2011年04月04日

ツァイガルニック効果

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ロシアの心理学者ブルーマ・ツァイガルニック(Bluma Zeigarnik)が、ウェイターは注文を受けている間だけオーダー内容を覚えていて、オーダーを出し終わると注文内容を忘れてしまうことに気づきました。ここから、人は完了したことよりも未完のことをより覚えているということをツァイガルニック効果と言います。


ちなみにツァイガルニック効果をググってみました。よく出てくるパターンは以下の2つでしょうか。


1.ミステリアスなものに惹かれるのはツァイガルニック効果のため

人は「完全に理解できるものよりも分からないものやミステリアスなものに惹かれる」ことの論拠としてツァイガルニック効果を上げています。個人的には情報エントロピーの方がより確からしい仮説だと思いますが。

このツァイガルニック効果の解釈は定説なんでしょうか??うーん。


2.すごくいいシーンでCMにいくのはツァイガルニック効果のため

民法ではCMを見せることが大事なのでいいシーンの直前でCMに行くだけだと思うのですが、何故ツァイガルニック効果が出てくるんでしょうか。もちろん「未完のものは覚えている」というのはあります。

「CM前のエピソードを忘れさせないために、いいシーンの途中でCMに行く」という仮説は、「CMの視聴率をより高めるために、いいシーンの途中でCMに行く」という仮説よりもかなりお粗末な仮説だと思います…



実際のツァイガルニック効果は応用が難しいと思います。他者に対しては、情報の提供を途中で止めて興味を惹くといった応用でしょうか。どこまでがツァイガルニック効果と言えるのか難しいところですが。


自分に対しては、物事をまずはじめるということが一つの使い方です。まず物事をはじめてしまうことで、一度中断してもそのことが頭に残っていて、残りを続けやすくなると言われることもあります。これは一貫性でも説明もできます。このこととは逆に、集中するために余計なことをやりかけのままにしないという応用も考えられます。

実際には、これらをツァイガルニック効果と言っていいのか悩むところですが…


ともかく、人は完了したことよりも未完のことをより覚えていることを覚えておきましょう。

(文: SY)


これは itchysさんの画像を使用しております。

2011年03月18日

マズローの欲求段階説

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ビジネス書でよく引用されるものにマズローの欲求段階説というものがあります。これは人間の欲求が以下のように5つの階層になっているというものです。

1.生理的欲求(食事・睡眠等の欲求)
2.安全の欲求(安全性や経済的安定などの安全に関する欲求)
3.所属と愛の欲求(どこかに所属している、他者に受け入れられるという欲求)
4.承認欲求(自分が価値があると思われ、他者に承認される欲求)
5.自己実現欲求(自分の能力や技術を発揮する欲求)

マズローは低次の欲求が満たされると、高次の欲求が表れると提唱しました。マズローの理論はたしかに単純化されていて分かりやすいですが、このように明確に階層化されているかという点で疑問があり批判がされています。ビジネス書では、定説であるかのように書かれることが多いですが...

yokkyuu.jpg

マズロー以外には、オルダーファーが生存(給料、諸手当など)、関係性(社会的相互作用など)、成長(尊敬、自己実現など)の3つが同時に人に影響をしているとしました。

ハーバードビジネスレビュー2008年10月号ではニティン・ノーリア他が「新しい動機づけ理論」という論文の中で、
1.獲得(社会的地位など無形なものも含めて、稀少なものを手に入れること)
2.絆(個人や集団との結びつきを形成する)
3.理解(好奇心を満たすことや、世界をよりよく知ること)
4.防御(外部の脅威から我が身を守り、正義を広める)
という4つの動機がそれぞれあるとしています。他にもいくつか理論がありますが、基本的にはマズローとは違い欲求が階層化されているとはしていません。


マズローの欲求段階説の階層化は単純化されていて、次に何をすればいいといった検討が非常に容易です。ですが、実際には様々な欲求が同時に複雑に組み合わさっていると見るのが妥当だと思います。


関連記事:
他人が幸せならあなたも幸せ

(文: SY)


この本は、チームのモチベーションを考える上で非常にオススメです。
ワーク・モティベーション
ゲイリー・レイサム
エヌティティ出版
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2011年03月16日

一貫性の魔力

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販売活動で返報性が用いられるというのを書きましたが、それよりも強力なのがこの一貫性です。Wikiにも一貫性の原理として載っています。


ポイントとしては、人はそれまで行ったことを続けようとする強力な力があるということです。しかも、この力は本人が自覚しないというのが販売時に強力な武器になります。

ビジネス書では”フット・イン・ザ・ドア”(片足だけ中に入る)として載っていることも多いです。いわゆる小さなお願いをして、そこから徐々に大きなお願いをするといったものです。

小さなプレゼントをして相手に何かを買ってもらおうとするのが返報性を使ったテクニックだとすると、小さなお願いを聞いてもらってそれから相手に何かを買ってもらおうとするのが一貫性を使ったテクニックです。


相手に「これがいい」と言わせてから値段交渉を始めたり、「この日あいてる?」と聞いて返事を待ってから内容を伝えたりといったことも一貫性の応用で日常的によく用いられるテクニックです。

また、この一貫性はこのように分かりやすいパターンだけでなく、事前に差し支えないアンケートや何かの協力依頼をお願いしておいて、後日(例えば2週間後)に大きなお願いをするといった方法もあります。このように一貫性の魔力は時間を置いても有効です。


一貫性のテクニックについてはそれぞれの選択を自分が自由に選択しているので、それが相手の罠でなく自分の意志になっているというところが非常にやっかいです。消費者としてはこの一貫性のバイアスに負けないようにNoと言う必要があります。


この件と強く関わっているフェスティンガーの認知的不協和理論についてはまた別途書きます。

(文: SY)


この古典的名著では、一貫性についてかなりのページが割り当てられており、様々な実験が載っています。非常にオススメです。
影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ
誠信書房
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この本は影響力の武器ほどページ数がないため読みやすく、よくまとまった良著です。
あなたもこうしてダマされる―だましの手口とだまされる心理
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ギブ&テイクの心理学

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よくビジネス書で書かれる返報性という概念があります。
返報性というのは、「ギブ&テイクの法則」とでもいうもので、”人から何かを受け取ると、相手に何かを返したくなる傾向”のことです。この何か返したいという傾向は、本人にとっても無自覚であり、よく商売や勧誘などに用いられます

よく用いられるパターンは、路上で花をプレゼントされて何か依頼をされたり、もしくはお店でこちらの購買前に試供品をもらったり、もしくはホームパーティーなどで健康食品やナチュラル化粧品や台所用品の業者が来て、参加者にちょっとしたものを「気持ちですから」と言ってプレゼントしたりといった形で行われます。

また直接のプレゼントでないのですが、セールスマンが対応に時間をかけた上で「本当は今日は何件回らないといけないんですよね…」とつぶやくことで自分の時間を強制的に相手に与えて、見返りを求めるといったテクニックもあります。


こういったプレゼントや時間をもらうと「悪いなー、少しくらいなら」と相手の手口にまんまと乗って物を買ってあげるということをついしてしまいがちです。その結果、相手は自分が費やしたコストを遥かに越えるメリットをやすやすと得ることが出来ます。

消費者としてはこのような心理的な小細工に負けないように、自分のバイアスに十分注意しなければなりません。消費者としては、プレゼントを受け取らないという選択もありますし、難しい時はプレゼントや相手の好意も全て「相手がこちらを誘導する販売テクニック」であると自覚しておいて、返報性という罠から逃れる必要があります。


そういえば、マルセル・モースもその著書”贈与論”の中で「贈り物は毒である」ということを書いていますね。返報性というのは古くから様々な文化で見られるもので、注意しないといけないことなんです。

(文: SY)


この分野の古典ですが、素晴らしい本です。必読の書と思います。
影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ
誠信書房
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これは影響力の武器ほどのボリュームはないですが、同じように多くの心理的なテクニックが載っています。
あなたもこうしてダマされる―だましの手口とだまされる心理
ロバート レヴィーン
草思社
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こちらは心理学の本というよりも、文化人類学の本でしょうか...返報性が広い文化に根づいていることが分かります。
贈与論 (ちくま学芸文庫)
マルセル モース
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2011年03月15日

人は見た目が9割だったり95%だったり…しない

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今回のテーマはみんな大好きメラビアンの法則です。営業講座、プレゼン講座、話し方講座の最初によく言われますよね。

メラビアン.jpg

視覚情報 55% (見た目)
聴覚情報 38% (話し方)
言語情報  7% (話の内容)

とかいうヤツです。ちなみにこの話、日本のビジネス書では非常によく見ますが、海外のビジネス書ではデール・カーネギーに連なる人たち(フランク・ベドガー等)の本くらいでしか見かけませんよね。散々いろんなところで書かれているので詳細はリンク先を見ていただくことにします。

http://www2u.biglobe.ne.jp/~hiraki/d74.htm
http://www.bcm.co.jp/itxp/2006/01/cat07/24125958.php

ポイントとしては、言語情報(話している内容)はほとんど大事じゃなく、見た目(視覚情報)や話し方(聴覚情報)が大事ということですが、その結論は行き過ぎということです(実験条件と結論の間にギャップがある)。


たしかに、以前の記事に書いたように第一印象が大事というのは確かです。しかし、この第一印象が大事ということを言うためにメラビアンの法則とかいうそれっぽい数字つきの法則を使うのはオススメしません。


結論:
”メラビアンの法則”と言われたら、眉につばをつけて聞きましょう。

”第一印象は大事です”、”外見を気をつけましょう”というのは正しいです。でも、そのことに論拠が必要なんでしょうか?

アイスホッケーのマスクをかぶって斧を持って「怪しい者じゃない」と言ってる人がいたらすぐに逃げましょう。でも、高級スーツを着てめちゃ笑顔で「俺はこれまで100人殺してきた、お前も今から墓場に送ってやる」と言っている人がいてもすぐ逃げましょう。きっと危険度は7%どころじゃないです。

(文: SY)

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学
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2011年02月22日

ジョハリの窓

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(c) tooru sasaki写真素材 PIXTA


ジョハリの窓は「まだまだあなたの知らないあなたが眠ってる」的なことを心理学っぽく言う時によく使うツールです。あ、元々は心理学者のJoseph LuftとHarry Inghamの二人が1955年に発表した"The Johari window, a graphic model of interpersonal awareness"(ジョハリの窓、個人認識のグラフィックモデル)が元で、二人の名前をとってジョハリとしています。


これって心理学ですか??たしかに心理学の射程からは外れているものだと思います。

しかし、ジョハリの窓自体は、自分を知るためにはいいツールと言えます。このツールは自分の気づいている部分、自分が気づいていない部分と、他人が知っている部分、他人が知らない部分という2つの軸をベースに自分を分析・認識するというものです。

ジョハリの窓1.001.jpg
この2つを軸に
  ・自分が気づいていて、他人も知っている 公開されたエリア
  ・自分が気づいていて、他人は知らない 隠されたエリア
  ・自分は気づいておらず、他人は知っている 盲点のエリア
  ・自分は気づいておらず、他人も知らない 未知のエリア
の4つのエリアに分けて、自分を認識します。

この上で、

1.開示: 隠されたエリアを他人に開示して、公開されたエリアを広げる
ジョハリの窓1.002.jpg

2.フィードバック: 他人から盲点のエリアの情報を得て、公開されたエリアを広げる
ジョハリの窓1.003.jpg

の2つ行います。

これを繰り返すことで、公開されたエリアを増やしていくというのがポイントになります。

ジョハリの窓1.004.jpg

ジョハリの窓は自己認識をするには使いやすいツールですが、自分にはたくさんの隠れた才能が眠っているといったことを信じやすいもので要注意だと思っています。

私は個人の中に眠っている・隠れている才能を掘り起こすというよりも、やりたいことを信じることや優先順位を持って能力開発を行う方がいいと思います。この意見もジョハリの窓同様に心理学の射程からは外れていそうですが。

(文 SY)

嘘をつく時はどこを見る?

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ビジネス書では「過去について考える時は左を見て、未来を考える時は右を見ることが多い」などと書かれることがあります。また、同様に「嘘をつく時には右上を見る」などを書かれることもあります。また、「見ている方向で、聴覚や視覚などどのような感覚を考えているか分かる」などとも言われることがあります。


このことはNLPという擬似心理学(?)の”アイ・アクセシング・キュー”で説明されているものです。もちろん、NLPの中にも役に立つ概念もあるのですが、基本的には提唱者の経験上/思考上の概念なので役に立たないものもいくつか含まれています。


ちなみに、この”視線で考えていることが見抜ける”というものも、その役に立たないもの一つで、これまで様々な論文によって間違いが指摘されているものです。


そもそも視線で考えが見抜けるという主張は「過去について考える時は左を見て、未来を考える時は右を見ることが多いがこれは人によって癖があるので、その癖を捉えなさい」といったことになっていますが、視線の方向だけで相手の考えを見抜くということはほとんど無理です。


このような相手の視線の癖を捉えるような暇があったら、そんな役に立たないことをするよりも。もっと話している内容、話すタイミング、相手の表情などに気を配る方が有効です。

関連記事:
非言語的な部分で嘘を見抜く...のは困難です
オーストリッチ効果
初対面ではどんな嘘をつく?
嘘を見抜くちょっとしたポイント
瞬きは迷いのサイン


顔は口ほどに嘘をつく
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2011年02月13日

毎日見てたら、だんだん子供番組が気になってきました

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子供が見ているので、毎日どころかビデオにとって1日何回も”いないいないばぁ”という番組を見ています。見ていると、どんどん登場人物(ワンワン)の魅力に引き込まれてきます。ちなみにワンワンを演じているのは声も演技も”チョー”さんという方です。”ひだまりスケッチ”の校長の方ですよね^^;;


さて、この繰り返し接しているうちにどんどん好感度が上がっていくというのは心理学では単純接触効果として知られています。これはロバート・ザイアンスが1968年に発表したもので、ビジネス畑ではカッコつけてかザイアンス効果なんて言うこともあります。「広告は7回顧客に見せないといけない」と言ったりもしますが、これも単純接触効果が背景にあります。

単純接触効果は、商品選択においては有力なものであることは知られていますが、商品のカテゴリによって効果が違うということが、こちらの論文で示されています。この論文では、花のような情緒的な商品よりも実用品の方が、単純接触効果が働くのではないかと書いています。



ちなみに、Googleスカラーで”単純接触効果”というキーワードで検索してみると、トップにはこんな素敵な論文がっ (^^;;

”アニメ聖地巡礼の生起要因についての一考察 : 認知心理学的観点から”


なんか素敵なドキュン論文です(^^;; なぜ、”単純接触効果”で検索するとこれがイチバンなんでしょうか (^^;;

たしかに”らき☆すた”や”苺ましまろ”のオープニングの街並みなんかは、かなり好感度が高いとも言えます。単純接触効果では最大提示回数を10〜30回程度で設定しているものが多いし、通常のアニメは1クール13話(場合によっては12話)で示されますので、アニメにおいて単純接触効果を検討する必要があるでしょうが。


いや、やっぱりそんな検討いらんし!!


完全に著者の趣味の論文ですね(^^;

2011年02月11日

人は脳の10%しか有効に使っていない?、、、なわけない

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自己啓発本でよく「人は脳の10%しか有効に使っていない」とか書いてあったりします。特に若干スピリチュアル系な本でありがちです。

たしかに「90%の潜在能力があなたに眠ってます」とか言われたら心地いいし、「自分を見つめて、潜在能力を引き出す」とか言っておけばホイホイお金を出してくれる人もいそうです。


この話は、果たして本当でしょうか?いやいや全く本当ではありません。Wikipediaの"脳"のところにも記載がありますが、グリア細胞の効果が分からない時代に、脳の中で使われいない部分があると言われていたものがそのまま流布したようです。


ちなみに「こんな話が広まっているのは日本だけ?」と思っていましたが、アメリカや他の国にも広く流布しているらしく、若干ですが心理学者や神経科学者の中にすら信じている人がいるそうです。

よく言われていることと真実の間には大きなギャップがありますので、正しい知識を得て間違ったことを迂闊に信じないようにしないといけないですよね。


ちなみに、こちらの「いんちき」心理学研究所さんのページによくまとまっていました。