前回のさいころセミナーで挙げられたモチベーションのためのテクニックとして、以下の6つがあげられます。

1.分解(スモールステップ)
2.可視化
3.まきこみ
4.おいこみ
5.事前行動
6.理想化

これらのそれぞれを簡単に紹介します。

1.分解(スモールステップ)
分解は文字通り目標を分解して小さなステップにすることです。例えば1年後にTOEIC600点という目標があった場合には、その前に”半年後にTOEIC540点”、”3ヶ月以内にTOEIC540点を目指す本の単語を9割覚える”、”2ヶ月以内にTOEIC540点を目指す問題集を1冊終える”といったように、目標を分解します。
分解は最も基本的なテクニックであり、特に長期的な目標の達成のためには必須のテクニックです。


2.可視化
可視化は今の状態や途中状態などをわかりやすくすることで、3つの可視化にわかれます。
2−1.目標の可視化
目標の可視化は目標を達成した場合の状態を、具体的にすることです。例えば、昇進したら、手取りの給料がどれだけ増えるかを計算してみるといったことがあります。
2−2.経過の可視化
経過の可視化は分解と絡んできますが、例えば小さなステップに分解したものをやるたびにチェックをつけたり、もしくは1時間勉強するたびに手帳にシールを貼るといったものです。
2−3.現状の可視化
現状の可視化は、目標の前の現時点での可視化をします。これは、例えばダイエットの前に写真を撮っておいたり、部屋の掃除前に写真を撮っておいたりします。そして目標を達成した後で再度写真をとって比較することで今後のモチベーションに活かしたり、状態の維持に活用します。


3.まきこみ
まきこみは自分でなく他人をモチベーションの源泉にしようとするものです。ソーシャルメディア時代に相応しいもので、最も強力なテクニックと言えます。
3−1.参加
参加では、他の人が行っているイベントに参加表明をしたり、毎月行われているような勉強会に参加するといったことです。実際には自分が主催している場合でも、参加しているために自分に強制力がかかって、実効をします。
3−2.他人からのフィードバック
他人からのフィードバックは、ツイッターでつぶやいたり、ブログに書いたりして、他人から「ガンバレ」等のフィードバックをもらうことでモチベーションにします。参加ほどの強制力はないものの、やはり他人からのフィードバックがあることで、強力なモチベーションになります。
3−3.宣言
宣言は、自分で何かをするといったことを知人が見ている所で一方的に宣言をすることです。例えば、会社で「禁煙します!!」と大々的に発表をしたりします。他人からのフィードバックがある方がより強力ですが、他人に宣言をするだけでもある程度の強制力がかかります。


4.おいこみ
おいこみは自分自身をモチベーションの源泉にするものです。まきこみと対になるものとも言えます。
4−1.アファメーション
アファメーションは自分から宣言をすることですが、まきこみと違うのは自分で宣言をするだけです。例えばブログでなく日記に書いたり、自分の手帳に書いたりといった手法です。自分だけがモチベーションの源泉なので、まきこみに比べて強制力がないという欠点があります。
4−2.背水の陣
背水の陣は締切ギリギリまで放置したりして、自らがせざるを得ないような状況に陥ることです。例えば、スポーツクラブの期限のある回数券を買うといったことがあります。また、背水の陣とまでは行きませんが、静かで周りがみんな勉強している喫茶店に入るというのも、自分が勉強をせざるを得ない状況にしているという点で、背水の陣の一種と言えます。
4−3.ルール化
ルール化は、毎週月曜日の朝は7時から喫茶店で英語の勉強をするといったように、自分でルールを決めてしまうことです。自分でルールを決めることで、習慣になるよう強制します。
4−4.リセット
リセットは同じことをずっとし続けて飽きた時に、環境を変えたり行動を変えてモチベーションを回復させることです。例えば、ずっと英語の勉強を行わずに、途中で別のことをやったり。1箇所で読書をする時間を90分に制限して、途中で別の喫茶店や図書館に移動するといったことでモチベーションを持続させるといったことです。


5.事前行動
事前行動というのは、実際の行動の前にやっておくことで行動をやりやすくするものです。
5−1.準備
準備は何かをやる環境や道具などを事前に準備しておくことです。例えば、部屋をキレイにしておいて、お菓子やポットを部屋においておくことで、すぐに部屋で読書に集中できます。
5−2.ローコスト化
ローコスト化は、やりはじめるためのコストを下げて、ハードルを下げてすぐ始められるようにすることです。玄関にテニスのラケットや着替え一式をカバンに入れて置いておくことは、テニスの練習に行くためのハードルを下げるローコスト化です。。


6.理想化
理想化は目的や理想からモチベーションを保つような方法です。
6−1.理想の行動
理想の行動は、自分のロールモデルとなる人の行動を真似したり、理想的な行動はどのようなものかを考えて行動を決定するというものです。例えば、ここでイチローならどのような練習をするか、といったことを考えることで、実際の練習のモチベーションを高めるといったことです。
6−2.イメージング
イメージングは、目的を達成したことを想像するといったことです。実際にTOEICで800点をとって海外で会話を楽しんでいる自分を想像したり、テニスでラリーを続けている自分を想像することでモチベーションを保ちます。


・6つのテクニックの使い分け
実際に、自分の目標達成のためにはこれらの6つのテクニックを組み合わせてモチベーションを保つことが大事です。

また、6つのテクニックのうち、分解と可視化は、他のテクニックの補助に使うようなもので、残りの4つのテクニックを分類すると下図のようになります。

モチベーションの6つのテクニック.001.jpg

この中で事前行動はモチベーションを上げるというよりも補助的な役割のもので、基本はおいこみ・まきこみになります。また理想化は、おいこみ・まきこみとは違うレベルのものになります。何をゴールにするかによりますが理想化だけでは十分なモチベーションを保つのが難しいので、ある程度の分解・可視化と、その上でのおいこみ・まきこみが必要になります。


(文: SY)