2011年04月14日

三日坊主プロジェクト

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知人が三日坊主プロジェクトというものを提唱しています。これは「三日坊主になってもいいので、何かをまず三日やる」というものです。

例えばダイエットでもランニングでも夜食を食べないでもいいので、ずっとやるのでなくて「その後やめていいのでまず三日だけやる」というものです。


これは有効でしょうか?これには3つの観点があります。

1.始めてしまえば、そのまま続きやすい
”一貫性の魔力”として書いたことですが、人は一度行うとそれを続けようとすることがあります。この三日坊主プロジェクトは始めやすい上に、この一貫性が強力です。


2.始めてしまうと、何かと気にする。
”ツァイガルニック効果”により、人ははじめてしまうと気にしてしまいます。自分では三日坊主でもいいや、と思っても続けたい気持ちがある以上、どこかでそれを気にします。


3.そうはいっても三日だけでは習慣にならない
”習慣化するには2ヶ月以上”で書いたように1ヶ月では習慣になりません。ただし、「三日坊主でいいや」と思うことで、始めることは簡単になります。なお、”習慣化するには2ヶ月以上”で書いたように、1日だけサボるのは習慣化するにはマイナスにはなりません。


この中では特に一貫性が強く働くのではないかと考えられます。”三日坊主プロジェクト”は三日坊主でいいという割り切りが始めるコストを低くしていますので、まず始めることができます。もし、習慣化が上手く行ったらコメント欄でご連絡くださればありがたいです。


(文: SY)

習慣化のための関連記事:
一貫性の魔力
ツァイガルニック効果
習慣化するには2ヶ月以上
ポジティブな空想の罠
どうにでもなれ効果(The What-The-Hell Effect)

2011年04月05日

朝活の心理学

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最近、朝活が流行っているようです。今週売りの日経アソシエも朝活特集をやっていました。

朝活は朝早く起きる以外に効果があるのでしょうか?果たして朝活はアリなんでしょうか?


オハイオ州立大学の准教授Steffanie Wilkとペンシルバニア大学ウォートン校のNancy Rothbardの研究がこのヒントを与えてくれます。

彼女らの研究は、仕事の開始時の気分が、一日の気分に影響を与えます。もちろんいい気分では仕事のパフォーマンスは向上します。つまり仕事前にいい気分になっておくことは、一日の仕事のパフォーマンスを高めるのです。

つまり朝活でいい気分で仕事を始めることは、その日の仕事のパフォーマンスを高めると考えられるのです。


他にもこの研究では、いい気分の人が悪い気分になるのは17%だったのに対して、悪い気分の人がいい気分になるのは40%だったといように気分のよくなる傾向が分かりました。また、気分が悪い人は、良い顧客に会うと気分がよりよくなるのに対して、嫌な顧客に会ってもそれ以上に気分が悪くならないことなどが分かりました。


また、朝活をしない人にとってはこの研究は以下のようなことを示唆しています。

1.朝は気分よくした方がいい...どうするかは分かりませんが。
2.部下がいる場合は、朝はいい気分にさせるようなことが大事です。
3.遅刻したら罰金などのようなシステムは遅刻を防ぐインセンティブにはいいかもしれませんが、その後のパフォーマンスに悪影響を与えることを知っておくべきです。
4.くだらない朝礼があるならば、いい気分になるような朝礼にするか止めるかを考えるべきでしょう。


これは以下の記事を参考に書きました。

Ohio State University (2011, April 4). Got up on the wrong side of the bed? Your work will show it. ScienceDaily. Retrieved April 5, 2011, from
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/04/110404151353.htm

(文: SY)

2011年04月03日

どうにでもなれ効果(The What-The-Hell Effect)

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●ピザとクッキーが、目標設定について教えてくれる

不愉快なちょっとした副作用にひっかからなければ、目標設定はパフォーマンスを改善するためには簡単な方法です。

例としてダイエットを取り上げます。自分で1日の摂取カロリーを制限すると宣言しましょう。最初の2,3日はこの制限を守るかもしれません。ですが、これは同僚がレストランに誘ってくるまでのことです。

家で食べるヘルシーな料理の代わりに、レストランのメニューに直面します。しかし、メニューを見る前に、既に悪いことが起こってしまっています。バーであなたは空腹で、それからおつまみのスナックをオーダーしていました。このスナックと飲酒の組み合わせで、ほとんど1日の摂取カロリーの制限に達しています。

それからレストランでは、パンを食べて、お酒を飲みます。あなたは、サラダを選ぶべきだと思っていても、ステーキに惹かれます。既に制限カロリーをオーバーしているので、もう関係ないやと理由付けて。「どうにでもなれ(what the hell)、ステーキを食べよう」となります。

このように私たちは目標達成に成功しつつあるのに、一瞬の狂気で全てのことが泡に消えることがあります。

このどうにでもなれ効果はセルフコントロールの欠如でも、刹那的な過ちでもなく、目標を見失ったことと関係しています。心理学者が実験でこれを明らかにしています。


●ピザとクッキーの実験

トロント大学のJanet Polivyと仲間が最近の実験がしました。(Polivy他、2010) 彼女らは、研究のため、ダイエット中とそうでない被験者を呼びました。事前に被験者には全然食べないように伝えておき、それから到着した被験者にちょうど同じサイズに切ったピザをだして、それからクッキーを味わって評価して欲しいと頼みました。

ここではクッキーがどのくらい評価されたかでなく、どのくらい被験者がクッキーを食べたかを調査してました。そして、この実験にはトリックがあり、全員が同じサイズのピザを受け取っていたのですが、ピザを渡すときに、被験者の一部にはより大きいピザを渡したように見せかけました。

これは、実際には同じ量だったのですが、食べたよりも多くを食べたかのように被験者に思い込ませました。これは、我々は実際に食べた量よりもただ見ただけでよりたくさん食べたと考えることを意味しています。

どうにでもなれ効果.001.jpg

実際に被験者が食べたクッキーの重さを測ると、ダイエット中で自分の制限を超えてしまったと考えている被験者は、50%以上多くのクッキーを食べていました。

一方で、ダイエット中で制限に達していないと考えていた被験者は、ダイエットをしていない人と同じ量のクッキーを食べていました。これは、どうにでもなれ効果の結果を示しています。


●どうにでもなれ効果を避けるには

ダイエット中のどうにでもなれ効果について書きましたが、これはお金、アルコール、ショッピングやその他自分で制限を加えるような目標設定をした時に同じように起こります。もし制限を超えると、常軌を逸した方法でセルフコントロールを抑制から解放しようとします。

それでは、どうにでもなれ効果を回避する方法はあるのでしょうか?研究者はどうにでもなれ効果がどのような時に発生するかを認識することが答えであると提案しています。

1.目標が短期間の時、例えば今日や明日を、来週や来月と比べる時
2.食事や飲酒のようなことを止めようとする時

つまり、どうにでもなれ効果は、短期の目標をより長期間の目標に変えることや禁止の目標から獲得の目標に変えることで避けることが出来ます。短期の目標を長期の目標に変えることは分かりやすいことですが、禁止の目標を獲得の目標に変えるとはどのようなことでしょうか?


どうにでもなれ効果.002.jpg


1つの有名なものとして、匿名アルコール中毒者の会(AA)の例があります。AAでは飲酒を避ける(禁止)かわりに、しらふの日を数える(獲得)ようにしています。これは、禁止の目標から獲得の目標に変換しています。

同じような原理は、他のどんな禁止の目標についても適用できます。ダイエットする人は、上手くいった日を数えるように考えることができます。

このように目標を変えることで目標設定の副作用を避けて、目標にまっすぐに突き進むことができます。

(翻訳: SY)


*この記事はPsyblog「The What-The-Hell Effect」の翻訳記事です。


関連記事:
習慣化するには2ヶ月以上
目標に突き進む方法
「短期間で組織が変わる行動科学マネジメント」

2011年04月01日

植物が注意力を増やす

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ただ植物をオフィスに置くだけで、注意力が増加します。


ノルウェイ生命科学大学のRuth K. Raanaasらはオフィスでの植物の効果を検証するために、デスクの周りに4つの植物を置いた環境と、置いてない環境でそれぞれ注意力を測るための一連の文章を読んで、各文章の最後の単語を思い出すというテストを行いました。

この結果、植物のある環境の被験者の方が、よりよい成績になることが分かりました。

論文のURLはこちら。



この効果はRachel KaplanとStephen Kaplanが提唱したAttention Restoration Theory(注意回復理論)で説明されています。


この理論は、自然の中にいたり自然の風景を見ると注意力が回復するというものです。これは、人の直接的注意には一定の限界があり、そこから注意力が減っていきます。一方で、風景の写真や植物などの回復要素が周りにあると、非自発的注意に影響して、人の直接的注意を回復させるというものです。その結果としては、上のようなオフィスワークでの効率がアップすると考えられます。なお、この回復要素は、必ずしも自然に関わるものでなくともいいです。


また、植物にはストレスを軽減する効果があるとも考えられますが、上の実験はストレスでなく注意力についての研究となっています。


観葉植物などが置いてあるオフィスが多いですが、あれはストレス低減とデザイン的な効果のためと思っていました。ところが、このような効果もあるのですね。

この記事はSCIENTIFIC AMERICANの"Houseplants Make You Smarter"(植物があなたを賢くする)を参考にしました。


(文: SY)

2011年03月22日

ポジティブな空想の罠

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balt-artsの画像を使用しています)

空中に城を作りますか??心理学者は将来の成功への空想が危険かもしれないことをみつけました。


私たちは将来についての空想しています。物事が上手くいくだろうという幸せな夢を持つのは普通のことです。

たしかに、自己啓発書の著者などから、幸せな夢がモチベーションの良い源であるとしばしば聞かされています。私たちが将来の成功のイメージすることで動機づけされる、と。

たしかに、このことには真実も含まれています。将来についてのポジティブシンキングは、おおよそ有益なものです。しかし、心理学者のOettingenとMayerは、ビジュアル化と空想を慎重に扱わないといけないものであるという研究を行いました(Oettingen and Mayer, 2002)


■空想vs期待

研究者は、人々が”仕事を見つける、パートナーを見つける、試験でうまくいく、外科手術を受ける”という4つの課題にどうやって立ち向かうかを調査しました。

4つの研究では、どのように人々がこれらの課題について考えているかを調査しました。
人々が良い結果についての空想をどのくらいしているかと、良い結果についての期待をどのくらいしているかを測りました。

空想と期待の違いは些細なものに感じられますが、そうではありません。期待は過去の経験によるものです。例えば、前回の試験が良かったから今回も良い成績を取るだろう、最後のパートナーと上手くやっていたから他のパートナーと上手くいくだろうといったものが期待です。

一方空想とは、将来に起こって欲しいことが想像され、今すぐに経験することです。これには問題が多いと判明しました。

仕事を見つけたり、パートナーを見つけたり、試験で上手く言ったり、外科手術を受けたりする時に、ポジティブな空想をしている人が、より悪いことが分かりました。

仕事を見つけることを夢見ることに、より多くの時間を使う人は、より悪い結果になりました。大学を出てから2年後、ポジティブな空想をしている人は
・より少ない人のみが採用された。
・より少ない人のみが、仕事を提供された
・そして、働いている人も、より少ない給料しかもらえなかった。

一方、よりネガティブな将来の空想をしていた人は、より目標を達成していました。同じような結果は、他の3つの研究でも見られました。

ただし、ポジティブな空想は失敗に結びつきますが、ポジティブな期待は成功に結びついています。ポジティブな期待を持っている人は、ネガティブな期待を持っている人よりも、より早くパートナーを見つけ、外科手術からより早く回復しました。

期待というものは明確な根拠から作られますが、一方、ポジティブな空想はただの幻です。


■何故、ポジティブな空想は危険なのか

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ポジティブな空想をすることの問題は、我々が今ここで成功すると思わせてしまうことです。ポジティブな空想は、我々が直面する問題に注意を向けさせず、既に目標を達成した気持ちにさせてしまうのです。

このように明るい希望を持つ心が我々を引きずり落としてしまいます。将来の成功をシミュレーションすることが、現実の目標を達成するという試みを弱めてしまうためです。

このことは、将来についてのポジティブシンキングが問題であるということではなく、また、空想それ自体が危険ということでもありません。ポジティブな空想というものだけがパフォーマンスを悪化させる可能性があります。

つまり、目標達成においてビジュアル化とポジティブな空想には危険が伴っているのです。



この記事はPsyblog”Success! Why Expectations Beat Fantasies”を翻訳したものです。(翻訳: SY)

関連記事:
目標に突き進む方法



2011年03月21日

習慣化するには2ヶ月以上

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もっと運動したい、もっと健康的な食事をしたい、毎日ブログを更新したいなど新しい行動を習慣にしたいとき、特に努力をせずに自動的に行われるようになるにはどのくらいの期間が必要でしょうか?

これはあなたが習慣にしようとしていることのタイプと、あなたが目標にどのくらい集中しているかによります。しかし、どの位の期間が必要となるかの目安はあるんでしょうか?

Googleで検索すれば、あなたは21日から28日のどこかという答えを得られるでしょう。実際には、この数字には大した根拠がありません。21日という話は、おそらく1960年に形成外科医が書いた本が元ネタと考えられます。この形成外科医Maxwell Maltz博士は、手足などを失った人が損失に適応するには平均21日かかることに気づきました。このことから、人が主要な生活の変化に適応するには21日かかると主張しました。

このことは自分の腕についた鉤針をフック船長のように使いこなそうとでもしない限り、特に実際には関係がありません。


■考えずに行動できるまで

この期間について最近出版されたEuropean Journal of Social Psychology誌に研究が載っています(Lally他2009)。ロンドン大学のPhillippa Lallyらは、昼食にフルーツを一切れ食べたり、毎日15分走ったりといった新しい習慣にしたがっている人を96人集めました。これらの人は行動がどのくらい自動的に行われると感じているかを毎日質問されました。これらの質問には、”行うのが難しい”から”考えずにできる”までの選択肢がありました。

様々な習慣を調査した時、多くの被験者は練習から自動的までのカーブになる関係を示しました。平均的には、安定期になるには66日がかかりました。この安定期は、ある行動を習慣にしたということが出来ます。

shukan-graph.jpg

また、このグラフは初期の練習は習慣化には大きな効果があり、習慣にしていくに従ってその効果が薄れるということも意味しています。

ちなみに平均は66日でしたが、この研究では様々な行動を習慣にするためには18日から254日までの期間がかかりました。想像すれば分かるように、毎日1杯の水を飲む習慣はすぐできますが、毎日朝食の前に50回腹筋をするにはより多くの反復が必要です。


また、この研究では、以下のことを述べています。
・1日だけサボるのは、習慣にする可能性を低くはしませんでした。
・一部の人達は、他の人達よりも習慣にするのに時間がかかりました。”習慣にしにくい”という特性があるかもしません。
・習慣にしたい行動のタイプによってははるかに時間がかかります。


■小さな変化などはない

この研究から、フルーツを一切れ食べるとか10分歩くといった比較的簡単なことを習慣にしたい時には2ヶ月以上毎日繰り返すことで習慣になること。そして、1日だけサボるのは、長期間には有害なことではないこと、また、最初の頃の反復は、習慣を自動化するのに非常に大きな力になることが分かりました。

しかし、残念ながら、コップいっぱいの水を飲むといったゴールでもない場合、21日繰り返すだけといった小さな変化で習慣になるということではありません。


*この記事はPsyblog「How Long to Form a Habit?」の翻訳記事です。


(翻訳: SY)

2011年03月09日

睡眠不足で意思決定をする時の注意点

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デューク大学のMichael Cheeらが睡眠不足とリスク行動についての関係を研究しました。研究結果によると、睡眠不足だとよりリスキーな行動をするということです。

研究では29人の健康な大人(平均22歳)が、きちんと睡眠をとって8時に意思決定を行うのと、寝不足で6時に意思決定を行ったのを比較しました。fMRIの結果と意思決定の結果から、睡眠不足の場合は、より楽観的に考え、失敗する可能性がより低い、と感じることが分かりました。


つまり、寝不足では、よりリスキーになる(リスクを過小に見積もる)傾向があるということですね。


私の直感では、体調が悪いときはリスクを犯さない方がいいことが多いので逆の結果かなと思っていたので、意外な結果でした。このようなバイアスがあることを知って行動するといいのですが、さすがに寝不足の時はこんなことまで気づかないですよね...


(文: SY)

元の記事は、こちらです。


(3/22追記)
GIGAZINEさんにも同内容の記事が載っています。さすがにうまく紹介してます。
睡眠不足だと状況を楽観しすぎてリスキーな決断をすることがある

2011年03月08日

簡単に自信を持つ方法。ただし、男性に限る

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ポルトガルのThomas W. Schubertと、オランダのSander L. Kooleが”The embodied self: Making a fist enhances men’s power-related self-conceptions”(肉体化した自己: 男性の自己概念を簡単に増やす)という論文の中で、身体と認知の関係についての研究を発表しています。


この研究では拳を握ることで、より自信を持ち自尊心を増すことを報告しています。ただし、この効果は男性のみに現れます。


というわけで、男性はここ一番で何かをいう時はぐっと拳を握ってから発言しましょう。

(文: SY)

なぜ、名前は覚えにくいのか?

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ダニエル・シャクターの”なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか”を読んでいて、一番納得がいったのが固有名詞が覚えにくいというところでした。固有名詞の中でも特に人名を物忘れすることが多いです。

20,40,70歳の人に一ヶ月の間日記をつけてもらい、どういう言葉を度忘れしたかということの記録を取ったら、やはり固有名詞をど忘れして、特に人名が多かったということです


これは「固有名詞には意味が無い」ということに由来していると考えられます。つまり、”リンゴ”という言葉には、赤い物や美味しいといった意味が与えられていますが、”山田”という言葉には特に意味がなく、単に”山田”と呼ばれている人達を表しているだけの意味しか持たないということになります。

私が”山田”さんに会った時に、それが”田中”や”鈴木”でなく、”山田”であるということを思い出す手がかりは特にありません。このことが人名を覚えにくくする原因と考えられます。


また、人名でなく、一般名詞の場合は、もし万が一思い出せなくても言い換えができるものが多いです。例えば、”ソファ”という言葉が思い出せなくとも、”椅子”という言い換えをすることができます。固有名詞の場合はこのように言い換えることができないので、思い出せなかった時に回避する(ごまかす)こともできません。


それでは、このような人名の覚えづらさ・思い出しづらさを克服する方法はないのでしょうか?シャクターによるとコード化が使えるテクニックとなります。このコード化は記憶術にとっては一般的な手法ですが、例えば”山田”さんの名前を覚える時に、山田さんの顔を思い出しながら、山と田んぼをイメージして、山田さんが山の田んぼで稲刈りをイメージするといったものです。これによって、”山田”さんをという名前を忘れた時のヒントになる可能性があります。

私も人の名前はなかなか覚えられないので、コード化のテクニックを使おうと思います。

(文: SY)


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2011年02月21日

迷信だって、ゲンかつぎだって意味があるんだ

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皆さんは迷信やゲンかつぎを信じていますか?スポーツ選手だと試合のシューズを履く時に必ず右足から履くとか、お守りを持つといったことがあったりしますよね


ケルン大学のLysann Damisch, Barbara Stoberock,homas Mussweilerが迷信についての研究をしました。

この研究では、被験者に対してボールを渡す時に「このボールはラッキーボールだ」と言ったり、被験者に対して相手の幸運を祈るようなことを言ったりすることで、外部からの幸運の提供で結果に影響があるかの検証を行いました。
また、2つの関係ないテストと称して、自分で幸運のお守りを買うという実験を行った後に、「写真にとるから」とお守りを借り。その後に返してから記憶力テストを行ったグループと、「カメラが故障して」と返さずにテストを行ったグループでのパフォーマンスを比べました。

これらの検証の結果として、2つのことが分かりました。
1.迷信は、パフォーマンスを高める。
2.迷信は自己効力感を通してパフォーマンスを高める。


私は迷信やゲンかつぎといったものは「やったら負けかな」と思っていてほとんどしないのですが、たしかに自己効力感を高めるという効果はありそうです。


ただし、これらの実験結果をもって、「ゲンかつぎといっても、科学的に効果があることが証明された」などと過剰に取られる言い方をして曲解されないように注意してください。


元の論文はこちら(ドイツ語でなく英語です:-)


これらの本は逆に迷信に騙されるなという本ですが...

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2011年02月11日

覚えるには手書きがイチバン!!

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ノートに手書きをする場合と、キーボードで入力する場合、どちらが物事を覚えやすいでしょうか?おそらくほとんどの人は「手書き」と答えると思います。

さて、これは本当でしょうか?

マルセイユ大学のJean-Luc Velayとノルウェイのスタヴァンゲル大学のAnne Mangenが、これを研究しました。大人の被験者をキーボードおよび手書きグループに分け、20文字の無意味綴りを覚えた後に、3週間・6週間経ってから、覚えた文字列と、反対にした文字列のどちらかを選択させるというテストをしました。

結果としては手書きの方が有効ということが分かりました。また、fMRIを使うと、手書きの被験者は言語処理に不可欠な部位であるブローカ野が活発になりますが、キーボード使用者ではブローカ野は活発になりませんでした。

直感的に、「手書きの方がいい!」とは分かっていましたが、こうやって明確に違いを示されると、やっぱり手書きで覚えなきゃ、と思いました。

元の記事はこちら。


The University of Stavanger (2011, January 24). Better learning through handwriting. ScienceDaily. Retrieved February 11, 2011, from http://www.sciencedaily.com /releases/2011/01/110119095458.htm

2011年02月07日

”うっかり”は記憶力とはちょっと違う?

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 ダニエル・シャクターの”なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか”の中では、「あ、醤油買ってくるのを忘れた!」というような”うっかり”についても述べられていました。

 全米の記憶選手権のチャンピオンも「いつもぼんやりしているので、牛乳を買うというようなことを忘れてしまわないようにリストを作ったり付箋紙を利用している」と述べています。つまり、長期記憶として記憶しておくことと、適切なタイミングで、物事を勝手に思い出すのは別のことなのです。


 そもそも人間は、10分後に「鍋の火を消す」といったことは苦手です。このようなことを覚えるためには、いくつかの方策が考えられますが

1.他の行動と作業をひもづける
例えば、玄関を出る際にはチェックリストを見るといったように、事前に行う行動に次に行うべき行動をひもづけます。これは時間ベースの条件でなく、出来事ベースの条件に変換することを意味しています。

2.何かリマインダーを使う
携帯電話のアラーム、キッチンタイマー、Googleカレンダーの通知機能など様々な忘れないようにするものを使います。この本では、”指にヒモを結んでおく”という秘密兵器を紹介していました(^^)v これは、そもそも記憶しておく必要をなくすということです。


 また、メガネをどこに置いたかとか新聞をどこに置いたか忘れれうといったちょっとした物忘れは、覚えておくために複雑な手順を必要としないような決まりきった作業で起きやすいです。これらのことは自動的に行なってしまうので、”記憶しそこねる”(≒思い出せない)といったことがおきます。
 このような不注意に対して明確な対策はありませんが、記憶は”想起”と”親近感”という2つがあります。”想起”は詳細までを思い出すかどうかであり、”親近感”は詳細までは思い出せなくとも見たことがあるといったことです。このうち”親近感”は注意散漫でもあまり影響を受けませんが、”想起”については影響を受けます。
 この”想起”の質を上げるためには、注意深く覚えておくとか、”エビングハウスの法則”としてよく言われるように反復によって覚えることがポイントとなります。もしくは注意深く覚えるということですが、そもそもそういうことが出来ないので忘れるんでしょう。
 きっと、メモをきちんと取る習慣も難しそうです。


 ”想起”についての対策が甘いと思いますがが、”うっかり”についてはここまで。


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2011年02月06日

萌えキャラが応援してくれると、やっぱり効率は上がる

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この論文が面白いと評判なので読んでみました。

この”試験問題に登場する励ましの言葉をかける今風の キャラクター画像が受験者に及ぼす影響に関する検討”と題された論文では、大学生の男女(男女比は1:1)の被験者が足し算と無意味つづりの書き写し課題を解いてもらうという課題について、応援なしと、教師のイラスト、萌え絵の女子学生、萌え絵のメイド、がそれぞれ途中で応援を行うことで結果がどうなるかを検証しています。


直感的には、応援された方が正答率があがりそうで、後はイラストへの好感度に応じて応援の効果が上がりそうですが、計算問題では回答数・正解率共に応援ありだと増加します。無意味つづりの書き写し課題では萌え絵のメイドか女子学生が応援をすると、書き写し文字数が増えました。


結果はありそうな結果ではありますが、改めてきちんとテストをしているのが素晴らしいです。きっと、これからはオフィスソフトでも途中で応援してくれたりするんでしょうか。


そういえばアンケートをする際に、イラストを入れると”和む”のでいれたほうがいい、なんてことも言われていますが、こういうことがベースなんでしょうね。

しっかり覚えるための2つの方法

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最近、マイケル・ガザニカの「脳の中の倫理」という本を読んだのですが、この中でダニエル・シャクターの”なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか”という本が参照されていましたので読んでみました。

この中では記憶について様々なことが述べられているのですが、この中で記憶しておく方法について2つ述べられていましたので紹介します。ちなみにこの本はとても面白いので、ここからまたいくつか紹介する予定です。


●コード化テクニック
 数字を画像に置き換えて覚えたり、人の名前を覚える時に名前の響きに似たモノを画像として顔と一緒にイメージして覚えるといった覚え方です。「水兵リーベ、僕の船」といった周期表の覚え方や、「泣くようぐいす平安京」といったのもコード化の一つです。
 
 円周率を大量に覚えたり、人の顔を大量に覚えるといったことに有効なテクニックです。記憶力選手権に出るような人はほとんどこの方法で覚えています。

 汎用的に使えるコード化をマスターするには手間がかかりますので、この方法を普段から使う人を私は実際に見たことはありません。


●精緻化
 マスターに手間がかからないので、より容易な方法です。覚えたい情報をすでに知っている情報に関連付けるものです。俳優はセリフを覚える時にその登場人物を理解することで、”言いそうなこと”にフォーカスすることでより容易にセリフを覚えることができます。将棋指しが、互いに同レベルの人と差した棋譜をすぐに記憶でき、ランダムに並べられた棋譜は覚えられないといったこともこの精緻化となります。
 この精緻化についても、訓練をすることでより記憶するテクニックが向上していきます。


 ただし、これらは明示的に覚えようとしたことを覚えるという手法になります。「あ、醤油買ってくるのを忘れた!」というような”うっかり”を防ぐことはこれらの手法では回避できないので、そのような”物忘れ”に対しては別の手法が必要となります。


記憶について考えるならオススメです。

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マイケル・ガザニカは分離脳の研究で有名ですが、こちらの本はあまり心理学と関係ありません。倫理の本を科学者視点で書いたものです。

脳のなかの倫理―脳倫理学序説
マイケル・S. ガザニガ
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2011年01月28日

ワーキングメモリが意志を強くする?

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Biological Psychiatryに"Remember the Future: Working Memory Training Decreases Delay Discounting Among Stimulant Addicts"という記事が載っていたので読んでみました。

元の記事はこちら

この記事はこちらの論文のまとめとなっています。この研究では、ワーキングメモリが、今の1万円と1週間後の12000円とどちらがいいかといった将来期待の割引率(Delay Discounting)と関係があるというものです。

この実験では、27人の大人を2つのグループに分けて、1つのグループではワーキングメモリを増やすトレーニングを行い、もう1つのグループでは比較のための対照群としてのトレーニングを行っています。このトレーニングの後、将来期待の割引率を計測したところ、ワーキングメモリのトレーニングを行ったグループでは有意に下がりました。

例えば、今の1万円より1週間後に12000円もらうことを選択する人は、ワーキングメモリを増加することで1週間後に11500円でも我慢できるようなったということです。もちろん、これはあくまでも例なので、実際の割引率は実験条件に応じるでしょうが。

また、実験ではワーキングメモリの増加が大きかった人の方が、より将来期待の割引率の変化が大きかった結果となっています。

ワーキングメモリと将来期待の割引率の因果関係は分かりませんが、なかなか面白い研究でした。


ちなみに将来の割引率についてはこちらの本が詳しいです。

誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか
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ワーキングメモリに限らず、記憶については以下の本で楽しく読めました。

記憶・思考・脳 (キーワード心理学シリーズ 3)
横山 詔一 渡邊 正孝
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2011年01月25日

学習におけるひとつの冴えたやりかた

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サイエンスデイリーに、学習についての良記事があったので、簡単にご紹介します。元の記事はこちら

Purdue大学のJeffrey Karpickeのによると、学習において大事なことは、覚え方を工夫することよりもむしろ思い出し方にあります。

物事を長らく記憶しておくためには、人間が物事を記憶する貯蔵の仕方を工夫することよりも、取り出す練習をする方が効果があることが実験から分かりました。

Karpickeらの実験では、生物・化学・物理の様々な概念を覚えるために、コンセプトマッピングという丸と線を使った図式で物事を覚えるのと、覚えた直後に復習テストを行うのとでそれぞれ効果を確認しました。覚えた直後は両者に違いがないのですが。長期記憶のテストのため、1週間後にテストをすると、コンセプトマッピングで覚えた人よりも復習テストをした人の方が50%も成績がよかったことが報告されています。


この結果は、復習テストを使って記憶からの呼び出しを練習したため、物事をより思い出せるようになるためと考えられます。


また、概念の記憶でなく、単語のテストで同様の試験を行なっている事例が、近畿福祉医療大学の遠藤正雄先生がここの資料で報告しています。この資料でも、Karpickeらの実験とほぼ同様の結果となっています。


他にNTTコミュニケーション科学基礎研究所の竹内龍人さんがまとめられている非常に分かりやすい学習方法についてのまとめの中でも、Karpickeの実験について述べられています。(が、2011年8月現在リンク切れです...竹内先生が学校に移られたからでしょうか?)

復習テストの効果は上での説明と違いますが、引用元論文が違うからでしょうか。


覚えるためには読んで覚えるというよりも、まず思い出してみるということが大事なんですねー。

インプットの工夫より、引き出しの練習ですね。


APA National Science Foundation (2011, January 21). Learning science : Actively recalling information from memory beats elaborate study methods. ScienceDaily. Retrieved January 27, 2011, from http://www.sciencedaily.com/releases/2011/01/110121111216.htm

2011年01月17日

行動を変える際の10の間違ったやり方




行動を変える際のよくある間違いについてスタンフォード大学Persuasive Tech Labがまとめていましたので、紹介します。


1.長期間の変化を、”やる気”で行おうとする
いわゆる”仕組み”でなく、”やる気”に頼るということですよね。明日の朝、はやく起きることすら危うい私には、長期間にわたって”やる気”をキープするのは難しそうです。

2.小さな一歩でなく、大きなジャンプをしようとする
突然大きく変えることはやはり失敗の可能性が高いです。小さな成功を積み重ねて、やがて大きな変化になるように、一歩づつ行動を変えていきましょう。

3,行動に与える環境の影響力を無視する
職場、家庭、友人などが行動に影響を与えています。これらの環境を無視して、行動を変化させようとすると失敗します。行動を変えるために、環境を整えることも考えてみましょう。

4.新しいことを始めるのでなく、古いことをやめようとする
これまでの習慣を”止める”ことは難しいです。”新しく”何かを始めることに集中しましょう。

5.失敗をモチベーション不足のせいにする
”やる気”やモチベーションでなく、”仕組み”や環境などで行動を変化させやすくしましょう。

6.”きっかけ”の力を過小評価する
どんな行動も”きっかけ”がないと起こりません。酒を飲むとタバコを吸ってしまう人はそもそも飲み会に行かないことで禁煙をするなど、”きっかけ”を変化させることで、行動を変化させるようにしましょう。

7.”知ること”が行動を変化させると信じる
人間はそれほど理性的ではありません。早起きした方がいいという理由を書いた論文を100回読んだところで、行動は変わりません。”知ること”よりも”実践の仕方”を工夫することに集中しましょう。

8.具体的な行動よりも、抽象的なゴールを重視する
”痩せる”ことよりも、”今日は15分運動する”といった具体的な行動に集中しましょう。

9.短期間の変化でなく、ずっと行動を変化させようとする
行動を”ずっと”変化させるよりも、”ある一定期間だけ”変換させる方がより良い戦略です。それを積み重ねた結果、最終的に”ずっと”になるのがベストですが。まずは短い”一定期間だけ”やってみるということが大事でしょう。

10.行動を変えるのは難しいことと、決めてかかる
正しい方法でやれば行動を変えるのは難しくありません。



知人の会社で”三日坊主プロジェクト”というのをやっていました。”三日坊主”になっていいので、まず”三日やってみる”という位の気持ちでそれほど”やる気”のいらない方法で行動を変えていくのがいいと思います。

2010年06月02日

アファメーションより疑問文

アファメーションより疑問文
<画像はFlickrより>

 仕事であれレジャーであれ、人は何かを行うとき、独り言を心の中で(人によっては口に出して)言うことがある。

 例えば、少し骨の折れる仕事をしているときに「この仕事、期日中にできるかなぁ?」「ここはこうやってしたほうがいいかなぁ?」と自分に問いかけていることはないだろうか。

 もしかすると、問いかけなんて気弱な独り言ではなく、「私はこの仕事を期日中にできるはず!」と強く自分に言い聞かせている人もいるだろう。
 自己啓発の世界では、このような肯定的な自分への語りかけであるアファメーションは、目標達成に向けて極めて効果があると推奨している。
 
 しかし、Psychological Scienceに掲載される以下の研究では、アファメーションよりも、疑問文での問いかけを行った方が、課題成績はよくなることを示している。
 
 Will We Succeed? The Science of Self-Motivation
 
 
 イリノイ大学のDolores Albarracinらによるこの研究では、50人の研究参加者を対象に、独り言の種類とモチベーションの関係について実験を行った。
 参加者は、「私はこの課題ができるだろうか?」と疑問文で声に出して言うか、あるいは「私はこの課題ができる」と肯定文で言った後に、アナグラム課題に取り組む。
 この結果、肯定文で独り言を言った場合よりも、疑問文で言った場合の方がアナグラム成績は良かった。
 
 Dolores Albarracinは疑問文での独り言はモチベーションの向上に影響すると考え、さらに実験を行った。
 
 この実験では、前回の実験と同じく参加者は疑問文(「Will I〜」)で独り言を言うか、肯定文(「I will〜」)で独り言を言った後、課題を行うことに加え、モチベーションを測定する質問紙にも回答した。この結果、やはり疑問文で独り言を言った場合の方が、課題成績もよく、モチベーションも高かった。

 「私たちの研究は、言語が自己調節にいかに影響するかを科学的に証明したものであり、どんな独り言を言うかで行動が変わることを示している。
 自己啓発において、アファメーションは目標達成の能力を高めると説くが、ある具体的行動を行う場合には、疑問形での問いかけの方が効果があるようだ」とDolores Albarracinは言う。

2010年05月19日

カフェインは作業効率を高める

カフェインは作業効率を高める
 職場での気分転換にコーヒーやお茶などを飲むという人はたくさんいるだろう。これは理にかなかった行動である。
 というのもコーヒーやお茶に含まれるカフェインには覚醒作用があり、眠気を防ぎ、知的作業や運動作業を向上させる効果があるからだ。
 
 the Cochrane Library journalに掲載される研究では、長時間のシフト勤務者にとってもカフェインが仕事上のミスを軽減し、記憶力と集中力を高めることを示している。

How office coffee breaks make staff work harder

 研究者らは、世界中で行われたシフト勤務者に関する13の研究をレビューした上で、労働条件のシミュレーション実験を行った。

 その結果、カフェインを摂取した参加者は、記憶、推論、集中力が、摂取しなかった参加者よりもやや得点が高いことが明らかとなった。
この効果は、カフェインの摂取方法がどんなものであっても(コーヒー、栄養ドリンク、カフェイン入りの食べ物)認められた。
 また、この研究ではカフェインの摂取が、休憩中に仮眠を取るのと同じ効果があることも示された。

 リーダーのKatharine Kerは、カフェインの効果は、職場でのアクシデントを減らすだけでなく、長いシフト勤務後の帰宅途中の交通事故や、長時間労働によって起こる医療ミスの減少にも有効だと期待している。

2010年04月30日

睡眠は学習効果を高める

なぜ私たちは眠るのだろうか?そして、夢を見るのはどうしてだろう?
進化論的に考えると、眠っている状態は非常に危険だ。睡眠中には意識がないため、他からの攻撃に対して無防備となる。

睡眠は免疫力を高めるが、しかしこれは体を横たえ休憩するだけでも十分だ。

しかし、睡眠にしかできない機能もある。
それは、昼間に経験した情報を、既に持っている情報と統合する脳の働きを促進することだ。
睡眠中のこの脳の働きによって、私たちは学習効果を高めることができるのだ。


Naps and Dreams Boost Learning, Study Finds

Current Bioligyに掲載されるこの研究では、99人の実験参加者はパソコン上で迷路学習を行う。その後、5時間後に迷路学習を行い、1回目との成績を比較した。
実験参加者は、2回目の迷路学習まで起きて待つグループと、90分の仮眠を取るグループに分けられた。

この実験の結果、休憩中に起きて待っていたグループは、最初よりも26秒成績を短縮することができたが、仮眠を取ったグループの成績はさらによく、1回目よりも188秒も早く迷路学習を行うことができた。

さらに驚くことに仮眠を取った参加者の中でも、仮眠中に夢を見たと報告した人の成績はさらに良かった。

この研究を行ったハーバード医学校のErin Wamsleyは、参加者にどんな夢を見たか質問したが、夢の内容は多岐にわたり、迷路学習と関連のある内容(迷路学習で使用されていた音楽や、再テストの成績予想など)もあれば、少し脱線したような内容(コウモリの洞窟を探検する夢など)もあった。

 wamsleyは、夢そのものが記憶を向上させるとは考えていない。 それは単なる脳が処理を行っている時に生じる副産物である。
 脳は、私たちが眠っているときに、昼間に経験した出来事を、既に確立している記憶ネットワークに統合しているのだ。

 この研究結果に基づいて考えると、勉強するのに最適な時間は睡眠直前かもしれない。